メス堕ちしたくない俺の苦難八割TSチートハーレム記   作:丸焼きどらごん

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39話▶探求者~やっと運が向いてきたかもしれない翌日正座してる俺

■ ■ ■

 

 

 今日俺は弟子をとるなんてことをしてみたわけだが、結果的に超ラッキーな拾い者をしたっぽい。

 ルキ、思った以上に優秀だったわ。

 

 

 

 

 ついつい探索者(シーカー)職業(クラス)保持者と聞いてルキに弟子入りを許可してしまった俺だったが、実力を確認してからにすればよかったと思い至った。

 そのため数日して落ち着いてから、最寄りの迷宮で試験をすることにしたのである。魔王には「許可した後にそれは鬼畜じゃない? 実力無かったら弟子入りは取りやめさせるってことだろう?」ってめちゃくちゃつつかれたけどな。

 マジで正論パンチで攻めてくるので何も言い返せなかったのが悔しい。

 

 ともかくだ。

 

 そこで発揮されたルキの実力は確かなもので、試験として指定したアイテムを見事に探し出した。

 先輩冒険者であるアシュレ、有翼人の巫女として多くの知識を蓄えるシャティ、元魔王軍のガーネッタ。そんな俺より遥かにこの世界での経験が多い三人すらも納得させるに足る能力だったのである。

 

 唯一モモは「探し物なら自分が得意」と張り合う様子を見せたが、モモの感知能力と専門職のルキではその質が違う。

 モモは生命力や魔力を持つ生き物の感知なら得意だが、無機物……アイテムに関してはルキの方が専門なのだ。

 

 これから男に戻るためのアイテムを探すにあたって、探求者(シーカー)はもともと探すつもりではいた。

 だけど頭に「優秀」とつく探求者(シーカー)ってのは希少で、だいたいすでに何処かのパーティに所属している。

 加えて自分の事情を話さないまま仲間に誘うのもな……と、パーティーに誘った探索者には俺の事情を話す気でいたので少々悩みの種だった。

 

 そこに自分から転がり込んできてきてくれたのが、ルキというわけである。

 

 ルキを襲った悲劇を思えばラッキーだなんだと言うのは憚られるが、本人も俺にくっついてくる事を望んでいたわけだし。

 結果的にはお互いにとって利のある関係性を結べたって事だ。

 俺を命の恩人と言って慕ってるから、事情を話しても俺が魔王を倒したはいいが女にされたまぬけ野郎だと言って回ることもないだろう。ないよな? きっと大丈夫だ。

 

 弟子っつってもなに教えればいいかわかんねぇから、それはこれから考えないとだけど。

 基本俺の強さってチートありきだから、教えられることが少ないんだよな。

 まあなんとかなるだろう。

 

 

 

 

 

職業(クラス)探求者(シーカー)

 

 これは索敵やアイテム探し、マッピングに優れたスキルを得ることが出来る職業だ。

 迷宮探索では必須の様に思えるが、これが意外と職業適性を得られる場合が少ない。

 もし迷宮にもぐるだけで適性を会得できるなら、冒険者は全員この職業を持っている。結構なレア職業なのだ。

 

 俺のあらゆる経験値を取得できるチートも、いくらそれっぽい技術が磨けても職業に関してはまず適性を得なければレベルアップも何もない。

 一応他の人間に比べて職業を得やすくはあるようだが、今のところ探求者を会得できる兆しはないのである。

 

 

 しかもルキは十三歳という若さで第五階級(ステージ)まで達している。

 仲間の優秀さや自分自身のレベルアップチートで忘れがちになるが、十段階級中、五段階から上を維持するのは結構難しい。

 それを剣士と魔術師の職業も習得しつつ、着実に専門分野の職業階級を上げているのだからかなり優秀。

 でもってそれが実際に使えるものであるかも、迷宮での簡易テストで実証済み。

 改めていい仲間が出来たと思う。

 

 やっと運が向いてきた気がする。

 これなら人工呼吸のひとつやふたつ、お安いもんだぜ。

 

 

 

 

 さて、記録はここまでにしておこう。

 明日からは賢者が示してくれた中から第一の迷宮を目指すことになる。

 

 俺の体の変化については実際にいつ例のやつがくるか分からないしな。

 そこそこゆっくりしたし、運の良さが乗ってる内に先へ進みたいと主張したのだ。

 男に戻れば例のやつの危惧も無くなるし。

 

 魔王の奴が「例のやつ」で誤魔化して書いてるの可愛いねとか言ってくるの腹立つ。

 うるさい。字面で書くとなんか生々しくて嫌なんだよ。

 

