セブルスに成り代わって平穏に生きてみる   作:dahlia_y2001

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セブルスに成り代わって平穏に生きてみる7-4

 

 

 

セブルスに成り代わって平穏に生きてみる7-4

 

 

 

長いようで短い7年であった、と吾輩は感慨深げにホグワーツ城を見上げる。原作ではデスイーター達からの襲撃を受けてボロボロにされるらしいのだが、無論、ホグワーツ城は何の変りもなく壮麗な佇まいであった。

敷地内をそぞろ歩いていた吾輩は眩しいものを見るように城を見上げ妙に感傷に浸っている。もうじき、吾輩はホグワーツ職員を辞する。そうなれば、こうしてホグワーツをうろつくことは出来なくなる。なぜなら、ホグワーツはイギリス魔法界の唯一未成年者学校、そのセキュリティは強固な為、基本的に部外者はホグワーツ敷地内に入れないからである。残念ではあるが、仕方ないとも思う。

だから、今、こうして学校内を歩いて回っているのだ。

賑やかなグラウンドの方へ吾輩は足を進める。最後のクィディッチ試合の為、練習しているようだ。練習しているのはグリフィンドールでハリーが箒を駆っている。吾輩自身、クィディッチには欠片も興味はないが、皆々、楽しそうで何よりだ。

ぼんやりと眺めてから今度は薬草園の方へ足を向けた。

ここはスプラウト教授の管理下である。時間さえあれば、スプラウト教授はここの手入れをしている為、とても整備されている。クィディッチに比較すれば、此方の方が興味深い。スプラウト教授とネビルが薬草の手入れをしている。入学したての幼いネビルが今はフランクに似てがたい良く成長している。小柄なスプラウト教授と比較すると尚更のこと。フッと吾輩と二人の目が合った。ネビルがにこっと笑って小さく手を振り、スプラウト教授もこちらに笑いかける。反応が似ていて仲が良い。吾輩は軽く片手を上げて応じた。二人は再び薬草の手入れに戻った。息の合っている二人のやり取りを見ていると、ネビルはスプラウト教授に取られてしまう、と思い知った。いや、正しくは精霊学より薬草学の方がネビルには向いていると思い知らされた。

やはりルーナを保険として教授枠に入れたのは正解だった、と吾輩は薬草園をそぞろ歩く。

 

「センセ」

 

かけられた声に驚いて、吾輩は振り返った。とはいえ、内心の驚きを表に出すことなく、外見だけは余裕を見せているのは貴族のプライドか、原作セブルスのイメージを壊すまいとする意地か。

驚いたのは声をかけたのが、今、考えていたルーナだったからだ。

 

「どうかしたのかね、ミス・ラブグッド?」

「センセはお散歩ですか?」

 

質問に答えろよ、とは思ったが、つまりルーナの方に特に用事はないということだろう。

 

「直に退職するのでな、今のうちにホグワーツを見納めしておこうとそぞろ歩いていた」

「ご一緒しても良いですか、センセ?」

「好きにしたまえ」

 

ホグワーツに在学する精霊使いはわずか3名、そのうち2名は幼い頃から知っていて精霊使いとしての手ほどきをしてきた。色々と事情があってネビルは物心つく前から。トムも訳有りでホグワーツ入学前から家族ぐるみで親しくしている。親しくというよりは秘密を共有している、に近いか。しかし、ルーナは違う。精霊使いとしては契約が遅くて、後発精霊使いとでも分類すべきだろうか。そのせいで、ルーナには教える時間が少なかったのは否定できない。とはいえ、ルーナに教えるべきことは全て教えてはいる。ルーナ本人が納得しているかはともかく。

薬草園から図書館へ向かう小道を歩いていく。ルーナは吾輩の後ろを軽やかについてくる。一緒に散歩というより、ルーナが勝手に吾輩の後ろをついて歩いている。そして、分かっていながら吾輩が好きにさせているように余所目には見えるかもしれない。

