仮面のヒーローアカデミア   作:灰面

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No.2 戦闘訓練

 2日目、彼はクラスメイトと交流を図っていた。

一つ年上でもある自分から話しかけずにどうする!そんな気概でいたのだが。

 

(雄英生徒、あったかいぃぃぃ!!!)

 

 彼が教室に入り、挨拶をしたらすぐ集まって質問攻めにされた。

とは言え、その内容は弄るようなものではなく、純粋な疑問と――心配。

職員室に呼び出されるというのは、本来良い印象はない。

それも退学を掛けた直後のことだ。唐突に呼び出されたからこその暖かな配慮だった。

 

(え、優しいんだけど、めっちゃ優しい人ばかりなんだけど、何なの皆天使??)

 

 留年した理由も「事件に巻き込まれて怪我しちゃったから」の一言で納得。

爆発少年ことは昨日の成績からライバル視?されたのか、「調子こいてんじゃねぇぞ、No1はオレだ!!」という感じに挑発的だった。

が、メグルは「お前の事情なんてどうでもいい、明日からよろしくな」といった感じにお花畑な脳内変換。

 

 午前中は平凡な授業ということもあり、彼らと好感触な交友を広げることに成功し、満足していた。

そして、午後。ついにヒーロー科らしい授業が始まった。それも――。

 

「わーたーしーがー!!――普通にドアから来た!!」

 

 No.1ヒーローと名高い、オールマイトの授業。

授業内容はペア分けによる対抗試合。上手くいけば、ペアの相手とも仲良くなれる一石二鳥!

良いことだらけでワクワクなまま、ヒーロー衣装に着替えてグラウンド・βへと向かった。

 

「おぉ、灰垣似合うな!」

「そう?ありがと。切島くんも中々パンクでカッコイイね」

「サンキュー!」

 

 メグルの衣装はシンプルな黒の袴と、それに合わせた白い外套。

ヒーローという自由な職というより、何処か堅い印象の衣服。

 

(……少しは様になってるといいけど)

 

 脳裏に浮かぶのは、中学生まで仲良くしていた一人の女の子。

「和服が好き」と言っていたから、なんていう理由だが、メグルにとってオリジンと言えばその少女。

だから、これでいい。

 

 気持ちを切り替え、ペアを決めるためのくじを引く。

A組は一人多い分、1戦だけ多く対戦を行うことになっている。

誰と組むことになるのかとワクワクしていると、ペアの発表がされた。

 

K 灰垣&葉隠

 

 葉隠透、女子のクラスメイトだが透明人間で誰も彼女の姿を見たことが無い。

制服は透明になれないらしく、格好と声から女子だと分かるだけだ。

 

「えっと、よろしく。葉隠さんはもう一ペアあるんだね、がんばって」

「うん!plus ultraの精神で頑張るよ~~!」

 

 彼女が引いたくじにはI+Kと、1ペア分書き足されていた。

対戦のペアはその都度オールマイトが引いていくが、彼女は一戦多く戦うことが決定しているのだ。

 

「そういえば、靴と手袋は普通の衣類で作ったんだね?」

「ん?」

 

 そういえば、手袋と靴だけ浮いている。

ヒーローの服は、彼女の様に身体に変化がある個性に合わせて、必要とあらば本人の髪等を培養して個性に適用されるようにして作られる。

どこにいるかわかるように手袋と靴だけ残したのだろうか?そう尋ねると。

 

「あぁ、私のコスチュームこれだけだもん!」

「え?だけ??」

「うん」

 

 ……流石にヤバいだろう、そう思ったメグルは前述の個性適用コスチュームの申請を勧めた。

どうやら彼女は知らなかったらしく、「そんなのあるんだ~~!?」と驚いていた。

まぁサポート関係のことは調べないと意外と出てこない為、知らないのも仕方ないのかもしれない……。

 

 そんなこともありつつ、授業は進んだ。

 ヒーローペアとヴィランペアに分かれた、4階建てのビルによるヴィランが持つ核(ハリボテ)の争奪戦。

初戦で爆豪と緑谷の破壊爆砕満点のぶっとんだ戦闘が行われ、その熱意に惹かれクラスメイト全員がやる気に火が付き、かなり激しい戦闘がその後も続いた。

 なお、葉隠と尾白ペアの戦闘の際、その靴と手袋を脱いで挑んでいたのを見て、(倫理感ヤバいな!?)と彼女のペアであった尾白と同じツッコミを内心で行ったりもした。

 

 そして、ついにKペアが引き当てられ、その敵に選ばれたのが――B、轟&障子ペア。

 

「って、またぁ!?」

「ア、アハハ……がんばろ」

 

 奇しくも葉隠が負けた相手だった。

轟の攻撃による冷えを思い出し、彼女は思わず叫んでしまう。

だがさっきと違い、今度はこっちが核とヴィランを確保するヒーロー側。

 

「取り合えず、どうしよっか?」

「んー……」

 

 轟焦凍は最初の戦闘を、建物ごとヴィランペアを凍らせることで圧倒した。

逆転してもやられるのは変わらないだろう。だが、だからこそ対策が練れる。

 

「とはいえ……」

「?」

 

 思いついた対策は熱を循環によって纏うというシンプルなモノ。

だが、これには一つ耐えなければいけないことがある。

 

「葉隠さん、えっと……背負って大丈夫?」

 

 メグルの個性は自分を中心にしているため、範囲は自分が触れているモノに限る。

つまり、彼女に触れる必要があり、戦闘を前提とするため必然と両手は開けておきたい。

結果、なにも着ていないというアウト・オブ・アウトな彼女が背中にしがみついてもらう必要があった。

 

「ん?どーぞどーぞ!」

 

 羞恥心とか無いのだろうか??

