ニートだった俺がヤクザの大幹部!?   作:セパさん

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・本作品は公式ではありません。そのためキャラクターの性格等も誤っていることがあります。

・筆者は元雀荘の店員でしかないので反社との関わりが正確な情報かわかりません。

・以上をご注意の上お読みください。


裏社会と麻雀

「オーラスです。皆様頑張ってください♪」

 

 部屋にむせ返る狂乱と緊迫の雰囲気を無視するかのように、牌が現れた全自動卓から女性声の機械音が流れる。しかしその音に耳を傾けている者はこの場に居ないだろう。

 

 俺の名前は牧村ユタカ、広域暴力団今川組の若頭補佐だ。とはいえ元々暴力団になる気など全くなく、気ままにニートをしていたのだが家を追い出されうっかり……ってこれ小説だった!!いつもYoutubeの漫画動画だから同じノリで自己紹介しちゃった!

 

 とまぁ簡単に言えば訳が分からない内に反社会的勢力のお偉いさんになったおバカさんが俺であり、中々極道として生涯を全うする覚悟が決まらない虚ろな日々が続いている。そして今日俺がやっている事はと言うと……

 

「ツモ。門前自摸(つも)混一(ホンイツ)一通(イッツー)(はく)。親の跳満は6000オールです。」

 

「危なかった。リーチをかけられていれば逆転でした。」

 

「あ、あはは……。」

 

 対面(といめん)から卓上へ赤棒(10000点)を優しく差し伸べるのは口調に似合わぬ顔面に傷跡の走る筋骨隆々とした強面、他の脇に座る二人は互いの数合わせなので静かなものだ。

 

(最初はこんな大事になる予定じゃなかったのになぁ……。)

 

 俺はそんなことを思いながら青棒(1000点)4本を対面の強面に返し、再び親番開始の赤いボタンを押す。

 

 さて、裏社会と麻雀というテーマは麻雀雑誌やギャンブル漫画では手垢が付くほどありふれた話だが、昨今の暴力団がシマや利権を掛けて()ったり、目玉が飛び出るような大金を賭けて定期的に麻雀の盆を立てるなんてことは0ではないがほぼ無くなった。

 

 そもそも昭和の時代であってもテーブルゲームで重大な利権を賭けるなんて酔狂な真似が早々行われるはずもなく、それこそ【雀鬼】桜井〇一や【雀聖】阿〇田哲也なんていうのは物語の存在でしかない。

 

 それでも裏社会と麻雀の関係が疎遠になっていったのは確かだ。

 

 その理由は3つ。

 

 1つ、暴対法――暴力団員による不当な行為の防止等に関する法律――

 

 この法律によって暴力団は表立った賭場を開くことがとても難しくなった。雀荘の健全化に伴い、現在の雀荘では反社会的勢力を店に入れてはいけないという業界努力がなされている。そのため暴力団が麻雀をシノギ……稼ぎとする場合は何重ものセキュリティーを施した高レート雀荘が主となる。しかし昨今ではその需要も陰りが見えて久しい。

 

 その理由が2つ目、裏カジノやオンラインカジノの台頭だ。麻雀というのはまずルールを覚えなければならない上に、一回のプレイ時間が20~30分ほどかかる。その一方で、バカラやルーレットなどはルールを簡単に覚えられる上、1ゲームも数分で終わり回転率が高い。要するに費用対効果において、麻雀は割が悪すぎるのだ。

 

 

 3つ目、前述したように暴対法の影響で裏カジノとはその名の通り闇に紛れる裏の存在となった。皆様も摘発のニュースをネットやテレビでご覧になったことはあるだろう。摘発されれば当然店にあった物品は全て没収されるし、こちらも摘発を免れるため何度も事務所を転々としなければならない。その際、数十万もする麻雀の全自動卓か数万円もしない板とトランプ、どちらが優遇されるかはここに記すまでも無い。

 

 そんな理由でヤクザと麻雀というのは近〇麻雀の漫画の中でしかほとんど陽を浴びない存在となった。

 

 ……んで!なんで俺が今ここで説明したような前時代な麻雀を打っているかと言うと!!

 

「ユタカ、おめぇまだ包帯取れてねぇのか。そうだ、指先のリハビリなら麻雀なんてのはどうだ?ついでだからよぉ、痺れるような金賭けてみればいいかもな。治慢(じまん)組が違法賭博で儲けてんのは知ってんだろ?伊佐治に腕の立つ奴紹介させるから来週までに腕磨いとけ。」

 

 と大判代表という広域暴力団の頂点に立つ御方から断るに断れない提案をされたからだ。そもそも俺はゲームは好きだが、賭け事は好きじゃないのに……。いや、俺のシノギ、オンラインカジノと裏カジノですけれどね!

 

 そんな訳で1点100円、1000点10万円という一回の半荘で数百万……下手をすれば数千万が動く麻雀を打たされている。後ろでは大判代表が飄々と笑いながら、代打ちを用意した伊佐治組長は腕を組みながら緊張した面持ちで対局を眺めている。

 

「伊佐治、おめぇの目論見は外れたか?」

 

「思ったよりも牧村がいい打ち方してますね。逃げる時は徹底的に逃げて、ここぞと言うときは物怖じしない。牌効率だ好選牌だ言っても、博打の基本はこいつだ。あいつはそれが出来ています。」

 

 伊佐治組長、最初反対すると思ったけれど思ったよりノリノリだ。やっぱりヤクザなんだなぁ。相手もかなり本気だしあーもー!どうしよう!今のところトップを取れば差し馬合わせて±0?これで終わらせたいなぁ。

 

「リーチです。」

 

 対面ではない治慢(じまん)組側の御付きからリーチが入った。そっか、この局俺以外があがるか、対面の強面さん以外の誰かが振り込めば向こうの勝ちなんだ。負け額自体は痛くも痒くもないけれど、野口さんになんて言われるか。

 

「伊佐治。これはどう思う。」

 

「うちの勝ちですね。だって牧村の手は……」

 

 勝利条件が俺のあがりか対面さんの振込……。俺の手は……。ん?そっか、ゲームじゃできないけれどこんなこともできるんだ。

 

「リーチです。」

 

「7巡目で親からの追っかけですか。これは困りましたね。」

 

 対面の強面さんは散々に悩んでいるようだった。そして……

 

「……すみません。ロンです。満貫。」

 

 強面さんは自分の子分の手に振り込んだ。共通の安牌がないのだから誰も責められないだろう。まして親の俺に振り込んだなんてなれば最悪。トップ目からラスへの陥落まである。

 

「ゲーム終了ですね。」

 

「ええ、ありがとうございました。代表、手の痛みも強くなってきたのこの辺で御開きしてもいいでしょうか?」

 

「ああ……にしてもユタカ。おめぇ本当ヤクザに向いてるよ。」

 

 大判代表は俺の手。何一つ数字の揃っていないバラバラの手配を見てそう呟いた。




・怒られたら消します!!

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