メス堕ちしたくない俺の苦難八割TSチートハーレム記 作:丸焼きどらごん
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途中で妙なトラブルこそあったが、どうにか賢者の結界内へ入るための準備は整ってきた。
次の目的地、リーデルを通過すれば賢者のもとまであと少しである。
ヘラトリクス、キャミタン、ハルニラム、アルフィターク、ベテルキクス、リーデル。
これら六つの土地にある中継ポイントを通過しなければ、賢者が施した結界内に入れないどころか場所すらも分からない。
今でこそ面倒ではあるものの手順さえ踏めば到達できるが、最初は苦労したものだ。
俺の頼もしい仲間達であるが、最初にアシュレ、次いでモモ、その次にシャティと来て最後にガーネッタが仲間になった。
賢者の所を訪ねたのはモモが仲間になってすぐの時くらいか。
アシュレの冒険者としての経験、知識とモモの感知能力。それらが合わさった上で更には運も味方してくれたのか、なんとか賢者の元へたどり着けたんだよな。懐かしい。
当時は元の世界へ帰りたくて仕方がなかったから、俺も結構必死だった。
ものの見事にその希望は打ち砕かれて、直後仲間になったシャティに乗せられてあれよあれよと魔王退治の旅になっていったんだけど。
全てが順調なら、今頃俺の人生どう転がっていたかな。
そう。帰れないなら世界を救って英雄になって女の子にモテてハーレムでウハウハ! とか思ってたのにな。
なんで俺は今、せっかくモテてるのにぐったりした気分になってるんだろうな。
体が女になって野郎にまでモテてるからだよ!! いらんわ!!
俺が異世界人であることは一目見ただけで看破した癖に元の世界へ帰るための方法は知らないと絶望を叩きつけてくれた賢者だが、今度こそ頼むぞという気持ちである。
悔しいけどあの人以上に物を知っていそうな存在を他に知らないし。どうしたって頼るほかない。
世界一の大賢者。それを聞いてほとんどの者が一人の名をあげる。
彼は
常に知識を求め、それを組み合わせ、種族や身分など関係なく知識と知恵を広める賢人。
広く評価され、崇められてすらいる存在だ。
だが近年はもっぱら住処に引きこもっているようで、滅多に外へ出てこなければ知恵を広めることもなく……半ば伝説の存在とささやかれていた。
そんな人と知り合いになれて困ったら尋ねに行けるんだから、きっと俺はラッキーだ。
だからマジで頼むぞ頼むぞ。俺が男に戻る方法を知っていてくれ賢者!
【俺のチートハーレム記 ○ページの記録より】
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賢者の隠れ家。そう聞いて思い浮かべる場所は人それぞれだろうが、少なくとも辺境の土地を想像するはずだ。
だが俺達が前にしているのは鬱蒼と生い茂る森……なんてベタなところではなく、人々が行きかい客寄せの声が飛び交う賑やかな商店街だった。
リーデルではさっさとポイントを通過し、最終的に向かった目的地がここである。
だが商店街と言っても、それが収まる町は虚像。本来ここに……"人が住む"町など存在しない。
……商店街を賑わせている通行人や商売人。それらはみな、人の姿を模した精霊なのだ。
よくよく見れば髪の毛の先などが空気に溶けて揺らめいていることなどわかるだろうが、一見してみれば本当に普通の人間である。
ここは賢者が快適に暮らすために作り出した精霊の町。
通常のルートでここに来れば草一本はえていない不毛の土地が荒涼と広がるばかり。
霊峰と呼ばれてはいる場所ではあるが、滅多に人など来ない。
しかし俺たちはポイント……"扉"となる場所を通過してきたため、こうして空間のずれた精霊街へ入ることが出来たってわけだ。
ちなみにここで生活している精霊たちは賢者と契約し、彼の魔力を報酬として人間もどきの営みを行っている。
下級精霊がほとんどだが、町を作れるだけの精霊を一人の魔力で賄っていると考えれば凄まじい。
賢者は知恵ある者としてだけの呼び名ではなく、魔術師を含め数種類の
「話には聞いていましたが、ここに満ちている魔力はすごいですね。歩くだけで魔力酔いしそうです」
「そうか? 俺はなんともないけど……」
シャティがどことなくフラフラしていたので支えると、これ幸いとばかりにぎゅっと腕に抱き着いてきた。
お胸様の柔らかさに一瞬くらっときたが、なんとか耐える。ここしばらく、この程度茶飯事だ。
……素直にデレつけない自分の現状が恨めしいけどなぁ!