 

 

 

 次に目指す先は天空都市マシュラバ。シャティの故郷だ。

 シャティの一族に魔王討伐を報告がてら、その近くにある迷宮を攻略する。

 

 

 どうか一発目で目的のブツが見つかりますように。

 

 

 

 

 

 

【俺のチートハーレム記 ○ページ目より】

 

■ ■ ■

 

 

 

 

 

 求めていた資質を持つ仲間を得て、いよいよ第一の迷宮向けて出発だ! と手記を書き終え意気揚々としていた俺だったのだが。

 

 翌日。

 俺は現在、アシュレの前で正座させられている。

 

 いや、圧に負けて自分から正座したんだけどさ……!

 

 幸先がいいと思った矢先にこれである。

 もう俺、浮かれて自分でフラグ立てるのをいい加減やめたい。

 

 

 

 

 

 

 

「ミサオ」

「はい」

 

 アシュレの瞳は冷ややかで、冒険者になりたての頃……アシュレと始めてパーティを組んだ時を思い出す。

 

 最近優しくしてくれるようになったから忘れていたけど、アシュレの美貌はこういった表情をすると鋭利な氷の刃のようだ。でもって、その顔で凄まれるとめちゃくちゃ怖い。

 顔がいいってのはそれだけで武器なんだよ! あらゆる意味で!!

 

「君は弟子をとるということが、どういうことか分かっている?」

「い、一応」

「本当に? では彼をどう育て導くつもりか、私にそのプランを聞かせてくれ」

「え、ええと……」

 

 言葉に詰まる。

 

 俺がルキの弟子入りを認めたのは、そのスキルが欲しかったから。

 いわば俺の都合で、俺側からルキに何か教えてやれるイメージは今のところない。

 そのうち考えればいっかーくらいの気持ちで居たのだが、アシュレはそれを早々に見抜いたようだ。

 更にはその考えが彼女の気に障ったらしい。

 

 アシュレはため息をつきながら正座する俺の前にしゃがむと、俺の背後にあった壁にドンっと手を突く。

 か、壁ドン二度目……!

 しかも今回のは前回のように甘酸っぱい展開につながる想像が一切できない、ガチ怒りの壁ドンだーー!?

 

「いいかい、ミサオ」

「はい」

「私は君の努力も勇気も認めている。だがその強さの根本となるのは、異世界渡りがもたらした特殊な力だ。つまり基準となる物が違っている。だというのに、なにをどう。教えるつもり?」

 

 一字一句区切る様に問われて目が泳ぐ。

 

「その、えっと、だな。こう、がーっとやって、バーッと見せて、いい感じに……」

 

 

 

 スパーンッ

 

 

 

「いったぁ!?」

「馬鹿者!!」

 

 おもいっきり頭を引っ叩かれた。

 実のところそんなに痛くないのだが、アシュレに叩かれたという事実がショックで心が痛い。

 

「話にならない」

「すみません!」

 

 俺はただただ小さくなることしか出来なかったが、俯いて肩をすくめる俺のおとがいに手を添えたアシュレに顔を上向かされる。

 そんな場合ではないんだが、その動作にはドキッとした。……顔も息がかかるくらいに近い。

 

「いいかい、ミサオ。……弟子をとるという事は、人生を預かるということだ」

 

 先ほどまでの怒りはなりを潜めて、そこには諭すような落ち着いた色。

 ……アシュレは怒るときは怒るけど、こうして理性的に接してくれるから俺も話を聞く心持ちになれる。

 俺の初期イキリはこうして調きょ……修正されたのだ。

 

「確かに君は彼を助け、人生そのものを救った。しかしだからといって、あずかったものの重さを軽視して良いというわけではない。わかるね?」

「う、うん」

 

 アシュレはひとつ頷くと、何処か遠くを見るように窓の外へ視線を向けた。

 

「私にもかつて人生を預けた師が居た。さぞ大変だったろうと、今でも思うよ。世間知らずの小娘を騎士にまで育ててくれたのだから」

「アシュレが世間知らず……?」

「ああ。酷いものだった。それこそミサオの初めの頃と変わらない。……いや、もっとか」

「へえ~」

 

 俺にとってアシュレは頼れる先輩冒険者で、どうもそんな様子を想像できないし結び付かない。

 けど、そうだよな。

 誰にも始まりはあるし、今の姿になるまでの過程があるんだ。

 

 そういえば俺、アシュレの過去ってほとんど知らねぇや。

 

 

 

「……ともかくだ。君が私に求めているものがなにかくらい、わかってくれた?」

「……。責任?」

「その通り。引き受けたからには彼の今後のためとなるよう、しっかり育てなさい。分からないことがあれば教えるし、共に悩みもする。だから適当な気持ちだけは、あってくれるな」

 

 真摯な視線に居抜かれて、ドクンと鼓動がひとつ跳ねた。

 

 

 

 

 

 そして、それが見逃されるはずもなく。

 

 

 

 

 

【メスメロリンっ♪】

 

(ぐぅぅっ!!)

