セブルスに成り代わって平穏に生きてみる   作:dahlia_y2001

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セブルスに成り代わって平穏に生きてみる2-2

 

 

 

セブルスに成り代わって平穏に生きてみる2-2

 

 

新任ロックハート以外、教授陣はベテランぞろいなので(吾輩除く)授業やホグワーツに何の変りもなかった。新入生で吾輩が心ひそかに注目していたのはトムとロンの妹・ジニーであった。しかし、日記に心奪われる筈のジニーは日記自体がもはや無く、日記はトムとして新入生となっているので、ジニーが酷い目に遭うこともあるまい。ウィーズリーの双子が悪戯やらかしているのでせいぜいがジニーはウィーズリーの双子の末妹という目立ち方である。

 

 

吾輩はネビルとトムを招いてお茶をご馳走した。実はロックハートの評価を生徒側から聞きたかったのだ。教師側の意見は、教員会議などで集めているが、想像通りの無能判定である。あの人の手先であった前任のクィレルの方がはるかにマシという―――比較対象がそもそも間違っている気はするが―――クィレルは教師として真面だったことを思い出す。

 

「それで、ロックハートの授業はどうだ?」

 

ネビルは困ったように苦笑を返し、トムは持参した焼き菓子(実家のレストレンジから送られた高級焼き菓子を手土産にしてくれた)を一口味わってから、その甘味にほろりと笑みを零す。

 

「毎回、寸劇を見せてくれます。グリフィンドールと合同だとハリーが共演しているとか」

 

トムが促せば、ネビルの苦笑にはますます苦みが深まった。

 

「ハリーも気の毒に。まあ、その、演技力はつくのじゃないかな」

「ホグワーツは魔法学校であって演劇学校ではないのだがね」

 

本当にロックハートは何がしたいのだろうか。いっそ、ビンズ教授のように教科書読み上げの方がマシだろうに。いや、初回授業の再来よりは寸劇の方がマシか。どちらがよりマシって・・・。比較対象が酷すぎる。考えるのを止めよう。

 

「実技のみならず筆記の補講も必要だな」

「プリンス教授も苦労しますね」

 

全くの他人事のようにトムが言うので、睨み付けたらトムは黙って吾輩の皿に焼き菓子を乗せた。

 

「それはそれとして、なんでロックハート教授が任命されたのですか?」

「・・・・・・ロックハートの冒険譚から実績ありと判断したのだろう」

 

任命は校長の独断だが、あの本が実録と思っているホグワーツ生が今現在、どこまで残っているのやら。ある意味であの本はフィクションと思われるが。ロックハートは全くの無能ではないのだよ、文才はあるのだよな、文才は。魔法使いとしての才能については多大に疑問が残るのだが。

 

「ピクシー暴走より今の方がマシです」とネビル。

「授業としてではなく寸劇としては面白いです」とトム。

 

いや、それは授業の感想としては酷いし、何より二人ともロックハートに欠片も期待をかけていないのが同じ教師として辛い。

いっそ、前任者のように失踪してくれないかな、ロックハート。

 

 

 

 

トムがせがむので仕方なく、また事の重大さからしぶしぶ、吾輩とトムは秘密の部屋を開けるべく三階女子トイレに行った。嘆きのマートルが根城にしているので人が近づかないのは有難い。吾輩たちがはいると嘆きのマートルはヒステリックに叫び出したが、トムを見て黙った。トムはトムで吾輩の後ろに隠れようとする。知り合いなのだろうか?

