ニートだった俺がヤクザの大幹部!?   作:セパさん

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・本作品はフィクションの二次創作として薬物について語っています。ダメ、ゼッタイ。

・キャラ崩壊注意です

・時系列的に本編発雷前です


【生誕祭記念SS】
ふしぎな捜査


 俺の名前は鷲尾章宏(あきひろ)、警視庁組織犯罪対策部、通称〝組対〟の人間だ。広域暴力団を専門に相手をするため〝マル暴〟とも呼ばれている。

 

「密造覚せい剤・MDMAの紊乱(びんらん)についてか……。ったく、面倒な案件が来たな。」

 

 違法薬物の蔓延が地域で起こった場合、その規模が膨大であるほど組織内の連絡調整が重要となるのだが、同時に警察組織というか日本社会の暗部……〝縦社会〟の弊害(へいがい)が大きくなる事案でもある。同じ親方日の丸であるというのに情けない。

 

 通常警視庁において、違法薬物の取り締まりを主としているのは〝組対〟に属する薬物銃器対策課であるが、各都道府県警においても各々(おのおの)薬物対策課を設置しており、未成年に売買が行われた場合は少年課の案件にもなってくる。

 

 そして有名だと思うが、違法薬物取り締まりの代名詞である【麻薬取締官】の直轄は警察庁ではなく、まるで管轄の違う厚生労働省となる。情報交換そのものは密に行っているが、人間そう簡単に所属や管轄を割り切れるはずもなく、どちらのお偉いさんも自分たちの功績にしようと虎視眈々と狙っているのが本音だ。

 

「……その尻ぬぐいが末端だってんだからやってられないよなぁ。それにしても密造か、界転組の(エス)から有益な情報は得られなかったが、もし界転組以外だとすれば、外人による犯行か?いや、反グレって線もあるな。」

 

 【薬物の無い世界を!】なんて大層なお題目を掲げている上層部の皆々様には悪いが、本当に違法薬物の乱用をなくしたいなら日本を石器時代に戻す以外方法は無いだろう。

 

 何しろ覚せい剤の主成分であるメタンフェタミンはある程の薬学知識と異臭を遮断できる環境があれば、その辺の風邪薬やクリニックで処方されるような薬から造れてしまう。しかも昨今はその知識がインターネットから得られるというのだから、手口は悪質になっていく一方だ。

 

 とはいえ、密造は日本において今のところメジャーな犯罪ではない。何故犯罪組織はわざわざリスクを背負って海外から違法薬物を日本へ密輸入をしているのかと言えば、密造で精製できるメタンフェタミンはどうしても純度が低いものとなる。

 

 そのため俗に言う【粗悪品】としかならず、高値で売れない上、バッドトリップ――薬物によって逆に不快になること、副作用で身体的・精神的後遺症が残る事――や異物混入による血管障害を起こしやすく、【常連さん】に出来ないためだ。

 

「……てことを考えると、暴力団側も黙ってはいないよな。【始末】をされる前に見つけたいから俺ら(マル暴)にも声がかかったんだろうけれど、無茶を言ってくれる。」

 

 【蛇の道は蛇】なんて言葉もある。暴力団員とのなれ合いが暴対法により遮断された現在、警察側のスパイ……(エス)による情報やガサ入れでしか情報収集をすることしか出来ないマル暴側は、暴力団の全貌が掴めていない。

 

 もし暴力団の〝シマ〟で密造した粗悪な薬物を売っているバカがいるのだとすれば国家組織より先に発見され【処分】されていたなんて話も珍しくない。そしてそんなマヌケな事件が起これば、警察の面子は丸つぶれだ。

 

 いや、面子にこだわるような話は上層部が勝手にしていればいい、問題は法治国家において法のもと裁かれない人間が生まれるという理不尽だ。俺はそれが許せない。

 

「資料によれば今川組のシマにも手を出している……。牧村のことだ、黙って指を咥えて見ているはずがないよな。」

 

