ニートだった俺がヤクザの大幹部!?   作:セパさん

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・今回は特にキャラ崩壊が激しいかもしれません。

・裏世界ラボの最新話みたら書いてみたくなりました。


悪魔と救世主

「おいテメェ!牧村さんがしゃべってるのにスマホいじってんじゃねぇ!」

 

「いいよ、ヒロ。あまりビックリさせないで。君も全然リラックスしていて良いからね。」

 

 場所はとあるカラオケボックス、今川組若頭補佐牧村ユタカは、未だ顔つきに幼さの残る髪を雑に染めた少女を相手に柔和な顔つきを崩さず対応していた。

 

「てかさぁ、雑誌の取材ってきいたけど、何の話聞きたい訳?そっち系の撮影?どっちにしろ早くしてくんね?マジダルイんだけど。」

 

 少女は傲岸不遜な態度を崩さず、スマホに目を向けたまま怒気を孕んだ声で応対する。御付きとして来ているヒロは怒髪天だが、牧村は飄逸(ひょういつ)とした態度を崩さない。

 

 ……目の前にいる女性は【パパ活】とも【神待ち】とも、一昔前ならば【援助交際】と言われる方法で金を稼いで生きている俗に言う〝家出少女〟であり、若き人生を安値で売っている代償か、はたまた将来を考える能力の能動的欠落からか、非常に厭世的(えんせいてき)かつ自暴自棄だ。とはいえ、そんな人間は特別珍しい存在ではない。

 

 事実日本において年間8万人もの行方不明者届が提出されるうち、10~20代の若者が占める割合は3万人以上で、10代は1万6千人を超え、その大半は犯罪被害者、又は犯罪加害者という形で発見される。裏社会を幽歩する悲惨な若者など今のご時世掃いて捨てるほどいる。

 

 ただ、事の発端は中々珍しいかもしれない。後ろめたい事情がある男を相手にしている彼女のような人間は、無防備になった(えもの)から金品や個人情報を盗むのも仕事の内だ。そこから〝トモダチ〟と組んで美人局(つつもたせ)をさせればそこそこ良い金にもなるし、社会的地位の高い人間ならしばらく遊んで暮らせる。

 

 問題はその被害者となったのが暴力団構成員だったということである。この少女は男がシャワーを浴びている間になれた手つきで大金の入った財布を物色。そのほとんどに手を付けて逃げてしまったのだ。

 

 当然組員の男は大激怒、しかし〝パパ活で金を盗まれました〟なんて間抜けな話を(おおやけ)に出来るはずもなく、下手に追い込めば後ろに手が回る。構成員としてロ〇コンの烙印を押され刑務所に入るなどこれ以上の恥は無い、下手を打てば破門ものだ。

 

 かと言って見過ごすというのも沽券に関わる。そんな二重拘束(ダブルバインド)に苦しんでいる組員に救いの手を差し伸べたのが牧村。条件は〝お互いの組長――今川組の場合野口さん――に内緒〟という被害に遭った組員からすれば願ったり叶ったりという内容だ。

 

「にしてもさぁおじさん何者?トモダチのSNSまで探ってわたしに連絡つけるとか……あんた本当に記者?」

 

「そうですね、ではそろそろ茶番も終わりにしましょうか。まずわたしは記者ではありません。あなたは〇月〇日22時ごろ、ある男性から17万8000円を窃盗しました。その相手が何者であるか、貴女は知っていたはずです。ならばこの未来は予測していたもの……と我々は判断します。」

 

 少女の顔が強張り、初めてスマホを弄る手が止まり、目線が牧村へ向く。表情こそ笑顔だがその瞳には一切の感情が無く、一瞬で人が変わったかのようだ。少女はここにきて初めて怯えの感情が芽生える。

 

「〝女性を売り物にした回収〟を行う予定はありません。確かに我々は反社会的行為を躊躇(ちゅうちょ)することはありませんが、今回の目的は金銭の回収ではないからです。次にわたしから親元に連絡することも無いです。君の親は両親とも公務員であり大変裕福で被害金額を請求する事は簡単ですが、通報のリスクが高く、リスクとリターンが釣り合わないと判断しました。」

 

 少女は震える指でスマホをダイヤル画面に切り替える。自分も痛い目を見るだろうがなりふりなど構っていられない。1……1……0と指をすべらせていく。しかし……

 

「はい没収。人の話聞くときはスマホを弄んなって学校で教わらなかったか?ああ、学校行ってねぇんだっけ?じゃあ良い勉強になったな。」

 

 後ろに控えていたカジがそのまま少女の手からスマホを取り上げる。少女は錯乱状態となり、そのまま悲鳴混じりの大声をあげるが……。

 

「牧村さん、少し黙らせましょうか?」

 

「いいよ、俺そういう場面見たくないし、この店は防音がしっかりしているからね。落ち着くまでゆっくり待っていようか。」

 

「ですが女性の悲鳴は響きやすいですからね。通報されても面倒ですし。」

 

 御付きの青年がズッシリと重い金属の塊を懐から取り出す。少女がそれを拳銃と認識するのには数秒かかり、あまりの恐怖で脳内のキャパシティーが限界を迎えそのまま無言となる。

