メス堕ちしたくない俺の苦難八割TSチートハーレム記   作:丸焼きどらごん

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53話▶モモの嫉妬とガールズトーク(パーティ視点)

 ミサオが腹痛と貧血に喘いでいるころ。

 はぐれた仲間達……シャティ、アシュレ、ガーネッタ、モモは早々に合流を果たし、迷宮の奥へと進んでいた。

 

「ミサオ様、大丈夫でしょうか……」

「心配いらないんじゃないかい? ミサオだからね。早々に傷つけられる魔物は居ないよ」

「それはそうなんですけど、ミサオ様っておっちょこちょいじゃないですか。そこも可愛いんですけど、こういった場所だと心配で……」

「はぐれた位置的におそらくルキも一緒だ。ミサオがうっかりして窮地に……ということもないだろう。あの子はしっかりしているもの。戦力ではミサオが、観察眼ではルキが。お互いに助け合えば問題はないさ」

「…………」

 

 自分より遥かに強い事を承知の上でシャティがミサオを心配するのは、こういった搦め手の迷宮に彼がとんと弱い事を知っているからだ。

 それをガーネッタがカラッと元気づけ、アシュレが根拠で捕捉する。

 

 そんな中、モモだけは押し黙ったまま迷宮の道を進んでいた。

 

「モモ? ……大丈夫?」

「ん。へいき」

 

 モモは口数こそ少なくマイペースだが、現在明らかに気を立てている様子。

 つきあいの長いアシュレが声をかけるも、その態度は頑なだった。

 

「あら。もしかして、ミサオ様がルキと二人きりなのが気になりますか?」

「ふふ。部屋分けの時も駄々こねていたものねぇ」

「…………!」

 

 内心を容易く見抜かれモモの頬が朱に染まる。

 それを年長者たちは微笑ましそうに眺めているため余計にいたたまれない。

 

 

 

 

 モモはパーティ内でこれまで最年少だった。

 加えて記憶喪失というハンデも背負っている。

 

 それゆえに甘えのようなものが無意識下であったことは自覚しているし、パパ、もしくはママと慕うミサオに対しては大っぴらに甘えていた。

 しかしそんな自分でも"一緒の部屋で寝る"はこれまでに許されたことは無い。

 野宿の時に出来るだけ近くで寄り添う事はあっても、ミサオが女になる前まではそれもままならなかった。

 

 

 どうあっても立ちふさがるのは"性別"だ。

 

 

 モモは奴隷として捕らわれていた時の影響で、どうしても男という生き物には嫌悪感を抱く。

 最近でこそ普通に接する分には問題なくなったが、肩をたたくなど軽いもの以外の接触を伴うとダメなのだ。それがミサオ相手であっても。

 

 本人にとっては不幸でしかないだろうが、ミサオの性別が女になった時モモは密かに喜んだ。これでもっと近くに居られると。

 だが今度はミサオ側からの問題で「メス堕ちポイントが溜まってしまうから」と一緒に寝られたことはない。

 甘えられる距離は近くなったし隙あらば抱き着いているが、それだけは物足りなかった。

 

 

 

 ……だというのに、最近仲間になったばかりの新人は「男だから」という理由であっさりとミサオと同じ部屋で過ごすことが許された。

 

 

 

 モモにはそれが気に食わない。

 たとえ同じベッドで寝るわけではないと分かっていても、気に食わないったら気に食わない。

 

 更には役割がかぶっていることも気に入らないポイントの一つだ。

 一応ルキが「アイテムの探索や迷宮のマッピング」向きの探索能力を買われている事は理解しているが、これまでパーティー内の戦闘能力で劣る自分の役割が種族特性を活かした探知、探索。

 どうしたって対抗心が湧いてしまう。

 

 

 

 そのルキが今、ミサオと二人きり。

 

 

 

(もやもやする……)

 

 嫉妬心。

 仲間の女性たちには抱いたことの無いそれを、モモは男相手には発揮してしまうのだと自覚した。

 弱いうえにモモ先輩などと呼んでくるためなかなかに可愛い奴とも思っているが、それとこれとは話が別なのだ。

 

 以前もルリルベレス相手に不快さを抱いたことはあれど、これで二回目。さすがに分かる。

 賢者に関しては食べ物に目がくらんでいたからか、もしくは奇妙な生物として見たがために男と認識しなかったからか気にならなかったのだが。

 ルキとルリルベレス。この二人相手には明確に対抗心が燃えている。

 

 

 ちなみに余談だが、アルマディオについてはミサオが明確に拒絶しているため嫉妬の対象にすら入っていない。

 

 

(ミサオママは絶対に渡さない……!)

 

 モモはメラメラ燃える心を秘めて、迷宮を進むのだった。

 

 

 

 

 

 

 現在はミサオ達と自分たち、互いに迷宮内での位置が分からないため、奥に進んでいればいずれ合流出来るだろうという意見の一致の元に進んでいた。

 

 外側から見た歪な外見の通りというか、立方体(キューブ)が連なった形の迷宮内は複雑な形をしている。

 先ほどそれが移動して更に奇怪な形となった事で、難易度は増していた。

 死角も多く、並大抵の冒険者なら迷宮魔物の不意打ちでたちまち死んでしまうだろう。

 

 しかし。

 

「アシュレ、右」

「承知した」

「ガーネッタ、斜め左前。距離馬八頭分」

「はいよ」

「シャティ……は特に何もない」

「ではなぜ名前を呼んだんですか!? いえ呼ばれるのは嬉しいのですが!」

「なんとなく。一人呼ばれなかったら、さみしいかなって」

「そ、そうですか。モモは優しいですね……」

 

