メス堕ちしたくない俺の苦難八割TSチートハーレム記 作:丸焼きどらごん
「嫌いなものはないか? まぁ俺の料理だから、たとえ嫌いな食材であれ美味い美味いと食ってしまうだろうが。だが体質に合わないもの、というのは存在する。その場合美味さは関係ないからな。体調に関わる故、そういったものがあれば言ってほしい」
「あ、ありがとう」
一カ月ほどかけてやっと賢者の元へたどり着いた俺達。
そして到着したら早々に相談を持ち掛けようとしたのだが……。
何故か俺たちは今、せっせと俺たちに料理をよそっては食わせてくる賢者の歓待を受けている。
「獣人の少女よ、肉は好きか?」
「うん、好き」
「うむ、ならばこれを食すがいい。モチモ豚の香草焼きだ。育ち盛りのようだからな。たくさん食え」
「ありがと、賢者のおじさん」
初対面ではないけれど、基本男嫌いのモモの警戒心をいともたやすく溶かす賢者。
「騎士の少女よ、肌が少し荒れているな。これを食すがいい。フルフラ鳥のマト煮込みだ」
「少女という年齢ではないけれど……ふふっ。貴方にしてみれば私など子供なのでしょうね。賢者殿のお心遣い、ありがたく頂戴します。気を付けていたのだけど、確かにここ最近少し荒れ気味だった。疲れが出たのかもしれませんね」
普段大人びた雰囲気を纏うアシュレから気恥ずかしそうな照れ笑いを引き出す賢者。
「魔族の女、なかなか甘いものが好きなようだな。こちらの果物は素のままでも甘いが、加熱するとさらに甘さを増すのだ。食してみるがいい」
「そこは私も少女と言ってほしかったね」
「……失礼した」
「あははっ、冗談だよ! ありがとね。美味しくいただいてるよ」
ガーネッタのからかいにも誠実に返し打ち解ける賢者。
「有翼人の女。それだけ見事に脂肪を蓄えているとあらば、さぞ乳料理が好きと見た。こちらのチーズはなかなか珍しい魔物の乳を使っていてな。栄養も豊富な上に深みのある味でおすすめだ。食すがいい」
「脂肪!? 脂肪って言いました!? わたくしの胸を見て脂肪とおっしゃいました!? 美味しくいただいておりますが、それはあまりにも失礼ですわ!」
「…………」
「なぜ黙るのです!? わたくしには失礼した。って言わないんですか!?」
外面の良いシャティの仮面を一瞬で剥がしてみせる賢者。
とまあ、食事の場は賢者の気遣いのおかげで大変に温まっている。
みんな美味しい料理に舌鼓をうち、楽しそうだ。
カリュキオス・ラトワイヤス。彼は世界一と名高い大賢者だ。
見た目は年若く整った容姿の偉丈夫なのだが……。
甲斐甲斐しく一人一人に料理を取り分ける様子は、言葉使いこそ厳めしいものの田舎のばあちゃんを彷彿とさせた。
俺がこの世界に来る数年前には他界してしまった祖母だが、遊びに行くと食い切れないほどの料理をいっぱい食えとすすめてくれたっけ。
あれ、思い出したらちょっと涙が……。
などと感傷に浸っていると、賢者が俺を見て口を開いた。
「ところで人間。お前はミサオで間違いないか?」
「今さら!? これだけ歓迎しておいて、今さら!?」
久しいな。とか言われたから当然俺の現状を言わずとも理解してくれたんだな、さすが大賢者様だなって感心してたのに!?
俺が突っ込むと、賢者……カリュキオスはふむ、と顎に手を当てて俺を頭の天辺からつま先まで観察した。
『ねえミサオ』
(なんだよ)
じっくり眺められてわずかに緊張していると、魔王の野郎が相変わらずの遠慮の無さで話しかけてきた。
しかし珍しい事にその声色はどこか困惑を含んでいる。
……なんとなく、その理由はわかるんだけど。
『何故、彼は裸エプロンなんだい?』
(言うなよ!!!! 誰もあえて突っ込んでなかったんだから言うなよ!!!!)
せっかく我慢してたのに!
……そう、この世界一の賢者カリュキオスは現在、何故かピンクのフリル付きエプロンと三角巾のようなものを身に着けているのだった。
フリフリエプロン。趣味は人それぞれ……自由だ。だからそれだけなら問題ない。
……問題があるとすれば、その下というかなんというか。
上から下まで生の肌が、あられもなく晒されてるんだよなぁ!!
