メス堕ちしたくない俺の苦難八割TSチートハーレム記   作:丸焼きどらごん

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27話▶求婚者×2~ネタでも俺のために争わないで!とか言わんからな

 高らかに名乗りを上げたルリルこと、ルリルベレス。

 

 さてこの夫だなんだと馬鹿いうロリおじさん竜人の世迷言をどう叩き落してやろうか。

 ……というかこいつ、自分を嫁でなく夫と称するってことは、女装してるけど性認識はやっぱり男なんだ。

 よう分からん奴。

 

 ただ冒険者ギルドでのごね方を思い出すに、下手な断り方をしても諦めなさそうなんだよな。

 こいつがどれだけの執着をもって嫁だ夫だと言っているか知らないけども。

 

 さくっと「あんたが俺に好意を感じてるのは【魅了(チャーム)】の影響だぞ」って言って納得してくれたら話は早いんだけどなぁ……。

 そもそも魅了事態の効果も自分じゃどの程度か分からないから微妙に説明しづらい。

 不本意ながら職業階級(クラスステージ)がひとつ上がっているため、以前より効果が強いのは間違いないんだろうが。

 

(う~ん。俺が元は男だぞって、言うとか? いやでもなぁ……さらに説明がややこしく……)

 

 俺がどうこいつを追い払おうかと考えあぐねていると、ふいに肩に手を置かれぐいっと後ろへ引き寄せられた。

 

「おわっ」

「…………。竜族の御仁。申し訳ないが、彼女は私が愛する者です。お譲りするわけにはまいりません」

 

 とんっと背中に当たる堅い金属鎧。

 しかし耳に言葉と共にあたる吐息は温度を伴っていて、柔らかく包まれているような気分になる。

 

「!!」

 

 突然に表れたルリルの存在や言動に、それまで困惑と共に成り行きを見守っていたアシュレ。しかしそれらを全て飲み込んで、俺が困らないようにきっぱり断りの言葉を告げてくれた。

 

 見上げてみれば、柔らかく涼やかな笑顔。

 ただ瞳に宿る光は強く、芯の強さが伺える。

 礼儀正しく、しかし決して譲らないという強い意志を秘めた言葉でもって、俺を守るように抱き寄せたアシュレ。

 

 ……その仕草は、あまりにもスパダリムーブが……過ぎた。過ぎてしまった。

 

 その不意打ちに俺が抗えるはずもなく。

 

 

 

 

 

【メスメロリンっ♪】

 

 

 

 

 ああああああああああああああッ!!!!

 

(知ってた!!)

『彼女、善意と好意と無自覚でどんどん君を追いつめるよねぇ。あはー。おもしろっ』

(面白くねぇよ! でもアシュレは……アシュレは悪くねぇ! 俺が耐えられないだけで……ッ! ちくしょー!)

 

 メス堕ちポイントが溜まる音に膝から崩れ落ちそうになるが、そんな場合ではないとなんとか耐える。

 そして俺がひそかに狼狽える中……ルリルベレスはギザギザにとがった歯を覗かせながら、アシュレを見て口を三日月形に歪めにんまりと笑った。

 

「あらっ、素敵。奪う恋って燃えるわよねぇ~」

(予想はしてたけど一切引く気がねぇなこいつ……!)

 

 アシュレの対応に不機嫌にこそなりはしなかったが、妙に楽し気な様子が逆に不穏なルリルベレス。

 ちんまい体だというのに、そこからは先ほどまでの巨体と同等の存在感を発している。

 

 ……それにしても俺の周り、性認識がガバな奴ばっかりじゃねぇか!?

 ルリルの奴、アシュレのセリフを聞いても俺達が(今は)女×女ってことには一切突っ込まれなかったんだが。

 いや、いざそれ言われたらルリルベレスお前はなんなんだよって話になるけど。……いやいやいやいや。えっと、こいつ男だったわ。

 性認識が男なら今は女の俺に求婚するのは一般的にはおかしくないのか。

 女といっても女じゃないけどな俺。

 

 ああもう、俺の方が分からなくなってきたぜ!

