メス堕ちしたくない俺の苦難八割TSチートハーレム記   作:丸焼きどらごん

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34話▶勉強と迷宮トイレ事情~色々と瀕死です

 女性三人から女性特有の生理現象について娘のように思っている少女と一緒にレクチャーを受けることになりました。殺してくれ。

 

 いや男に戻ってチーレムモテモテ生活で寿命めいっぱいまで元気で生きるまで死ねないし死なねぇけどな!!

 俺はこの世界でいっぱい幸せになって、たくさんの家族に囲まれて布団の上で安らかに眠るように死んでやるんだ!

 それまでは何が何でも生きてやるわッ!!

 

 

 

 

 

 落ち着ける場所を求めて最寄りの町へ立ち寄った俺たちは、そこでしばらく滞在することにした。

 

 というのも、俺の様子から生理が来るのが近いんじゃないかってことで……。

 まあ、例のお宝が眠る高難易度ダンジョン潜ってる最中に来ても困るから、いざその時までは少しのんびりしようという事になったのだ。

 魔王退治からなんだかんだバタバタしていたからゆっくり出来る時間こそ嬉しいが、理由が理由だけに複雑である。

 件の生理現象も来そう……というだけで、実際はまだ始まってないわけだからな。時限爆弾抱えてる気分だぜ……。

 

 

 ちなみに俺が闇堕ちだと勘違いした症状なのだが(今思うと勘違いの仕方が我ながら中二病過ぎて恥ずかしい)、魔王いわく「生理前症候群(PMS)」というものらしい。生理が始まる前に起こる体調や感情の変化を示すものなのだとか。

 シャティ達にも同じようなことを言われたけど、だから何で魔王が当然のごとく名称まで知ってんだよ怖いわって震えたわ。男だろうがよお前も……!

 

『……………………………………。ふん、自分の無知を棚に上げるのはかっこわるいよミサオ』

 

 やけに間を挟んだ後でそんな風に言われたが、間の長さを考えるにこいつもちょっと恥ずかしかったんだと思う。

 いやでも、女性への理解が深いってことは……あれか。それで彼女とかの不調を慮ってましたよってことか? ち、ちくしょう。魔王の前世にモテ男の片鱗がちょいちょい垣間見えて敗北感が……!

 

『君、やっぱり妄想力豊かだよね。勝手に想像して勝手にダメージ受けてるの最高に滑稽。ははっ』

(うるせー!)

 

 

 ……にしても、女の人が生理中に機嫌が悪くなるってのはボンヤリ知ってたけど、生理前まで不調になるのか。

 もしかしてそれって下手したらひと月の半分は体調不良ってことか? う、うわぁ……。

 しかもこれが今は他人事じゃないんだら顔が引きつる。

 アシュレなんかは薬湯や食べ物を変えることで変化を最小限に抑えているというが、聞いてるだけでコンディション管理が大変そうだ。

 

 そのアシュレが言うには、だ。

 

 

「君の様子を見ている感じだと……生理での症状も重そうだね。覚悟しておいた方がいいかな。でもその時は遠慮せず、安心して頼ってほしい。私が支えるよ」

「はは……。ありがとう……ははは……」

 

 相変わらずアシュレは優しく頼もしいが、俺今どんな顔でお礼言ってるんだろう。

 宿の一室でモモと一緒に基礎知識から叩き込まれている俺は、メモをとりながらも机に顔を沈ませた。

 

 

 

 

 

「ところでミサオ様、あの賢者……カリュキオス様の代表的な功績と言われているものが何かご存知でして?」

「え? ……あ~……と。冷蔵、冷凍魔術の魔技術化?」

 

 授業が進むごとに目が死んでいく俺を見かねてか、シャティがそんな質問をしてきた。

 

 

 賢者カリュキオスの功績。

 それを聞いて真っ先に思いつくのは、冷蔵と冷凍の魔術を家電製品のごとく誰もが使える形にしたものだ。

 ベテルキクスの飲食店でも恩恵に預かったが、あれのおかげでこのファンタジー世界でもアイスなんかが食べられるし食料も長く保つ。

 賢者の発案までそういった技術が無かったと思えば、まさに画期的と言えるだろう。すごい功績だ。

 

 そんなぱっと思い至ったものを述べると、シャティは笑顔で頷く。

 

「ええ。もちろん、それも挙げられますわ。まさに革命でしたね。あの技術のおかげで様々な発展がありました。……それに加えて、同じくらい素晴らしき功績として称えられているものがあるのはご存知ですか?」

「へぇ、そんなのあるのか。あの人本当に大賢者なんだな。……その功績って?」

 

 生理の話題から逃れられると思って身を乗り出して興味深げに耳を傾ける。

 レベルアップの恩恵もあって五年で普通以上の知識を蓄えられた自覚はあるが、それでもまだまだこの世界の事について知らないことは多い。

 だから単純に聞くのが楽しくもあるんだよな。

 

 

 しかし。

 

 

 

「トイレ問題です」

「……ん?」

 

 聞き返した俺に、至極真面目な顔でシャティは繰り返す。

 

「トイレ問題です。特に迷宮内における、と付け加えましょうか。今では迷宮内に限らず各所普及しておりますが」

(あ、これ多分生理と地続きの話だ……!)

 

 どうやら別の話題で気分転換させてくれようとしたわけでなく、関連性のある話題だったらしい。

 

 うおおおおおお! 早く終わってくれ!! 俺の心が持たねぇ!!