 

「・・・・・・何の用?ここは女子トイレよ」

 

少し落ち着いたようで、大人しくマートルが問う。

 

「すまぬ。ここに秘密の部屋の入り口があるのでな。少々、邪魔させていただく」

 

吾輩がトムを促すと、トムはマートルを無視するというより妙に気遣って自分を隠すように立ち回り、例の蛇口へ「シューシュー」と言葉をかけた。がこがこっとギミックじみた音を立てて入口というか落とし穴がぽっかりと開いた。先は当然ながら真っ暗だ。

 

「ここを行くのかね?」

 

否定して欲しい声音たっぷりに一応、聞いてみる。

 

「はい、ここが入り口です」

 

きっぱりはっきりトムが肯定し、早速入ろうとする。

 

「待ちたまえ、吾輩が先に行く」

「・・・・・・僕、以前に行ったことあるのですが」

 

吾輩の心配は無用と言いたいのだろうが、教師としてここは譲れない。ぐずぐずしているとトムが先行しかねないので、吾輩は先に行った。落ちるというか、巨大な滑り台か。しかし、数十年は閉ざされていた場である。滑り台の底、いわゆる目的地に着いた時、吾輩のローブはドロドロであった。魔法使いであれば洗浄魔法が使えるのに、精霊使いにそのような便利な魔法はない。直ぐにトムも滑り降りてきた。もう少し時間をおいてから来ないと、吾輩が先行した意味がないと思う。もっとも、トム自身がここを危険と思っていないから仕方ないのかもしれないが。吾輩は直ぐに持参した懐中電灯を点けた。『灯(ルーモス)』呪文も使えないからな、こっちは。トムも自身が持ってきた懐中電灯を点ける。

懐中電灯の光で照らされる石畳の広場に巨大な蛇の抜け殻が転がっている。無価値に転がっているが、魔法薬学や魔法生物の研究家ならば興味深い品である。吾輩も行き掛けの駄賃に持って帰りたいが、今はバジリスク本体の方であろう。

 

「バジリスク!!どこー!?」トムが周囲に呼びかける。

「蛇語で話さなくて良いのかね?」

「バジリスクは頭が良いので人語を解しますよ」

「本当に頭が良いのだな」

 

小さな物音に気を引かれて吾輩は周囲を警戒する。何か大きなものを引きずっているような音である。

 

『久方ぶりだ、トム』

 

特徴的な無理して人の言葉にしてるような感じのする声が響いた。声だろうか、音として伝わっている様子はない。かといって頭に直接叩き込まれた感じもしない。全く表現しがたい感じである。

 

「バジリスク、久しぶり。会いたかったよ」

 

トムは純粋に喜色を表している。バジリスクがホグワーツ城の魔術システムの一部というのは単なる言い訳で、トムは単にバジリスクに会いたいだけだったのではないだろうか。

 

「すまぬが、バジリスク。吾輩らは貴公の眼光に対抗できぬ故、こちらを見ぬようにして頂きたい」

『トムの声を聴いてから、瞳を閉じている。そなたは何者だ?』

 

のそり、とバジリスクはこちらに頭を寄せたが、吾輩たちに背を向けているのは配慮の為だろう。しかし、何とも巨大な蛇だ。牛どころかドラゴン並みの大きさ。寒冷地のイギリスでここまで巨大な蛇がいようとは想像だにしなかった。そもそも、スリザリンと共に居た蛇としたら千年単位で生きている筈である。

 

「吾輩はホグワーツの精霊学教授セブルス・プリンスだ」

『精霊学、そなたは精霊使いか。なんとも珍しい』

「僕も今は精霊使いだよ」

『おお、そうか。トムは精霊使いになったか。喜ばしいことだ』

 

バジリスクは優しくトムへ語り掛ける。トムの懐きっぷりからも二人の仲は良好らしい。トムがバジリスクを温厚と言ったのも分かる。そのまま世間話を始めたトムとバジリスクを吾輩はぼーっと眺めていた。積もる話もあるだろうから野暮なことを言わない。しかし、バジリスクの忠告には耳を疑った。

 

『トム、今のホグワーツは危険だ。家に帰るが良い』

「バジリスク、それはどういうことだ?」と吾輩。

『うむ。トムが秘密の部屋を開けたことで我は目覚めた。そして気付いた。森に危険生物が居る』

「森?ハグリッドの管轄だよな」

 

森といえば森番ハグリッド。奴は去年、違法な手段でドラゴンの卵を手に入れ飼育を試みたのだ。ドラゴンの卵の個人所有も違法ならば、飼育も違法。その件でアズカバンへ放り込まれたが新年度にはしれっと戻ってきていた。校長の意向が大きいのは間違いない。また、あの森番は厄介な危険生物を飼育しやがったか。あれ、バジリスクに森番、何か忘れていたような?

