真・魔王ノッブ 織田家最後の日!   作:天魔雅犯土

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機兵

 ぎぎ ぎぎぎ ぎ ぎぎぎ

 

 暗闇の中に、耳障りな軋みの音が響く。

 それも、一つだけではない。色々な所から、ぎぎぎ、という音が響いている。彼らに不満はないが、この騒音だけがたった一つ、玉に瑕だな、とは思っている。

暗闇の中を徘徊するモノ共の正体をしっている彼からすれば、それも多少は仕方ないかとは思いたいが……それにしても煩いと思うのを、止められないくらいには、この音は耳に障る。

 

 目の前に広げてある自分、織田秀隆の最高傑作になる一枚を描き上げるには、彼らの助けは必要不可欠なのだからと、慣れようとはしている。

秀隆は、今、誰も味方は居ない。織田家からたった着の身着のままに一人飛び出して来たのだから当然と言えば当然ではあるのだが。

その味方の『代わり』を務めるのが、周辺の存在だ。

 

 ゲッター線、と呼ばれるモノの試運転代わりに彼自ら用意したそれらは、想定していた通りの水準を何とか満たしている。本来はきちんと『()()』そろわねば力を発揮できないらしいのだが、そんな化け物じみた性能を発揮されても逆に困るので、秀隆にとってはこれで問題はない。

 

それにしても、もうちょっと音とかその辺りが何とかならないのかとは、繰り返し繰り返し思うが。

 

『――戻ってからというもの、筆が進むな』

 

 さて。

 そんな秀隆にとって、味方、とは呼べないが、話し相手位なら、未だに一人いる。

 背後に浮かび上がるのは……蜥蜴男。否、正しくは、ハチュウ人類の帝王、ゴール。ゲッター線からの使者は、その口元の笑みを耐えさせないままに、ゆらりと秀隆の背後にゆっくりと立った。

 

『順調そうではないか』

「絵で手を抜くような真似はせん」

『くっくっくっくっ、そうか。であれば、これの完成は楽しみにして良いのだな』

「まぁ、流石に墨のみで描いたからな。元のそれとは迫力も何もかも違うものになるだろうが、私に力を馴染ませる楔としては上等なものになるだろう」

 

 本来、この世界にゲッター線を満たす、その旗印として秀隆を立てる為に、ゴールはここに降りてきた。

しかしながら、秀隆がゲッター線の意思に反し、この世界に於いてのゲッターの主導権を握ってしまった。その時点で目論見は失敗、彼は二度と姿を現さなくても、不思議ではなかった。のだが。

 

ゴールは、秀隆に『貴様の『進化』の形を歓迎する』とだけ言って、まだ彼の傍にいながら色々と喋り相手になって消える、という事を繰り返していた。

ゲッター線にとって、秀隆が自分の意思で改めてゲッター線を『掌握』した事は驚くべきことではあったが、しかし忌むべきことではない、とのことで。

 

 それも、彼らにとっては喜ぶべき()()、なのだという。

 

『今でも十分体に馴染んではいる。焦らずとも好いのだぞ?』

「私がのんびりやるつもりなら、それでも良いのだがな。あまり時間はない。先ず織田家との決着を早々につけ、日ノ本を平らげなければならない」

『それから世界か』

「あぁ……姉上の中の『魔王』は、まだ目覚めていないのだろう?」

『奴が弟を殺した時、間違いなくその時が、目覚めの時だ』

「であれば兄上が殺されるまでが、タイムリミット……だったか? それだ。そこまでに体に力を馴染ませなければな」

 

 最悪、この世界に於けるゲッター線の主導権争いも辞さないという覚悟を決めて、あの啖呵を切ったところだったというのに……ゲッター線の懐、というのは、彼には図り切れぬ程に深く、底が見えない。

 とはいえ、その幸運を見逃す秀隆ではなく、彼はこうして、隠れながらも着々と準備を整えている。進化を司り、そして創造の力すら秘めた、生きたエネルギー……ゲッター線という物をその手で操る、その感覚を掴むためにも。

 

「本来のゲッター線の力はこんなものではない」

『あぁ。お前が操っているのは、この世界で敗れた者共、いわばゲッター線の残骸』

「それでこれなのだ。今のままでは不安にも思う」

『貴様の進化を卑下するな。我らの宇宙とて、生身でゲッター線を操れるまでに至ったものはそうはいない』

「何人かは居るのだろう。全く化け物しかいないのだな、そちらには」

 

 秀隆にとって、ゲッター線の理解と、より深くそれと繋がる事は急務だ。だというのに下手をすれば飲み込まれかねないその力に、日々、精神をすり減らしている部分はあるがしかし。どうにもこれが楽しいと思ってしまうあたり、最早精神も、背中のハチュウ人類と同じ所に行ってしまっているとは自覚している。

 

 それに、それくらいの精神でなければ、彼が目指すその先には当然辿り着きようもないだろう。

 

