メス堕ちしたくない俺の苦難八割TSチートハーレム記   作:丸焼きどらごん

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42話▶嵐来襲~マジでこれが男じゃなかったらなしか言えない

 転移魔術。

 それを使用して移動できる範囲は短距離、中距離、長距離の移動に分けられるが、距離が長くなればなるほど難易度は増す。

 

 俺は短距離と中距離までは使えるが、長距離移動の転移魔術が使えるのはシャティだけだ。

 更に言うとその移動も完全な自由選択ではなく、移動ポイントに設定できる上限数が決まっている。

 シャティが移動場所に設定できるのは五つまで。これでもかなり多い方である。

 当然その中にはシャティ自身の故郷である天空都市マシュラバも含まれているため、最初の目的地へ至ること自体は非常に簡単だ。

 

 

 ……だが現在俺たちは絶賛足止め真っ最中である。

 何故かといえば。

 

 

「ルリルぅッ!! おま、妨害結界とか張るのやめろよ! 器用な奴だな!!」

「そうですそうです! わたくし達、先を急ぎますの!」

「ええ~? なんのことぉ~? ルリルちゃん様、わかんな~い」

 

 そうすっとぼけながら三段重ねのパンケーキをパクついているのはルリルベレス・ファーレン。

 ベテルキクスで出会い、何を間違ったのか俺に求婚している竜人だ。

 ちなみに見た目最強に可愛い美幼女だが、中身は四十六歳のおっさんである。竜人の中では若いらしいけど。

 

「そ・れ・よ・り! ルリルちゃん様は心が広いからミサオが女の子と戯れているのは構わないわ。でも雄は別!しかもこの愛らしくて美しくて超絶強い完璧なルリルちゃん様を差し置いて一緒に旅しているなんてどういうことよ~」

「あ、あの。つつかないで……」

「ああん?」

「ひっ!?」

 

 そして俺の弟子だが、目の前で絶賛絡まれ中である。

 

「おいルリル、食器で人をつつくな行儀悪いぞ」

「むぅ」

「もっと言ってやってください。ルリルちゃん様、ミサオ殿の言う通りですよ」

「あんたはもっと自分で自分の主人を諫めろ」

 

 フォークでつんつんとルキの頬をつつくルリルは一見幼い美幼女なので周囲からは微笑まし気な視線を向けられているが、相手の強さを感じ取っているのかルキはさっきから顔色が悪い。

 ……先の迷宮でも真っ先に危機察知したらしいからなこいつ。脅威には敏感なんだろう。

 でもって俺の斜め後方からルリルの行儀悪さへの指摘に同調するのは、ルリルのお付きである執事服の竜人マイヨール。

 お前は「そーだそーだ」とばかりに俺に便乗してないでこいつをどうにかしてくれ。

 

 

 

 現在俺達だが再度現れたルリルを撒くことに失敗して、マシュラバに移動もできずある町の飲食店でぐだぐだした時間を過ごしていた。

 ルリルの奴、どうやら転移魔術を妨害する結界を使用しているらしく、こいつの側に居ると魔術を用いての移動が出来ないのだ。

 もういっそ休憩がてらご機嫌伺いでもするしかないか? と、再び俺はこの女装おじさんに甘いものを奢る羽目になっている。

 

 俺は深く溜息をつくと、前は居なかったルキの説明をする。

 ルキへのルリルの説明は後回しだな。面倒だから。

 

「そいつは俺の弟子。変にちょっかい出すなよ。つーか一緒に旅といっても、まさにこれからそれを始めるって時にお前が来たんだよ」

「あら、そうなの? ふ~ん、弟子ねぇ……」

「そういえばお前、あの馬鹿どうしたんだ? 勝ったのか?」

 

 そういえば、と問いかける。

 ルリルには「馬鹿」で通じたのか、「ああ、あの魔族」とぼやくようにつぶやいてから眉間に皺を寄せた。

 

「あの方、強かったですね。ぎりぎりだったので私が回収しました」

「あ、負けたんだ……」

「負けてない!」

 

 ルリルはがたっと身を乗り出すように立ち上がったが、そのむきになる様子を見るにやっぱり負けたんだろうなと察する。

 こいつも黄金(きがね)クラスの冒険者証を出せるし竜族の王子というハイスペックさだが、実力としては馬鹿こと魔族アルマディオの方が上らしい。腐っても魔王軍幹部ってことか。

 

「弟がすまないね」

「あら、あなたの弟さん? ……まあ、別にいいわよ。次に会った時ぼっこぼこに負かすから。……今回も負けてないけどね?」

 

 ガーネッタにそう返したルリルはやけ食いの様にパンケーキを貪るが……。

 様子を見るに、こちらを解放してくれる気は一切なさそうだ。どうすっかな。

 

「ところでルリルベレス殿。私達には早急に済ませるべき目的があるのです。どうか結界を解いてくださいませんか?」

「ルリルちゃん様も一緒に連れていってくれるならいいわ!」

「わり、定員オーバーだわ」

 

 アシュレが軌道修正を試みるが、勘弁願いたい要求をされたので速攻で断った。

 するとルリルは頬を焼けた餅のようにふくらませる。

 

「こ~んな可愛いルリルちゃん様に好かれて、ミサオは嬉しくないの? 一緒に旅したくないの?」

「女の子だったら将来を見越して一考の予知があった」

「小さい。小さいわ、ミサオ! 可愛いは性別なんて軽く超越するのよ!?」

「すげぇ自信だなぁ、おい」

 

 確かにルリルは芸術品のように愛らしい見た目をしているが、あいにく俺は贅沢なことに目が肥えている。

 そのおかげでなんとか見た目に惑わされないで居られるし、なによりこいつにはチンもタマもついているからな……。

 好意を向けられてもお断りである。

 

 

 俺は!! 女の子と!! いちゃいちゃ!! したいんだよ!!

