メス堕ちしたくない俺の苦難八割TSチートハーレム記   作:丸焼きどらごん

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※本日2回目の更新となります。



前回

▶主人公 は 胸キュン を 覚えた !
▶主人公 は 鏡 を 見た !
▶TS した 姿 意外 と 地味 !


5話▶幸せ谷~仲間の様子がちょっとおかしい

 俺の独り言を聞いていたとしか思えない内容の言葉と共に勢いよく開いた扉。

 そしてその角に後頭部を強打される俺!

「ぐぇっ!?」

「きゃっ!?」

 

 思ったより扉との距離が近かったがために、俺はべしゃっと無様に床に突っ伏す破目になった。

 か、角は。角はどんなにレベルアップしても痛いんだって! ぬおぉ……!

 

『え、だっさ』

(馬鹿野郎! 角をなめるな! 脚の小指ぶつけた時とかも痛いんだからな!!)

 

 人の痛みが分からない魔王野郎に文句をぶつけつつ痛みに悶えて蹲っていると、ふわりといい香に包み込まれた。

 ……同時に何やら後頭部に柔らかい感触。

 

 

 ????

 え、なに。頭サイズのマシュマロ?

 

 俺はかつてない柔らかさに一瞬思考が停止した。

 

 

「……え? ん?」

「み、ミサオ様。そんなところにいらしたのですね。ごめんなさい、気づきませんでした。……でも大丈夫。すぐにこのシャティが治してさしあげますからねっ」

 

 申し訳なさそうな様子のあと、一瞬でとろける様な甘さを含み変化した……聞き慣れた声。

 それと共に頭部へ回復の魔力がそそがれる。とても温かい。

 

 向き的に見えないが、それをしているのが誰かは分かっている。

 分かってはいるんだが……身に起きた現実があまりにもファンタジーすぎて脳が処理しきれない俺である。

 

 だ、だって! だってこれは……!

 夢にまで見た……!

 

(魔王魔王。ちょっと聞きたい)

 

 恥を忍んでこの場においての唯一の第三者、魔王に問いを投げかける。

 

『…………。なんだい?』

 

 しばしの沈黙のあと、どこか微妙な空気をはらみつつ魔王が答えた。

 

(俺もしかして今、幸せの谷に居る?)

『…………。デカパイに包まれてるよ』

(魔王でもデカパイとか言うんだ。へ~)

『君の語彙力に合わせて分かり易く言っただけだけど? どうも脳みそがお花畑に旅立っているようだし』

(誰が脳内お花畑だ!! いやでもお花畑をエデンと言い換えるならばやはりここはお花畑(エデン)!?)

『うわ……』

(急にドン引きするなよ)

 

 ……じゃなくて!!

 あまりのことに魔王なんかと妙なやりとりしちまったけど、今はそうじゃなくて!!

 

 

 ようやく脳内とのタイムラグに現実の思考が追い付いた俺は、体を硬直させたまま叫んだ。

 

 

「う、うおぁぁぁああああ!? しゃ、シャティ!? シャティさん!? なん、なん、なにを」

「? 治療ですよ~。大人しくしててくださいね、ミサオ様」

 

 床に倒れた俺を抱え起こし、背後から抱きしめながら頭部を癒していたのは白髪三つ編みに神秘的な緑瞳の美少女。その背中には一対の翼が生えており、今は慎ましやかにたたまれている。

 パーティの参謀兼超有能魔術師であるシャティだ。俺を魔王退治へ奮い立たせた張本人でもある。

 

 けど、なん。なんだ!?

 おかしい。この距離感はおかしいぞ!

 柔らかく抱きしめられている俺の頭部は現在、シャティの豊満なおっぱい様のど真ん中に居る。

 巨大マシュマロの正体はおっぱい様なのである。神々しすぎて様をつけて敬うしかない、おっぱい様! なので! ある!!

 

 

 性格は陽気で親しみ易いところもあれど、基本的には清楚で潔癖。そのシャティがこんなスペシャルお色気サービスをしてくれるなんてどういうことだよ!? これって夢!?

