メス堕ちしたくない俺の苦難八割TSチートハーレム記   作:丸焼きどらごん

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16話▶方針~そして始まる絶対男に戻りたい苦行八割の旅

 シャティは前置きの後、お茶に口をつけてから本題を始める。

 

「厄災の魔王に関しては黒星草(こくせいそう)が枯れたため、討伐については知れ渡っていることでしょう」

 

 黒星草(こくせいそう)

 

 それは厄災の魔王が現れた時に世界の各地で咲き誇り群生する、星のような形をした黒い花を咲かせる植物だ。

 これが厄介な雑草で、焼こうが薬品をかけようが引っこ抜こうが……魔王が死ぬまでけして枯れることが無いんだと。

 本人並のしぶとさである。文字通り、あいつ今雑草魂だし。

 

「そうだね。しかし誰が倒したか……までは知られていない。どこの国も表立った大侵攻が出来ていない以上、過去の例を顧みて『英雄』が現れた上での少数討伐、という事実は把握しているだろうけど」

 

 ちらっとシャティとアシュレがこちらを見る。

 

「……討伐報告をするとなれば、ミサオ様の状態も知られてしまいますね。どうします?」

「黙っとこうぜ!」

 

 即答した。

 

「報酬は惜しいけど、俺はこの状態を知られる方が嫌だ」

「ミサオ様が言うなら、その件についてはギルドへの報告は無しということでいいですね」

「……いいの?」

 

 あまりにもさっくりあっさり納得されてしまったが、まわりを見渡せば仲間たちはみな頷いている。

 

「栄誉を得るより、君の名誉を守るべきだろう。私は構わないよ」

 

 とアシュレ。

 

「私もだ。厄災さえ防げたならそれで十分。魔王陛下を倒せたのも、ほとんどミサオの功績だからね。あんたが決めればいい」

「モモは、ママが嫌なことならすすめない」

 

 ガーネッタとモモもそんな風に言ってくれる。

 

「わたくしは一族への報告だけさせていただきたいのですが、それ以外は特に望みません」

 

 一族の使命として俺を探し出したシャティの申し出は当然で、それくらいならと頷く。

 

 

 ……あれ、もしかしてこの中で一番物欲と名誉欲強いの、俺?

 納得してもらえたことにめちゃくちゃ安心したんだけど、報酬も英雄の誉れも大分惜しいなって気持ちなんだけど……!

 

 

『みんな君に甘いね。……ふふっ。それにしても、物欲まみれの英雄か。恥ずかしい? ねえ、自分が恥ずかしい?』

(隙あらば人が気にすることをツッコミで挟んでくるんじゃねーよこのじゃりガキ!!)

『失礼だなぁ。今の見た目はこんなだけど、魔王として生きた時間は君より遥かに長いよ。年上なのだからもっと敬いたまえ』

(図々しさの世界チャンピオンでいらっしゃる?)

 

 どうしたら敬えなんて言葉が飛び出てくるんだこいつ。

 

「ミサオ様?」

「あ、ああ。なんでもない。えーと、納得してくれてありがとな。じゃあこの後どうするかって話か」

「行き先についてですね。わたくしの一族への報告はついでで構わないので、魔術工芸核(アーティファクト)技師の元へ行くか賢者の元へ行くかだけ決めてしまいましょう」

 

 シャティはそう言うと、確認するように仲間達を見回した。

 

「その前に。みなさんはどうされます?」

 

 どうする。

 その問いかけに、俺はふとある事実を突きつけられた気がした。

 

 

 シャティは俺に英雄としての役割を求め、それはもう果たされた。

 ガーネッタもだ。厄災の魔王を共に倒すために仲間になってくれたのが、はじまりだった。

 アシュレはずっと俺と組んでくれているけれど、冒険者パーティーなんてよくメンバーが入れ替わるのが一般的。この先も一緒に居てくれる保証なんて無い。

 モモは記憶が無いから俺についてきている。今の彼女はともかく、もし記憶が戻ったらもと居た場所に戻りたいのではないだろうか。

 

 

 厄災の魔王討伐という大きな目標がなくなった今、当たり前のようにこのメンバーで旅する事への保証がなくなったような気分になって……。

 俺は少し、体の奥が震えるような気がした。

 

 しかし。

 

 

 

 

 

「あ、ちなみにわたくしは今後もミサオ様にお供しようと考えていますわ。当然ですが! 当然ですが!! ミサオ様はわたくしが愛するお人なので。それにミサオ様はお強いのに危なっかしくて、放っておけない方ですからね~。これからもしっかり! お役に立てるよう頑張るつもりですわ」

 

 問いかけながら真っ先に自分の考えを述べたのはシャティだ。

 これからも一緒に居てくれるという言葉を聞いて、その勢いに押される前にほっとする。

 続いてシャティに応えるように、アシュレ。

 

「私もだ。もとからミサオとパーティーを組んでいたし、愛する人が困っているのを放っておけないからね。ミサオが元の姿に戻りたいというなら、協力する」

「あ、アシュレ……! ありがとう!」

「ふふっ。どういたしまして」

 

 初めて明確に「男に戻りたいなら手伝うよ」と言ってもらえて心が高揚する。

 そうだよな! 男に戻った方がアシュレだって喜んでくれるよな!

 でもシャティといい、「愛する人」ってさらりと言うのは嬉しいけどやめような!? 不意打ちでくらうと俺の鼓動の高鳴りからメス堕ちポイントが生まれてしまう……!