 

 

 すでに聞きなれた音に崩れ落ちそうになる。

 ……だけどしかたがない。

 優しいだけでなくて、こうして諫めてくれるアシュレはやっぱりかっこいいんだから!!

 

(それにしても)

 

 俺はしみじみといった気持ちで、心の底からの本心をポロリと口にする。

 

「アシュレがお嫁さんになってくれたらさ。俺一生、どんなことがあっても人の道は踏み外さないでいられそうだ」

「!」

「え」

 

 言った途端、アシュレの鋭利な美貌が氷解した。

 さっと朱に染まったその顔は、どこかあどけなさを感じるほどに可愛らしい。

 

「……君は、そういうことを……よくこの場面で……!」

 

 見開かれたアメジストの瞳はキョロキョロと彷徨わされて、口ははくはくと動いている。

 手先は青い髪をもてあそび……最終的に口元を隠すに至った。

 そしてじろりと恨めし気に見られるが……顔は赤いままだし、瞳はわずかに潤んでいて最早そこに怖さは微塵も感じられない。

 

「……はぁ。突然言われると、驚く」

 

 先ほどまで芯が通りはっきり口にされていた声も、ずいぶん小さくなっていた。

 

「そ、そうか? 俺は突然って言うより、ずっと思ってたけど」

「またそういうことを。……君は気が多いからね。私の告白など、もう忘れたものかと思っていたよ」

「忘れるわけないだろ!? あんなに嬉しかったのに!」

 

 思わず身を乗り出すと、そのまま腰を抱き寄せられてアシュレの上に倒れ込む様な形になった。

 ち、力づよぉい!

 

「ぉわ!?」

「他を見る余裕が無くなるくらい惚れさせるから、覚悟してなんて言ったけどね」

 

 迷うように一拍の間が置かれ、少し小さな声で囁かれた。

 

「……やはり私も、たまにはそういう言葉が欲しいのさ。君も自分のことで精いっぱいだろうから、黙っていたけれど」

「え……。もしかしてアシュレ。……すねてる?」

「…………」

 

 ふいっと視線をそらされた。

 けどこの至近距離だ。その耳が赤くなていることはすぐにわかる。

 

 

 

 か……。

 

(かわいすぎるだろ……! ぐああああ! ギャップの威力がッ!!)

 

 全世界に向かって叫びたい。

 俺のパーティーの女騎士がめちゃくちゃかっこよくれ可愛いですって叫んで自慢したい!!

 

 

 

「か」

 

 熱い気持ちのままに、抱いた気持ちを素直に伝えようとした時だ。

 

 バンっと音を立てて窓から白い何かが飛び込んできて、ごろごろ転がってからこちらに飛び込んできた。

 身構える前に俺とアシュレは、柔らかくていい香りのする二つの山が織りなす幸せ谷に包まれる。

 

「アシュレ! もうもう、そんな可愛い顔を見せてくれるなら、わたくしがいくらでも愛の言葉をささやきますのにー!」

「しゃ、シャティ」

 

 飛び込んできた白いものこと、シャティは困惑するアシュレを豊満な胸に抱き込んで頭に頬ずりする。

 

「いつもしっかり者のアシュレでも、やはり不安に思ったりするのですね! とっても可愛らしいですよ、アシュレ! 安心してください。アシュレもミサオ様も、わたくしがぜぇったい、幸せにいたします!」

「少し落ち着こうか」

 

 頬ずりしてくるシャティの柔らかな拘束からさっと抜け出すと、今度はアシュレがシャティを拘束した。……ヘッドロックで。

 なんか前にもこんな光景なかったっけ。

 

 俺はアシュレを抱きしめようとしていた行き場のない手をしばらくさ迷わせたが、シャティに全部とられてたまるかと両手をおもいっきり広げて二人とも抱きしめた。

 なんか、こう。悔しかったから……!

 

 でも、く……ッ!

 微妙に背も腕の長さも足りなくて、抱きしめるって言うよりしがみついてるみたいになっちまったんだけど!