 俺はひどく童顔な友人の笑顔を思い出す。この世で最も荒事と無縁そうな雰囲気を纏い、マイペースな話口調に惑わされそうになるが、あいつは拳銃で人体を撃ち抜き5年の実刑を受けた立派な〝暴力団幹部〟なんだ。

 

 今川組は牧村が来てから完全に薬物の売買を絶っている。これはマル暴がSを使うまでもなく、あいつの武勇伝を反社や夜の街から話を集めていれば嫌でも耳に入ってくることだ。今川組の情報工作である可能性も限りなく低いだろう。

 

「あいつの手を借りられればなぁ……。」

 

 日本は法治国家だ、悪事を働いた者は法の下裁かれるべきであり、決して【私刑】になど遭うべきではない。つくづくあの夜、牧村をSに出来なかった自分を歯がゆく思う。あいつは悪事を行う仕事、俺は悪事を取り締まる仕事。どれだけ牧村と過ごす時間が楽しかったとしても、お互い友人のように思っていたとしても、その事実だけは変わらない。

 

 いつか変わる日が来るかもしれないが、今ではない。

 

「鷲尾、すぐ出られるか?」

 

「森さん!?どうしたんですか?」

 

「薬対課から厄介な資料が来てたろ、アレ関係だ。」

 

「……死人が出ましたか。」

 

「いや、う~ん……詳しい話は行けば解る。とりあえず来い。」

 

 

 

「うげ……。」

 

「鷲尾、ちゃんと鼻孔の粘膜は防護しておけよ。労災は使いたくねぇだろ。」

 

 思わずえずきそうになる異臭漂う人里離れたガレージにあったのは70ℓ袋いっぱいに入った空のカプセル、多種多様な粉末の薬剤、精製に用いたであろう有機溶剤の数々だった。しかし整理の仕方があまりにも不自然、これでは【自分たちはこの方法で密造・販売しました!】と告白しているようなものだ。

 

「ったく何だこれ?ディアゴ〇ティーニじゃねーんだぞ。まるで薬物の密造カタログじゃねぇか。」

 

「しかし密造者がこの状況を作ったとは思えませんね。……出し抜かれたのでしょうか。」

 

「だろうな、密造者は今頃土の中かはたまた海の中か……。とりあえず証拠集めだ。指紋ひとつ、髪の毛一本見逃すなよ。あと鷲尾、お前に言うのも酷かもしれんが、覚悟を決めておけよ。」

 

「もちろんです、森さん。」

 

 このらしからぬ【整理整頓】に牧村……引いては今川組が関わっていれば、俺はこの手であいつの手を後ろに回さなければならない。しかし俺の覚悟も虚しく、検出された指紋や残留品にマル暴のデータに引っかかるものはなく、今件でマル暴は完全に手を引き、薬物銃器対策課へ事件を委ねることとなった。

 

 

 ●

 

 ……ということがあってな。かなり厳しい捜査になるだろうと思ったんだが、なんてことはないそのまま芋づる式に違法滞在していたフィリピン人が見つかってそのまま逮捕に至った。背後に海外マフィアが居る可能性もあるが、ヤツラの場合裏切者は家族含めて処刑されるからな。口を割らないだろう。

 

 不気味な事件だよ、あまりにも出来過ぎている。警察の欲しい情報が次々揃って、まるで調書作成をなぞるように証拠が出て来て、犯人も捕まって……。こんな事件最初で最後だろうな。

 

 言っただろう?俺の独り言を聞いて欲しいだけだって。それにもう〝解決した事件〟なんだ。公判も始まっている、今更舞台をかき回すつもりはないさ。ただ、何と言えばいいかな。もしこの事件が誰かの台本であり、俺らは役者であったとすれば……劇作家には怒るべきなのかもしれないが、俺は個人的こう思った。

 

 〝良い脚本だった。ありがとう。〟と

 

 まぁ酔っぱらいの戯言さ。で、牧村。次は何を呑む?

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