「ミサオ様は魔力耐性も高いですからねぇ」
「ああ。もしくは私のように魔力感知の力が弱い者は平気なわけだが……。モモは大丈夫かい?」
「ん……へいき。ここの子達に、悪意はないから」
「ガーネッタもここに来るの初めてだよな。どうだ?」
「魔力酔いはしないね。むしろ力が満ちてくる。きっとここの子達の気質は私の魔力と相性がいいんだろうさ。……それにしてもこの様子じゃ、伝説の賢者様は世捨て人ってわけじゃなさそうだね」
物珍しそうに精霊の町を見回すガーネッタは、食と娯楽にあふれた様相を見て「気が合いそうだ」と笑った。
そんな風に雑談しながら歩いていると、視界の隅にぴょこぴょこうごく玩具の王冠を乗せた黒髪頭がみえた。
どうやら好奇心をくすぐられたらしい魔王は、実態化して町を見ることにしたようだ。
その姿は精霊からも見えないようで、誰も気づかず魔王の体をすり抜けて通過していく。
……賢者ならもしやこいつの姿も見えるかもと思っていたが、精霊にも見えないようじゃ本格的に俺にしか見えないっぽいな。
実はこれは俺の妄想で本当は魔王の魂なんて居ないとか……。
…………。
…………ねぇな。無駄な期待はやめよう。
しっかり呪われて女になるっていう結果が出てるし、あまり役に立ってないけど呪いのナビされてるし。
…………はぁ。
『心の中でため息なんて器用なことするね』
(ため息もつきたくなるわい)
『ふふふっ、まあ勝手に落ち込んでいるといい。僕は勝手に楽しませてもらうよ。…………バザールって雰囲気だね』
魔王は露店を覗き込んだり行き交う精霊を観察したりしつつ、町をそう評した。
四角い土壁と石造りの街並みに、色とりどりの布が天幕として使われている屋台。
確かに砂漠とかその辺の国っぽいよな。なんというか、アラビアン。精霊たちも布を重ねて巻くような民族衣装っぽいのを着ているし。
こう……なんだ。どこかで願いを叶える魔人が出てくるランプなんかが売っていてもおかしくない。
というか、珍しいものが多いから何かしら近いもんはありそうだな。
『ふぅん。少し騒がしすぎるけど、なかなか趣味もいい。異界へ座標をずらして作った町か。その賢者ってやつ、面白いことをするねぇ。存在こそ僕も知っていたけれど、俄然興味がわいてきたよ』
(さよけ)
こまっしゃくれた物言いをしているが、町を見回す魔王の様子はどこか楽し気で、こうして見ていれば普通の子供のようだ。
これで黙ってさえくれてれば、まだ可愛い子供だなって微笑ましく見てられるんだが。
そう考えているとすぐに『君に可愛い子供とか思われたくないんだけど。身の危機を感じる』とか返ってくるので、叶わぬ夢である。
つーか身の危機ってなんだよ!!
俺はショタコンでもないし身の危機に晒されてんのはこっちの方なんだよ呪い的な意味で!
あとお前は実態ねぇだろうがよ!! たとえ触れるんなら引っぱたいてるけどそれもできねぇよ!!