 

 俺が頭を抱えたくなっていると、次に俺の前にずいっと出たのはシャティだった。

 その純白の翼を広げて俺をルリルから隠すようにしてくれている。

 

「……ゴホンっ! ええと、失礼? ルリルベレス様と、おっしゃいましたね。どういった目的でミサオ様に求婚したのか分かりかねますが、ミサオ様はわたくし達の大切な方です。いきなり嫁によこせ! なんて言われても困りますわ。というか、お断りです! ね? ミサオ様」

「あ、ああ」

 

 シャティもキッパリと言い切り、俺にも確認をとるので頷けばルリルは首を傾げる。

 

「まあ、他にも仲間がいたの。ふふっ、華やかだわぁ」

 

 今気付いたとばかりに改めて俺の周り……アシュレ、シャティ、ガーネッタ、モモを見回すルリル。

 その視線は一見、友好的。

 ……多分だけど冒険者証が綺麗だから欲しかったって言うくらいだし、こいつ見た目が良いもの好きなんだろうな。

 それを考えると地味な俺に求婚したのはマジで【魅了】の効果だけな気がする。

 

 などと考えていると、ルリルはシャティに対しこちらも堂々と己の考えを述べた。

 

「それにしても、どういった目的で求婚したか……ですって? 目的。目的ねぇ。あるにはあるけど、愛しいと思える相手以外に求婚するほどルリルちゃん様は暇でも酔狂でもないのよ」

「い、愛しいって。あのなぁ、ほぼ会ったばかりだぞ!? 俺、好かれるようなことなんもしてねぇし……」

『なにごにょごにょ言ってるの? もしかして照れてる? ……へぇ、まんざらでもないんだ?』

(うっせ! ちがわい!)

 

 あまりにも自然に愛の告白をされたもんだから、相手が男と分かっていてもうろたえる。

 きっと見た目だけは美幼女だからだ。見た目だけは。

 

 あああ、もう! めんどくせぇ!

 そういやあの執事はどうしたんだよ! また撒かれたのかあの人!? 早くこいつを回収してくれ!

 

 動揺する俺の内心など知るはずもないルリルベレスは、俺をちらと見た後にシャティへ視線を移し言葉を続けた。

 

「まあ、愛するのに時間なんて必要? ……あなたもその子に好意を向けているのなら、目的がどうのこうのというのは、野暮というものじゃないかしら。だって誰かを好きになる時、明確な理由なんて好意の後付けでしかないわ」

「それは……」

 

 悠然とした態度で返されたシャティは一瞬言葉につまる。

 どうもこの竜人、年の功なのかその堂々とした態度が妙にこちらを納得させるような響きを言葉に伴わせているのだ。

 

 

 

 が。

 突然上機嫌なルリルベレスの顔を歪めさせる怒声が、真横から響き渡った。

 

 

 

 

「き、さまぁぁぁぁ!! この俺様に喧嘩を売る意味が分かっているのか!?」

「……はぁん?」

 

 声の方を見れば、身体中に葉っぱやら枝やらをくっつけた馬鹿魔族がふらふらと森から出てきたところだった。

 竜による正面衝突からの轢き逃げ事故はなかなかに効いたらしい。

 

 だが轢き逃げ犯もといルリルベレスは悪びれる様子もなく、むしろ小馬鹿にするようにせせら笑った。

 

「あ〜ら、ゴミ虫みたいに小さかったから気づかなかったわ。ごめんあそばせ? 悪気はないの。ただ気づかなかっただけなの! あまりにも存在が小さすぎて!」

 

 あ、見た目がいいだけが気に入る基準じゃないんだ。アルマディオもガーネッタの弟だから顔だけは良いのに。

 ……男だからか? 態度が気持ちいいくらいに反転するなこいつ。

 

「…………それにしても、ぷっ。俺様? なぁに、それ。自分の事をそんなふうに呼んで恥ずかしくないの?」

 

