メス堕ちしたくない俺の苦難八割TSチートハーレム記   作:丸焼きどらごん

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▶︎シャティ は メス堕ちポイント を 女子力ポイント に 言い換え た !
▶︎シャティ は 主人公 に 「セカイジュウカラテイソウネラワレチャウカモ」 を となえた !
▶︎主人公 に クリティカル ダメージ !



11話▶それってなんてエロゲ?~呪いと祝福がほぼイコール

「チョットイミガヨクワカラナイ」

 

 え、いや……マジで意味わからないんだけど? ていそう……貞操???

 吐き出す言葉が片言になってしまう程度には衝撃を受けた俺の頭には、現在ヒヨコが二、三羽ほど飛び交っている。ぴよぴよしている。

 

 美少女から「世界中から貞操を狙われちゃうぞ☆」なんて言われる経験、一生しなくていいんだけど!?

 まったくご褒美でもなんでもないんだけど!?

 

『優秀、というのも考え物だね。僕の役割が横取りされちゃうじゃないか。せっかく呪いナビゲーターの初仕事だったのに』

 

 どこか不満そうな魔王の声。

 気づけばノイズは随分減っていて、もとから声だけでも感情豊かな奴だったが更にそこに含まれた感情を察するのが容易になっていた。特にうれしくは無ぇよ。

 

 つーかよぉ……!

 

(テメェさっき祝福とかなんとか言ってたじゃねぇか!! それがなんで貞操を狙われるとかいう話が出てくるんだよ!?)

『祝福だし、君が僕の呪いによって手に入れた職業は間違いなくチートだよ。だってその力を極めたら、世界中が君の虜だ。僕をも倒せる力を有した上で求心力まで手に入れたら、それこそ最強。…………世界征服も夢ではないくらいにね」

「はぁ!?」

 

 つい声が表に出てしまうが、シャティ達はそれがたった今言われた事に対しての驚きだと思ったのか、特に不思議がってはいないようだ。

 あ、危ない危ない。魔王へのリアクションは表に出ないよう気をつけなければ。

 

「驚かれるのも無理はありません。……しかし不覚です。ガーネッタに言われるまで気づきませんでした」

「私も微弱なものとはいえ魅了眼持ちだからね。多少の耐性があるのさ」

「ねえ、二人とも。どういうことか、私達にも分かるよう説明してくれないかな? 当のミサオも困っている」

 

 訳知り顔のシャティとガーネッタにアシュレが問う。

 彼女はさりげなく俺を落ち着かせるように背に手を添えてくれたのだが、剣だこで固くなっている頼もしい掌にうっかりときめきそうになる。

 いや耐えろ、俺。今その感覚は危険だ。

 

 ちなみにモモだが、話に興味がないのか、それとも少し難しいのか。俺のそばに身を寄せて先ほどのように俺の匂いをかいではごろごろ鳴いている。……猫かな? 獣人の特徴としては狼と兎のはずなんだけどな……。

 

 シャティはそんなモモの頭を撫でると、少し困ったように笑った。

 

「モモは鼻がいいですからねぇ。直に影響を受けてしまっているようです。今のミサオ様はマタタビのようなものなので」

「お、俺って今なにか臭ってるの?」

 

 少し焦って体の匂いを嗅いでみるが、自分では汗の匂いしか感じられない。

 

「ええ、とても香っておりますわ。すごくいい香りです……うふふ」

「しゃ、シャティ」

 

 さっきまで冷静だったのに、すいっと近寄ってきて俺の首元に鼻を寄せるシャティはうっとりと蕩けるような表情で頬を染めている。部屋での様子と同じだ。

 

「シャティ、ミサオが困ってる」

「ああんっ、アシュレのいけず~」

「はいはい」

 

 どうしようかと困っていると、アシュレがシャティを引き剥がしてくれた。助かる。

 嬉しいんだけど、美少女たちとの急な接近で俺の心臓がちょっともたない。今は別のことでドキドキしているのもあって、かなり情緒は乱れている。

 シャティやモモをこんなふうにして、俺が世界中から貞操を狙われる力ってなんだよ……! 得体が知れなくて嬉しいどころか怖いわっ!!

 

 

「え、えへへ。失礼しました。……まだミサオ様が女性になって数時間ですからね。もう少しすれば慣れて落ち着きますわ」

「本当に?」

「ええ、多分」

「多分なんだ……」

 

 不安に眉尻を落としていると、シャティは気を取り直すようにひとつ咳払いをした。

 

「こほん。まずミサオ様が取得した【職業(クラス)(フィーメイル)】には常時発動型技能(スキル)があると思われます」

「常時発動型って……」

「【魅了(チャーム)】ですね」

「ぶっ!?」

 

 魔王から魅了がどうのこうのと先に聞いてはいたが、いざ言われるとむせる。

 つまり、やっぱりみんなの様子がいつもと違ったり……あとクソ馬鹿阿保魔族に迫られた理由はそこにあるってことか……。じゃないといくら角を折ったからって、いきなりあんなことしてくるのはおかしい。

 クソッ! 女の子にだけ効いてくれたらいいのに!

