ニートだった俺がヤクザの大幹部!?   作:セパさん

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・本作品は公式ではありません。そのためキャラクターの性格や設定等も誤っていることがあります。

・以上をご注意の上お読みください。


三者三様の先生

 広域暴力団今川組事務所。4階建てのビルで、玄関やシャッターは鋼の輝きを放つ2重構造となっており、ガラスは全て防弾仕様。監視カメラも設置されている。暴対法の厳しい昨今、代紋を掲げるような真似はしていないが、近隣住民の間ではヤクザの事務所であるということは暗黙の了解となっている。

 

 さて、その内部であるが……

 

「焦るな、焦るな……芯で打て!あああああ!なんでそこで振るんだよただのストレートじゃねーか!」

 

 TVの野球中継を見ながら酒をひっかけている古参組員が電話番として一人いる以外は閑散としている。若頭補佐牧村ユタカが上部組織に収める上納金の大半を担うようになってから、今川組は高齢組員の憩いの場にも似た雰囲気を醸し出している。

 

 そんな今川組の大看板牧村ユタカはというと、現在精神的な疲労から椅子の上でだらしなく姿勢を崩していた。というのも稼ぎ(シノギ)の一つであるオンラインカジノのメンテナンス終了の報告を受け安堵から脱力感に精神を侵されたため。その様子は暴力団事務所というよりもデスマを終えたアプリ開発会社の様相だ。

 

「いやぁ……ポーカー卓でダブルアップが成功しても金額に反映されないバグがあるって聞いた時は心臓が止まるかと思ったよ。とりあえずゲーム代の返還と1000ドル分のチップで解決出来たし、エゴサした限り炎上もしていないみたいでよかった。」

 

「やっぱりアニキがバグったゲームプレイした人全員に一斉送信じゃなく、丁寧に1通1通メール送ったのが大きかったんじゃないっすかね?本当はプレイしていないのに絡んでくる(やから)には毅然とした態度を取っていましたし。」

 

 そういって尊敬の眼を向けるのは、弟分の小塚カズキ。暴力団員というよりもホスト崩れといった印象を抱かせる風貌をしており、今川組(ぼうりょくだん)の名を隠したフロント企業入社から組員になったため、逮捕歴や補導歴もなく、天真爛漫を絵にかいたような人物である。

 

「やっぱりトラブル解決で一番重要なのは〝誠意〟だと思うんだよね。横田さんにも相談したかったけれど、時間も無かったし、兎に角炎上しなくて良かったよ。」

 

「流石アニキ!よ!大先生!」

 

「先生は恥ずかしいから止めてよぉ……。そう言えば話は全く変わるんだけれど、小塚もカジもヒロも俺のこと〝アニキ〟や〝牧村さん〟って呼ぶところを【先生】って言いかけて慌てて訂正したことあるよね?学校の先生を間違えて〝お母さん〟って呼んじゃうことならわかるけれど、あれなんで?」

 

「う~ん。ヒロ、カジ!ちょっときてー。」

 

「「 はい! 」」

 

 小塚が部屋住みであるヒロとカジを呼び、今牧村が抱いた疑問についてを説明する。口恥ずかしそうな面持ちで最初に口を開いたのは、如何にもチンピラと言った風貌のカジだ。

 

「あ~~。最近カルチャースクール行っている影響っすかね。あと元々オレがグレはじめたのが高校の時なんすけれど、補導されて鑑別所に送られると刑務官のこと先生っていうんですよ。そんで目上の人に先生って言う癖がついていた時期があって……。それが再発したのかもしれません。」

 

「あ~!わかるわかる。俺も5年刑務所にいたけれど、料理屋で思わず力強く手を上げて〝願います!〟って言っちゃうことあるもん!あと地べたに座るとき無意識に正座したり、五穀米とかみると刑務所の麦飯思い出したり、元々長風呂なのに髭剃りや入浴時間を気にしちゃったり!」

 

「お、オレはアニキほど重症じゃないっすね……。ヒロ、お前はどうだ?」

 

 カジは一見すれば精悍な顔立ちをした長身の好青年、同じく部屋住みをしているヒロに話を振る。

 

「俺の場合、児童養護施設に居た頃の癖……ですかね。極道の世界じゃ名前の言い間違えなんて詫びじゃすまされない大事なのはわかっているんですが、牧村さんを前にすると不意に……。あああ!こんなんじゃ子分失格ですよね!牧村さん!本当にそんなつもりはないんです!」

 

「わかってるよ。むしろ俺に家族のような感情を抱いてくれていたってことでしょ?悪気がある訳じゃないんだから自分を責めないこと。」

 

「……はい。」

 

「となると小塚だけ謎だよね。普通の家庭で育って、補導や逮捕歴も無いんだから。」

 

「あ~。俺も解らないっすね。何ででしょう?」

 

 そう言って小塚は小首を傾げた。

 

 

 ●

 

 

 場所は雑居ビルに居を構える【槙野金融事務所】。金融事務所と言っても正式な認可を取っている訳ではない。俗に言う【闇金】である。そこには如何にも裏家業の人間といった強面と髪色を青に染め、奇抜な衣装に身を包んだ美女が一人。

 

「おう先生、入金確認しといたぞ。また金が要るなら少しこっちも負けてやる。ああ、またな。」

 

「社長。今の方、お医者様か弁護士さんですか?」

 

「いいや、柔道整復師だ。競馬にハマって一回自己破産したんだが、懲りずにうちに金を借りに来てる。こっちは診療報酬の不正請求の証拠を握っているからどんな手段使っても返済してくれる、典型的なカモだ。」

 

「なるほどなるほど……。」

 

「んだよ、何か言いたげだな。」

 

「いいえ。社長って医療従事者の方に【先生】って言葉よく使いますよね。普通整体師や看護師さんにまで先生呼びはしないですよ。」

 

「チッ……。よくみてやがるな。俺は子供の頃入院して院内学級に通ってたからな。その癖が抜けねぇんだ。恐らくだけれど、小塚もよ。」

 

 




・筆者は懲役になったことはありませんが、慢性中耳炎で院内学級に通っていたことはありました。
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