 いやそれはお前が言うなよ。自分の名前にちゃんと様つけてるやつもたいがいというか、その類では上位種だぞ。棚上げの天才かよ。

 そう思ったがアルマディオのやつはといえば一人称を貶されたのが相当気に食わなかったのか、カッと目を見開きルリルを睨みつけた。

 

「無礼なトカゲめ……! これから俺様は花嫁と婚礼をあげるのだ! 貴様のように生臭い輩がいたら場が汚れる! さっさと我が花嫁から離れて立ち去れ!」

「はぁ〜? 花嫁? このルリルちゃん様をトカゲと称した事実も許し難いけど、それ以上に馬鹿なことを言わないでくれる? この子はルリルちゃん様のお嫁さんにするんだから!」

「馬鹿なことを言っているのは貴様だ! ガキのままごとに付き合ってる暇はない!」

「あん? てめぇいくつだ魔族のクソガキがよ」

「五十五歳だが?」

「はぁん、一応ルリルちゃん様より年上なんだぁ~。でも九歳くらい誤差よね、誤差。ガキと言われる謂れはないわぁ~」

 

 あいつ子供としての身分は振りかざす癖にガキって言われるの嫌いなんだな……。

 つーか今めっちゃ声低くなかったか? なに、あの声ってもしかして作ってる? どっちが地声? こわ……。

 

 ルリルは基本的にあどけない子供の声できゃぴきゃぴ話すのだが、先ほど口悪く発した声はまさしくドラゴンの唸り声。

 どっちが素の声か考えると怖くなるので考えるのをやめた。ロリ女装おじさんの真実とか知りたくねぇよ。

 

 

 

 何やら言い争いどころか一触即発の雰囲気になってきたルリルベレスとアルマディオ。

 双方魔力を高めており、いつ戦いが始まってもおかしくない雰囲気である。

 

 ……けど、今ってチャンスじゃないか?

 

「なあ、今のうちに行かないか? あいつら放っておいて」

「あ~…………。それもそうですね。潰し合ってくれるなら大歓迎ですし。争ったからといってどちらかが死ぬような実力でもないでしょう。確かあの方、黄金(きがね)級の力はあるのですものね?」

「うん」

 

 アルマディオの実力を考えるに単純な力ではルリルベレスが劣りそうだが、これだけの数の魔物に囲まれても動じないんだし、危なくなっても逃げることくらい出来るだろ。

 ……見た感じ、周囲の召喚魔物の方がルリルベレスを警戒して動けないようだしな。

 

「ならミサオ様の言うように、今のうちにとんずらです! 時間がもったいないですわ」

「確かに、長くなりそうだしね。付き合う義理も無い」

 

 こそこそ提案した俺に、シャティが冷えた視線で目の前で行われている魔族と竜人の争いを眺めながら頷く。

 アシュレも少々疲れた様子で是と答えた。

 

「弟には聞きたいことがあったんだけど……どうせまた来るだろうし、今は先を急いだほうがよさそうだねぇ」

「モモも、それでいいと思う」

 

 額をおさえていたガーネッタも、不機嫌そうにルリルを見ていたモモも同意する。よし、全員合意だな。適当にずらかるか。

 間違っても……ネタでも「俺のために争わないで!」とか言わんからな。

 どんどんつぶし合え。男に興味はねぇんだよ!

 

 

「クソガキぃッ!!」

「雑魚がぁッ!!」

 

 

 ……あ、丁度始まったっぽい。

 

 二重に重なる怒声を合図に、爆風が中心から巻き起こる。

 何らかの魔術がぶつかり合ったようだが、丁度良い目くらましだぜ。

 あばよ! お前らに付き合ってる暇ねぇんだわ!

 

 

 

 そう心の中で捨て台詞を吐くと、俺達は求婚者(バカ)どもの戦いの余波に紛れてその場を後にするのだった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 




2023.12.26>>加筆修正
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