メス堕ちしたくない俺の苦難八割TSチートハーレム記 作:丸焼きどらごん
「ぅぐえぇ……」
「師匠、大丈夫で……はないですよね。すみません。僕が魔物の撃退も出来るくらい強ければ……」
「きにすんな。それもできなくなったら、いよいよおれのししょうとしてのいげんとそんげんがしぬ」
『息も絶え絶えでよく言うよ』
(うるせー……)
腹痛と貧血で意識が飛びそうになるのをなんとか堪えながら、ルキに背負われたまま迷宮を進む。
襲ってくる迷宮魔物の他に罠も多かったが、それに関してはルキが頑張ってくれた。今のところ発動前に完璧に無効化又は避けて進んでいる。
背負われている至近距離だからこそよくわかるが、ルキの体はかなりの緊張状態にあるようだ。相当きばって集中力上げてくれてんだろうな……。
『それだけじゃないと思うけど』
(あん? じゃあほかになにがあんだよ……いやいい。よけいなことしゃべんな。つっこむよゆーがねぇ……)
魔王の奴が気になる事言うもんだからつい癖で聞き返すが、変なことを言われて突っ込んでも無駄な体力使うだけだと思いなおした。
「ぐ……。よいせっ」
「!!」
ほらやっぱりな。一瞬でも気を抜くとずり落ちそうになる。
抱え直す手間をかけさせるわけにもいくまいと、俺はなんとか自力でルキの背中に乗り上げた。今度はもっとしっかり腕を回してくっついておく。
うう……情けねぇ。俺はこなきジジイかよ。弟子がいなきゃ移動一つままならねぇとは。
「~~~~!」
『あーあ……かわいそうに。ふふっ。柔らかいだろうねぇ』
魔王が横からルキを覗き込みながら何やら言っているが、俺は色んな意味でそれどころじゃない。
腹部の痛みに耐えつつ、真横から飛び出してきた一つ目の蛇めがけて風の斬撃を飛ばして輪切りにしてやる。
ルキは道の選択と罠の発見に意識を割いているから、魔物に関しては俺が先んじて気づき対処しなければならないのだ。
しかし俺は元々そこまで探知に優れているわけでないというか、若干の気配の察知と目視によってしか敵の位置を把握できない。
だから実のところ、さっきから対処はギリギリだ。距離が近い。
今も近距離ゆえに輪切りにした蛇の血が危うくかかりそうになり、もしこれに毒でもあったら事だ。
クソッ! 炎で焼き払っておけばよかった。判断力も鈍ってやがる。
こんな時にモモが居てくれたらな……。
モモの狼耳と兎耳、計四つの耳は生物や魔力の探知に関して非常に優秀だ。
特にこうした入り組んだ迷宮ではいつも助けられている。
「…………」
やべぇ……。魔術使ったら余波の風で腹が冷えた……。
下腹部に内臓を引き出されているような(いやそんな経験ないんだけど)鈍痛。
少しでも温めようと体温の高いルキの背中に腹を密着させ、隙間を無くして温めようと試みた。
「~~~~~~!」
「すまねぇな、ルキ」
あああああ! もう! なっさけねぇなクソッ!!
え……アシュレ達女の子って、今までこんな痛みと付き合って冒険者やってきたのか? マジで?
個人差があるとは言ってたけど、毎月こんなデバフ受けながら冒険してたの?
俺、これからの冒険者業にかなり不安を覚えてるんだが……!
やはり、やはり早急に男に戻る必要がある!!
焦りを覚えつつ、俺達は迷宮を進んでいく。
途中俺というお荷物を背負ったルキの体力も心配になったが、健気な弟子は「大丈夫です! 師匠は気になさらず、どうかお体を第一に!!」と答えてくれた。
その言い方に「あれ、もしかして俺の体調とその原因バレてないか?」と気づきざっと青ざめたが……うん。
考えたら負けな気がしたので俺は考えるのをやめた。
俺の心のヒットポイント、そろそろゼロじゃねぇかな……。
(と、ともかく今は先へ!)