 むしろ臨死体験している可能性まで出て来た。ここはもう彼岸の先なのかもしれない。俺、魔王倒したしやっぱりいいことしたんだなぁ……。天国に行けるんだなぁ……。それとも極楽……? あ、なんかばあちゃんが手を振ってくれてる気が……。

 

『そこで出演させられるご祖父母かわいそうじゃない? 現実だし生きてるよ、君は』

(マジ?)

 

 魔王の一言でふわふわしていた思考が引き戻される。しかし頭部には未だ楽園確認! 確認よぉーっし!! ヨーソロー!

 

『…………。僕、これに負けたのか。改めて考えると情けなくなってきた。すけべ』

(男の子だもんっ!)

『もん、とか言うなよ』

(うるせぇやいッ! これが冷静でいられる状況かよ!)

 

 魔王にはさんざん言われるが、考えてもみてほしい。

 二十一年間、女子との身体的接触がほぼなかった俺にこれはあまりに劇薬過ぎる。

 俺以外のパーティメンバーが全員女子なのに、それでも一度のラッキースケベもなかったんだぞ!?

 そ、それが急に……! おかしくなるわ! ふわっふわになるわッ!

 

 シャティは二次元でも無ければお見かけしないレベルの至宝おっぱい様の持ち主であるため、俺はよくその体に鼻の下を伸ばしていた。

 服も背中がドーン! とバックリあいていているものだから、隙間から横乳見えないかな~って期待してチラチラ見てしまってもいた。

 それもあって「ミサオ様、えっちなのはいけないと思います」「わたくしの服は翼の動きを阻害しないための一族伝統の服です! いやらしい目で見ないでくださいまし!」と……俺とは常に一定の距離を保っていたのに!

 なのに今、めちゃくちゃえっちな状態じゃない!? シャティさん、ねえ!

 

 あ! そういえばさっき酒も飲んでたな!? なに、ちょっと酔っちゃったうふふんなイベントってこと!? マジで!? フィクションじゃなかったんだこういうの!

 

「ふふっ、良い子ですね。そうです……そのままじっとしていてくださいな」

「は、はい」

 

 またとない機会にぽやぽやとした思考のまま、美しい有翼人へと身を委ねた俺だが……。

 

 

 …………。

 

 

 おかしいな。素晴らしいシチュエーションなのに、今までこの世界で経験値を積み重ねた防衛本能が危険信号を発している。

 Hey、何を怯えてるんだ防衛本能? 初の体験にビビったか? やれやれ、喜びこそすれど何を怯えると……。

 

 すぐさまその場から飛びのこうとする体の本能を押さえつけて、じっと大人しくしたまま未知の感触を堪能する。

 意識がゆらゆら溶けていくようだ。相棒を失ってしまったので反応するものこそないが、体の熱がじわりと上がっていく。顔も熱い。

 

 …………ん?

 

「ふふっ。ふふふふふ~。ミサオ様~。とぉっても、いい香りです~ぅ」

「ぅひょあッ!?」

 

 突然頭を前に倒してきたシャティが、身体全体で俺を包むような体勢になる。

 そのままくんくんと首元を嗅がれて流石に声が出た。

 

「俺まだ風呂入ってないぞ! あ、汗臭くない!? 大丈夫!?」

 

 いや待て。今言うべきはもっと他にあるだろ俺! その何かがなんなのかは分からないけど!!

 俺得なようでいて、体臭を美少女に嗅がれているシチュエーションはかなりの羞恥心が呼び起こす。だけどシャティはお構いなしだ。

 これってやっぱり酔ってるよな!?

 

「と、とにかく! 嗅ぐのはやめてくれぇぇッ!」

「むぅ~。しかたありませんねー。いい匂いなのに……」

 

 シャティはどこか不満げにしつつも(その反応自体は可愛い)俺の希望通り嗅ぐのはやめてくれたが、それでも治療をしながら俺の頭部を撫でまくってくる。その様子は酔っ払いは酔っ払いでも、マタタビの香りでもついたボールにじゃれて構い倒す猫のようにも感じられた。

 いやほんと、何!?

