しばらくの間、長い廊下に沈黙が続き、あれ?もしかして俺ハズレた?
と心の中で不安に思っていると、ガタイのでかいスタッフが軽く頷き「どうぞ中へ」
と言った。突然ガタイのでかいスタッフが喋り出したのにも驚いたが何より俺が真っ先に驚いたのは、この人日本語話せたんだ!
と言う、とてもくだらない事だった。でもまあ、ここのスタッフだし、これも全て演技の一部だから当たり前っちゃ当たり前か
と思うと我に返り「では失礼しま〜す」
と言って部屋に入った。靴を脱ぎ、俺は部屋の中を見渡した。特に俺と母さんが泊まる部屋とほとんど変わった所はなかったが一つだけ気になる点があった。それは、あまりにも荷物が少なすぎる
と言う点だった。俺の荷物だけでも沢山あるのに対し、この部屋にある荷物と言ったら、テーブルに置いてある銀色のアタッシュケース一つのみであった。それとついでに部屋が少し薄暗い!俺はこの部屋に不信感を抱きつつも、まあ今回のイベントで使う予定だった部屋でガタイのでかいスタッフが準備してた所に俺が訪ねて来たから、やむをえず対応したとも考えられるからそうなると当たり前っちゃ当たり前か。
とまた当たり前とポジティブに思いながら一人頷いているのと、ガタイのでかいスタッフが扉を閉め、テーブルに置いてあったアタッシュケースを手に持つと俺の前に立ち、喋り始めた。
「お待ちしておりました。随分早かったですね」
と聞かれたため「まあ早く来て損はありませんから!」
と俺はクールに応えつつも心の中では、まあただ他に部屋を間違えて、そこが偶々今回のイベントに使う部屋だっただけなんだよね…
と思っていると、ガタイのでかいスタッフが俺にキラキラした目でこう言ってきた。
「貴方の噂は聞いています。私もこうやって貴方に会える日が来るとはとても光栄です」
と話すと、右手を出して握手の構えをとってきた。
俺は、これまた凄い演技力だな〜それにただ謎一つ解いただけでこんなことまでしてもらえるんだ
と思いながらも「ありがとうございます!」
と言って、俺も右手を出し握手を交わした。握手が終わると、ガタイのでかいスタッフは左手に持っていたアタッシュケースを両手で持ち直し「こちらが例の物になります」
と言って俺に渡してきた。俺は又もや、あれ?確か景品ってスタンプ7つ押されないと貰えないんじゃなかったけ?それともこのスタッフの手違えか…?
と思いつつもまあ貰えるならありがたく貰っとこ!
と思うとガタイのでかいスタッフからアタッシュケースを受け取った。アタッシュケースは意外に軽くて中に何が入っているか全く予想がつかなかった。アタッシュケースを俺に渡すと、ガタイのでかいスタッフはドアを開け、俺を玄関まで見送ってくれた。俺は、くぅ〜なんてお客様思いのスタッフなんだ!ガタイでかいけど…
と心の中で感心しながら帰り際に又もや、親指を立て、ガタイのでかいスタッフに向けて「Have a nice Summer.」
と最後に言い残しその部屋を後にした。
ガタイのでかい男は俺が行ったのを確認するとすぐ扉を閉めて胸に手を当て大きく深呼吸をした。
「無事ミッションコンプリート…」
と安心しながら、頭の中でそれにしても噂で聞いてた感じとはだいぶ印象が違かった…
と思っていた。身長も低くて、髪はフサフサ、そして何より凄く若い。そしておまけにバリバリの日本人。
と思っていたが、きっとみんなあの噂とは真逆の見た目とお得意の尋問に騙されて口を割っちまうんだから世の中恐ろしいもんだぜ…それに違かったらあの場でパスワードなんてすぐに思いつくわけもないからな…
と思うとガタイのでかい男はスッキリしたとした顔をし、帰る支度を始めた。まぁ、言っても荷物はあのアッシュケースだけだったから特に片付ける物は無いな…
と言って確認を終えると、部屋から出ようとドアノブに手を伸ばそうとした瞬間、扉の外側からノックする音が聞こえてきた。ガタイのでかい男はスタッフでも訪ねて来たのか?いやそれとも…敵か…
と思いながらも恐る恐るドアを開けると、目の前には先程、頭の中で思っていた通りの人物が立っていた。身長は180センチ後半、頭はスキンヘッドで年齢は40代ぐらい、黒い手袋をしていて黒いカウボーイハットを被り、サングラスをかけていた。この時ガタイのでかい男は確信した。この男こそが噂で聞いていた本物のアレクサンドラ・ドウェインだと…。
ガタイのでかい男が固まる中、ドウェインは渋い声でこう言い放った。
「Have a nice Summer.」と…
そのパスワードを聞き、ガタイのでかい男はやっぱりこっちが本物のドウェインだと再度確信する。焦りと不安ながらも「ど…どうぞ中へ…」
と言ってドウェインを部屋へ入れた。
部屋に入ると、ドウェインはカウボーイハットとサングラスを外し、ガタイのでかい男に「早速だが例の物を渡して貰おう」
と率直に聞いてきた。
「えぇと…あぁ!例の物ですね。勿論渡しますとも…」
と言いながら同時に心の中であのクソガキー!なんであの時パスワードが分かった!