一瞬入り口方面へ戻ることも考えたが、きっとモモは俺達を探しながら迷宮の奥へ進んでいるはずだ。
他のみんなも位置的に単独で分断はされていないだろうし、もしかするとすでに全員合流してるかも。
近くへ行けばモモの探知能力で俺達に気づいてくれるはずだし、このまま進もう。
合流さえできてしまえばこっちのもんだ。
そうしてしばらく魔物達や罠を退けながら奥へ進むと、途中から雰囲気が変わった。
これまで色も空気も辛気臭い墳墓の中のようだった迷宮が、いきなりあか抜けたというか……白くてつるっとした壁と床、天井に変わったのだ。
よくよく見ればうす~く発光する魔術文字が浮かび上がって、模様みたいに壁面を埋めている。どうやらここはまだ迷宮本来の機能が衰えていない場所のようである。
これはいよいよ最奥が近づいて来たな。
「すごい……」
「な。随分と綺麗なもんだ」
「それもですけど、ここまで来られたのが、です。皆さんとはぐれて僕みたいなお荷物が居ながら、師匠はこんな所まで連れてきてくれた」
「いや、連れてきてもらったのは俺なんだけど……宝探しに突き合わせてるのもこっちだし……」
現在絶賛お荷物中の身としては持ち上げられると非常に居た堪れないんだが。
しかしルキはといえば、ゆるく首を振った。
「この天空迷宮。先輩方が当たり前のように対応していた再序盤の区域だけでも
ルキの緑色の髪が揺れる。
振り返った少年の顔は、感動と歓喜に彩られていた。
「ありがとうございます。僕を弟子に、仲間にしてくれて! こんな、古代の魔導技術が未だ動いている場所を目に出来るだなんて……! 感動です」
その素直な喜びように、一瞬腹の痛みを忘れる。
「そりゃ、よかったな」
そう言って俺も笑った。
明らかに自分より強い化け物に囲まれて、お荷物師匠抱えて走る迷宮は怖かっただろう。だっていうのにこんな顔できるなら、こいつ結構大物かもな。
と。
ちょっぴり和やかな雰囲気になりかけた時だ。
『感動している所悪いけど、何か来るようだよ』
「!!」
魔王の発言直後、しなる鞭のように迫ってきた何かをルキの背中から飛び降りて叩き切った。
そしてその物体の正体は……。
「
襲ってきたそれは、魔王の死と同時に枯れたはずの黒星草だった。
黒星草。
かつて魔王が生きていた時、世界中に蔓延っていた厄介な雑草だ。
しかも野に広がる様に平たく群生していた時と違い、茎が伸びて蔓のようになってる上に意志を持っているかのごとくうねっている。花も心なしかデカくなっているように感じた。
それが俺の切った物のみに留まらず、うねうねと湧き出るように迷宮の通路を埋め尽くしながら押し寄せてくる。
まるで頭部だけ花に挿げ替えた蛇の群れだ。
少なくとも植物がしていい動きじゃねーよ!!
「ルキ、下がってろ! 焼き切る!」
「は、はい」
剣を構え前を見据える。
数は多いが一方通行の通路からまとめてきてくれてんだ。このまま正面から一網打尽にして焼いちまえばいいだけのこと!
しかし俺が剣に魔術付与を行おうとした、その時だ。
「おや、いいのかな? あまり強い攻撃をすると、お仲間がかわいそうなことになってしまうが」
粘つくような声が耳を這う。
俺は全身に鳥肌を立てながら、俺たち以外誰もいないはずだった背後を振り返る。
そこには黒いローブを身に纏った何者かが立っていた。
次いで言葉の内容に思考がたどり着き、前方から迫ってくる黒星草の群れに目を凝らす。
怪しい奴から目を離したくなかったが、今はそちらを見なければいけない気がした。
そして俺が目を向けると、目前まで到達した黒星草が突然動きを止める。
すると黒い花と緑の蔦の間に、何やら別の色が見え隠れしているのを発見した。
色は青、白、桃色、赤。
見覚えのありすぎる色に、俺はまさかと叫ぶ。
「アシュレ、シャティ、モモ、ガーネッタ!?」
うっそだろ! あの四人がこうも簡単に捕まるとか、ありえるのか!?