 

「アルマディオ……愚弟の件もある。どうせまた来るだろうし、私もまだしばらく同行しようか。家の事は夫と子供たちに任せてあるし、旅行がてらついていかせてもらうさ。ミサオが嫁に来たいというならいつでも故郷に歓迎するけどね」

「出来れば夫でお願いします!! 男に戻ってから夫ポジションでお願いします!!」

 

 嫁なんて言われて思わずそう言ってしまうが、はっとなってアシュレを見た。

 俺としてはみんな好きなんだけど、一般的に考えて好きな男が別の男になびいていたら嫌な気持ちになるよな。

 しかしアシュレは慈母のような笑みで全てを察したように首を横に振る。

 

「君はミサオだからね。女性にふらふらするのは、今さらだ」

「え」

「ちなみにガーネッタに"ご褒美"を貰おうとしていたことも知っているよ」

「え゛」

「人に言っちゃいけないなんて言われてないだろ? 話の種にさせてもらったよ」

「ガーネッタさぁん!?」

 

 まさかの俺の恥部が情報共有されてたんだが! つまりセットで俺が童貞って事もバレてるってこと!?

 俺がジャンからの憐みの視線を受けながら口をぱくぱくさせていると、アシュレはするりと俺の前髪を持ち上げた。

 

「それを知っている上で君が好きなんだ。もし独り占めしたいなら、私が他を見る余裕がないくらいミサオを惚れさせるまでのこと。その覚悟だけは、しておいてね」

 

 涼やかな微笑とこの発言が俺に効かないはずもなく。

 

 

「ぐぅぅッ!!」

 

【メスメロリンっ♪】

 

 

 こ、今度は耐えられなかった……!

 

 

「ミサオ?」

「アシュレ。多分あんたの発言でメス堕ちポイントとやらが溜まったんだと思うよ」

「!? す、すまない。そんなつもりでは……」

「い、いいんだアシュレ。俺がアシュレのイケメンさに耐えられなかっただけだから……!」

 

 俺が床に崩れ落ち息も絶え絶えになっていると、モモが気遣うようにそっとよりそってきた。

 

「モモは、ミサオママとずっといっしょがいい」

「モモ……!」

 

 その健気な様子にぎゅっと心を掴まれる。それに対して【メスマっ】まで鳴りかけたので「これは父性だから!! 母性じゃないから!!」と考えて無理やり打ち切らせた。……頑張れば途中キャンセルもできるんだ!?

 

 

 ともかく、まだまだみんなは俺と一緒に居てくれるらしい。

 そのことにとてつもない安心感を覚えて、体から緊張が抜ける。

 

 

「では全員このままパーティーを組み、ミサオ様に同行するということでよろしいですね」

 

 わちゃついてきた場をシャティが取り仕切ると全員が頷いた。

 ……昨日暴走してアシュレにヘッドロックされてた子と同一人物とは思えないぜ。俺が知るいつものシャティはこっちなんだけど。

 

 シャティは確認が取れると、改めて俺に問うた。

 

 

「ミサオ様。まず何処へ向かいましょう!」

 

 

 

 

 

 

 

 

■  ■  ■

 

 

 

 

 

 

 

 それから数週間。

 

 現在俺たちは世界一と名高い賢者の元へ向かっている。

 賢者は住居の周囲に結界を巡らせているため、転移魔術でさくっと移動が出来ないのだ。

 

 慣れない体で苦労も多いけど、本格的に陰鬱とした気持ちにならないでいられるのは仲間たちのおかげかもしれない。

 …………おかげというか、せいというか。

 

 

 

 

 落ち込んでる暇がないんだよな……!

 

 

 

 

「まあ、ミサオ様。体が凝っているようですわ。わたくしがほぐして差し上げます!」

「嬉しいんだけど変なところ触らないでシャティ!」

 

 ぱっと見清楚な積極的美少女のスキンシップには肉体的快楽を感じないよう耐えなければならないし。

 

「今日も君は素敵だね。……手を握っても良いかな」

「は、はい……」

 

 中性的なスパダリ系美女の口説き文句やイケメン仕草にもときめかないよう耐えなければならないし。

 

「あのね……ぎゅっと、して?」

「いいぞモモ! ほ~ら、こっち来なさい! パパがぎゅっとしてやろう。パパが!」

 

 ケモ耳愛娘系美少女の甘え攻撃にはうっかり母性を抱かないよう「俺はパパ、俺はパパ」と自己暗示で耐えなければならないし。

 

「寂しくなったらいつでも来な。優しく抱いてやるからさ。それとも熱いのがお望みかい?」

「その約束は元の姿に戻れたらで……是非……是非……!」

 

 豪奢な男前お姉さま系美女からの夜のお誘いには一瞬でメスにされる自信しかないので血涙を流しながら断らねばならないし。

 

 

『頑張るねぇ。さくっとメス堕ちした方が楽だし、人生きっと楽しいよ?』

(黙れ! 俺は男に戻りたいんだよ!! メス堕ちなんかしてたまるか!!くそ! クソクソクソクソクソォッ! なんで俺がこんな目に!)

 

 元凶である脳内寄生系ショタガキ魔王は相変わらずうるさいし!!

 

 

 

 

 

 こうしてモテたはいいが素直に受け取れない……そんな苦行八割を味わいながらの、俺が男に戻るための旅が始まった。

 

 

 

 

 絶対! 絶対絶対絶対!

 

 男に戻って、男の体で! いちゃいちゃラブラブチートハーレム生活を手に入れてやるんだからなーーーー!!

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 




ここまでお付き合いいただきありがとうございました。一章完結です。
この小説は「チートハーレム杯」という企画に参加するにあたって書いたものですが、もう少しキャラクターを動かしたいので続きます。
慣れないジャンルのため不安なところもありましたが、評価、感想、お気に入り登録してくださった方が居て嬉しかったです。ありがとうございました。
もうしばし、お付き合い頂けましたら幸いです。


2023.12.15>>加筆修正
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