ああ本当、早く呪いを解いて男に戻りたいしこいつとおさらばしたい。本当に賢者、頼むぞ。
「そろそろか」
のんびり歩きつつも、寄り道はしないで俺たちは確実に目的地へと向かっていた。
そしてたどり着いたのは他の建物に埋もれるように存在する、くすんだ灰茶色の家屋。
みすぼらしい木の扉が、俺たちの目的地だ。
女になってからそろそろ一ヶ月。
長かった……。ようやく相談に来れたぜ。
なにやら目的地に到着した安心感からか、一気に疲れが押し寄せてくる。
だがまだ目的は何も達成していないのだからと、気力を呼び覚まし扉の取っ手に手をかけた。
……その時だ。
バンッと音を立てて勢いよく扉が内側に開いたと思ったら、見えない何かにぐいっと胸ぐらを捕まれ中に引きずり込まれた。
なんだなんだ!? と身をよじって見えない拘束から逃れようとするが、その前に『運んでやるから大人しくしていろ』と聞き知った声がどこからか降ってきて納得する。
どうやらこれは家主の歓迎らしい。
……前はこんなことなかった気がするんだけどな?
捕まれ引かれるままに体は宙を浮遊し、扉の先にあった長い階段をすーっと降りていく。
左右に灯った蝋燭しか光源がなく、雰囲気だけはバッチリだ。何がバッチリか自分でもよくわからないけど。
やがて長い階段は終わり、続いてこれまた長い廊下に至る。体は相変わらず浮いたまま、そこを進んだ。
ちらりと後ろを見ると俺だけでなく仲間四人とも何かに引っ張られるように浮遊しているが、もう慣れたのか自分で飛んでいるかのように自然体だ。
それを見て俺もようやく体から力を抜き身を任せる。
(インテリア変わったなぁ)
運ばれながら周囲を観察すると、迷路のように道が枝分かれしている廊下の装飾は西洋風。
前は中華風だったんだが、模様替えでもしたんだろうか。
(そういや、前来た時も迷ったな。運んでくれるのは素直に親切ってわけか)
『……ここ、もしかして
(お、よくわかったな。そうそう。賢者のやつ、小迷宮を改造して自分の家にしてるんだ)
魔王の言葉に是と答える。
そう。この不思議ハウスに見える物件、上だけはちゃんと建物があるもののそれはガワ。地下は迷宮へと繋がっており、その最奥に賢者の住処がある。
もともとこの場所には迷宮が存在しており、賢者はそこを中心に精霊の町を作ったらしい。
結界内に居るくせに更に迷宮の奥に引きこもっているとあって、本当に会うのが大変な人だ。
にしてもようやくこの浮遊感にも慣れて……うおっ!?
それまで自転車くらいの早さだった移動速度が急に自動車並になる。
勢いのまま進むと正面に豪奢な装飾が施された扉が見えてきて、俺達は観音開きになったその中に投げ込まれるように入室した。
「どわっ」
「きゃっ」
「おっと」
「わぁ」
「っと」
それぞれ驚きの声をあげつつも、受け身をとる必要はなく体は柔らかいものに受け止められる。
それはクッションの敷き詰められたソファのようで、五つあるそれに一人ずつ座らされる格好となった。
若干目を白黒させていると、鼻腔をくすぐるいい匂いに鼻がひくつく。
見ればソファの前に用意された広いテーブルには、所狭しと湯気のあがる料理やカットされた瑞々しい果物、水滴が張り付きよく冷えていることが窺える飲み物の入った水差しなどが並んでいた。
「久しいな」
そして料理が並ぶテーブルの向こう側。
あぐらをかき体を傾けて、気だるげにソファのひじ掛けに頬杖をついている男が一人。
こちらを観察するように眺めているアイスブルーの視線とぶつかった。
白髪を後頭部の高い位置で結っていて、ゆったりとした下履きを鮮やかな布で腰に留めている。
上半身は軽く布を羽織った他はジャラジャラと重そうな貴金属を身につけているだけで、惜しげもなく逞しく筋肉のついた褐色の肌を晒していた。
尖った長い耳がこちらへの興味を示すかのように、わずかにぴくぴく動く。
ぱっと見、三十代半ば。
しかしこの男が五百を超える
世界一の大賢者と名高い男の名はカリュキオス・ラトワイヤス。
種族はダークエルフだ。
2023.12.26>>加筆修正