信じられない気持ちで確認するが、やはり大量の黒星草に捕らわれているのは仲間達だった。
口元をさるぐつわを噛ませるように草で覆われているため声を上げられないようだが、意識はあるようで何かを訴えるようにこちらを見ている。
「テメェッ、
我ながらひねりが無いなと思いつつ、これを成したであろう元凶……背後の怪しい黒ローブを振り返り誰何する。
すると応えるように奴はローブを脱ぎ……その下にあった小さな角を露わにすると、怪しげな笑みと共に名乗りを上げた。
「私の名はバシュトレーゼ。魔王軍幹部、千里眼のバシュトレーゼだ。魔王様より受け継ぎしこの力でもって……英雄よ。魔王様の祝福をうけた貴様を、我ら魔族の物とする。どうやらあの馬鹿、案の定失敗したようだからな。まったく、姉弟そろって愚か者よ」
「…………」
「どうした? さすがの英雄殿も、こうも簡単に仲間が捕らえられては言葉も出ないか」
「…………」
「…………」
俺とルキはただただ沈黙した。
相手は声こそ張らないもののどこか得意げな様子。だが俺達はその見た目に言葉を無くしている。
そしてやっと絞り出せた一言は……。
「ち、ちようじょ」
「誰が痴女で幼女かッ!!!!」
「すげぇな言葉の意味を一発で理解した。ってことはお前も自覚あるんだな痴幼女の!!」
「黙れ。貴様にはこの至高のセンスが理解できないようだな」
「いや、至高て……」
ローブの下から現れたのは長い黒髪のツルペタ幼女。
なに、蔓とツルペタでもかけてんの? ってくらいツルツル幼児体型。ルリルよりも見た目が幼い。
しかもそのツルペタっぷりが丸わかりの……こう。言うなれば、ガムテープが一番近いか? そう。黒いガムテープっぽい、ぴったり体に張り付く布を体に巻いてぎりぎり見えない際どさで大事な部分だけを隠している。
なんだか幼い見た目のわりに変態臭がすごい。
これはもう痴幼女って俺の言葉、的確過ぎじゃないだろうか。
「……まあいい。ともかく、貴様には共に来てもらうぞ!」
「!?」
バ……なんとか、とかいう痴幼女が吠えると、それに従うようにシャティ達を捉えていた黒星草の蔓が俺達に向かって飛んできた。
焼き払おうにもシャティ達の位置が近すぎて、咄嗟の事で調整も出来そうにない。そのため剣を振るうに振るえず、持ち手に蔦が絡みついた。
(こうなったら直接……!)
わざわざ剣を介さなくとも魔術は使える。だから俺は蔓を直接燃やそうとするが……。
「あ??」
ガクンっと膝から力が抜けた。
(! しまった黒星草ってことは……!)
すぐに思い当たった事は"魔力を吸われた"可能性。
黒星草は魔王が世界中から魔力を吸収するために蔓延っていたものだという。もしその特性をこの黒星草も備えていて、生物にも魔力吸収が適応されるとしたら……!?
(いや、でも俺の魔力を吸い尽くすってなれば相当時間が……)
かかる。そう思っていた……んだけど。
「一瞬でも隙が出来ればこちらのものよ」
言うなりバなんとか痴幼女は俺の首筋に針を突き刺した。
「!? てめっ、何を」
「くくく。これはな……」
もったいぶった後、痴幼女はとんでもない事を言ってくれた。
「感度が五十倍になる薬だ」
「マジで何してくれてんだよ!?!?!?」
どうしよう。
高難易度を誇り太古の魔導技術が息づく神秘的な迷宮が、なにやら触手草と感度倍増薬でエロトラップダンジョンに進化したらしい。
ぶち殺すぞこのガキィッッ!!!!!!
2024.1.25>>加筆修正