 各々が経験豊富な強者であることに加え、モモの的確な探知で魔物が襲ってくる前に対処が可能となっていた。

 アシュレの剣戟が角から現れた一本角の鬼を切り裂き、ガーネッタの弾丸が前方から迫っていた魔物の群れを狩りつくす。

 シャティは自身の目視による全体のサポートを得意とするため、あえて何も言わない。

 名前を呼んだのは反応が見たかったからだ。シャティは打てば響くように応えるので、そこはモモのお気に入りポイントである。

 

 

 

「こうしてミサオ抜きで進んでみると、無意識下で普段彼に甘えてしまっていることがわかるね」

「確かにねぇ。迷宮魔物も強くなってきたし、なかなかに気が引き締まる」

「本来、この天空迷宮は有翼族の古き試練の場としても使用されていたと聞き及びます。気軽に最奥を目指せる場所ではないですからねぇ」

 

 軽口をたたきつつも各自油断はしていない。

 共通している認識は「このまま進めばいずれミサオと合流できる」というもの。

 普段頼りなさそうな一面ばかりが目立つミサオだが、パーティからの信頼は厚かった。

 

 

 

「ところで皆さん。この迷宮で例の宝物が見つかったら、どうします?」

 

 そんな中、シャティが魔術の雷光で敵を貫きながら世間話のノリで話題をふってきた。

 アシュレが首を傾げる。

 

「どうする……とは?」

「ミサオ様が男に戻ってもいいか、ということです」

「それは本人が望んでいる事だし、私達もそれを助けるためにこうして迷宮を進んでいるのだろう。問答することでもないと思うが」

「感情の話ですよぅ。アシュレはお堅いですね。そこがまた素敵なんですけども!」

 

 きゃはっと身をくねらせるシャティにアシュレは疲れたようにため息をつくが、ガーネッタは可笑しそうに笑って話に乗っかった。

 

「ははっ。まあ、暇つぶしの与太話……くらいで受け取って良いという事だろう? そうだね。私は極論ミサオが男でも女でも、どちらでもいいと考えているよ」

「ですよね! ミサオ様、女性のままでもぜんっぜんいいですよね! むしろ女性になることで完璧になったというか! いえ完璧というにはぬけてるんですけど、その隙を含めて完璧といいますか!」

「シャティ、シャティ。言ってることがおかしい」

 

 傍から聞けば話題の主が認められているのか舐められているのか分からない内容である。

 

「モモは?」

「ミサオママは、ミサオママ」

「そうなんですけど。男性の姿と女性の姿、どちらが良いですか?」

「……雌。くっつけるから」

「ではミサオ様女性のままが良い派が二、中立意見が二ですね!」

 

 我が意を得たりとばかりにシャティが満面の笑みでぱんっと手を叩いた。

 

「私の意見は中立として扱われているのかい!?」

「じゃあミサオ様の意志を尊重する、といった意味で男性派寄りの中立ということで」

「結局中立なんだね?」

 

 シャティはそれぞれの意見を聞くなり「むふふ。よい参考意見を聞けました。つまりミサオ様に絶対男性に戻ってほしいと思っている者はいない、と。むふふ」と怪しげな笑みで笑っていた。

 アシュレはそれをぺしんと叩く。

 

「きゃんっ」

「シャティ。これはミサオの希望が優先される話であって、私達がどうこういう物ではないよ。本当に彼の事を想うならね」

 

 しっかり釘を刺してくるアシュレに「はぁい」と返事こそしたシャティだが、本当に分かっているかは怪しいなとアシュレは半眼で彼女を見た。

 

 

 そうこうしている内。

 危険な迷宮魔物が闊歩する高難易度の迷宮の中とは思えない華やかな声が響く中、周囲の雰囲気が変わった。

 地味で煤けたかび臭い道は終わりをつげ、白く艶やかな壁面が続くエリアに足を踏み入れたのだ。

 

 

 

「どうやら最奥が近いようですね」

 

 それまできゃっきゃと騒いでいたシャティもさすがに気を引き締め直す。

 すっと細められた橄欖石(かんらんせき)のような瞳が見据えるのは、清廉な色とは裏腹にプレッシャーを放つ迷宮深部。

 

 

「さあ、行きましょう。もしかしたらミサオ様が来る前に目当ての物を見つけて、驚かせられるかもですしね!」

「!」

 

 それを聞いて張り切るモモがやる気をみなぎらせる。

 宝物を先に見つければミサオと一緒に居るルキを出し抜けるのだ。ミサオもきっと褒めてくれる。

 

 

 華やかな女性四人は頷きあい、迷宮の最奥へと進むのだった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 ……それを陰から見る者がひとり。

 

「おや、本当に来た。……ここまで無傷とは、さすが魔王様を倒したパーティといったところか。少々てこずりそうではあるが……あの馬鹿が一番厄介な相手を止めている間に……私はこちらを狩らせてもらおうか」

 

 ぽつり。

 誰にも拾われない陰鬱な声が、迷宮内に落ちて消えた。

 

 

 

 

 

 

 

 




いつもより遅れてしまいましたが最新話です。
現在12話完結予定の企画参加作品と並行して書いているので(もしよろしければ、気が向いたらで良いのでそちらも覗いてみてください)少々ペースが遅くなりますが、出来るだけ早く続きを書けるように頑張ります!


2024.1.20>>加筆修正
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