「はい、今日のすごろく券よ」分割思考で商勇を一人で操作してたらヒモ勇者と彼に貢ぐ女商人と誤解された   作:勇樹のぞみ

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運営のお姉さんは女商人ちゃんが心配です

「そうそう。勇者さん、もーっと私に頼っていいのよ」

 

 演技演技。

 VRインターフェースを利用した分割思考(マルチタスク)により、自分が同時操作している男勇者に向かって語りかける。

 

 ――RPGをする時はね、誰にも邪魔されず自由で、なんというか救われてなくちゃダメなのよ。独りで静かで豊かで……

 

 時々……

 無性にRPGで一人旅をしたくなるんだけど、大抵のゲームではソロではきついし、できても単にレベル上げ作業をして物理で殴るみたいなことになる。

 そんな時に出会ったのがレトロな昔のゲームを今風のVRMMOに仕上げた『ドラゴンクエスト3 VR』

 最先端のゲームと違って複雑な処理をしていないこれなら、VRインターフェースを利用した分割思考(マルチタスク)を使えば複数キャラの同時操作ができると気づき、女商人をメインに、男勇者を補助に使ってプレイすることに。

 ソロプレイ気分を満喫するために、自分の視覚情報だけに有効なリビングアーマースキンを男勇者に被せているけれど……

 

(他のプレイヤーに、ばれないようにしないとね)

 

 VRインターフェースを利用した分割思考(マルチタスク)により複数キャラを同時操作するというのは『ドラゴンクエスト3 VR』の利用規約に違反してはいない。

 何しろ二つのアバターを操作しているのは私自身なんだから。

 同時利用のためアカウントは二つ買ってあるし、そもそも運営であっても、同一のVRゲーム端末からのアクセスだとは分かっても、一つのゲーム端末には複数のVRヘッドセットをつなげられるので家族や同居人と一緒にやってるのかな、と思われるのがせいぜいだし。

 プライバシー保護、個人情報保護法の関係で、事件性が立証され警察からの開示請求がある、とかでもしない限り顧客の個人情報に運営はアクセスできないのだしね。

 

 ただ、運営側の想定外の使い方であろうことから、禁止されてしまう可能性が無いとは言えない。

 この技術、誰でも使うことはできるけど、馴染めない人は馴染めないので。

 つまり使いこなせずにひがんだユーザーがチートだと騒げば運営も禁止せざるを得ない状況に追い込まれるかもしれないし。

(ちなみに、この技術、使いこなせたとしても、あからさまに一つ一つのタスクの処理能力が落ちる。全タスクの処理能力を合計しても、元のシングルタスク能力以下にしかならないということで廃れ、忘れ去られたものだったり)

 

 だから他のプレイヤーにばれないよう、

 

「はい、今日のすごろく券よ。応援してるから頑張ってね」

 

 商人の特技『あなほり』で掘り当てた、すごろく券を笑顔で勇者に渡す。

 今日も演技(ロールプレイ)を続けるの。

 

 

 

「運営のお姉さんは女商人ちゃんが心配です!!」

「どうした、運営No.24」

「かちょー…… わたしはもうげんかいです」

「いや、そこは「番号なんかで呼ぶな! 私は自由な人間だ!」と返すところでしょ」

 

 これは英国の連続テレビドラマ作品『プリズナーNo.6』ネタだったが、

 

「わたしはもうげんかいです。「次の運営No.24はきっとうまくやるでしょう」」

「まさかのパラノイア返し……」

 

 こちらはテーブルトークRPG『パラノイア』ネタ。

『プリズナーNo.6』同様、ディストピアな管理社会をネタにした作品だ。

 ともあれ、部下が参っているならケアするのが管理職の職務。

 デスクにつっぷした女性部下のたわわがむにゅん、と形を変えている所から目を反らし、

 

「また女商人ちゃんか……」

「また女商人ちゃんです。他のプレイヤーからの通報も激しく。リアルでも搾取されているのでは、とか」

「ああー」

「マンガやアニメじゃないんですよ! 私たち運営がプレイヤーさんのリアルな情報を握ってるわけ無いじゃないですか!!」

 

 よくマンガや小説、アニメなんかでは運営がプレイヤーに向かって「○○さん」とかプレイヤーの本名で語りかけているが……

 アレは創作物、フィクションだから話を早くするためにそう描かれているのであって、現実はまた違う。

 アカウントに紐づけされた個人情報はゲーム機メーカーが握っていて、ゲームソフトメーカーの運営なんぞがホイホイ知ることなどできないのだ。

 