 

「と、ところで! シャティは何をしにこの部屋へ!?」

 

 混乱する中、とりあえず部屋に来た目的を聞く。

 シャティは「そうでした!」と、たった今思い出しましたとばかりに俺の目の前に一つの袋を出してみせた。

 

「わたくしですね、ミサオ様にお着替えが無いと思い至りまして! こちらを持ってまいりましたの!」

「あ、うん。それは助かる」

 

 まさに今このボロボロの服をどうするか考えていたのだが、元の自分の服ではサイズが合わない。

 シャティはそれを考慮して、おそらくサイズの合う服を持ってきてくれたのだろう。

 ただならぬ様子には戸惑うけど、服は単純に助かるぜ。でも買いに行ってる暇は無かっただろうし、そうなるといったい誰の服を……。

 

 そんなことを考えつつシャティのもつ袋に手を伸ばす俺だったのだが、それはさっと取り上げられる。

 

「シャティ?」

「うふふふふっ。ミサオ様、お着替えもこのシャティめにお任せください! ええ、もうバッチリショッキリお任せくださいませ!」

「バッチリはともかくショッキリって何!?」

 

 お任せくださいを二回も言う張り切り具合。その勢いにちょっとばかり押される。あ、圧……!

 

「まあまあ、細かい事はいいじゃありませんか。……慣れない体でしょう? わたくしがちゃ~んとお手伝いしますからねっ! それにご安心ください。女の子はみんな磨けば光る至宝であり宝玉なのです。地味? そんなことありません。今のミサオ様はとってもお可愛らしいです。魅力的です。ちゃんと整えて、わたくしが立派な淑女(レディ)にしてさしあげますっ!」

「いや、レディにされたくはねぇよ!?」

「まあまあ、そう言わずにぃ~遠慮なさらずぅ~。うふふふふ~」

 

 妙に間延びした声が耳に絡みつくようで、ぞわぞわと何かが背筋を這い上がる。心なしか体に伸びてくるシャティの手の動きが怪しいような。なんかこう、ワキワキと指が動いてる。

 体の奥が騒ぐような感覚を覚えながら、しかしまたとない機会でもある。

 美少女による着替えお手伝いチャンス……! 言動がちょっとおかしいけど、逃すわけないだろ!

 

 

 ……と。我ながらだらしない顔で身を任せていたのだが。

 俺はこの自分の思考をすぐに後悔する破目となる。

 

『あ、二回目。おめでとう』

(えっ)

 

 そんな魔王の声と共に響く音。それは……。

 

 

 

 

【メスえろリンッ♪】

(だからなんなんだよこの音ォッッ!)

 

 

 

 

 

 二回目に鳴り響いた間抜けな音は、さっきとは微妙に違っていた。

 

 

 

 

 妙に気が抜ける音に、桃源郷へ旅立ちかけていた意識が戻ってくる。

 二度寝してる時の最高に気持ちいい微睡みに冷水をぶっかけられた気分だ。

 さっきといい、本当になんだ今の音。気のせいじゃなければ「メスえろリン」とか聞こえなかったか?

 もう嫌な予感しかしないんだが。

 

「ああ、ミサオ様。本当にお可愛らしくなって……! シャティは感動しておりますわ~!」

 

 そんな俺に構わず背後から俺の頭やら顔やら腹やらを撫でてくるシャティだったが、少し冷静になると本当にこの様子はおかしい。俺としては大歓迎だけど、酔ってるにしてもそれだけじゃない気がする。

 とはいえ振り払うにはこの極上ポジションを失うのは惜しすぎてな……! 俺の意志は弱い……!

 ど、どうしよう。

 

 そう困り果てている時だ。

 

「失礼するよ」

「きゃんっ!?」

 

 再びバンっと扉が開く。

 今度その角に頭をぶつけたのはシャティで、俺は前のめりに倒れる彼女の下に押しつぶされた。

 

 

 

 …………当然!!

 俺の頭部は!!

 幸せの谷に挟まれたままである!!

 

 ほわああああああああああっ!!

 さっき以上に柔らかさが押し寄せてくるぅぅぅぅぅッ!!

 

 

 

「シャティ、やはりここに居たのか」

「アシュレ! いったい何をするんですの~!」

「あ、頭を打ってしまったことはすまない。けどシャティ、君こそ何を?」

「え? 治療ですけど。あとミサオ様のお着替えを手伝おうと思いまして~」

「……胸に挟む必要は、無いと思うのだけど」

 

 入ってきたのはどうやらアシュレのようで何か言っているが、やわらかマシュマロ幸せの谷にぽよぽよ耳を塞がれていてよく聞こえない。

 こんな贅沢な耳栓ある? え、俺って今日死ぬの? 人生の運、全部このラッキースケベに使い果たしてたりしない???

