メス堕ちしたくない俺の苦難八割TSチートハーレム記   作:丸焼きどらごん

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20話▶冒険者ギルド~な、何ィ!?と驚かれたいお年ごろ

 

■ ■ ■

 

 

【冒険者ランク把握メモ】

 

▶登録名:ミサオ

▶冒険者証硬貨色:白金(しろがね)

▶実績:無し

 

 

 今日は今の姿で新しく冒険者登録をした。

 色々あったのだが、疲れたから今日は割愛。全部書くと眠る時間が無くなる。なんだよ本当にもう。

 

 明日は今日ばっくれた下着選びに今度こそ連れていくってシャティとアシュレに念押されてるから、体力と気力を回復しておかないといけない。鬱。もう心を無にして全部店員さんに任せようかな。

 さくっと自分で適当な下着と服を仕入れてきたら「サイズがあっていない」と取り上げられてしまった。ナンデ。

 

 それより冒険者登録について記しておこう。

 

 今日はいざ自分が知っている知識を人に説明するって難しいなと思ったから、この機会にまとめておくのも良いだろうし。

 魔王の奴も結構世間知らずで色々聞いてきてうるさいからな。

 

 

 

 

 

 冒険者に発行される冒険者証。

 それは硬貨の形をしており、大抵の奴は加工して首飾りなど身につけられる物にしている。

 基本機能には「練度」を測るものと「実績」を記録するものがあって、冒険者としてのランクが上がるとオプション機能も追加可能だ。

 

 

 「練度」は強さ。

 身体能力と魔力総量によってはじき出された個人の力量を色で計測、表現する。

 ランクは全部で銅金(どうがね)赤金(あかがね)青金(あおがね)銀金(ぎんがね)黄金(きがね)白金(しろがね)黒金(くろがね)の計7つ。

 銅が一番下で黒が一番上。俺にとってのレベルみたいなもんだな。

 

 ちなみに俺の把握するレベル認識の方は「技術力」まで込みで計算されるっぽいが、冒険者証にその機能はない。

 だから技術が達人級だけど老いて体が弱っている元冒険者とかは、冒険者証では正確な強さを測れなかったりもする。

 

 「実績」は文字通り。

 冒険者としてこなした仕事の実績が特殊な文字で記録、上書きされていく仕様だ。

 この文字というのが宝石によって刻まれており、加工は冒険者ギルドでしか不可能。偽ることは出来ない。

 実績が上がるにつれて宝石文字の石も高価なものになっていくが、こちらは文字を刻む者の好みで決めているとかなんとか。

 

 

 その二つを総合した上で冒険者としてのランク付けがされるのだ。

 こちらは職業(クラス)階級と同じで、全部で十段階。

 

 

 俺のレベルなら硬貨の色は間違いなく最初から練度最高ランクの黒金(くろがね)になる。

 けど黒金の冒険者はめちゃくちゃ少ないから目立つのだ。これは女になった事を隠したい俺としたらよろしくない。

 故に今回は魔力を低下させるデバフアイテムを用いて、白金の冒険者証を手に入れた。これでもかなり目立つし目立ったけど。

 

 でも目立つタイミングは完全に間違えたよな。

 

 俺は「な、なにィ!? こんな弱そうなやつが白金級!?」みたいなイベントを起こしてニヤニヤしたかっただけのに、変な子に会ってしまったので先を越されたし、変な感じになった。

 

 少しのつもりが書きすぎた。

 明日もあるし、今回はここまでにしておこう。

 

 頑張れ、明日の俺。

 

 

 

 

 

【俺のチートハーレム記 ○ページ目より】

 

 

■ ■ ■

 

 

 

 

「…………はぁ」

 

 

 俺はまだまだ白紙の多い手記を閉じると、今日の昼間を思い出して深くため息をついた。

 

 

 

 

 

 

 

 

+ + + + + + +

 

 

 

 

 

 

 

 

 下着屋から逃亡し目当ての冒険者ギルドに訪れた俺は、ざわつく冒険者たちの中心を意図的に無視しながら受付へと向かった。

 

「っす。冒険者登録したいんですけど」

 

 人ごみを縫って、注目が集まる方とは反対側の受付にたどり着く。受け付けは三つあるのだ。

 

「はいはい、いらっしゃいませませ~! 本日はご依頼でしょうか~?」

「いや、だから冒険者登録で」

「おっとっと。それは失礼しました」

 

