・キャラ崩壊注意です。
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安田・ヒロの若頭兄弟話
俺の名前は安田太一、暴力団鯛八木組参加鶯会構成員であり、沢渡一家若頭である。今日はシノギを終え、兄弟杯を交わしている三穣会若頭の牧村皓人と飲みの約束をしていた。
「よ~、遅くなっちまったか?」
「いえ、俺が早かったんです。義理事があって一回自宅に戻ると遅くなるのでスーツ姿で来てしまいましたが大丈夫っすか?」
「全然構わないよ。ってかスーツだとシゴデキの政治秘書って感じだな。やっぱ高身長のイケメンってチートだわ。てか良いスーツだねぇ。鶯会の上役だってそんな良いスーツ持ってないよ。牧村会長からの贈り物?」
「そうなんすよね……。あの人金の使い道本当におかしくて……、〝初めてのスーツなんだからオーダーメイドじゃないと〟って部屋住み時代に目玉が飛び出るような額のスーツ贈ってきて。晴れて三穣会若頭になって初めて本家に行くときなんか気が気じゃなかったっすよ。」
「まぁあの伝説に謳われる牧村会長の懐刀だし?気にする幹部もいねぇと思うけどなぁ。逆にその辺の量産品で本家行った方が三穣会自体の格が落ちるし?結果オーライだと思うけどなぁ俺は。」
「それもそうっすけど……。それにこの前だって退院祝いにとんでもないもの贈ってきて……。」
それから兄弟は牧村会長が自分にいくら金をかけたか、それがどれだけ常軌を逸脱しているか滔々と話し始める。聞く人が聞きけば愚痴にみせかけた自慢・自分のオヤジの武勇伝にも聞こえるんだろうが、この短い付き合いで兄弟は本気で牧村会長の行動に困っていることを――なんなら俺も沢渡さんも本家にお呼ばれされ実感している――知っているため、適度に相槌を打ち傾聴する。
……話を聞いているうちに思わず口角が上がる。正直役職は同じ若頭とはいえ、向こうは一大組織大判組直参・組長代表代行を頭に据えた三穣会。こちらは吹けば飛ぶような……とまでいかないにしても構成員も少ない三次団体だ。貫目でいえば俺が弟分でも何一つおかしくない、というかそれが自然だ。
しかしこいつは自分が弟分になるといって聞かなくて、最終的に五里下がりで俺が兄貴分になった。そしてわかった、俺の弟分はそんな嫌味な性格じゃない。不幸自慢に聞こえる弟分の愚痴も本気で悩んでいるんだろうと実感する。他に話せる相手も碌にいないのだろう、堰を切ったかのように日頃の苦労を口にするこいつを俺は可愛らしいと思ってしまう。
「おっと、わり。ちょっと電話だ。」
「沢渡さんですか?」
「いや、春告鳥の嬢からだな。はーい、もしもし?愛美ちゃん?」
〝やふださん……さわはりさんにへんわしようほしはんへすが……ででなくて……〟
「どうしたのぉ?呂律回ってないよ?今どこ?」
「ヒシュイってひふ、ばー、でふ。といれに、にげてて」
「翡翠ね。今から行くわ、そのままトイレに鍵かけて15分くらい待っててね。……すまんね兄弟、ちょっと仕事ができちゃった。」
「アニキ、もしよろしければなんですが俺も同行させてもらえませんか?漏れた会話聞いた感じ、薬物盛られてますよね。建前上とはいえうちの親父が経営するラウンジの嬢に薬物騒ぎとなればこちらも看過できません。」
「三穣会……ってか今川組自体が薬物厳禁だしねぇ。じゃあ力になってもらおうかな。」
◇ ◇ ◇
BAR 翡翠
「申し訳ありません、無理やりトイレまで開けていただいて。どうやらこの子酔いつぶれてしまったみたいで……。わたしがタクシーで自宅までお連れしますので。」
「ええ、お手数ですがよろしくお願いします。」
