セブルスに成り代わって平穏に生きてみる 作:dahlia_y2001
セブルスに成り代わって平穏に生きてみる7-5
ルーナを前に、吾輩はどこまで話すかを頭の中で素早く考える。嘘を吐く気はなかった。そんなことをする必要はない。それに何となしルーナには気付かれそうだ。但し、全てを明かす必要もない。
そして、ルーナに真実を話そうと決意したのは―――吾輩の中で原作全てが終わってしまったということが大きい。
「さて、どこから話したものか」
そんな風に吾輩は話し始めた。前世の記憶から、この世界を児童文学もとい本という形として知識があるということを。もっとも、吾輩が思うに児童文学という括りに入れるにはこの世界、ばんばん人は死ぬし、理不尽なことも多い。故に『本』という表現に留めておいた。
「結局、センセは夢を見たわけではないのですね?」
知識が本であるとしても、吾輩が夢を見ていないことを確認するルーナ。
「吾輩は、な。夢を見たのはミス・ラブグッドだけではない。吾輩が知る限りでは、ハリー・ポッターも見ている」
ルーナが自分だけ妙な夢を見るという不安を除こうと、あえてハリーの件を伝えた。ルーナならば口止めせずとも他へ吹聴するとは思えない。そもそも、おしゃべりする相手、つまり友達いるのかな、この子。いや、ネビルやトムは友達枠だろう、きっと。そういうのを教師が心配して手を出すのは、ルーナ自身のプライドを傷つけやしないかとも思う。
「ハリーが?」
「どのくらいの頻度でミスター・ポッターが夢を見るのか判別しかねるが、吾輩が死んでいないか確認しに来た。しかも真夜中に」
ルーナはさっと顔をこわばらせる。
先ほどの説明で吾輩は5年度アンブリッジが闇に対する防衛術の教授だった年までしか本を読んでいないことを伝えている。つまり、ルーナは吾輩が自身の死を知らないと思っているのだ。
ルーナが震える声音で呟く。
「センセ・・・・・・」
気にするな、という風に吾輩は片手を振った。
「本は読んでいなくとも、吾輩や校長が死んだことは知っている。かなり売れた本なのでな。知人がネタバレしてくれたというか気付いたら誰からという訳でもなくバラされていた。逆にこの状況ならばネタバレされて良かったのだろう」
ダブルスパイで殺されるという情報があったからこそ、吾輩はそれらの死亡フラグを回避出来たのだ。情報というのは良くも悪くも力にはなる。
吾輩が自身の死を知っていたことは、逆にルーナから肩の荷を下ろすことになったようだ。これはルーナの立場になってみれば当然だろう。目前の知人の死を知るというのは、何とバツの悪いことであるか。
「私の知っているセンセは魔法薬学を教えて、防衛術の先生になって、それから校長になりました」
「校長!?いやいや若すぎるだろう。どういう人事なんだ!?」
「あーまー、そのイロイロありまして」
「色々?」
「イロイロです」
原作セブルスはダブルスパイの上に校長もやっていたのか。凄い出世じゃないか。でも、ルーナの何とも言えない表情とホグワーツでは相当な若輩者ということから考えると、かなり無茶な人事のように思う。今の吾輩はプリンス家当主かつブラック家後見があるが、原作セブルスはそういうバックボーンはない筈だから余計に分からん。
「それで、ハリーがダブルスパイのセンセの記憶公開して名誉回復させて、ホグワーツに校長の肖像画を飾らせました」
「記憶公開?」
吾輩と違って露悪的というか自罰的な気のある原作セブルスにとって、それは公開処刑なのでは?それに褒められるの好きな質の吾輩ですら校長室に肖像画は辞退したい。
肖像画とか自己顕示欲の塊でないと辛くないか?
ところで、魔法界の肖像画は会話ができるらしい。どういう仕組みなのだろうか。画家の魔法なのか、それとも描かれた方の魔法なのか?
「センセの肖像画とお話しましたよ」
「そうか。だが、肖像画と吾輩の話はもうよい。というか、今の吾輩とは全く違うし知りたいとも思わない」
「そうですね。今のセンセとあっちのセンセはだいぶん違っているみたいで、でも、同じ?」
流石、ルーナ。鋭い指摘だ。もしや、吾輩と原作セブルスが異なっていると気付かれたか?環境が異なるが故の差異と思って欲しいところである。
「さあな。今の吾輩は精霊使いだ。それ以外の自分を考えたこともない。ミス・ラブグッドも契約した以上は、精霊使いであることを後悔はしないだろう?」
「ええ、それはもう。センセには厳しく忠告されましたから」
一度、精霊と契約をすると解除は出来ない。魔法使いと精霊の契約は、魔法使いの全ての魔力を精霊に与え続けることである。故に魔力の強い者程強い精霊と契約出来るし、契約精霊も大きな力を振るうことが出来るのだ。その為、ネビルやルーナの契約を吾輩は反対した。契約仲介者として、いざと言う時は対象の精霊使いを力で抑え込む義務があると考えているからだ。そして、ネビルとルーナはそこそこ魔力が強いのだ。ネビルはロングボトム家直系だし、ルーナは元々魔力ポテンシャルが高い。とはいえ、二人とも気質が穏やかなのでそこは安心している。ちなみにトムは元が分霊箱で魂が欠けている分、吾輩の方が強いので問題ない。そして元スクイブが契約出来るのは下位精霊のみなので心配ない。
「ところで話は戻るが、ミス・ラブグッド。ハリー以外に夢を見た者がいるのでは?と吾輩は思う」
「どうして、そう思うのですか?」
「不死鳥の騎士団の動きが妙に思われる。例のあの人の動きもないのに再結成したり、神秘部へ侵入したり。本の通りならば納得の行動も現実には暴走にしかみえん」
「つまり、センセは不死鳥の騎士団の誰かが夢を見て、動いたからあんなことになったと」
「少なくとも行動に説明はつく。仮にそうだとすれば、誰が夢を見たのだろうか、ということだ」
そもそも夢を本気にするものだろうか。百歩譲って本気にしたとして、それを騎士団の行動とするにはそれなりの説得力が必要だ。もしくは発言力が。
あの時点で発言力のある騎士団メンバーは誰だろう。そもそも吾輩は騎士団メンバーをあまり知らないが、それでも考察するならば、校長、シリウス、ルーピン、そしてアーサー夫婦か。吾輩の勝手な想像では校長もしくはシリウスが怪しい。ルーピンは夢を見ても現実との差異から口をつぐみそうだ。そして、アーサー夫婦は悪いが発言力低そうなイメージだ。シリウスは視野が狭いというか思い込み激しそうで、自分の見たいものしか見ないところがあるし、元ブラックなだけあってリーダーシップもある。校長はカリスマ性が高い。そもそも騎士団自体が校長シンパ集団だ。
「思うにシリウスか校長ではないだろうか」
根拠も何もないから、酷い言いがかりではあるが。
「確かめますか?」とルーナ。
「吾輩、シリウスとは相性が悪いから話をしたくない」
「夢でもそうでしたよ」
こっちの方がまだ仲は良い方とは思うが、話をしたくないのは原作と同じかもしれない。
「そうだ」
ルーナはパンと手を叩いた。
「校長の肖像画に聞いたら良いですよ」