メス堕ちしたくない俺の苦難八割TSチートハーレム記   作:丸焼きどらごん

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22話▶竜人~新たなチートスキル、マジ捨てたい

「あらあら、どうしたの? しけた顔しちゃってぇ」

 

 そう言って可憐に笑う金髪の美幼女であるが、その正体はおっさんらしい。

 しかし俺は未だその事実を受け入れられず、妙にあわあわとした態度になってしまう。

 

「女の子だと思ってた奴がおじさんだったらしけた顔にもなるわッ!!」

「ええ? でもルリルちゃん様、なんにも嘘ついていないわよ? 騒がれたら面倒だから種族の擬態はしていたけど、この愛らしさはありのままのルリルちゃん様だもの。勝手に騙されたのはそっちだわ」

 

 そう言うと幼女……ルリルはパチンと指を鳴らした。

 するとパキパキと音を立てて柔らかい餅のようだった肌に鱗がわずかに浮かび、ケーキをパクついていた口の中にはずらりと尖った歯が並ぶ。

 頭部からは小さく青い角が二本ぴょこんと生えて、赤い瞳の中心……瞳孔も縦長となった。

 極めつけに青いドレスの下からはなかなか太くて立派な尻尾が現れて、ドスンっと床の上に落ち着く。

 

 ルリルは「見て見て」と言わんばかりに自らの角を指差していた。

 

 ……竜人って、擬態できるんだ。

 

 いやいやいや、竜人だとかその辺はどうでもいいんだよ!

 

「そうでなくて、服とか喋り方とかさぁ! 俺が言いたいのは性別だよ性別! あと年齢!」

「それ、貴女が言う? 自分の事「俺」って言ってるじゃない。ルリルちゃん様もこの姿に相応しくて最高に可愛いと思うものを選んで着ているだけだわ。好きな恰好をして好きな話し方をする。なにかおかしくて?」

「~~~~! もうそのへんは、いい! とにかく俺は男に、しかも年上に奢るような趣味は無いんだよ。ちゃんとケーキ代払えよな! つーかお前いくつだ!」

「みみっちぃ子。で……なに、年齢? 四十六歳だけど」

「マジでおじさんじゃねぇかっ!!」

「失礼ね、さっきも言ったけど一族の中じゃ子供も子供よ! あなたたち人族で言えばじゅ……ゴホン。七歳くらいだもの!」

「子供である事をかさに着る行為を躊躇しねぇなお前!! しかも今、十って言いかけたよな? 種族差をいいことに鯖読んでるんじゃねーか!? 見た目は確かに七歳くらいでけど、本当はもっと上だろ!」

「細かい事はいいじゃない!」

 

 ぎゃんぎゃん騒いでいると、店主に頭を下げていたマイヨールとかいう執事服の竜人が戻ってきた。

 俺は男をぎっと睨むとルリルを指差す。

 

「さっさとこいつ連れてけ!」

「……ご迷惑をかけたことはお詫び申し上げます。ですがルリルちゃん様に無礼な態度をとるのはおやめください。ルリルちゃん様は竜王様のご子息ですよ」

「ぶっ!!」

 

 気分を落ち着かせようと飲みかけの茶を口に含んでいたら、とんでもないこと言われて吹いた。

 俺タイミングわっるいな!

 

 というか竜王……竜王!?

 この世界においてそれはけして将棋のタイトルの名前だとか、そういったものではない。文字通りの意味だ。

 

『へぇ、引きこもっていた竜の王族が外に出てきたわけだ。僕が居なくなったからかな』

 

 魔王が何か言ってやがる。

 

 竜族……その中には純粋な竜と、人に似た姿をとれる竜人が居る。

 他種族に比べて数は少ないが、まあ時々会うかな~くらいのレア度だ。けど竜王や王族ともなれば違ってくる。

 ……文字通り、竜王は竜を統べる王。その息子ともなれば王子様だ。

 

 少なくともこんな所でエンカウントする奴じゃねぇんだよな。真偽はともかくとして!!

 

「ふふふんっ、驚いたのかしら? まあ寛容なルリルちゃん様は無礼な態度も許してあげるけど」

「……モモ、竜人は初めて会った」

「まあ、そうなの。なら竜の姿も見せてあげたいところだけど、ここは狭いしやめておきましょうか。翼も出せないくらいだし。残念だわぁ~」

「あたりまえだ」

 

 ただでさえさっきの蛮行で「さっさと出てけ」って視線で店の奴とか他の客に見られてるのに、そんなことされてたまるか。

 というか、ああー! このやろっ、いくら弁償して謝ったからって更に追加注文しやがった! 店員の顔ひきつってるぞ!

