仮面のヒーローアカデミア   作:灰面

1 / 3
No.1 留年優卵生

 留年。それは、学生にとって重い意味を持つ。

理由は何にせよクラスに居づらいし気まずい。

高校生なんて多感な時期の子は、たった1歳の年の差ですら気後れする。

 

(億劫すぎる……!!!)

 

 それはたった一枚の扉すら開くのに手間取る程に。

担任である相澤先生に連れられてきた『1-A』の扉の前。

声掛けをしたら入ってこいと言われたが、コレが中々難しい。

 

「おい、入って来いって言ったろ」

「うわっ!?」

 

 扉に手をかけ、開けようと四苦八苦していた彼だったが、内側から開けられたことにビックリして変な声を上げてしまう。

やれやれと相澤は合理的に彼の腕を引っ張り、教室へ放り込む。

 

「ほれ、さっさと自己紹介しろ」

「あ、は、はい……えっと、ちょっと理由(ワケ)ありで一年留年しました、灰垣(はいがき) (メグル)です。よ、よろしく、ア、アハハ」

「と、言うわけだ。留年つっても、授業受けるのがそもそも今日初だから、お前らと同じだ」

 

 乾いた笑顔で自己紹介するメグルと、淡々と伝える相澤。

少しクラスがざわつくが、相澤の睨みに押し黙った。

そして体育服を取り出すと、「個性把握テストを行うから、とっとと着替えてグラウンドに出ろ」と伝えるだけ伝えてさっさと出て行ってしまった。

 

 男女別に更衣室に別れ、着替えて急いでグラウンドへ向かう。

道中色々と聞きたがっているであろう視線が刺さったが、今は先生を怒らせない為にも移動が先決だと適当に理由づけて小走りした。

 

 そして始まった個性把握テスト。

内容は簡単で、個性を使った只の体力テスト。

だが、今まで個性を極力使わない様に言われてきた卵のクラスメイト達は、面白そう(・・・・)だと騒いだ。

 

「ヒーローになる為の三年間、そんな腹積もりで過ごす気でいるのか?」

 

 それが、相澤の琴線に触れた。

 

「よし、トータル成績最下位の者は除籍処分としよう」

 

 自由が校風である雄英校は、先生にもそういった権限が与えられていた。

 

(留年復帰初日に退学とか、冗談じゃない……!!)

 

 初手に爆風を使った爆発頭の少年のソフトボール投げの記録が、705.2m。

これ並の記録を一つでも残さなければいけない。

メグルの個性は見た目でわかるものではない。目立った成績を残すには、記録として残さなければいけない。

 

「ふぅー……落ち着け、大丈夫、大丈夫」

 

 深呼吸をして、ゆっくりと個性を使う。

個性とは自分の生まれ持った力であり、本当ならこんなこと意識しなくても問題なく行使できる。

事実、彼も無意識に個性を発揮できていた。

 

 だが、それは一年前のある日をきっかけに『コントロール』を必要とすることとなった。

 

 個性を発揮する瞬間、ふと感情が湧き上がる(・・・・・)

 

――

 

 感情は莫大なエネルギーを発揮―…とは言え一瞬だけ。

その瞬間に発生したエネルギーを、メグルは自分の個性『循環』で絡み取り、自分の脚力として発揮した。

 

 結果、50m走『1秒』。

 

「っと、とと」

 

 勢い余って大きく50mを越えてしまうが、無事静止に成功。

自己流ではあるが、1年で力の使い方をある程度彼は掴めていた。

 

「………」

 

 その後も、握力500キロ、立ち幅跳び200m、ボール投げ800mと高記録を叩きだしていく。

反復横跳びや持久走といった『力』を長時間行使する競技や、長座体前屈のような工夫しようもないものは並みかちょっと良い程度だったが、無事に最下位を免れた。

とは言え、その苦労も……。

 

「因みに、除籍処分はウソな。最大限を引き出す、合理的虚偽」

 

 そんな言葉と共に、頑張った甲斐があったのか無かったのか分からなくなってしまったが。 

 

「そゆこと。これにて終わりだ」

 

 指を壊した緑谷という少年に保健室へ向かうように言った相澤は、「それと」とついでの様にメグルへ視線を向けた。

 

「灰垣、ちょっと職員室来い」

「え」

 

 教室に戻ったら、カリキュラム諸々の書類が待っていたはずだったが、メグルは呼び出しをくらい連行されてしまう。

 

(ほ、放課後のクラスメイトとの触れ合いタイムが……!?)

 

 本来は入学式とガイダンスが行われる予定であり、その時間を個性把握テストに使われた為、コレで今日は終了。

彼は放課後を使い、精神的に普通以上に遠いクラスメイトとの距離を縮めようと頑張る予定だったのだ。

少し落ち込みながらも、何なのだろうと考えながらついていく。

 

「お前」

 

 否、考える必要もない程にシンプルな理由だった。

 

「コレはどういうことだ?」

 

 見せられたのは個性把握テストの結果と――去年の入試の際の映像記録。

メグルの個性は『循環』。自分を中心に様々なモノを巡らせる。それはエネルギーも同様で、その運用で常人より速く動いたり、鉄製のロボットを破壊していた。

 

「え、っと」

 

 確かに常人より動けているが、今日魅せた消えるような速度も、圧倒的なパワーも無い。

0Pの巨大ロボットだって、彼はロボの破壊を搔い潜り、振れることで内側からエネルギーを弄って停止させたのだ。

 

 1年前とは大きく違う――違い過ぎる(・・・・・)

 

「せ、成長期です」

「個性を使っている時、白目が黒く(・・・・・)なり、瞳は金色(・・・・)になっていたな」

「……」

 

 言い逃れようとするも、これまでの個性使用時に無かった特徴を指摘される。

映像は灰色の髪と瞳のメグルのみ。多少髪の毛伸びたかなぁ~なんて現実逃避は許されない。

 

「一年前、何があった」

「言ったじゃないですか、巻き込まれただけですって」

「そうだな。で?」

「……」

 

 相澤の圧に、軽口は閉ざされた。

 一年前の今日、彼は大きな事件に巻き込まれた。。

大きな破壊音、衝撃が彼の住んでいた地域で突如発生し、彼は避難に手を貸す為にかけ出したのだ。

 

 その結果、彼は瀕死になって――そして。

 

「――言えません」

「……」

 

 確固たる意志を持って伝える。

きっと言えばその資格を取り上げられる。そう判断できるだけの『力』を得ていた。

彼はヒーローになりたいのだ。それは願われたからであり、そう祈られたからでもある。

 

「ハァ、良いだろう。一々個人へ詮索するわけにもいかんしな」

「先生……!」

「但し、何かあった時は洗いざらい喋ってもらうからそのつもりでな」

「うっ」

 

 それは相澤なりの、見込みがある卵への有情だった。

 

「明日から精進するよーに、以上」

「……はい!」

 

 波乱な入学初日が、こうして終わった。




ふっと思いついたネタをリハビリがてら書いてみました。

・灰垣巡の個性
『循環』
 自分を中心に回るし回す。エネルギーの流れを上手い事循環させ、発勁のようなことが可能。
『仮面』
 AFO同様に受け継がれてきた力。但し、AFOとはまた意味も中身も別物(・・)な力の塊。
%ではなく、仮面の割合、具合と白肌の浸食度によって発揮される力が変動する。
仮面がなくとも、個性を使うと問答無用で瞳の色が金色になり、白目が黒になる。
  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. 閲覧設定

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。