慣れた様子でぐったりとした女の子を肩に背負い、小太りだが清潔感のある30代後半の男性が店を出る。
「あれ?タクシーを呼んだはずだけど……。来車着信もあるよな。なんでいねーんだよ、アガ!!」
「ごめんねー。君にはタクシーじゃなくてこっちの車乗ってもらうわ。」
「行先は春告鳥でいいっすか?アニキ。」
「いや、監視カメラもあるしうちの事務所に向かってくれる?」
鶯会事務所
「女の子は完全に潰れてるねぇ、この子お酒弱い方じゃないからやっぱ混ぜ物だね。カバンは……撮影器具にお薬の山だ。フルニトラゼパム・ベンザリン・デパス・ハルシオン、なるほどねソッチ系か。」
「無学で申し訳ないです。違法薬物ですか?ハルシオンはなんとなく聞いたことありますが。」
「ん~微妙。精神科で処方される安定剤・睡眠薬。ただこれらってベンンゾジアゼピン系って言われててアメリカの一部の州やヨーロッパの一部では麻薬指定されてるかなり効力も依存性も高いものなの。だから乱用薬物としても人気、結構高値で取引されてるんよ。ただ日本じゃ法整備がおいついてなくて、メンタルクリニックいって〝うつっぽいです~〟って言えばすぐ処方されちゃう。とはいえ日本でも向精神薬取締法で厳しく処方制限されてて30日分を超える処方はできなくなってるし、これだけの量となれば普通に入手した感じじゃないね。ちょっとまってよ……あったあった。」
「障がい者手帳?」
「精神のほうだね。ホ・エヨン……免許証の名前は柿本有一だったから違うねぇ。偽装か二重国籍か……。」
「アニキ、スマホの登録に日本人じゃない名前がいくつもあります。三合会や韓国マフィア絡みかもしれん。牧村さんやカジをよびましょう。アニキは沢渡さんに連絡を。」
「まぁ落ち着いてくれ兄弟、毎回牧村会長の世話になるわけにはいかないわ。」
「申し訳ございません沢渡一家の面子がありますよね……。」
「いや、面子云々じゃなくて、それ以前に申し訳なさすぎる。沢渡さんたちが来る前に〝お話合い〟くらいしとこうか。お兄さん日本語わかるよね?」
「……はい。ま、ま、まさか春告鳥が牧村補佐、三穣会様のおひざ元とはつゆ知らず、大変なご無礼を。」
「へー、結構有名だと思うんだけれど……。その情報掴めてないって大分三下だね。あんたバックは?」
「……。」
「言う気ない感じ、あっそ。」
「ぐあああああああああああ!!」
「まずは小指一本。大丈夫大丈夫、〝喋らないと折る〟なんて陳腐なこと言わないから。〝喋らせてくださいって言うまで折る〟あと9本も指が残ってるね。親指は根元の関節ごといくから結構大変よ?それでも喋らないなら爪を剥ぐか切り落とすか……。」
「
「
「自前です!うちの店は在留している中国人・韓国人女を斡旋しておりまして……そのほとんどに生活保護の受給をさせています。そして精神科に通院させ、不眠症やうつ病・適応障害の診断で得た薬をわたしが転売しており……。」
「アニキ、この男の話……一端裏を取りましょうか。もし脱退話や薬の入手ルートが嘘ならば鶯会や沢渡一家にも累が及びます。マフィアは暴力団以上に裏切り者に厳しい、薬がマフィアのものでこいつが盗んで使っていた場合、嘘の可能性も0ではありません。」
「……結局牧村さんの世話になっちゃうか。申し訳ないね。」
「いえ、お気になさらず。薬物絡み・韓国マフィア絡みとなれば三穣会も無視できませんので。牧村さんに情報一式を送ります。ちょっと待っていてください。」
15分後
「……来ました、和名:柿本有一 韓国と日本の二重国籍で、韓国籍ではホ・エヨン。3年前まで
「……どこからツッコミを入れていいのやら。」