 

「……はぁ」

 

 ……なんか一人で焦ってるのが馬鹿らしくなってきた。

 俺は脱力したまま椅子に倒れるように座ると、店員のおねーちゃんに特大パフェを注文した。

 モモも欲しそうだったので追加で更にもう一つ。

 

 食うしかねーよ、こんなん。今ならでけぇパフェも食えるわきっと。

 

 俺は店員の無言の圧を無視すると、机に頬杖をつき竜人ルリルをジト目で眺める。

 

「……で? 竜の王子様がなんだってお供一人だけ連れてぷらぷらしてんだよ。そのお供もさっきまでいねぇし」

「撒かれました」

「あんたはそれ堂々と言っていいの?」

 

 なんかこの執事、出来そうな男って見た目してる割に色々と駄目だぞ。

 主人には撒かれるし、見つけたと思ったら一緒に居る人間を前触れ無しに襲ってくるし。

 

 …………。いや本当に駄目だな!!

 俺だから対処出来たけど、他の奴だったら死んでてもおかしくないからな!?

 

 色んな種族が暮らす割に共存が成っているこの世界であるが、こういったバグった認識や価値観の違いやらには未だ慣れない部分もある。特に強い種族にとっては他種族の命など吹けば飛ぶような軽さであることもザラなんだよな。

 

 そのことに頭痛を覚えながら、俺は新たに来たケーキ(店員の人、もう面倒になったのか最初からホールケーキでもってきやがった)をパクつくルリルを見る。

 すると竜人のクソガキ様はフォークをぷらぷらさせながらあっさりと答えた。

 

「ルリルちゃん様が何をしていたか知りたいの? そりゃあ観光よぉ。厄災の魔王が居なくなったでしょ? やぁっと外出の許可が出たのよ!」

「ルリルちゃん様、観光ではございません」

「似たようなものだわ! それに本命の目的、もう済ませられそうだし」

「……なんと! このマイヨール、感服いたしました。私の目から逃れて遊びほうけるつもりだとばかり」

「ふ、ふふん。そんなわけないじゃない」

 

 いたく感動している様子の執事だったが、まあその辺の目的とやらまでは聞かなくていいか……。どうせここで切れる縁だ。

 そう思って運ばれてきたパフェにありつこうとスプーンを構えた時だ。

 比較的静かだった魔王が、何やら不穏な事を言い出した。

 

『君さぁ。この間、【職業(クラス)(フィーメイル)】の職業階級(クラスステージ)が上がったこと、忘れていない?』

(あ? 忘れてねぇよ)

 

 パフェのアイスうめぇ……。チョコ味かな。

 この世界、魔術器具が発達してるから普通にこういうもんあるのありがたいんだよな。

 

『だったら僕にその内容を聞くべきだと思うのだけど』

(ナビを名乗るならテメェから言えっつーの)

『本当に危機感が無いなぁ。待ちの態度はあまり感心しないね。僕と相対した時の慎重さはどこに家出しているんだい?』

(うるへー)

 

 疲労がたまった脳が甘味を求めているため、魔王への反応がおざなりになる。

 ……ただザワザワと胸騒ぎを感じるのは、これまで培ってきた経験ゆえだろうか。

 

 これ以上聞きたいような、聞きたくないような。

 そんな複雑な気持ちを抱きつつばくばくパフェを食い進めていると、ふいに魔王が実体化してビクッとなる。

 俺にしか見えていないとはいえ、心臓に悪い。

 

 魔王は少々物欲しげにパフェを見た後、咳払いしていつものごとく勝手に話しはじめた。

 

『現在の君の職業階級は第二ステージ、【職業(クラス)乙女(メイデン)】。昇級に伴い【魅了(チャーム)】の力も増している。もう一つ加わった技能(スキル)もあるけど、その説明はあとにしようか』

(…………)

『その魅了の力も、無差別とまではいかないけどね。せいぜい君に好意を抱いた者の好感度増加具合が序階より増した程度さ。……でもねぇ、ククッ。君、悪態つくわりに面倒見良いだろう。意外と律儀だし。……ふふふっ。相当心象良かったみたいだねぇ』

(なに笑ってんだよ)

 

 嫌な予感が増してくる。

 魔王は濁った色の眼をにやりと細め、口を三日月形に歪めた。

 

『やっぱり、あそこで振り払えなかった君の負けって事さ』

 

 

 

 魔王の言葉とほぼ同時に、その華奢さからは想像できない力で腕をがっちりつかまれた俺。

 そして……。

 

 

 

「ルリルちゃん様、お嫁さんはこの子でいいわ。強いし、なんだか運命的なものを感じるの! だからお嫁さん探しの目的は、これで完遂ね」

 

 

 

 聞いた瞬間、今度こそ振り払ってモモの手を引いて全力で逃げた。

 

 

 

 なんなんだよ、もぉぉぉぉッ!!

 

 ベテルキクスについて早々、妙な厄介ごとは勘弁だ!

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「……はぁ」

 

 手記を簡単にまとめ書き終えて、時刻は夜。宿屋の一室で俺はぐったりとベッドに沈み込んだ。

 魔王を倒して女になった日ほどではないが、濃い一日だった……。

 

「ったく。なんだって竜の王族に出くわしただけでなく嫁だなんだって言われるんだよ。つーかあのガキ、いやおっさん? あんな格好しておきながら恋愛対象は女なのか……」

 

 下着屋から逃げたことでシャティとアシュレには怒られるし、モモには逃げる途中から姫抱っこされて恥ずかしかったしで散々だ。

 モモは「とらないでって、手を出さないでって言ったのに! モモ、あの子きらい!」とご立腹だったが、いくら取られたくないからって抱えて逃げなくても……!