 

「……ともかく、治療がすんだら着替えだけ置いて出て行こうね」

「え~?」

「え~じゃないよ。君が怪しい動きをしているから、気になって来てみればこれだもの。……酒を飲んだにしても、ミサオがこんな姿になったにしても。どちらにせよ、少し抑制が外れているんじゃないか? ほらほら、抱え込まない」

 

 胸に挟まれ押しつぶされたままの俺を、シャティがぎゅっと抱きしめてくる。それを見たアシュレが深くため息をつくと、やんわりとシャティの腕をはずさせ俺を幸せの谷から引きずり出した。

 あああああ。俺の幸せの谷~!

 

「むぅ。見てくださいよ、ミサオ様のこの残念そうな顔。ミサオ様はさっきのままがよかったですよね~?」

「あ……えと。へへ……」

「コラ。……まったく、こういうところを見ると君はミサオだなと思い知るよ。その伸ばしている鼻の下、どうにか収納できない?」

 

 ね? ね? と俺に聞いてくるシャティを嗜めると、アシュレは鼻の下五メートルくらい伸びてるんじゃないかって俺に呆れのこもった冷ややかな視線を向けてくる。あ、いつものアシュレだ。

 アシュレがさっき見せた優しさは嬉しかったけど、いつもの調子を見ると落ち着く。シャティの様子がおかしかった分、なおさら。

 

 ……まあ、嫌ではなかったけどな! うん! たいへんご馳走様でした後生大事に大切な記憶として胸の奥に抱き続けます!

 

『君って……』

 

 魔王がなにやら呆れた様子を見せるが、俺は誰が何と言おうとこの輝かしい初ラッキースケベメモリーを心の糧として生きていくぜ!

 

(あ、そういやいい加減さっきの妙な音のことを……)

 

 魔王が声を発したのをきっかけに、ラッキースケベインパクトで吹き飛んでいた疑問を問いただそうとした俺だったが……今はまだ仲間達が居るから脳内会話は避けるべきだなと疑問を引っ込める。

 

 

 アシュレは冷ややかな視線のままため息をつくと、少々の笑みを浮かべた。

 

「とりあえず、ミサオ。君に言っておくことは一つ。シャティは女性との距離感が近いから、色々と気を付けてね」

「気を付けることなんて何もなくないですか?」

「シャティ?」

 

 少々眉尻を下げて人差し指をシャティの口元に添えるアシュレ。めちゃくちゃやんわりとした「ちょっと黙ろうか」である。

 シャティは残念そうに俺を見つつも、「しょうがないですねぇ」と引き下がる様子を見せた。

 

「ミサオ様、こちらに着替えが入っております。わたくし達の服だと大きいですから、モモの服を借りてきました」

「あ、ありがとう」

「じゃあ、ミサオ。食堂で待っているからね」

「う、うん」

 

 二人のやり取りに対する疑問と、先ほどまでの幸せの余韻にぼうっとしている俺。しばらくそのまま放心していたが、改めて受け取った袋を見下ろした。

 確かにモモを除いてみんな今の俺に比べて身長あるからなぁ。特にシャティの服は有翼人仕様で特殊だから、まあ妥当というか……。

 

「ん? いやいやいや。ちょっと待てよ! モモの服って……」

 

 考えている途中ではたと思い当たり、冷や汗を浮かべて中身を確認しようとした時だ。

 

 

 

 

 

「貴様がここに居ることは分かっているぞ、アイゾメミサオ! 魔王様の仇! 我が宿敵よ! 貴様はこの俺様が倒す!」

 

 

「なん!?」

『おや?』

 

 

 

 聞き覚えのある嫌~な声と盛大な爆発音と共に、部屋の壁が屋根ごと吹き飛んだのだった。

 

 

 

 

 

 




▶シャティ>>
有翼族。女。魔術師。白髪三つ編み。おっぱいが大きい。
操に魔王退治をお願いした張本人。操が女になったら妙に距離感が近い。


2023.12.3>>修正、加筆

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