メス堕ちしたくない俺の苦難八割TSチートハーレム記   作:丸焼きどらごん

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56話▶窮地の後に~腹痛で死んでいます

 この世で最も素晴らしいものはなんであるか。

 

 富か? 名誉か? 愛か?

 

 俺は今現在、この瞬間だけ。それは「ぬくぬく温まった布団」であると答える。

 いや、この瞬間だけでなく冬の朝も「お布団最高!」と答えるかもしれないが……。

 今まで生きてきた中でこの瞬間こそが最もぬくまった布団は素晴らしい! と声高に叫べる自信がある。

 

 

 

 

 

 まあ、叫ぶ余裕は無いんですが……。

 

 

 

 

 

「ううぅ……」

 

 体をまるめ、出来るだけ腹を温められる体勢になる。

 

「よしよし、ミサオ様。痛いですねぇ」

 

 布団の上から安心させるようなリズムでシャティが体をぽんぽん叩いてくれる。

 その横では鎧を抜いたアシュレが茶器を用意していた。

 

「水分はしっかりとった方が良い。温かい薬湯は用意してあるからね」

 

 ベッドの横からひょこっと顔を覗かせているモモの耳はしょんぼり垂れており、とても心配してくれている事が伝わってきた。

 

「ミサオママ、かわいそう……」

「こればかりは個人差があるからねぇ……。痛みについても、薬の効きについても。特にミサオは毒だけでなく薬への耐性も高いんだろう。良い効果も効きにくいようだ。……そのミサオに効果を出したんだから、バシュトレーゼが用いたあの薬は恐ろしいものだね。驚いた」

「あれはもう勘弁ですね……」

 

 ガーネッタが困ったように自分が調合した薬を見る。

 先ほど飲ませてもらったが、多少痛みが和らいだ気がしないでもないものの……それもプラシーボ効果のようなものかもしれない。痛い。

 腹が……痛い! あとなんか、腰もむず痒いような妙な痛さが……ある!

 

(うう……情けない)

 

 美少女美女に世話を焼かれる状態だけを見れば美味しい案件だが、その理由が情けなくて泣けてくる。

 しかも今、マジで立てない。火事場の馬鹿力的に苦難を乗り切った自分を褒めたいぜ……。

 

 

「ごめんねぇ。僕がもう少し早く魔王軍の情報を掴んでいれば良かったんだけど……」

「いや、急なことだったしね。気にしないでおくれよシャスビス」

「そう? ありがとう、ガーネッタちゃん。ミサオちゃんも遠慮なく寛いでいってね」

「あ……あざす。じゃない。ありがとうござい……ます」

 

 こちらを気遣うようにそう述べたのは優しそうな魔族の男性。

 ……彼はガーネッタの夫の一人である。

 

 

 

 

 現在。天空迷宮を攻略した俺たちは、ガーネッタの家でお世話になっていた。

 

 

 

 

 ああもう……。天空迷宮、思い出すと本当に気が滅入るぜ。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

+++++

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 魔族の痴幼女に妙な薬を打たれると、ドクンと体が脈打った。

 

 力が抜け、そこをまんまと黒星草の蔓に捕獲された俺。

 今までこっそり読み漁ってきた(異世界に来る前は十六歳だったので大っぴらに十八禁本を手に入れられなかったのだ)エロ漫画みたいに触手もとい動く蔦に凌辱されるのかと血の気が引いた。

 

 そんなマニアックなプレイ求めてねぇんだよ!!

 いやノーマルでも願い下げだが!!

 

(触手はもう結構人権得てなかった? 表現が過激か、そうでないかだけで。メジャージャンルだよ)

(ここにきてお前の触手モノ評価とか聞きたくねぇんだよなぁボケがよ!!)

(わ、脳内だと元気~。でも体は? ねえ、どんな感じ?)

 

 案の定ニヤニヤと物見遊山を決め込んでいる魔王の言葉に、体へ意識が向いてしまう。

 

 太い蔓は俺の腕と足をまとめて拘束し、細い蔓が服の隙間からしゅるしゅると侵入してきている。

 蔓の表面が肌を触れるか触れないかの絶妙な距離感でかすめ、あるいはじらすように柔く締め付けながら恥部へ這い上がってきているのを感じた。

 

 

 

「……っ」

 

 その感覚に、俺は……。

 

 

 

 

【メスエロりんっ♪】

 

(があああああああぁぁぁぁぁぁぁぁっ!! クソがぁッ!!!!)

 

 

 

 

 

 唇をかみしめることで妙な声が出そうになるの堪えようとしたが、下されたメス堕ちポイント増加判定に発狂しそうになる。

 

 妙な薬を打たれたからって、こんなもんにメス堕ちさせられてたまるかよ!! エロ漫画みたいに! エロ漫画みたいにぃ!!

 

 

 

 焦った俺はどうにか打開策を探そうと考えたが……間を置かずして、"それ"は来た。

 

「い゛ッ!?」

 

 先ほどまでの比ではないほどの激痛。それが……腹部から。

 

(こ、こんな時に波が……!)

 

 生理の痛みをじくじくと継続して感じてはいたが、それには波とも言える周期があった。

 比較的ちょっとマシかも? となる時と、そうでないとき。先ほどまでは前者だった。

 それがよりにもよってとんでもないタイミングで「痛みの周期」が俺を襲ってきた。

 

 このまま痛みで気絶でもしたら、本格的に詰む!!

 

 

 

 しかし。

 

 

(痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い!!!!?)

 

 

 

 気絶すら許さない激痛が一気に膨れ上がり、俺の体と頭を塗りつぶした。

 

 内臓を直に捕まれ引きずり出されているような感覚に、もうこのまま死ぬでは? まで考えたよ俺は。

 しかし結果的にあまりの痛みにバーサーカーと化した俺は自分を捕らえていた蔦を全て引きちぎり、その勢いで術者である魔族を捕らえることに成功したのである。

 

 怪我の功名って使い方こういう時でいいんだっけ……?

 

 ……結局、その後仲間を助けたら気絶はしちまったんだけど。

 

 

 シャティ達によれば魔族痴幼女は「覚えていろ! 次こそは貴様を連れ帰ってやる!」とお手本のような捨て台詞を残して逃げていったらしい。

 次なんてあってたまるかバーカ!!

 

 逃がしてしまった事をすまなさそうに謝罪していたシャティ達だったが、捕らえられた直後だったのだし仕方が無いと思う。

 今回は追っ払えただけで良しとしよう。

 

 

 そして天空迷宮だが……最後に思わぬトラップがあったものの、無事攻略と相成った。

 だが最奥にあったお宝の中には求めていた宝物は無く、ただ散々な目に遭っただけだったと肩を落として帰路についた俺達である。

 

 その後。

 転移魔術が使える場所まで来ると、ガーネッタの提案で俺たちはある場所へと移動した。

 

 

 それがここ、ガーネッタの家があるフルリット砂漠。

 

 

 

(空調魔術使ってもらってるとはいえ、外はあんなギンギラに太陽が照ってるって言うのに……俺はなんで布団にくるまってしかも丸めた布団を抱えてるんだ……?)

 

 

 

 太陽光を照り返し黄金に輝く砂丘が、窓から先に広がっていた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 




場面が変わって箸休め回

2024.1.28>>微修正

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