 パパ、「やだ、うちの子逞しい……!」ってうっかりときめいたらメス堕ちポイント溜まっちまったよ……はは……。

 

『モテモテだねぇ、英雄くん。さぞ幸せだろう』

「男に戻った状態でならな! いや戻れてたとしても、いくら可愛かろうが男は勘弁っ!! 俺は女の子が好きなの!」

 

 実体化してひょいとベッドに腰かけたクソガキ魔王は、それはそれは楽しそうな笑顔だ。

 ……そういえばここにもいたな。見た目がショタなムカつくクソガキ。

 こいつもルリルも実年齢がショタではないし、ルリルの方はといえばカテゴリ的には男の娘だったけど。

 

 考えてたらぐったりしてきた。

 もう今日はこのまま寝落ちだなと、のそのそ枕の方へ移動する。

 が、そんな俺に待ったをかける声。……魔王である。

 

『ところで君がナビとしての仕事をしろというなら、もう一つ教えてあげようか。さっきは言うのを控えたものだけれど』

「控えたぁ? もったいぶってる、の間違いだろ。謙虚な表現を使うなよ図々しい」

『はいはい、ごめんね?』

 

 素直に謝られたら謝られたで俺の方がガキみたいでムカつくな……。

 

 これ以上何か言っても流されるか煽られるだけだと判断して、歯噛みしながらも魔王の言葉を待つ。

 早く寝たいんだけど普通に気になるし、見た目だけでも子供になられると微妙に断りづらいんだよな……。こいつも中身はおっさんどころかジジイのくせに、卑怯な。

 ……話の内容って、多分さっき言っていた「追加された」技能(スキル)についてだよな?

 

 魔王は黙り込んだ俺をつまらなそうに見るが、「まあいいか」といった態度であっさり口を割った。

 

『【職業:乙女(メイデン)】には新たな技能(スキル)が追加されている』

「ふーん」

『興味ないフリが一秒も持つかな? ふふふ。……その技能(スキル)名は……【運命の出会い(エンゲージ)】!』

 

 ベッドから転げ落ちた。

 

「ッ!! ま、待て待て待て! なんか不穏な言葉に不穏なルビがついてる気配を感じる! 待て!」

『僕が待っても現実は変わらないよ? ふふっ、説明させていただこうか。これはね、自分にとって優良な"伴侶"となりうる異性と引き合わせてくれる技能(スキル)だよ』

 

 むせた。

 は、伴侶ぉ!?

 

『いやはや、第二ステージにも関わらず"運命操作"に関わるスキルを取得できるだなんてねぇ。これで君にもこの職業(クラス)がいかにすごいか分かるだろう? まあ魅了と同じで、今はそこまで強い力ではないけどね。ここ数週間はなにもなかったのがその証拠さ』

 

 魔王はもったいぶるようにゆっくり、ねっとり言葉を紡ぐ。

 俺は目の前がちかちかするような気分で、それを聞いているしか出来なかった。

 

『……でも。技能(スキル)発動の初回で竜の王子を引き当てるんだからすごいよね。ミサオ自身の運に加えて、それほど君に相応しい相手が少ないということかもしれないが。さっすが僕を倒した大英雄様だ。すごいすご~い』

「い」

 

 

 いらねぇぇぇぇぇえええええええぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇえぇえぁぁぁぁあああ!!!!!!!!

 

 

 声に出そうだった所、かろうじて内心に留めた。理性偉い。

 しかし理性くんが仕事したのはそこまでだった。俺の頭の中は当然パニックである。

 

 伴侶となりうる"異性"って……今の俺にとってはそれ全部男になるだろうがよ!!

 魅了以上にいらねぇよそんなもん!!

 俺の運っで、それ絶対凶運じゃねーか!!

 いらんいらんいらん! そんなスキルも運もいらん!!

 こんなもんチートでもなんでもねぇッ!! いや俺が男のままだったら間違いなく超絶ラッキーチートスキルだったけど!! でも今の俺は体だけとはいえ女なんだよ! 認めたくねぇけど! あああああああああああああ!!

 

 衝動的に叫びたい気持ちを我慢して、床をゴロゴロ転がりまくった。宿屋の床がぴっかぴかになるくらいには転がりまくった。俺はコロコロローラーかよ。

 

 

 

(俺の苦難、これ以上追加されなくてよくない!?)

 

 

 

 疲れて寝落ち寸前だったのに、結局その日は朝近くまで眠れない俺なのであった。

 

 寝られるかッ!!

 

 

 

 

 

 




おまけ※作者絵注意

ルリルベレス

【挿絵表示】


2023.12.22>>加筆修正
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