疑問符と彼女の将来を心配しつつ、意識しないようにと意識しつつ(・・・・・)、訓練が始まった。

 

「よっし」

 

 兎も角、先手必勝。

これは轟相手に長期戦はフリ、という判断だけではない。

メグルの個人的都合により、個性の長期使用が厳しいためだ。

 

(うわっ)

 

 障子の個性によりビル全体把握できるため、狙ったように冷気がメグルたちを襲う。

個性を発揮しているとはいえ、滑って転んだり、何より背にいる彼女に負担をかけない程度の速度しか出せない。

 

(あぁ、速いって)

 

 ともかく急いで上階にあるであろう核を目指して走って階段を駆け上がる。

2階に到着すると、降りてきた轟と出くわした。恐らく、駆け上げる音を聞いた障子を守備に付かせたのだろう。

轟の冷気は強力だが、味方も巻き込む恐れがある。それを考えると安定した采配であり、同時に想定していた事態でもあった。

 

「なるほど、熱を纏ってんのか。だが、それ長くは続かねぇだろ」

 

 その通り、周囲の熱を纏い続けるにせよ、結局その周囲が冷えれば長くは持たない。

そもそも熱だってこの瞬間も奪われ続け、白い蒸気になっていた。

 

「……ん?」

「あっぶねっ」

 

 戦闘が始まり、轟の放つ氷塊を避ける――最中、力が形を取り始めた(・・・・・・・)

僅かスタートしてから1分、彼の顔の左上部に白い塊が現れ、段々と広がっていく。

 

「お前、それ」

「ッ」

 

 面倒なことを言われる前に、片腕を振るって空気をぶっ飛ばす(・・・・・・・・)

もう片手は振り落とさないように少女の細い腕をしっかり掴み――高速移動。

足場に大きな罅が入る程の踏み込みは、そのまま跳び蹴り(・・・・)の威力に変換される。

 

「ッ!!」

 

 ほぼ脊髄反射、轟はとっさの判断で氷の壁を作り出した。

瞬間的に作られたにしては分厚く、彼の個性練度の高さが垣間見られる。

なので追加でもう一発、今度は回し蹴りを見舞う。見事に氷壁を崩し、粉砕された氷がメグルたちに降りかかり熱を奪って蒸気になる。

 だが、轟は数歩離れたところにいた。

距離が離れれば、後は強烈な冷気を浴びせるか、もしくは蹴りを放った後の無防備なメグルへ氷塊をぶつけてしまうのもありだろう。

 

「じゃぁ、気を付けてね!」

「へ?ちょぉっとぉ!?」

「――ハァ!?」

 

 掴んでいた少女の腕を――目の前の轟へ放り投げた。

何時もクールな轟も、投げ飛ばすと思っていなかったのだろう、驚きの声を上げる。

そしてそれは、葉隠も同じだった。なにせこれは作戦でもなんでもない。

こんな思い付きの行動、言う暇すらなかった。

 

「わぁぁ!?!?」

「ちっ」

 

 手袋と靴で何となくそこに居るのは分かる、しかし明確な距離(・・・・・)が分からない。

さっきまで熱に包まれ、わずかながら蒸気が発されていたからこそわかったが、メグルから離れたからそれもない。

冷気による攻撃にせよ、凍結による捕獲にせよ、轟の判断に一瞬の間が出来た。

 

「……なっ!?」

 

 その間、葉隠が轟に辿り着くほんの数秒前。

眼前に現れた髑髏の白い仮面(・・・・・・・)を轟が認識した瞬間、轟の腕にテープが巻かれた。

同時に仮面が消失し、瞳の色も戻ったメグルはギリギリ葉隠をキャッチした。

 

「ふぅ、確保~&キャッチ!」

「っっっもぉ~~!!!」

「あいたたた、ごめん、ごめんって」

 

 ポカポカと抗議の拳を浴びながら、丁寧に彼女を降ろす。

 

「………お前、今のかm」

「さぁー!核の確保急ごうかぁ!?」

「え、あ、わわっ」

 

 呆然とする轟が発そうとした言葉を、メグルは遮るように大声を上げ、葉隠の腕を掴んで上階へ走った。

 

 その後は障子をメグルが相手取り、その間に葉隠が核を確保して終了。

評価は葉隠を投げ飛ばしたことがマイナスとなったが、それ以外は特に言われることはなかった。

仮面も一瞬だったことと、蒸気に粉砕した氷が邪魔をしていたらしく、轟を確保した瞬間は観られることが無かった。

 

 その代わり、轟に仮面のことを黙ってもらう代わりにそばをご馳走したのは蛇足である。

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