吾輩はルーナを引き連れたまま、図書館へ入った。学年末テストは終わっているので、図書館は少し前に比較すると閑散としていた。司書が吾輩とルーナを不思議そうに眺め、だが、声はかけられなかった。単なる散策なので禁書棚以外の棚をのんびりと見て回る。ホグワーツの図書館は流石の蔵書量だと、今更ながらに思う。何人かの生徒が閲覧室で本を読んでいる。皆、本の世界に没頭してこちらに全く関心を払わないのが、お互い様で心地よい。

ハーマイオニーが分厚い本をめくっているのを認めて、勉強家だなと妙に感心してしまう。卒業が近いので急ぎ読みためているのかもしれない。

さて、次はホグワーツ城内へ行こう。ルーナは飽きもせず吾輩の後ろをついてくる。人気のない城内でようやくルーナは口を開いた。今まで黙っていたのは他人に聞かれたくなかったらしい。

 

「センセは夢をどう思いますか?」

「夢?」

 

不意にこの前のハリーの一件を思い出した。ハリーは原作セブルスの死にざまを夢に見たと、それがあの一件の原因だった。魔法使いの見る夢は一般人のそれとは異なる。まして、ルーナは―――。

 

「場所を変える」

 

ルーナの返事を待たず、吾輩は心がせいて自室へと急ぎ戻る。ルーナが駆け足で吾輩について来るのを気遣う余裕はなかった。

自室の応接室で吾輩はソファーに座り、対面の席をルーナに片手で勧める。

 

「メリーアン、人払いを」

 

一瞬で現れたメリーアンが恭しく頭を下げ、バチンと派手な音を立てて姿を消した。加えて、吾輩は慎重を重ねて「水の精霊、人払いを」と命じた。

命じはしたものの、水の精霊が人払いをどのようにするのか吾輩はさっぱり分からない。精霊の力は基本的に物理だ。立ち聞きする人間を水で殴るか氷で貫くか、だ。いや、考えるのは止めよう。

 

「さて、ミス・ラブグッド、話したまえ。貴女の夢を」

「はい、センセ。私の見た夢を―――」

 

そして、ルーナが話したのは吾輩の知る原作知識。その原作知識はハリー同様に先を見るわけではなさそうだ。つまり、ルーナが5年生の時に原作5年生の夢を見るという形で現実と原作が乖離している為、パラレルワールドの世界を夢に見ている風だとか。

予知夢ではないが、あったかもしれない可能性の世界を夢で垣間見ている訳だ。吾輩にはそれが原作知識と理解出来ているが、分からなければ混乱もするだろう。そうとなれば、もしかして。

 

「ミス・ラブグッド、貴女が精霊使いになったのはその夢が原因か?」

「影響を受けなかったとは言いません」

 

精霊使いの力は純粋な暴力、身を守るのにこれ以上の力はない。原作知識を得ていたら、尚更である。

いや、ちょっと待て。夢を見るのがハリーやルーナだけとは限らないのでは?

ちょいちょい原作の修正力とか思っていた事柄や人の動きが―――夢で原作知識を得たうえでの行動となれば―――それなりに納得するトコロもあるのでは?

 

「センセ?」

 

気遣わし気なルーナの声に、気にするなと吾輩は片手を振った。今、気づいたところで仕方がないし、原作も終わっていると思う。続編はハリーの子供世代らしいし、原作セブルスは退場しているので問題はない筈だ。今更だが、不死鳥の騎士団があの時期に活動し始めたのは―――ルーナやハリーのように夢を見た誰かが?それが基本スペックの高いシリウスだったら、それとも校長?―――怖すぎる。

いや、それでも原作終わっているからセーフ。セーフに違いない。

 

「少々、嫌な思いつきが頭をよぎっただけだ、大事ない。さて、ミス・ラブグッドの夢だが現実とはかなり乖離しているように思う。予知夢とも言えまい」

 

吾輩はルーナを丸め込み宥めようとした―――のだが、じっとルーナは吾輩を見据える。その瞳は此方の心の奥底まで見つめているように感じた。

咄嗟に吾輩の方が目を逸らしてしまう。バツが悪い。

 

「センセ、それは本当ですか?」

 

吾輩は溜息を吐いて、まっすぐにルーナを見つめる。これは本当のことを言わねばルーナは引き下がりはしないだろう、それ位にルーナの性格を知っていた。

 

 

 

 

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