何も身に着けていないわけではないが、ぱっと見は完全に裸エプロンである。
二メートル近くある筋骨たくましい男のフリフリ裸エプロンは、いくらいい男だろうが視界の暴力だろ!
いや、さっきまでの服は何処に行ったんだよ!? 露出は多かったけどズボンは穿いてたじゃん!!
(で、でも、裸ではないし……)
『僕、賢者の下着がティーバックなことも指摘しなきゃ駄目?』
(だからぁぁ!! あえて突っ込んでないって言ってんだろ!! 俺だって目のやり場に困ってんだよ!!)
さっきから賢者は厨房と広間を忙しなく行き来しているのだが、こちらに背を向けるとエプロンの後ろ側が見えるわけで。
逞しい褐色の肌が織りなす広背筋を辿ると……その下にはこれまた逞しいケツ筋。黒のレース付きティーバックに包まれたそれが、俺達の視界の端を舞うのだ。
エプロンで前側のふくらみが隠されているのが、せめてもの救いである。
そのことにモモ以外の誰もが何か言いたそうな顔をしていたが、賢者があまりにも自然体でもてなし始めたので完全にタイミングを外したのが現状だ。
俺は突っ込みたくてたまらい気持ちを押さえながらも、しどろもどろに賢者に問いかけた。
もちろん、裸エプロンとティーバック以外の事で。その話には極力触れない方向で行きたい。
「え……っと。これだけたくさん料理を用意してくれてたってことは、俺達が来るのは分かってたのか?」
「当然だ。各地に設置した結界門を通過した時点で把握していた」
「そ、そうか。俺がミサオってのは、そう。そのお通り。俺はアイゾメミサオだよ」
「ふむ、やはりな。魔力の質が完全に一致している」
俺の答えに満足したのか賢者はうんうんと頷く。
「まあ話は後で聞こう。今は俺の料理を堪能するとよい」
「それはありがたいけど……。あんた、こんな特技あったんだな。料理する人とは知らなかった」
「? むしろ出来ないと思われている方が心外だ。料理は叡智の結晶だぞ。賢者たる俺が出来ないはずなかろう」
「あ、はい」
駄目だ。裸エプロンが気になりすぎて話を本題にもってけねぇ。
流れのままに会話するのが精いっぱいだ。
「でも、出来るからって、どうしてこんな盛大に持て成しを? 前は茶も出してくれなかったのに」
「女性をもてなすのは当然だ。逆に聞くが、男を歓迎して楽しいか? わざわざ手料理を作ってまで」
「あ、はい」
秒で納得させられた。
「でも、前だってアシュレとモモは居たのに……」
「お前がひたすらに邪魔だった」
「邪魔は無いだろ!?」
「邪魔だ。でかい図体の男が俺の住居に入ってくる苦痛を受け入れただけ寛大だったと思え」
「そこまで言う!?」
「それに比べて今の姿はちょうどいい大きさだな。しかも女だ」
「それを相談に来たんだよ!!」
叫ぶ勢いでやっと本題を持ち出せたが、残念なことに賢者は興味なさそうだ。
それよりも厨房の鍋をそわそわと気にしている。
「ともかく今は食え。そして肥えろ。俺の目を楽しませるために」
「ちょっと待て今聞き捨てならない台詞が……」
「……ふむ。ミサオ、お前なかなかいい膨れ具合だな」
「ぎゃああああああああ!? ちょ、おま、あんた! 腹を触るな!!」
突然服をめくって腹を触ってきた賢者に悲鳴を上げる。
だがそんな俺に構わず、賢者はたくさん食わされ膨れた腹をぽんぽん叩くように触っていた。
無表情だというのに、その様子はどこか楽し気だ。俺はまったく楽しくないが。
「賢者様!! お持て成しは嬉しいですが、いくら何でも無礼ですよ! ミサオ様になんてことをするのです!」
真っ先にシャティが割り込んで賢者から俺を引き離してくれたが、賢者はと言えばシャティを見てつまらなそうに言う。
「有翼人。お前はいくら食わせても腹が膨らまずつまらんな。みんなその胸に吸収されているのか?」
「ミサオ様。この方、いっぱつぶっ叩いてもいいでしょうか?」
「いいと思う」
賢者、こんなデリカシー無い奴だったっけ。
俺はかつての記憶に思い出補正かかってんのかなと考えつつ、にわかに騒がしくなる食卓を半笑いで眺めるのだった。
2023.12.26>>加筆修正