 

 しかし俺の疑問を察してか、シャティはゆるく首を横にふった。

 

「……ですが、ミサオ様の職業階級(クラスステージ)はおそらくまだ序階。魅了と言っても、そこまで強い力ではありませんわ」

「だね。せいぜい元からミサオが好意を向けている、もしくはミサオに好意を向けている相手の印象を良くしたりするくらいさ。だから街中でいきなり襲われたりはしないだろうから、安心おし」

『あまり僕の役を奪わないでほしいなぁ』

 

 魔王が不満そうな声を発するが、聞こえていないシャティはそのまま説明を続ける。

 

「ご存知の通り職業(クラス)は最高で十の職業階級(クラスステージ)まで確認されています。ですが階級が上がったとしても、それは階級が上へ行けば行くほど維持することが困難。上位階級を維持している者は世界でも少数です。ここまではよろしいですね?」

 

 おさらいするように述べていくシャティは、冷静であれば良き教師なのだ。

 俺はこくりと頷いて続きを促した。

 

「ミサオ様の場合、ご自身そのものの身体的な強さと、一度上がった職業階級(クラスステージ)が下がることはありません。これは過去の英雄の中にも何人か現れた特性です。しかもミサオ様の成長速度は異常なほど。これだけでも特異……わたくしも探してはおりましたが、まさか本当にお会いできるとは思っていませんでしたわ」

 

 俺のレベルアップというチート、ここだけ聞けばめちゃくちゃ便利なんだけどな……。

 そしてシャティだが、彼女はこの特徴を持った英雄になりうる存在を探して旅しており俺に行きついたそうだ。なんでも一族の使命らしい。

 

 そんな風に俺がシャティの話に耳を傾けている時だ。

 

『……。暇だし、職業についての専門的な話は彼女に任せて僕からはメス堕ちポイントについて話そうかな。これは僕にしか出来ない説明だし』

(今!?)

『今』

 

 こ、こいつ! 自分が暇だからって大事な説明聞いてる時にもう一つの重大な説明を同時進行する気か……!? なんてマイペースな!

 

『ええとね、メス堕ちポイントが溜まる条件は大きく分けて三つ。さっき軽く述べたね。一つ、何かに心をときめかせる。二つ、肉体的な快楽を感じる。三つ、母性を抱く。この辺の判断基準はけっこうがばがばだけど、それに関しては僕に文句をいわれても仕方ないからね? 職業(クラス)そのものが"経験値"として判断しているものだから、いわば世界の意志さ。システムと言い換えた方が正確かな。少なくとも僕はそう捉えている』

(まてまてまて! ま、魔王! ナビの役割ととられて不満なのは分かったけど、お前の話はあとで聞くから! 頼むから今はこれ以上の情報を俺に詰め込まないでくれ! 目の前の事を受け入れるだけで精いっぱいだから!)

 

 シャティの説明を聞くだけでいっぱいいっぱいなのに、副音声みたいに同時に二つの声が聞こえたらどっちに集中していいかわかんなくなるだろうが!!

 普通なら魔王の方を無視すればいいけど、今は俺の知りたかった情報を話しているので軽率に無視も出来ない。

 

 俺がプライドを捨てて心底頼み込むような態度を見せると、魔王は『ああ、そう』とだけ言って静かになった。

 ……頬を膨らませてそっぽを向いているように思えるのは、気のせいだろうか。

 こいつ自分の役割をとられて拗ねたり、結構精神的にはガキだよな。

 

「ミサオ様、大丈夫ですか?」

「あ、ああ。うん。続けてくれ」

 

 俺の内心百面相が表にも出ていたのか、シャティが心配そうに顔を覗き込んでくる。

 とにかく! 魔王も静かになったことだし、きりがいいとこまで聞いちまおう!

 俺は心がわりと瀕死ながら、話の続きを促した。

 

「本当に、くれぐれもご無理はなさらずに」

「ありがとう、シャティ」

「……続けますね。ミサオ様はすでに職業(クラス)剣士(ソードマン)を七階級まで昇級させています。たった五年でその域に達することは奇跡といって良いでしょう。……その例を顧みると、このまま【職業:女】を保持したままの場合、女子力が溜まるごとに他の所持職業と同様に昇級していきます。そしていずれ行きつく先の最高階級が問題なのです。……なんだと思いますか?」

「女の最高職……? う~ん……。アシュレ、分かる?」

「女性そのものを職業と定義する上での上位職か……。ごめんね、ミサオ。私にも想像がつかないな」

「だよな」

 

 アシュレ同様、俺も首を傾げる。

 職業は階級ごとに呼び名が変わったりもするが……【職業:女】ってのがそもそもわけ分からないのに、その上位階級がどんなものかなんて想像できねぇよ。

 早々に考えるのを諦めて答えを聞こうとシャティを見るが、先に口を開いたのはガーネッタだった。

 