 

 

 

 

「生き物ですからね。どんな英雄や猛者でもどうしたって、排泄行為は必要になってきます。ですが迷宮内でのそれは羞恥と命の危機が隣り合わせの行為……。以前まではとても辛いものでした」

「あ、うん」

 

 俺が内心大絶叫している中でもシャティによる説明は続いていたらしく、はっと我に返って返事をする。

 まあ、尿意やら便意やら馬鹿に出来ないからな……。戦闘中に便意が襲ってきたらマジで最悪。敵を倒す膂力より紅毛括約筋の力が試されるのだ。

 

「油断している無防備な状態を迷宮魔物に襲われてはたまらないし、仲間に見張ってもらっている間に事をすませるにも……その。音とか聞かれたくないだろう? 臭いとかも。でもそこは我慢するしかなかった。加えて用を足した後の排せつ物の問題もあったね。土の地面なら掘って埋めればいいが、石畳だとそのままになる。迷宮魔物に関しては迷宮自体の自浄作用が働くけど、外部の者が残したそれは消えないからね。衛生的によろしくはなかったと聞くよ」

 

 アシュレの捕捉を聞いて「な、生々しい迷宮事情……」と眉を寄せる。想像したくねぇ。

 昔はそんなんだったんだな……。

 

「ですが、そこで賢者カリュキオス様がある技術を広めました。結界と分解の効果を備えた「仮設トイレ」と分解に特化した「分解紙」ですね」

「あれって賢者の発明だったんだ……」

 

 そりゃ崇められるわって納得した。

 

 迷宮内にはなんとトイレが存在する。しかしそれは特殊な迷宮を除き、元からついていたものではない。

 魔力を用いた工作技術、魔技術によって作り出された「仮設トイレ」が専門の業者によって設置されているのだ。

 

 迷宮の奥や新規で見つかった場所に設置するほど報酬が高くなるらしいが、設置にはそれなりに知識が居るらしく専門業者以外が取り扱う事はほとんどない。

 その仮設トイレには俺もめちゃくちゃお世話になっている。

 

「迷宮自体の魔力を吸い取り存在を維持、使用者の魔力で補強し使用可能となる「仮設トイレ」は使用者の気配を薄くし魔物を寄せ付けないし、排せつ物を分解し消滅した迷宮魔物と同様に迷宮へ魔力として還元します。その簡易版が分解紙および探索用の下着ですね」

 

 下着と言いつつ、シャティが指す分解紙を用いたそれはぶっちゃけオムツのが意味合い的に近い。

 

 こちらは基本使い捨てで、排せつ物を受け止めた後に魔力に還元こそしないが無臭の砂のような物質に分解、変換して専用の付属袋にたまるのだ。

 もし迷宮内、緊急時に催したとして仮設トイレも無かったら……まあ命の危機もあるので仕方のない事態となることもある。

 そんな時の保険が探索用下着。そこそこ値段するけどな。

 

 冒険者になりたての頃、その重要性は嫌というほど実感した。

 まだこっちの食べ物に慣れてなかった頃だから、よく腹を壊してたんだよな……。

 ううっ、嫌な事思い出したぜ。

 

「そしてその分解紙ですが、更に効果を薄くして量産、安価となった代物があります。それが何に使われているかお分かり?」

「あー……」

 

 うん、わかった。この流れなら、うん。

 その……いわゆるナプキン、というやつか。

 用途的に普通にオムツでも使われてそうだけど。

 

「ご理解いただけたようですね。そう、これから買う物の一つです! 経血を受け止めてくれますので、普通に処理するより格段に冒険がしやすくなるのですよ。流通し始めた同時期から女性冒険者の台頭が目立ち始めましたからね。わたくし達にとっては必須アイテムです!」

 

 意気揚々と解説するシャティであるが、俺としてはひたすら気まずい。

 下着の次は生理用品……もちろん諦めたわけではないが、男としての自分がどんどん消失していく気がする。

 もう何度目になるか分からない重く深いため息が自然と口から吐き出された。

 ……周りが動じていないだけに、こんな自分の反応が女々しくて余計に泣けてくるな。

 俺の仲間の女性陣が頼もしすぎるので、女々しいって表現を使うのも憚られるんだけどさ。

 

 

「ミサオ」

「ん? なに、ガーネッタ」

 

 ちょんちょんっと肩を叩かれて力なく顔をあげると、金色の瞳が俺をまっすぐに見つめていた。

 褐色の肌、彫りの深い整った顔。目元に大きく傷が刻まれているが、それが彼女の美しさを損なうことは無く猛々しい美を際立たせている。

 そんな美女が俺にひとつ提案をする。

 

「少し外を歩いてきたらどうだい?」

「! ならモモも……」

「悪いけど、モモはもう少しお勉強だ。……ね?」

 

 生理については動じることが無くともじっとしているのが退屈だったのか、ガーネッタの提案にモモが椅子から腰を浮かせる。しかしやんわりと肩を押され椅子に座らされる。

 ガーネッタの言葉にはアシュレ、シャティも頷き「あ、気を遣わせたな」と理解した。流石に気づかないほど俺も鈍くない。

 

 きっと気分転換にと、一人の時間をくれようとしているんだ。

 

 

 

 

 …………まあ、今の俺はどうあっても一人にはなれないんだけどな! ちくしょうめ!

 

 

 

 

「あ~……と。サンキュ。そうさせてもらうわ」

 

 だが、せっかくの気遣いだ。

 俺は彼女達の言葉に甘えて、一人宿の外へ散策に出かけるのだった。

 

 …………ストレス発散と小遣い稼ぎに魔物でも狩るかな。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 その約一時間後。

 

 

 

「多いわ!!」

「も、申し訳ない……!」

 

 

 

 何故だか当初の予定から数百倍の数の魔物に取り囲まれている俺が居た。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 




2023.12.30>>加筆修正

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