 

 

 思い出したくもないが初キスも男。

 これ以上野郎どもに俺の青春を消費してたまるかよ。

 

「ミサオママ。ルリルちゃん、強情。いっそ背中に乗せてもらって迷宮まで運んでもらうとかも、あり」

「おっと強かな意見出て来たな」

 

 ルリルと同じパンケーキをもぐもぐ食べていたモモからまさかの提案が出てきた。

 

 確かに賢者に的を絞ってもらった迷宮、魔術で長距離移動できるポイントから大きく外れてる場所もあるからな……。

 すぐに移動できる場所を後回しにして、そこまで一緒に旅と銘打って竜姿のルリルに運んでもらうというのは有りといえば有りだ。

 本人が納得するかどうかは別として。

 

「ルリルちゃん様に乗りたいですって!? モモ、あなたったら大胆ね。でもごめんなさい。ルリルちゃん様、お嫁さんはミサオにするって決めてるからその好意は受け取れないわ……」

「嫁じゃねーし乗るってそういう意味じゃねーし。やっぱお前中身は年相応におっさんだよ」

「誰がおっさんよ。ぴちぴちぷりぷりのルリルちゃん様に最も縁遠い言葉だわっ」

「あの、首。首絞めないで……!」

「わああぁ!! ルキーーーー! 大丈夫か!?」

 

 おっさんと言われて憤慨するルリルが手近にあったルキの頭を抱き寄せてぎゅうぎゅう抱きしめていたので慌てて回収した。

 見た目テディベアを抱きしめる子供って感じだったがこいつ竜だからな。

 下手したらルキの頭がトマトみたいに潰れる。

 

「むきゅっ!?」

 

 引き寄せた勢い余ってルキの頭が俺の胸に沈んだ。

 そういえばこの間魔物から逃げる時もやっちまったなこれ……。

 すでに俺が男であることを知っているルキにとっては複雑だろうと、弟子の気持ちがしょっぱさでいっぱいになる前に開放して庇うように後ろに追いやった。

 

「あー! あー! ずるい! ルリルちゃん様の事もぎゅっとして!」

「嫌だね! ともかく俺たちは先を急ぐんだ。ついてくるのは勝手だが、お前の嫁にはならねぇからな」

「そんなことい言っちゃって~。一緒に居れば嫌でもルリルちゃん様の魅力に気づいちゃうわよ? でも、そうね。じっくり色々教え込んでいくのもありだわ」

「ミサオ様、ご安心を。わたくしがお守りいたしますからね」

 

 むふふと意味深な笑いをこぼすルリルを見てシャティが真剣な顔できゅっと手を握ってきた。

 この際俺に色々教え込もうとしてるのはシャティも一緒だよな? という野暮なセリフは飲み込もう。

 なんかもう、俺一人じゃ対処できないから色々頼む!

 

「ですがルリルベレス様。伴侶を見つけたらすぐに里へ戻る様にと竜王様が……」

「ええ~? いいわよそんなの後でー。どっちにしろすぐ帰る気なんて無かったし、ミサオを落としがてら一緒に旅するのも楽しそうだし」

 

 マイヨールに文句を垂れたルリルは俺の側に移動すると、甘えるように抱き着いてきた。

 ふわふわの金髪からは良い匂いがして、くりくりした真紅の瞳が収まるつり目が甘えるような色を含んで上目遣いに見上げてくる。

 そこには幼い見た目に似合わぬ色気がたっぷり含まれていた。

 

「ふふっ。ルリルちゃん様から逃げられるなんて、思わないでね?」

 

 鈴が転がるような声は何処までも蠱惑的で……。

 

 

 

 

 ……これで男じゃなかったらなぁ!!

 

 

 

 

 そして、俺がルリルがついてくることを半ば覚悟した時だった。

 

「駄目です。ミサオ殿を連れ帰るのは後で良いので、竜王様にご報告するのが先ですよルリルちゃん様。一度報告に帰らないと私が怒られるので。ああ、ご安心を。マーキングはしたのでミサオ殿の所にはまたいつでも来られます」

「は? ちょ、まいよ……馬鹿マイヨールちょっと待っ!!」

 

 ひょいとルリルを俺から引き剥がしたマイヨールが、不意をつかれたルリルが反撃する前に一瞬で高度な魔術を構成した。

 これは見覚えがある。……長距離転移の魔術だ。

 

 

「ではミサオ殿、ごきげんよう。また近々手土産を持って挨拶に参りますので」

「い~や~!! 帰らないぃぃぃぃぃ!!!!」

 

 ルリルが小さな体でバタバタ暴れ、すんっとしているマイヨールの頬に拳を叩き込んだところで……魔術の光が弾けて拡散する中で、二人の姿は空気に溶けるように消えていった。

 

 

 

 

「……もう来なくていい」

 

 突然来ては突然去っていった嵐に、俺はげんなりとため息をついた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 




パルデアの沼に沈んでましたが徐々に更新速度復活させていきます。年末になんか負けない……!
何かしらの形で反応貰えると嬉しいです~
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