 俺の挨拶より遥かに軽い調子で迎えた受付嬢。

 最初に言ったことをまったく聞いていなかったので再度申し出れば、彼女は軽く目を見開きつつ、小さな体でぴょいっとカウンターを超えてきた。

 そして金色の光をまき散らしながら俺の周りをくるくる回る。

 

 ……これ、言葉だけで元の世界の奴に説明したら「どんな受付嬢!?」ってなるだとうな。

 けど視覚情報が加わると、その動作は特におかしくはない。

 

 

 受付嬢は手のひらと同じくらいの、透明な羽の生えた妖精さんなのだ。

 この世界の冒険者ギルドは全て妖精が運営管理しており、ギルドマスターなんかは妖精王なのである。

 

 

「ふむふむ。一見弱そうですが、身のこなしに隙がありませんね~。ひやかしではないようで安心しました~」

「冷やかしでわざわざベテルキクスの冒険者ギルドには来ねぇって」

「いやいや、たまにいるんですよぉ。妖精王様の作る冒険者証は美しいですからね。登録だけしてぇ、手に入れたらベテルキクスの職人に加工してもらってお土産のアクセサリーに! なんて人とか~」

「マジ? まあここで加工してもらったら、そりゃいいもん出来るだろうが」

 

 ベテルキクスはゲームで言ったら中盤以降の街。ダンジョンの難易度も高いから、自然と集まる冒険者のレベルも上がる。

 だからそんな歴戦の冒険者が集まるギルドに入って、なおかつ登録するのは観光目的の一軒さんには難しいはずなんだが……。中には居るんだな、そういう奴。

 ちゃんと冒険者証について知ってたら、まずそんなことしようと思わないんだが。

 

 受付妖精が言うように冒険者証はとても美しいのだが、一定期間冒険者としての実績が無いと消えて妖精王の元へ返還されてしまうのだ。

 だからアクセサリーに加工する事や、冒険者証そのものを換金する目的で冒険者登録しても意味は無い。

 冒険者ランクが上がれば実績が無いまま時間経過しても消えないオプションをつけられるんだけどな。

 

 

 

「あ、そうそう」

 

 ふと思い出して、俺の後ろにくっついてきていたモモを振り返る。

 ……前は身長的に見降ろしていたのに、今は目線が同じなの変な感じだな。

 

「モモは実績の更新してもらえな?」

「ん、わかった」

 

 俺の言葉にコクリと頷いたモモが自分の冒険者証を取り出す。

 それを見た受付嬢の妖精が感嘆のため息をついた。

 

「まあ。まあまあまあ~! その若さで銀金(ぎんがね)ですか~!? すばらしいですぅ!」

「……そう? あっちは、もっとすごいのが出たようだけど……」

 

 妖精の褒め言葉に淡々と返したモモは銀色に紫色の宝石文字が刻まれた冒険者証を受付に置くと、まだざわついている奥の受付に視線を向けた。

 注目も人も全部そちらに集まっているので、こちらはすっかすかである。

 

「ああ。みたいですねぇ~。最初は迷子のお嬢さんかな? って思ったんですけどぉ。どうしても冒険者証が欲しいって小一時間ごねられて、渋々許可したらあれですよぉ。びっくりですよね~。初手黄金(きがね)なんて久しぶりに見ました~」

 

 確かにベテルギクスだと高位冒険者でも青金と銀金あたりまでだもんな、確か。

 

 実を言うとモモは通常形態では銀金レベルだが、獣人としてのスペックを最大限生かせば黄金に届きうる力を持っている。

 ただ本人がそこまで冒険者というものに執着が無いし、ギルドで力を開放した上での再計測が面倒だという事で銀のままだ。

 ちなみにアシュレは黄金で、シャティとガーネッタは白金。

 

「あ、そちらのあなたは登録でしたね。ではこちらを噛んでくださいませ~」

「ども」

 

 両手で抱えて差し出されたのは無色透明の硬貨。これを噛むことによって力に応じて硬貨の素材が変わるのだ。

 

 俺は周りをちらちら窺うが、残念ながらこちらを見ている奴は誰もいない。

 

『さっさとすませなよ』

(わーかってるよ! けっ)

 

 ちょっとは注目されていい気分を味わいたかったなと思いつつ、かみ砕く勢いで冒険者証に噛り付いた。すると変化はすぐに表れる。

 無色透明だった効果の内側に虹色の光が渦巻いたと思ったら、それが花火のように弾けて半径一メートルほどに光の粉をまき散らした。

 それは幾重にも重なって、一瞬視界が白く染まる。

 

(おわっ!?)