「確かにマフィアから追われる立場だというのに好き放題しすぎですよね。」
「いや、そっちじゃなくてさ。牧村さんやってることがクロサギの桂木なのよ。完全に裏社会のフィクサーじゃん。こんなにすぐ情報集まらないって。」
「そうですか?今回は身分証明書も顔写真もありましたし、そんなに苦労するものでもないかと。」
俺が頭痛を覚えつつ半ば呆れていると、廊下を力強く闊歩する音が聞こえ、弾かれたようにドアが開く。現れたのは鶯会事務局長・沢渡一家総長である沢渡凌牙その人である。
「安田!愛美は無事か!?」
「ええ、酒に睡眠薬・向精神薬を混ぜられたようですが、命に別条はありません。そこでぐっすり寝てます。犯人は……。」
「そこに正座してる柿本って客だろ?前々から金払いはいいが胡散臭いと思ってたんだ。近々身元を調べさせようと思ってたんだが、遅かったか。これは完全に俺の監督不行き届きだな。牧村んとこのヒロ……と俺が呼んでいいのかわからんが、助かった。」
「礼などいりません、安田のアニキに勉強させていただいている身分ですのでお気になさらず。」
「そうか、安田!こいつの身元は?」
「既に抑えてます。元韓国マフィアの一員でしたが、今は追われている立場だそうで、向こうでも引き取るし、こっちで処分してもいいそうです。」
「情報をくれたのは牧村だよな。あいつにはまた礼をしねぇと。チョコボールの高級な5箱入りセットがあったな、それでいいか?」
「代表代行にそれはちょっと……。」
「牧村さんなら喜ぶと思いますよ。」
(それでいいんだ……。)
「さぁて、柿本さんよ。うちの嬢が世話になったな。こういうとき三穣会さんはどうしてる?」
「薬物絡みは厳禁なので規定はありませんが、銭金の問題ではないですね。ただうちの親父は人死にを嫌いますので、四肢欠損・失明・臓器の2個や3個覚悟してもらわねぇと。」
「そんな映画あったねぇ、ジョニーは戦場に行った……だったかな?うっわ~~悲惨。沢渡さん、こいつ在留外国人に生活保護受けさせて売りさせてたみたいなんすわ。それはそれで金にできるんで俺が預かってもいいっすか?」
「ああ、安田に任せる。ただなぁ……生活保護みてねぇ弱者ビジネスのシノギはどうにも好きになれねぇ。そこは意をくんでくれるか?」
「あ~い、わかりました。」
「アニキ、俺にも後で手口を教わってもいいっすか?」
「ああ、永住在留外国人には結構多様な給付金や貸付金があるんだよ。例えばうちのフロント企業に就労困難者として入職させれば助成金で一人72万、名前書けば受かるような適当な大学に入れるだけでも奨学金が100万くらいか。そこからつまんでいけばそこそこの金になるっしょ。」
「さて柿本さんよ、聞いての通りあんたこのままじゃ生き地獄だ。ただ今回は俺にも監督不行き届きの責任がある。一回だけチャンスをやるよ。愛美がそうしたように、朝まで起きてたら一回だけ助けを呼ぶ権利をやる。日の出まで……5時間ってところか。ただ、愛美と同じ目に遭ってもらうがな。おい、安田!」
「はいよ~。ほら、あんたの大好きなお薬だ。とりあえず10錠飲んでもらおうかなぁ。頑張って起きてないと地獄よ?」
「わりぃな、水切らしてるからウイスキーで呑んでくれや。」
「……なに?あんた沢渡さんの酒が飲めないわけ?」
「おお、いい飲みっぷりだ。もう1シートどうだ。」
「どうしたのぉ?起きてないと死ぬまで続く生き地獄よ?ほら、頑張って起きてぇ。寝ちゃダメだってぇ。」
「まだまだ飲めるよな。今度はこの青い薬1シート、いや2シートいこうや。」
「ほらぁ……寝たら地獄行きだよぉ。ほらぁ……がんばれー。ほらぁ……。あ~あ、寝ちゃった。」