二周目、獪岳は隠になる   作:dahlia_y2001

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二周目、獪岳は隠になる16

 

 

 

二周目、獪岳は隠になる16

 

 

 

柱稽古で隊士の皆は大変だな、と他人ごとに思っていたのがいけなかったのか。隊士だけ大変な目に遭うのは不公平と世間様が思ったのか俺には分からないが、ただの隠である俺もそうそう書類仕事ばかりする訳にもいかなくなった。

まず、輝利哉とその姉妹が隠屋敷に居を移した。作戦本部を隠屋敷とする為、事前に移っておくとのこと。そうなれば、護衛となる俺も水屋敷に籠っている訳にはいかず、しぶしぶ隠屋敷へ戻った。戻った以上、輝利哉の相手をする羽目に陥っている。輝利哉にしてみれば、二周目仲間という一方的な仲間意識を抱いているらしいのだが、本当に勘弁して欲しいものだ。こっちに仲間意識はない(きっぱり)。また、居場所が特定されてしまったので、元・炎柱が隠屋敷に日参するようになった。元・炎柱との修行の方が輝利哉との会話より、ほんの少しマシだし、最終決戦前に剣技を上げるのは生存率向上に直結する。

故に元・炎柱との修行を優先させている。輝利哉の護衛任務で真菰も既に隠屋敷に居を移している為、俺の修行に真菰も参加している。

隠屋敷にて元・炎柱が水柱の継子と隠の修行をつけているという、余所目から見ると訳の分からん状況になっているのだ。これで、元・炎柱が炎柱ならば、無限列車事件での即席チームじゃね?なんて思ってしまう。ちなみに元・炎柱が立ち直った?理由はさっぱり分からない。聞ける雰囲気でなく「無駄口叩く暇あったら、素振りでもしてろ」という完全に体育会系なおっさんなのである。それに元・炎柱は全く知らない人なので、突っ込んだ話は聞けず放っておく。一時的な師匠という距離感が良いということにしよう。この件について、以前、真菰と話をした。

 

「そんな親しいどころか初対面だから、突っ込んだ話はできねぇよな」

「そうね。元・炎柱様が引きこもっていた頃に後ろめたさを感じていらっしゃるならば、それを思い出させるようなことは言わない方が良いわね」

「俺は完全に部外者だし。真菰は元・炎柱と親しいのか?」

「残念ながら、全く。私とは年代が違うし、鱗滝さんともそう交流はなかったみたい」

「元・水柱様とは活躍時期がずれているみたいだものな」

「でも、流石に指導は適切だし、とても勉強になるわ。このまま、私たちは何も言わず大人しく指導を受けましょうよ」

「そうだな、ちゃんと力になっているのは分かるし」

 

そういう訳で、元・炎柱の指導を俺と真菰は大人しく真面目に受けているのだ。空気読んでいるのか、踏み込まない他人行儀なのか。残念ながら、他の隠たちにこの修行はきつすぎる為、修行を受けるのは俺と真菰だけなのだが。

書類仕事より俺は仕事を動かす方が性に合っているようだ。夢も見ずぐっすり眠れるし、心地よい疲労と空腹で食事は美味いし。もっとも、これが嵐の前の静けさと思い知らされたのは、輝利哉に呼びつけられたからだ。明日の夜が最終決戦だ、と。

 

「大丈夫です。一周目で僕に危害は加えられなかったですし、獪岳さんを守りますから」

「・・・・・・もったいないお言葉で」

 

二周目になってから、なぜか自分より弱い人間(真菰と輝利哉)から守ると宣言されるようになったのは、どういうことだろう。安心感はあまりない。―――悪い気はしないが。

 

「ちなみに最終決戦が明日の夜というのは通達しているのですか?」

「明言はしていませんが、それとなく上層部と柱には情報を流しています。二周目の知識も絶対ではないし、情報の根拠が自分が二周目故とは言えませんからね」

 

そりゃそうだ。正気を疑われるだろうとも。

もしかしたら、輝利哉が俺に仲間意識を持っているのは俺が二周目で、何も気負うことなく一周目のことを話すことが出来、相談することが出来るからではないか。そのことに、ようやく気付いて、俺はほんの少しだけ輝利哉への警戒を解いた。いや警戒はし続けるべきだが、少し優しくしてやろうという気になった。それまでは、目上で厄介な上司としか思っていなかったのだ。そして、二周目仲間と言い出して距離感が近い、と。

 

「真菰を護衛にして良いですよね?」

 

今更だが、俺は尋ねる。既にそのように動いている。

 

「一周目の前線で真菰さんは居ませんでした。居ていただければ正直、戦力強化は出来ますが、必須ではありません。獪岳さんが望むなら、それくらいの融通はきかせます。それに―――」

 

くすりと輝利哉は笑った。

 

「元・炎柱も僕の護衛について下さいます。一周目と比較すれば過剰戦力でしょう」

「俺にはよく分かりませんが、一周目と比較して鬼殺隊側が有利な状況なのですよね?」

「ええ、炎柱も音柱も無事。上弦の参は討伐、陸は不在です」

 

そうだ。輝利哉が色々と手を回し、状況を改善してきた。しかし、それがいつも良い方へ転がるとは限らない。一度は輝利哉も良かれと思って事態を悪化させた、と。

 

「過剰戦力とは言えないかもしれません」

「え?でも・・・・・・」

「ここまで変えてしまった以上、どう転ぶか分からないと思った方が良いです。用心するにこしたことはありませんから」

「それはそうですね」

 

一周目と比較して鬼殺隊が大分、強化されているようだが、俺はこの辺りの記憶がないので何とも。判断のしようがない。

そう、本当に鬼殺隊は有利なのだろうか?

 

 

 

 

 

そして、最終決戦を迎えた。

始まりの合図は大きな打ち上げ花火の音であった。花火大会の予定なんてあっただろうか?と俺が考え込んでいたら、輝利哉が「始まりました」と言い切ったので何らかの合図だったのだろう。俺が不可解な顔をしていたのを気の毒に思ったのか、真菰がこっそりと教えてくれた。

 

「あの打ち上げ花火が上がったのは産屋敷の方向なのよ。無惨によって産屋敷が襲撃されたことの合図として打ち上げられることが決まっていたの」

「無惨が産屋敷を襲撃だと!?一大事だろうが」

「これは産屋敷の皆さまが予測した未来。大丈夫、産屋敷の他の皆さんも柱も待機しているのだから」

「つまり罠だと?」

「そうとも言えるわね」

 

未来知識=情報がいかに戦況を左右させるか。それは歴史が証明している。しかし、上弦の壱のような絶対的力に対して、未来知識がどれくらい有効なのか疑問である。やはり、俺は未だに上弦の壱に恐怖しているのだろう。対峙せずにすむ幸運に安堵しているのだから。

 

「小僧、情報規制されていて、指揮系統の上層部しかこの合図は知らされておらん」

 

元・炎柱が解説を追加してくれる。別にこの件を知らなかったので黙って考え込んだわけじゃない。上弦の壱と対峙する可能性について考えていただけだ。

 

「さあ、会議室へ行きましょう」

 

穏やかに、しかし、安心させるように輝利哉は一同を促した。動揺している俺に比較して、やっぱり輝利哉は次期当主の器を持ち合わせているのだろう。子供のくせに、その背に頼もしさを感じて、俺は苦笑を零してしまったのだった。

 

 

 

 

 

 

 

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