 二人とも背が高いよ! いや俺が縮んでんだけどさぁ!

 

「やんっ、ミサオ様ったらお可愛らしい。心配しなくてもミサオ様もお構いいたしますわ!」

 

 そう言ってシャティが俺に手を伸ばすが、ぐいっとアシュレに額を掴まれてのけぞる。

 

「……ごほん。話がずれてしまったけど、ミサオ。ともかく弟子をとったからにはちゃんと導くこと。いいね?」

「ここで話しが戻るんだ!?」

 

 いや、シャティが入ってきた時点でさっきの雰囲気は霧散したけども。

 もう少しいい雰囲気でいたかっ……あ、はい。分かりました。お願いだからさっきまで照れて可愛かった顔を冷ややかなものに変えないでください温度差で心が折れます。

 

『よっわ』

(黙ってたと思ったらテメェはよ)

 

 クスクス笑いで的確に俺を煽る魔王のせいもあって、完全に甘いムードは霧散した。

 うう……! せっかくメス堕ちポイントの心配せずいい雰囲気で居られる感じだったのに……!

 

 ……ん? でも収穫はあったな?

 

 俺は受け身すぎるんだ。もっとこう、雄力を出してだな。

 俺側から押していけばメス堕ちポイントになんかならず、イチャイチャできたりするんじゃないか!?

 そうだ、そうだよ! 俺が照れるんじゃなくて、照れさせる側になればいいんだ!!

 

『君に出来るのかなぁ』

(できらぁ!)

 

 むふふ。いい気づきを得た。心に刻んでおこう。

 

 

 その後アシュレに師弟とは何たるかを説かれ、今後の指導について話し合った後。

 まずは俺の事情をルキに話す事となった。

 ……仕方がないけど、やだなぁ。最初からこのまぬけな現状について説明するの……。

 

 

 

 

 

 

 

「え……男?」

「そう、男。俺は今はこんな姿をしちゃいるが、もともと男だったんだ」

 

 きょとんっと目を丸くしていたルキだったが、へにゃりとした笑みを浮かべて可笑しそうに笑った。

 

「またまた、そんなぁ。僕の緊張をほぐそうとしてくれてるんですか? 師匠は優しい方ですね。ふふっ、でもその方法が突拍子もないですよぉ。だって師匠はどう見ても素敵な女性で……」

「素敵ぃ? その年で世辞を使えるってのは大したもんだな。ま、ありがとよと言っておくぜ」

「お世辞じゃ……」

 

 言いかけたルキをさえぎって、俺は自慢げに胸を張った。

 

 

「お前を弟子として認めたからな。俺も真の俺が何者か話してやろう!」

「真のって……」

「ふふふん。聞いて驚け見て驚け! いや見せるもんはないんだけど。……ともかくだ! いいか?」

 

 

 もったいぶる様に数秒ためて、俺は高らかに名乗った。

 

 

「俺こそが厄災の魔王を倒した男! 冒険者としての階級は黒金!」

 

 ほぼ初めて俺を知らない人間に大っぴらに功績を名乗れるからか、自然と胸が張る。堂々と名乗れる。

 

 

 

「それがお前の師匠である、アイゾメミサオ様だァ!」

「!?」

 

 

 

 

 これが漫画ならばばん! という擬音が現れ、俺の背後には後光か荒ぶる波しぶきが描かれただろう。

 

 だがそんな俺の肩に、縋るように弱弱しい手がかけられる。

 …………そういえばめちゃくちゃ癪なのだが、ルキって今の俺よりちょっと背が高いんだよな。

 前の俺なら見下ろす側なのに、なんで背まで縮むんだか。

 この至近距離だとちょっと見上げねぇと顔が見えないの腹立つな。

 

「あの、師匠。冗談やめてください。本当。アイゾメミサオって、あれでしょう? 黒金で、すごく強くて、でも実力はあるけど粗野で粗暴で性格が小物な冒険者って有名だった……」

「!? そ、それは初めの頃の話で……! 最近はそんなことねぇから! つーか俺そんなこと言われてたの!?」

 

 思いがけず黒歴史から成る自分のディスり情報が出てきて反発するが、魔王よりまず反応するのそこ? と冷静になる。

 だけどルキとしては、そこが一番重要だったようで。

 

 

「だって、だって。もしそれが本当なら、…………男じゃないですかぁ!?」

「だから男だっつってんだろ!!」

 

 

 

 

 どうやらこの弟子を納得させるまでには、もう少し時間がいるらしい。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 




2023.12.30>>加筆修正

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