 

「ヒロだめ!仕舞って!」

 

「はい!失礼しました。」

 

「ごめんねビックリさせて。落ち着いて話せる状態になったら言ってね?」

 

 少女はただ無言のまま赤べこのようにコクコクと頷いた。

 

「じゃあ、この念書を書いて欲しいんだ。300万円の借用書と住所に電話番号。君の実家には固定電話があるよね?その番号も。」

 

 そのまま恐怖に駆られ、用意された念書の空欄を埋めていく。脳内の整理はついていないが、〝このままではタダでは済まない〟ことだけはありありと理解したが故の行動だ。

 

「お忙しいところ恐れ入ります、〇〇様は御在宅でしょうか?……ご不在。かしこまりました。では改めてご連絡させていただきます。うん、実家の番号も間違いないみたい。さて、この金額を10日以内に収めてください。待ち合わせ場所は……××の近くにパチンコ屋さんがあるのは知っているかな?その裏の駐車場でいい?あそこは深夜になると監視カメラが切れるんだ。言っている意味……分かるよね?カジ、スマホ返してあげて。」

 

 少女はスマホを受け取ると一目散にカラオケボックスから飛び出した。お金を用意しなければならない。警察には行けない。殺される。

 

 まずはトモダチに相談をした。美人局なりなんなりを手伝ってもらって金にしようと目論んだのだ。しかし〝牧村ユタカ〟の名前を聞いた途端、手の平を返したように誰彼々も少女から距離を置いた。あまりにもしつこく連絡をしすぎたためだろう。彼女のメッセージが【既読】となることが段々と少なくなり、やがて0になった。

 

 次に消費者金融を回った。しかし定職に就かない彼女へ昨今貸し渋りの激しい業界が金を貸すはずもなく、手に出来たのは5万円を3件。15万円だけだった。

 

 身体を売るしかない。そう考え多くの【パパ】が集まる場所で待機もした。だが今まで美人局といった悪事や窃盗をし過ぎた性だろうか、誰も自分に声を掛けてくれる人などいない。

 

 少女は慟哭(どうこく)した。深夜の人だかりで、人目を憚らず。しかしその姿に目を向ける者も、耳を傾ける者もいない。周りはまるで定刻に時計が鳴った程度の反応だ。そこに……

 

「どうしました?大丈夫ですか?」

 

 目の前にいたのは、髪の色を青く染め奇抜な衣装に身を包んだ女性だった。その瞬間涙腺の堤防が決壊し、回らない舌で事情の全てを説明した。

 

「なんだ姉ちゃん、金がいるのか?」

 

 そこには眼鏡をかけた強面の男が佇んでいる。

 

「詳しく話を聞かせてくれよ。事情によっちゃ貸してやる。」

 

 

 ●

 

 

 今川組事務所。そこで牧村は送られてきたメッセージを見て安堵の溜息をついた。

 

「あの子、上手く槙野君と接触できたって!GPSと監視付けていたとはいえ、変な事にならなくて本当よかった~。」

 

「牧村さん……。今回危ない橋渡り過ぎじゃないですか?通報されていれば実刑コースですし、何より今川組の話じゃないんです。牧村さんが出張らなくても決着のついた話じゃないですか。」

 

「だってその場合あの子×××漬けにされるとか、×××で××な客の相手されるとか、下手すれば××に送られて日本から居なくなるとかそんな話でしょ?俺そういう話聞くの嫌なんだよ。あの子だってここまですればもう裏社会に関わろうなんて二度と思わないだろうし、元々ネグレクトやDVが原因の家出じゃないみたいだからね。真っ当な生活に戻ってくれればいいんだけれど……。まぁそれは彼女の決める事だね。俺に出来るのはここまで。」

 

「向こうもアニキが〝こっちで処理しました〟って言えば深堀はしないでしょうし、勝手に妄想膨らませてくれるたぁ思いますけれど、受け取った金はどうするんすか?」

 

「とりあえずお金盗られた組員さんには30万渡して、あとは槙野君へ戻すかな。それとは別に手間賃も渡さないと。」

 

「結局あの野郎の300万が牧村さんに来て手元に戻るだけじゃねぇっすか、リスク背負って損しただけって人が良すぎます。」

 

「そんなことないよ。あの子、自分を買った客の社員証や身分証明書を携帯の画像で撮っていたみたい。カジにスマホ奪ってもらっていた時コピー頼んだじゃない?それが結構な量だったんだ。凄いよね~●●社の地域包括マネージャーって言えばネットで顔が出てくるよ。そんな人でもこんなことするんだなぁ。」

 

「……その情報、どうすんすか?」

 

 牧村のことだ、単純に恐喝といった外道な真似はしないだろう。それでも薄ら寒い感情を覚え、カジは牧村に問うた。

 

「今のうちに●●社の株でも空売りしておこうか。あとは……おいおい考えよう。」

 

 笑顔で話す牧村に、ヒロとカジは同時に背筋へ寒気を覚えそのまま唾を呑み込んだ。

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