「私も【職業:女】なんてのは初めて聞くんだけどね。……あるんだよ。今のミサオの特徴に似た魅了の技能(スキル)を持つ、最高職の記録が」

 

 ガーネッタが補足するように述べると、シャティが頷く。

 

 

「ええ。……最早おとぎ話や伝説と言っても良い存在。しかし確かに存在した職業(クラス)

 

 

 もったいぶっているのか、言うのを(はばか)っているのか。

 シャティは少々の間を置いた後……それの名を告げた。

 

 

 

 

「【職業(クラス)女神(アークレディ)】。功績と名前だけが知られており、そこに至るまでの下位職業が謎とされてきた超レア職業(クラス)です」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

職業(クラス)女神(アークレディ)

 

 その名前と意味が翻訳され俺の中で合致した時、目が丸くなった。

 

 だって……神様ァッ!?

 

 

 

 そこからのシャティによる説明は怒涛だった。

 

 

 

「これまでの歴史上、人類の危機……厄災の魔王が呪いを成してしまった後に人族の中から現われ、衰退した文明に救いをもたらした、という記録が残っています」

 

 スケールいきなり大きくなったし。

 

「【魅惑の瞳で人々をまとめあげ、甘い香りが(しるべ)となった。甘露なる体液は恵の証】……といった具合に、存在を伝え聞いております。彼女を迎え入れ子を成した種族は、今繫栄している全種族の祖先と言っても過言ではありません」

 

 なんか存在がエロいし。

 

「なのでミサオ様がそこへ至る可能性のある職業(クラス)を持っていると知られたら、我先にとミサオ様に子を産んでもらおうとモテモテになっちゃうわけですね! どちらにせよ職業階級(クラスステージ)が昇級して魅了の力が増したら、そんな事実知らなくても男女両方寄ってくる可能性も大きいわけですが!」

 

 その説明が俺の持ってる職業に関するものだって認めたくないし!!!!

 

 

 

 なんなんだよその職業ーーーーーーーーッ!?!?!?

 

 

「待って待って待って! それ、本当に!? 本当にこの職業がランクアップしたらそんな事態になっちゃうの!?」

「可能性はかなり高いですね」

 

 言い切った~! とばかりに額の汗をぬぐうシャティだったが、俺としては心構えをしていても到底受け入れられない事実をねじ込まれパニックである。

 なに、いい香りがして体液が甘くて全種族にモテモテになる可能性のある存在って、エロゲか何かの設定? そして今現在その存在は俺だよ!

 

 これが男の時だったらいい。世界中から美女が俺との子供が欲しいって押し寄せてくるってことだろ?

 でも! 今! 俺は女なんだよ体だけ!!

 ってことは…………!

 

 あまりに怖気立つ想像に、ざっと血の気が失せた。

 

 

『ほぼ全部言われた……』

 

 青くなる俺をよそに、ぶすくれた様子を隠しもしない魔王。

 

『……ま、だいたい彼女が言ったとおりだね。伝説の神になれる職業なんて、チートそのものだろ? 魅了だけでなく、他にも便利なスキルが盛りだくさん! 神だからね。君のような棚から牡丹餅(チート)を得ただけの凡人がそんなものになれるんだ。すごいだろう? 結果的にとはいえ、この祝福(呪い)を与えた僕に感謝してほしいものだよ。ねぇ?』

 

 相変わらず腹の立つことしか言わない奴だが、俺は怒鳴りつける気力も湧かず、へなへなと力が抜けた。

 

(い、いらねぇ~!!)

 

 そこまで逸脱した存在になりたくねぇし、しかも男に戻れなくなること前提なんだろ!?

 マジいらねぇ!! 俺は男として女の子といちゃいちゃしたいんだよ!! まだ相棒を一回も使ってないんだぞ!? なんだよこの悲劇! 最悪だ! 祝福どころかシンプルにただの呪いなんだよクソがッ!!!!

 

 

『ちなみにこの職業に関しては、僕意外に溜まった経験値や昇級を確認する方法はないと思うよ。その有翼族にもせいぜい職業の名前を見るまでが精一杯さ。僕の呪いが結び付けている職業だからねぇ。……だから説明役は取られたけど、僕が呪いナビであることに変わりはないから、よ~く覚えておくように』

 

 奴はそう言ってクスクス笑うと、おまけとばかりに俺を更に煽り散らかした。

 

『よかったねぇ、ミサオ。この職業を極めれば、ちょっとお目にかかれない規模のハーレムも夢じゃないよ。チートハーレムってやつだ。嬉しいだろ? 喜べよ! さあさあ、這いつくばり地面に頭を擦り付けて僕に感謝をしたまえよ。おめでとう! おめでとう!! あーっはははははははは!』

(この邪悪の化身がぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁッッ!!!!)

 

 

 

 

 魔王による祝福は、やっぱりただの呪いだった。

 

 

 

 

 畜生が!

 見てろよこいつ。俺は絶対、男に戻ってやるからな!!

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 




2023.12.10>>加筆修正

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