『貴様が目指すのは、その化け物共のいるところか?』

「……そうだな」

 

 多くを、見たのだ。

 ゲッター線と共に永劫に戦う者。ゲッターという存在を解き明かそうとする者。ゲッターに抗い戦い続ける者。ゲッターに取り込まれて一つになる者。凄まじい、ゲッターに関わった者達の運命。

 彼らは、皆、強かった。今の秀隆など足元にも及ばぬほどに。肉体も、心も。

 

 彼らの様にならねば、先ずゲッター線を御すことなど土台無理だろう、と。そして。その上で。

 

「――とはいえ、化け物では、私にとっては足りない」

 

 彼は、それを超えると口にして見せた。

 

『ほう……』

「私がこれから相手にしようというのは未来において『魔王』と呼称される程の名君の卵だ。不可侵の寺を目的の為に焼ける様な、神仏衆生の仇を相手に、たかが化生一匹が太刀打ちできようか」

『――くくくっ、頼もしい事を言う。実に進化に貪欲ではないか』

「貴様らに毒されたのやもしれないな」

 

 彼が先ず、目指すのは……『第六天魔王』の運命を打ち砕く事。

 兄を殺し、日ノ本に天下布武を示す、織田信長の物語。そしてその先に続く、物語。別たれた日ノ本を一つに束ねる日輪の如き黄金太閤へ、そして日ノ本の戦乱の時代を終らせる征夷大将軍たる東照大権現にて結ぶ、戦国の物語。

 

――そもそも、その、()()()()()()から潰す。

 

「貴様らには感謝しているよ。こうして毒してくれたことを、な」

『感謝などされる事ではない。貴様が進化し、そして己意思で時代一つを平らげようとしている事。それは、ゲッターにとって歓喜すべき『強い意志』、『先へ進む意思』だ。ゲッター線は、決して歩みを止めぬ人間をこそ歓迎する』

「そうか……うむ、そうだな。歩みは、止められん。歩みを止める暇はない、やるべきことはその先にも山積みだ」

 

 しかし。彼にとっては、それすら、己の夢の果てに向かう一歩にしか過ぎない。姉と兄を抑えて、さらにその先へ――天下を一つにする事で、先ず秀隆の野望への足掛かりはようやく出来上がると言えるのだ。

 

「それら全てを成し遂げるには……文字通り、世界を救い魔王をも越える、『救世主(メシア)』にでもならねばならんか」

『――ゲッター線を司る者が、救世主とは。最も程遠い存在ではないか』

「ゲッターは力だ。それをどう使うかは、我々次第という話だ」

 

 ゲッター線は、悪である。そう捉える者もいるだろう。

 しかし、神を越えるか、悪魔をも滅ぼすか。力をどう使うかは、結局のところ自分で選ぶしかない。

自らが磨いた武術を、恩人の母に向ける事を選択したように、いつも正しく振るえる訳でもないだろうが……それでも、正しく振るうように、気を付けるようには出来るだろう、と秀隆は考える。

 

ゲッター線は意志ある力。されど、それに取り込まれぬように努め、そして抗う事も人間には出来る。ならば、ゲッターの力を用いて『善』を成すことも、出来るだろう。

 

「――む?」

『どうした』

「いや……どうやら、哨戒に出していた『2』タイプが発見されたようだ。向こうは恐れをなして逃げて行ったらしいが。これでそろそろこちらの居場所も割れるか」

 

――まぁそれも、きちんとゲッターの制御が出来てからだ、とは思うが。

 

「こうなればこちらも急いで準備を進めねばならんか。全く、結局は完成は間に合いそうにないか」

『勝ち目はあるか?』

「どうだろうな……私自身で繰れる力には限度がある。それを踏まえて、まぁこちらの戦力は三種それぞれ三体ずつが良いところだが、さて」

 

 立ち上がり、周囲を見渡せば……暗闇から、姿を現す影が。

 現れたそれらの影は……どれもこれも、人並みの大きさだが、人間ではない。大柄で剛力使いと見える者、細く両腕が異形な形をしている者、背中にマントらしいものを広げる者、おおよそ三種類に分かれている。

 その何れも……体の何れかが欠けて内部の機械部品が露出している、『不完全』な印象を受ける者ばかりだ。

 

「私の()()()()()()の初陣、如何様なものになるか、とくと御覧じろ」

 

 ぎぎ ぎ ぎ ぎ ぎぎぎぎ

 

 秀隆の言葉に応えるように。機械の兵隊達が唸り声を上げる。

 彼らの姿を見て……ゴールは、ただただ、不気味な笑みを浮かべるばかりだ。

 




やっぱやりたいのはゲッター軍団のお目見えだ!→いやあのサイズが軍団で押し寄せてきたらどうにもならんな……→ど、どうしよう→ゲッター線なら人間大くらいのゲッターロボもどうにかなるだろ!!→こうなって虚無った。

書き溜めが尽きたので、またコツコツ書き溜めます。
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