と思っていると、ドウェインは部屋の中を見渡し、例の物がないと確認するとガタイのでかい男の何か焦っている様子を瞬時に見抜き唐突に質問してきた。
「まさか貴様…例の物がないとは言わないよな…?」
とさっきとは比べ物にならないくらいの渋い声で聞いてきたがガタイのでかい男は何も言えずただ震えることしか出来なかった。
「さらにまさかとは思うが誰かにアレを渡してしまったなんてことは…決してないだろうな…?」
とドウェインは追い討ちをかけるようにさらに追求するとガタイのでかい男は白目をむき、口から泡を出し気絶しかけた瞬間…
パリーーーン!!!
と急に部屋の窓ガラスが割れ、割れた窓から誰かが入ってくると同時にその人物は手からつつらを作り出すとドウェインに向けてそのつつらを投げつけた。ドウェインは避けようともせず余裕でつつらを右手で掴み止めた。止めた後、ドウェインは片手の握力だけでツララを粉々に粉砕した。
「貴様…一体誰だ…?」
とドウェインが質問するとその人物はこう言い放った。
「アレは私の物だ」と…。その人物は女性だった。
その女性の髪は白いロングヘアに白いワンピースを着ていて、麦わら帽子を被り、眼鏡をかけていた。ドウェインは女性の言った言葉に呆れた素振りを見せ
「私の物?馬鹿を言うじゃないよお嬢ちゃん…アレは俺の依頼人の物であって決してお嬢ちゃんの物ではない…とっととお家に帰りな…」
とドウェインが言うと、女性の拳が一瞬で真っ白に染まり、ドウェインを顔目がけてもうスピードで殴りかかりながら「お嬢ちゃんと呼ぶんじゃあない!オジサン!」
と言うとドウェインの顔に女性の拳が掠った。ドウェインは危なくも女性の拳をギリギリ避けると、掠って切れた唇の血を手で拭き取り微かに笑った。
「氷…煉獄系の能力か…まあまあやるじゃあないか…俺も少し君を甘く見ていたようだ…」
と言うとドウェインは両方の手袋を急に外した。するとドウェインの手が真っ赤に染まりマグマのように燃え出した。そして手から漏れたマグマが床に垂れ、畳が燃え始める。
「俺も生憎煉獄系でね…お嬢ちゃんの体の一部がちょいとでも触れたら骨まで溶けるマグマの能力…引くなら今だよ」
とドウェインは忠告するも
「あっそ…後私…蒸し暑いの嫌いなのよね…」
とクールに言い余裕な感じを見せながらも心の中で
同じ煉獄系だけど、私の能力の方が圧倒的に相性が悪い…氷とマグマ…ここまで不利な能力が来るとは…どっちが有利かは戦わなくても明白にわかる勝負だわ…
と弱気に思いつつそれでも、私は必ずアレを手に入れなきゃいけないんだ!
と思い切り替えると、構えをとり、拳をドウェインに向けた。するとドウェインもその女性に構えをとると拳を向け次の瞬間こう言った。
「じゃあ遠慮なく行くぜお嬢ちゃん」
と言うと、二人はお互いに向かって同時に飛びかかった。そして今この時、白い拳と赤い拳がぶつかり合い能力者同士の戦いが始まった瞬間であった…。