バジリスクは冷ややかに告げる。

 

『森でアクロマンチュラが繁殖しておる』

 

一瞬、思考が停まった。アクロマンチュラといったら、あの危険度マックスの魔法生物アクロマンチュラか。そうだ!!ハグリッドの阿呆はドラゴン飼育を上回るやらかしをやっていたのだった!!そして、すっかりそれを忘れていた。

 

「ハグリッド?ルビウス・ハグリッドですか!?あいつの退学理由はホグワーツでアクロマンチュラを飼育していたからですよ」

「ペットに蜘蛛は許可されておらん」

『いや、それ以前の問題だ』

「ごもっとも」

 

ハグリッドはアクロマンチュラを繁殖させたのか。一体、何のためにとその目的に思考を走らせて―――いや、ハグリッドならば目的も考えもなく繁殖させかねないと思い至った。いや、何で増やすかなー、バレるリスクが高まるだろう。しかも危険度マックスの魔法生物だぞ。馬鹿なのか、あいつは。

 

『サラザールの願いはホグワーツを守ること。我はホグワーツを守る者。だが、我が動くとまた犠牲者が出るやもしれぬ』

「犠牲者とは?」

「・・・・・・マートルのことです」

 

言い辛そうにトムが言う。

そうか、そういうことか。秘密の部屋をトムが開き、バジリスクを目覚めさせ交流を持った。それだけならば問題はなかったが、折り悪く、森番・当時はホグワーツ生であったハグリッドが危険生物アクロマンチュラをペットにし、バジリスクはサラザールとの約束からアクロマンチュラを排除しようとしたのだろう。そして、マートルはもらい事故な形でバジリスクの犠牲となったのか。

トムのマートルに対する引け目やバジリスクがこちらに対して過剰ともいえる配慮はこの過去の事故によるものと思われる。しかし、要因もしくは原因はハグリッドである。その件で退学処分になったのも当然か。そんな奴を森番に据えるとは校長は正気か?

ともかく、森にアクロマンチュラを大量繁殖させていた件で必ずや森番を首にし、ホグワーツと縁を切らせてやると、吾輩は心に誓った。ホグワーツはイギリス唯一の魔法学校、その学校の森で危険生物を大量飼育など、子供を人質にしようとするテロリストと思われても仕方ない。ハグリッドにそんな知恵はないと言われるかもしれないが、傍から見たらそう見える。

さて、この件をきちんと公的に解決するためには。

 

「バジリスク、アクロマンチュラの件は吾輩に任せてもらおう。極力、穏便に退治する。まず、アクロマンチュラの存在を公にして一度、ホグワーツ生を帰宅させる。その後、魔法省と協力して駆逐しよう」

「魔法省に協力要請するのですか?ホグワーツは独立組織とおもいますけれど」とトム。

「独立と隠蔽を一緒にしているのではないかね?そもそも、危険な魔法生物が森に大量生息している時点で一学校機関の手に負える事態ではない。何より生徒の安全が第一であり、ホグワーツの伝統などその前において何の意味もない」

『過激だが、言っていることは真面だ。よかろう、そなたに全て任せよう。せめてアクロマンチュラの位置情報は与える』

「感謝します」

 

吾輩は丁重に頭を下げた。

その後、吾輩はトムを急き立てて精霊の通り道で一気に自室まで戻ったのだった。

 

 

 

 

 

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