『なんで驚いてるの』

(いや、もともと色がついてる硬貨がランクアップするときはこんな派手じゃないし……)

 

 最初から高ランクのすごい色を出すとこんな演出あるのか。レベルアップチート持ちの俺もさすがに最初は低ランクからだったから知らなかったぜ……。

 

(そりゃ、あのお嬢さんも目立つわけだよな。多分似たような感じだったろうし)

 

 でもって。こんな現象が起きれば当然、女の子に向いていた視線のいくつかがこちらに向くわけで……。

 

「おっ、おっ、おおおおおお!?」

 

 一番驚いてるのは受付の妖精だ。

 見る見るうちに変色し、白金へと染まっていく冒険者証を見て……。彼女はどこからか、福引とか当たった時に鳴らすベルに似たやつを引っ張り出した。

 

 

 カランカランカラーン! と、ギルド内にベルの音が響き渡る。

 

 

「おおおおおおおお! でーまーしーたー! 出ましたよー! このララベルの受付からも、超大型新人がでーまーしーたーよー! ひょっほー!」

(テンション高いな!?)

 

 妖精も性格はそれぞれだが、この子のテンションは特別高い。ほどほどに目立って褒められたいなって思ってたけど、思ってたのとちょっと違うな!?

 こんな福引当たったみたいな感じじゃなくてさ……! もっと、こう……! なんか、もっといい感じの無かった!?

 

 しかし、困惑する俺の耳に周囲の声が届くとその内容は……。

 

 

「何ィ!? 白金だと!? あ、あんな小娘が。今日はどうなってんだ!?」

「白金……俺、初めて見た」

「二人とも女の子……。なに、ドラゴンかオーガにでも育てられたのか? どう生活してたら黄金だの白金だの出るんだよ!」

「俺、十年冒険者やってて青金だぜ……自信無くす」

「何かの間違いじゃないか?」

 

 

 再度ざわめきを増したギルドの中。

 全てを聞き取れないが、いくつか耳に入った声に「これこれ、これだよ~!」みたいな気分になって口の端がもにょもにょと緩む。

 おっと、いけねぇ。ここで変に嬉しそうな顔したら格が下がる。キリっとしてないとな!

 

『ほんっと、英雄くんは小物だよね性格が。実力はあるのに』

(え、なに。気分に水差す天才でいらっしゃる?)

『いやぁ、それほどでも』

 

 高揚した気分もすぐ魔王に鎮火されちまったけどな。お約束だから言わないけど褒めてはねぇよ!

 

 ああ~、もう!

 もうちょっと今の気分に浸りたかったのにー!

 

「すごいですね! 私、久しぶりに興奮しちゃいましたぁ! どうやってそんな強くなったんですか~!? 白金なんて全世界で百人も居ないですよぉ! わ~! レア! サインください! 今後の活躍に期待してます!」

「はっはっは。気が早いですよお嬢さん」

 

 回復した。手放しで褒めてくれる妖精ちゃんが可愛すぎる。

 俺は上機嫌で差し出された紙にサインを書こうとしたのだが……その時。くいっと服に裾がひっぱられる。

 

「ん? どうした、モモ」

 

 当然モモだと思って振り返ったのだが……そこには誰もいない。

 肩を叩かれ反対側を振り返るとそこにいたのがモモで……じゃあ服を引っ張ったのは誰だ? ともう一度反対側を振り返って、今度は視線を下に落とした。

 

 そこにはきらっきらした赤色の目でこちらを見上げてくるちんまい金髪の女の子。

 

「……えーと?」

 

 しゃがんで目線を合わせるべきか? 子供に対する対応がよくわからなくて一瞬固まっていると、女の子は満面の笑みで俺に言い放った。

 

 

「あなたのそれ、と~っても綺麗ね! ルリルちゃん様に献上する権利をあげるわ!」

「……は?」

 

 

 

 

 

 その数時間後。

 見知らぬロリに懇切丁寧に冒険者とは何か説明した上に、何故かケーキを奢らされている俺が居た。

 

 何で???

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 




2023.12.19>>加筆修正

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