・和菓子って時折食べたくなりますよね。
・以上をご注意の上お読みください。
【ヤクザだけどクッキーを焼いたよ!】
というスレッドが匿名掲示板に立ち話題となったことがある。ヤクザというダークな響きと、クッキーと言うメルヘンな単語が相反し〝面白い1行〟なんてもてはやされて書籍化の表紙まで飾った。
しかし俺から言わせれば〝いや、ヤクザだってクッキーくらい焼くよ〟が正直な感想だった。そもそも暴力団構成員……特に長期の
何しろ刑務所のメシってのは頭の固い栄養士あたりが考えてんだろう、薄味で量も少ない。もちろん3時のおやつなんて出てくる訳もねぇし、厨房で刑務作業していた奴の話を聞くに砂糖の入った瓶は金庫に仕舞われているなんていうくらい厳重に管理され分量が徹底されている。
例外的にお正月に袋菓子やお汁粉が出たり、慰労の会でジュースが振舞われたりするがそんなもん年に数回だ。そんな生活を5年、10年と続けてみろ。シャバに戻った頃には一級品の甘党の出来上がりさ。
ああ、申し遅れたな。俺は今川組組長代行若頭、野口剛。
たったいま水洗いして2度アク抜きし鍋に入れておいた
「……となると冷やしぜんざいか。白玉粉はまだ残ってたな、抹茶でも混ぜてみるか?」
片手間で抹茶入りの団子を作り、小豆が煮えてきたあたりで砂糖と隠し味に塩を少々。塩を入れる事で味が絞まる。砂糖の量は小豆の重さに対して2/3ってのが定番だが、今みてぇに甘味をガツンと食いたい時は小豆の風味が消えない程度に重さと同量くらい入れちまう。
「アイスクリームを乗せるのもいいな。色合い的に……バニラか?」
動画に投稿するわけでもねぇ、別に【映え】なんざ気にしないが、抹茶団子を作った上に抹茶アイスっていうのも
小豆が煮えたあたりで粗熱をとって、冷蔵庫で1時間くらい冷やす。氷で一気に冷やす方法もあるらしいが、面倒なので割愛だ。
そうそう、話は変わるが世界三大美女の一人
甘いものってのはそれほど魔力があるもんだ。
「うんうん。こんなもんか。」
盛り付けを終え、出来栄えに満足を覚える。少し汁気を抑え、しっかりとした粒をのこしたぜんざい。単体では味がしないが、上に乗せたアイスクリームや豆の柔らかな汁を吸って味をつけた抹茶色の団子がしっかりと存在感を放っている。
「よし、食うか。」
匙で紫に輝く粒を掬ってまずは一口。洋菓子とは違う豆独特の甘さが口いっぱいに広がって思わずため息が出そうになる。そして次に抹茶団子、こいつを最初はぜんざいと共に
そしてアイスクリーム。こいつをぜんざいと合わせて団子を食うとまた別の顔を見せやがる。和洋折衷ってのはこんな簡単に出来るもんだ。二つの別の甘みが団子の中で調和され、素晴らしい味となる。
……なんて間も無く食い終わるって頃に頭脳がしてきやがった。おそらくアイスクリーム頭痛じゃねぇだろうな。俺の感が正しければ―――
「カシラ、牧村さんをお連れしました。」
「おはようございます。野口さん。」
悪い感ほど外れて欲しいと思うのに当たるもんだ。
「ユタカ!
「ひぃ!」
こうして俺の甘くない一日が始まろうとしていた。