メス堕ちしたくない俺の苦難八割TSチートハーレム記 作:丸焼きどらごん
「すごい……! 僕はあの厄災の魔王を倒した方に師匠になってもらったんですね……! わぁ……! こんなことがあるなんて……!」
「ふ、ふふん。そういうことだ。ようやく理解してくれたみたいだな」
俺の言葉を頑なに信じないルキに懇切丁寧に俺が元男であること、とってもすごい冒険者であること、厄災の魔王を倒した張本人であることなどを説明して約二時間。
……二時間!!
言いたくない所をなんとか避けたまま、それらの事実を信じてもらう事に成功した。
女の子といちゃいちゃしたい性欲が反転する呪いで女になりましたなんて言った日には師匠としての格が暴落するからな!
弟子とかよくわかんねーけど、師匠って呼ばれるからには"格"を保ちたいじゃん?
……あ、この考えはアシュレにバレたらまだ怒られるやつだ。いかんいかん、考えを改めねば。
「ええ、ルキ。ミサオ様は正真正銘の英雄ですよ。わたくしは厄災の魔王を倒せる資質を持った方を探し、サポートすることを使命とした有翼族の巫女なのです。そのわたくし……シャティ・ティティシエールがこの名に懸けて保証いたします」
「彼の名を聞いたことがあるのなら、私の事も知ってもらえているかな? だとしたらどうか信じてほしい。彼……今は彼女だが、本当に元は男性なんだ。アイゾメミサオとパーティを組んでいる、このアシュレ・ノーヴァの言葉を信じてもらえたら嬉しいな」
などなど。
主にシャティとアシュレが補足してくれたこともあり、頭の固い新参弟子に信じてもらえたのだ。
逆に言うと俺の言葉だけだと信じてもらえなかったのが納得いかねぇけどな!
男だったけど女になりました~なんて事実、出来れば誰にも説明したくなんぞねぇんだよ!
そこを苦しみながら説明したってのによぉ……!まったく。
ちなみに今回ルキと話す事で知ったのだが、俺こと"アイゾメミサオ"は一部の界隈で噂が独り歩きしてかなり評判悪かったらしい。
心当たりがないわけでもないが、態度悪かったのなんて初めのころくらいだぞ。……多分。
おそらくある日突然現れたくせに破竹の勢いで成果を出していき、男女両方の憧れの対象であった麗しの女冒険者アシュレとパーティを組んだことでやっかみも買っていたんだと思う。
その後で更に超絶美少女のモモやシャティ、迫力美女のガーネッタもパーティに入ってたから……まあ特に男からしたら「女ばかりのパーティ作りやがってうらやま恨めしい」ってなもんだよな。
俺ならそう思う。
だから初期の頃の噂を悪いように膨らまされていてもおかしくない。
悪い噂なんて必要以上に一人歩きするものだし、余計にだな。ルキが耳にしたのはそういった類だろう。
くそっ、誰が粗野で粗暴で小物だよ! なめやがって!
『全部間違ってないじゃないか。特に最後』
(そこが一番納得いかないんですぅ~!!)
『君とは短い付き合いだけど、納得しかないよ?』
(魔王の言葉なんか信じませぇ~ん! けっ)
『今まさに小物ムーブを目の前でされてるよって話しする?』
今日も今日とて魔王がうるさいが、無視だ無視。
ともかく俺の話を信じてくれたルキだったが、信じるや否やめちゃくちゃ褒めてくれるターンに入った。
真っすぐに向けられる憧憬の視線が気持ちよくてならない。
ふっふーん! いい弟子じゃねーの!
……でも、そうだよな。本来魔王を倒した俺はこれくらいの賞賛を世界中からされるべきなんだ。
なのに、ああもうー! こんな姿にならなければ!!
