メス堕ちしたくない俺の苦難八割TSチートハーレム記 作:丸焼きどらごん
「僕を弟子にしてください!!」
俺は現在、人生で初めて土下座付きのお願いをされている。
された感想はなんというか、気分の良いものではなく……ひたすら困るというものだった。
うん。
断りにくいといった気まずさを相手に与える分、土下座って実は弱さと下手を装った暴力なんじゃないか?
助けたガキを連れて一度町に戻った俺だったが、危惧していた魔物の残党狩りは発生しなかった。
何故なら俺の攻撃範囲外に居てまだ無傷だったはずの魔物が、全て消えてしまったからだ。
事の次第を当事者である少年に聞きシャティが推測したところ、中心にいた「悪意の化身」とやらが魔物の発生元。
そいつが死んだから、連動して生み出された魔物も消えたのだろうとのこと。
今回の相手、俺が思ってた以上にヤバい奴だったっぽい。
発生元はここから結構離れた場所に存在した未発見の迷宮だったらしいが、そこからこの町の間にあった町一つと村一つがまるっと吞み込まれて消えたとか。
おそらくあのままならば、この町も同様に地図から消えることになっていただろう。
そのため町長やこの町の冒険者ギルドの支部長からずいぶんな感謝を受け、色こそ白金だが実績がゼロだった俺の新しい冒険者証には七の文字が刻まれた。実績経験値、盛り盛りである。
ちなみに冒険者証へ刻まれた宝石文字は金剛石……ダイヤだ。嬉しいけど白金にダイヤだと色的に見にくい。
にしても、実績ゼロから十段階中の七へランクアップて……。
こつこつ活動を重ねてた前の冒険者証の一つ下のランクまで一気に跳ね上がったのなんなんだよ。
どんだけヤバい奴だったんだその発生源の魔物。怖っ。
でもそれを結構雑に処理出来てしまった自分に「やっぱり俺、強いよな!?」と自尊心は少し回復した。
女にされてから色々見失いがちだったから……!
あれだ。パワーこそ力だぜ、やっぱり。
ちなみに俺が魔物を倒した立役者であることは、証人として例の少年が経緯と共に熱心に証明してくれた。
俺の攻撃がどれほど凄かったか。語彙力を駆使して体全体を使いこれでもかというくらい臨場感たっぷりに説明する様子は、なんかこう……特撮ヒーローを見てはしゃぐ子供みたいだった。
でもって、こいつにとってのヒーローは俺ってわけだなぁ!
あまりにまっすぐ褒めてくれるもんだから、俺の自尊心と承認欲求はぎゅんぎゅんと満たされた。
少年にずいぶん乱暴に接してしまって悪かったなと思うくらいには。
でもまあ、怪我を治したという意味でも、その後で魔物から助けたという意味でも正真正銘命の恩人だしな~、俺! 超ヒーローだよな~。
つーか魔王倒してんだし、勇者? そりゃあ憧れちゃうのもしょうがないよな~! うんうん。
そんな風に人工呼吸うんぬんを忘れて、感謝を述べる少年に気持ちよく「いいってことよ」と気さくに返した俺ってマジかっこいいな、いい男だなー! って思ってたんだよ。
ここまでは良かった。
その後での、土下座と弟子入り志願である。
「え……やだよ。断る」
「そこをなんとか!」
「でぇいっ! 縋るな縋るな!」
速攻で拒否った俺の腰にひっつき懇願するように見上げてくるガキ……ルキと名乗ったそいつは、俺が後ろに飛びのくと再度地面に頭を擦りつけた。
「僕の命は貴女に助けていただきました! つまり僕の命は貴女のもの!! お役に立てるくらい強くなって一生尽くすことを誓いますので、どうか連れていってください!! 師匠!!」
「いや重いわ! あと誰が師匠だ弟子なんざいらねぇんだよ!! 俺、今それどころじゃねぇから! マジ!! これマジ!!」
感謝の念も行き過ぎるのは考え物だなと思いつつ、緑色の頭髪が生える頭をぐいっと上げさせた。
ちなみに現在居るのは冒険者ギルドの待合室で、俺は他の事後処理や現地の迷宮調査を申し出てくれた仲間達の帰りを待っている。
大仕事をしたんだから休んでいろという仲間達の言葉に素直に甘えた形だ。
アシュレやガーネッタあたりが居てくれたら、上手い事言ってくれたんだろうけどなぁ……。
「お前を助けたのは、目の前で死なれても寝覚めが悪いから。あと成り行きだ、成り行き。あんま懐くなよ鬱陶しい」
「貴女にしてみれば大したことでは無かったのかもしれない! でも僕にとっては一生かけてすら返せない大恩です! だって……命を助けてくれただけでなく、あれを倒すことで貴女はこの先起こるはずだった惨劇すらも防いでくれた」
そこまで力強い声で語っていたルキは、尻つぼみに小さくなる声と共にしょぼんと項垂れた。
『ふふっ、繊細だねぇ。きっと自分たちが余計なことをしなければ、消えた町や村の人間は死ななかったのにと気にしてるんだろう。どうせいつか誰かが開いていた迷宮なのだし、気にするだけ損というものなのに』
(これまでその比じゃない数の人間を蹂躙してきた奴は黙りやがれください。はったおすぞ)
『出来るものなら、どうぞ?』
(この野郎……)
マジでこいつひっぱたく方法ねぇかな。
というかそもそも、今回の事だって大本を辿れば魔王が元凶だ。
俺は黒星草は厄災の魔王の存在を知らしめす、しつこい雑草くらいにしか思っていなかったんだが。……ルキに話を聞けば、あれを介して魔王は世界中から力を吸い取り糧としていたらしい。
環境に変化が現れるのもそのせいだとか。
でもって、今回はその厄介な雑草が迷宮を封印する魔力を吸い取ったのがいけなかったわけで。
つまりルキと亡くなった仲間は運が悪かっただけだ。
しかもルキは途中で危険に気づいて引き返そうと言ったらしいからな。
……欲をかいた仲間に関しても、俺も同じ状況なら進んでいただろうから悪しざまには言えないし。
死んだ人間の尊厳を蹴飛ばす必要も無いだろう。
つまり魔王が全部悪い。この一言に尽きる。
俺は深く溜息をつくと、こういうの柄じゃねぇんだけどなと思いつつルキの頭をくしゃっと掴み、そのまま撫でまわした。
嫌だったら振り払うだろ。
「わわわっ!?」
「…………まあ、なんだ。弟子入りだとかは勘弁だが、お前は運悪かっただけだしな。事情を聞いたギルド長も納得はしてるだろうけど、一応俺からもお前が責められないように口添えしとく」
「え……」
ぽかんと俺を見上げてきたルキに、居心地の悪さを感じて目をそらす。
やめろ、そんな純粋な目で俺を見るな。弟子入り拒否ることに罪悪感わいちゃうだろ。
俺は弟子とってる暇とかないんだよ。しかも男の!
さっさと男に戻るためのアイテムを探しに迷宮を巡らねばならないのだ。面倒ごとはごめんだぜ。
「……それと、仲間いなくなっちまったもんな。何処かのパーティに入れてもらえるようにも、言っとくか? お前
俺の問いに「やはり弟子入りは認めてもらえないのか」としょんぼりしたルキが、おずおずといった様子で自分の
「僕は【
「お前採用」
「はぇ?」
この日、俺は人生で初めて土下座された上に初めて弟子をとることになった。