 アカウントを管理しているゲーム機メーカーにしても、普通は社員にも見れないように管理されている。

 金に困った社員が顧客の個人情報を持ち出して名簿業者に売ってました、なんてことになったら社会的信用が一気に失墜するのだから。

 プライバシー保護、個人情報保護法の関係で、事件性が立証され警察からの開示請求がある、とかでもしない限り顧客の個人情報にはアクセスできないのだ。

 というか警察からの開示請求があっても、それが正当であるかどうか法務の検討があり、顧問弁護士の見解を聞いて、偉い人が承認しない限りは開示されない。

 場合によっては自社の信用のために突っぱねて見せる。

 それだけ厳重に、厳密に、厳格に管理されているのだ。

 

 ただ、

 

「同一のVRマシンからのアクセスだったのだよな? その女商人ちゃんと男勇者」

「はい。男勇者が「はい」か「いいえ」しか意思表示しない元のドラクエに沿った『無口勇者アバター』だったし、それでBotかと思われたのですが……」

 

 Bot(ボット)とはMMORPGなどで使われるAIプレイヤーのこと。

 24時間Botに金稼ぎをさせておいてリアルマネートレーディングで現金化、などという不正があったりするので多くのゲームでは禁止されている。

 これを検出するためにIPアドレスなどの通信データ自体は、個人情報の管理とは別に運営は取得、解析できるようになっている。

 

「「良かった。女勇者ちゃんを搾取するヒモ勇者はいないんだ」と、思ったんですけど」

「Botでは無かったと」

 

 通信データの解析結果、Botでは無かったことが明らかに。

 Botでは無かったが、今度はそれが問題になる。

 

「同棲、してるんですかね。女商人ちゃんとヒモ、いえ、男勇者、さん……」

 

 同じゲーム端末からアクセスしている。

 夜でもアクセスしている、となると当然、同じ家で暮らしているということになる。

 

「いや、兄妹や親娘とか」

「それはそれで家庭内搾取案件なんですが……」

 

 ちょっと想像してみる。

 

「兄に虐待、搾取されつつもそれを自覚しないどころか、逆に幸福に感じている女商人ちゃん。ど……ドメスティック・ラブ!?」

「いや、それ直訳すると『家庭の愛』になっちゃうから」

 

 または、

 

「母親を失った家庭で、母親代わりにお父さんの面倒を見ている女商人ちゃん」

 

 現実でも笑顔で父親にパチスロ代を渡していたり?

 ………

 

「絶対ヤバい奴じゃないですかこれ! 通報待ったなしですよ!!」

「止まって! ステイ、ステイ! まだ決まったわけじゃない!!」

「だって技術班の話じゃ、あの女商人アバターってデフォ造形だけど、体格だけはリアルの身体をスキャンして取り込んだリアル補正特有のモノだって! あのちっちゃな身体、リアルでも彼女はあんな風なんですよ!!」

「それは分かるけど! いや、両親の海外転勤で置いてきぼりにされた男の子が従妹の居る叔母さんの家に居候とか、そういうパターンもあるじゃない」

「そんな都合のいい展開がリアルにあるわけ無いじゃないですかーっ!!」

 

 それなんてエロゲ? という話。

 

「男の人っていつもそうですね…! 私たちのことなんだと思ってるんですか!?」

「いや、何でボク責められてるの!?」

 

『ドラゴンクエスト3 VR』のうんえいは、いつもにぎやかで、たのしいしょくばです。

 

 

TO BE CONTINUED ?




 運営にどう認識されてるか、そう言えば設定は作っていたものの、語るのを忘れてましたね。
 というわけでお届けです。
 いえ、当初は一発ネタで終わるかな、と思っていたものであえて説明を端折った、省略した部分だったんですけど。

 プライバシーや個人情報保護って大変難しい話なんですよ。
 扱いを誤ると社長が記者会見で謝罪したり、もの凄い規模の損害賠償の話になったり、集団訴訟されたり、行政指導受けたり、当然信用問題にまで発展しますからね。
 絶対に企業で担当になったりしたくない……
 創作物ではその辺、リアルにこだわると話が進まないのでスルーされますけど(私もそれでいいと思いますけど)

 みなさまのご意見、ご感想等をお待ちしております。
 今後の展開の参考にさせていただきますので。
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