「? 師匠、どうしました?」
「いや、なんでもない。気にするな」
悶々と心の中で不満を渦巻かせていた俺の不機嫌オーラを察したのかルキが首を傾げるが、無理やり笑顔を作ってごまかす。
師匠だからな。鷹揚に寛容に、どーんと構えているべきだ。うん。
「……ママになってからミサオママは時々こうなる。いつものこと」
「そ、そうなんですか? モモ先輩」
「うむ」
やや困惑気味のルキの肩を叩いて声をかけたのはモモだ。
その内容にいささか落ち込むものの、どうやらモモもルキを受け入れてくれたようだと安心する。
最初探索役としての対抗心メラメラだったからな。
なぜ態度が軟化したかといえば、ルキがモモのことを「先輩」と呼んだから。
どうもいくつかのパーティを渡り歩いた経験のあるルキは、先にパーティに入っていた相手をそう呼んで敬う癖がついているようなのだ。礼儀正しい奴。
モモはその「先輩」呼びがいたくお気に召したようである。
多分お姉さんぶりたいんだろうなぁ~。かわいい。うちの子かわいい。
「……ごほん。それで、だ。さっき呪いの説明と一緒に話したが、俺は元の姿に戻りたい。でもってそのためのアイテムが難関迷宮にあるって話を仕入れてな」
「……! なるほど。僕はそのお手伝いが出来るんですね!」
「ああ、頼むぜ。代わりにちゃんと師匠してやっからよ」
俺がそう述べると、ルキは目に見えて顔色を明るくした。
「こんな僕でもすぐにお役に立てることがあるなんて……! 嬉しいです! 頑張ります!」
「よしよし。お手本のような優等生返事、いいぞ~!」
気持ちよく理解して気持ちよく返事してくれるもんだから、俺の気分も良くなる。
こいつ、昔ばあちゃんの家で飼ってたポチを思い出すなぁ……。犬っぽい。
そう思ったからか、ほぼほぼ無意識にルキの緑頭をわしゃわしゃと撫でていた。
「わっ!?」
「っと、わりぃ。嫌だったか」
するとルキが跳ねるように後ずさったので、行き場のなくなった手のひらをわきわきさせながら謝る。
この間もついやってしまったが、頭を撫でるって俺が居た世界でも無礼と受け取られる国はあるし、そうでなくてもさして親しくない相手から頭部を触られるってのは嫌なもんだ。
しまったな。ガキ相手というのもあって、ついやってしまった。
「い、いえ……その、そうでは、なくて、ですね」
しかしルキの反応を見るに、俺の予想は違っていたらしい。
湯気が出そう……とはこのことか。
酒でも飲んだのかってくらい顔を真っ赤にしたルキは、うつむきながら手を体の前でもじもじ搦めている。
そしてしばらく視線を彷徨わせると、おずおずと近寄ってきた。
「あの、嫌じゃ……ないです、ただちょっと、照れてしまって」
「…………」
俺はルキの肩を掴んだ。
「ふぇっ!?」
そして真剣な目でルキを下から見据えると、肩を掴む力を強くする。
「あ、あのあの。ししょ……」
「騙されるな」
「え?」
「幻想を抱くな」
「あの」
「お前の目の前に居る女は男だ」
「えっと」
「ナデポ初体験が男とかいう実績を俺に解除させんじゃねぇ!!」
「な、なでぽ!? とは!?」
「聞くな!」
「ええ……?」
犬を思い出してつい無意識に……なんて言い訳は通用しない。
こいつにとっても俺にとっても、今のは無かったことにするべきだ。
なでなでしてポッとされるのは女の子がいい!!
『うわ必死』
(必死にもなるわ!)
ルキには念押しで俺の状態を説明しておかないとな……。
「いいかルキ。もう一回言っておくぞ? 師匠のお言葉だ耳をかっぽじって心して聞け」
「はい!」
「あのな。今の俺は
「あ、あああああああ愛とか恋だなんて、そそそそそそそんな、僕はっ、そんなつもりはっ」
「顔真っ赤にしてどもりながら言われても説得力ねーんだよ!」
あまりにも狼狽えるものだから深く溜息をつくが、それを見たルキが更に慌てる。
「あの!!」
「お、おう。どうした」
突然大きな声を出した弟子に一瞬ビビりつつ問い返すと、ルキはパンっと顔を両手で挟むように叩いてから俺を見る。
「……大丈夫です! 状態異常に対する耐性は高いので、師匠が魅了を垂れ流してても、僕に影響はありません!」
「え、そうなの?」
「た、多少は。さっきのは、その。家族とは幼いころに離れてしまい、頭を撫でられる経験とかなかったから! 普通に照れてしまった、だけで! ……あの、ですので! 師匠に邪まな思いを抱く事なんてしません! な、なのでどうか弟子入り取り消しとか、そういうのは……」
「ああ~……」
それを心配して必死に弁解しているわけか。こりゃ俺の方が過剰反応だったな。うわ、はっず。
「だったらいいけどよ。悪かったな、変な勘繰りして」
「いえ!」
「……話は纏まったようだね」
騒がしいやり取りを繰り広げていた俺達に声をかけてきたのは、笑いをかみ殺しているガーネッタだ。
「纏まった……のかな?」
「まあ、今はその辺でいいんじゃないかい。これから一緒に旅するんだし、足りないところはその中で話せば十分さ」
首を傾げる俺にガーネッタはそう言うと、次いでルキに目を向けた。
「改めてよろしくね、ハーフエルフのおぼっちゃん」
「え」
ガーネッタの言葉に目を見開く。ハーフエルフって言ったか?
「あ、お気づきで……。といっても、僕はハーフどころか四分の一ですけど。年の取り方も人族と変わりませんし」
「おや、そうだったのかい」
ルキも肯定するもんだから、俺はしげしげとルキを見た。
耳は……とがってないよな。いや、ちょっとだけツンっとしてるかな?
顔は幼げながら整っており、美人が多いエルフの血族となれば納得だ。
贅沢にも周りが美女美少女ばかりで麻痺しがちだが、うん。顔がいい。
でも、へぇ~。エルフのクォーターか。
そうなると今のところ純粋な人族って、パーティ内だと俺とアシュレだけのまんまだな。
ともかくガーネッタが言うように話はこの辺で切り上げて、そろそろ町を出るか。
目的地も決まってるわけだしな。
今度は賢者の所へ行くときと違い途中までは転移魔術が使えるから、到着まではそう長くないだろうが。
出発の旨を伝えると、仲間達は新たなメンバーにそれぞれ友好的な笑みを浮かべた。
素直な性格のルキをみんな好ましく思っているようだ。
「ルキさん、よろしくお願いしますね」
「はい! シャティ先輩」
「よろしくルキ。何かわからないことがあれば遠慮なく頼ってくれ」
「ありがとうございます、アシュレ先輩!」
「……仲良くしてね」
「こちらこそです、モモ先輩!」
「ルリルちゃん様、なにか甘いものが食べたいわ~」
「わかりました買ってきます! ルリルちゃんせんぱ……。…………。え?」
「ん?」
一人一人と挨拶を交わしていくルキだったが、なにか変なの混じらなかった?
「み~さ~おっ!」
「うぐっ!?」
腹に感じた衝撃に呻くも、なんとか倒れず持ちこたえる。
そして視線を下に向ければ美しい金髪に青く艶やかな角……って、うわぁ!?
「ルリル!? おまっ、なんでここに」
「追ってきたに決まってるでしょ! もう、二度もルリルちゃん様を置いていくなんて失礼しちゃうわね。ところでそこの雄はなにかしら」
俺の腰にぎゅうぎゅうと小さな体に見合わぬ力で抱き着いていたのは、少し前に撒いた筈の見た目は超絶美少女、正体は四十六歳のおっさんである竜族の王子……ルリルベレスだった。
2023.12.30>>加筆修正