メス堕ちしたくない俺の苦難八割TSチートハーレム記   作:丸焼きどらごん

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五章
57話▶留守番~ガーネッタのハーレム家族


 現在。

 俺は顔のいい男三人を前にコンプレックスをぐさぐさ刺激されながらも、曖昧な笑みを浮かべていた。

 

 

 ……薄々思ってたけど、この世界って顔面偏差値高くね?

 いや俺の周りに偏差値激高人間が多いだけといえばそうなんだけど!!

 錯覚しそうになるし、俺は現在自慢の筋肉を失ってるので劣等感がヤバい。

 

 うう……! 女の子なら見惚れるし、アルマディオみたいな馬鹿ならそんな事考えずにすむのに……!

 

 けどお世話になっている手前、そんな事を考えているとはおくびにも出してはならないのだ。うむ。

 

 

 

 ちなみに顔のいい男こと彼らだが、三人ともガーネッタの夫である。

 

 

 

「ねえ、ミサオちゃん。旅の間はガーネッタちゃん、どんな様子だった?」

「妻は面倒見がいい分、自分の事を後回しにしがちなので……。体調を崩すなどということは、なかったですか?」

「あいつ、頼れるけどよくからかって来るだろう? 苦労はかけていなかったか」

「えっと……」

 

 彼らからの質問にしばし言いよどむ。

 顔面偏差値の高さに圧倒されていて、思考がワンテンポ遅れたのだ。

 

 

 気さくで穏やかなシャスビスさん。

 丁寧で知的なルーファンさん。

 兄貴的な雰囲気が親しみやすいライルバートさん。

 

 現在俺の世話焼いてくれている彼らの名前である。

 

 

 

 

 

 

 なぜそうなったかといえば、仲間達が現在出かけており俺一人ガーネッタの家で留守番と相成っているからだ。

 

 俺が元男であると知った彼らは「アタシたちがママたちの代わりにお世話する!」と張り切っていた娘ちゃん達を遠ざけて、自分たちが様子を見ていると引き受けてくれた。……ちなみにガーネッタの子供はほとんどが女の子である。

 

 これは、うん。あれだよ。

 俺が元男だから娘ちゃん達に変な事しないか心配っていうより、俺の事を考えての行動なのでマジでありがたいんだよな……。

 娘ちゃん達、すげぇ可愛いんだけどさ……今の俺にとっては……うん。

 

 俺は娘ちゃん達に絡まれた時のことを思い出し、虚無に心が支配されそうになったので首を横に振った。

 今は深く考えるの、よそう。

 

 

 ガーネッタの夫達はやたらと嫁……ガーネッタの事を聞いてくるが、そこに元男で一緒に旅していた俺に対して向けられる嫉妬心のようなものは見受けられない。

 話には聞いていたが、ガーネッタんとこはめちゃくちゃ穏やかに逆ハーが保たれているようだ。

 なんていうか、一人の女を囲う男達っていうより……家族っていう大きなくくりの中で生きているんだろうなって。それぞれガーネッタを愛している事はしっかり伝わってくるんだけど。

 

 魔族にとってはこれが通常なのか、それとも他はもっと嫉妬心ビシバシだったりするのか。

 造詣の浅い俺にはちょっとばかりわからないぜ。

 

 でもこれはハーレム主に憧れる俺にとってだいぶ理想だ。

 俺は美女や美少女にいっぱい愛してもらいたいけど、よくよく考えれば恋だの愛だのという感情には「嫉妬」や「闘争」がつきものである。

 フィクションとして見る分には美人たちに愛されて羨ましい~! とか、ハーレム主を取り合う女の子たちの挙動が可愛い~! とか思えていたけど、実際に自分を取り合ってギシギシされたら浮かれてるどころじゃなくなるだろうし。

 

 

 ……ん? でもそうなると、今の俺の環境もなかなか理想なんじゃないか?

 みんな俺の事を慕ってくれてはいるけど、それぞれが仲良くて信頼しあっている。

 このまま俺が男にさえ戻れれば、憧れかつ穏やかなハーレム生活が……!

 

『今のまま、ならね。夢で見ただけの女に惚れるくらいチョロい君が、男に戻って今後他の女に惚れない保証なんてないじゃない。……今のメンバー以外の女を求めた時、彼女たちは黙っているかな?』

(う゛っ)

 

 この魔王、正論パンチしかしてきやがらねぇ……!

 

 

 

 

 俺は今日も今日とて魔王に口で勝てない事に歯ぎしりしつつ、意識を旦那さん達に切り替えた。

 こんな奴と話してるだけ、時間の無駄! 無駄!

 

 

 

 

 

 ガーネッタの夫はまだいるが、彼らが今週の家事担当、らしい。

 他の旦那さんたちは仕事などで出かけているのだとか。

 子供たちの行動もそれぞれで、まとまりがありながらも個人が自立して過ごす家庭だなと感じる。

 家庭というか、ガーネッタを長とする部族って言った方が近いかもな。印象としては。

 

 いや、にしても本当……三人ともすげぇイケメン。

 これは他の旦那さんも揃ったら高級ホストクラブなんて目じゃないくらいの絵面になりそうだ。高級ホストクラブよく知らんけど。

 容姿に自信の無い俺はそのことに悔しさを覚えるが、自分の器の小ささを自覚するだけだったのですごすごと胸の奥にしまっておいた。

 

『しまえてないけど?』

(俺の思考駄々洩れのお前にしたらそうだろうけどよ! 表に出ないようにしてるって意味だっつーの!)

 

 考えてることまんま伝わるのマジで嫌だなクソがっ!!

 

『……その程度の拒絶ですませてる、君がおかしいんだけどね』

(ああん? なんか言ったかよ)

『今さらなんだし慣れたらどうだいと言ったのだよ。君と僕の仲、だろ?』

(ぜっっってー嫌だし!! いいか? 今度こそ元に戻るアイテム見つけて! お前ともおさらばしてやっからな!!)

『ふふっ。そう。なら、せいぜい頑張るといいさ』

 

 魔王に噛みつきつつ、それがバレないように笑顔を取り繕う。

 俺、この短い期間でめちゃくちゃ表情筋鍛えられたんじゃないか? 今のところ魔王に話しかけてる時に周りから変な顔されたこと無いし。……多分。

 

 

 

 

 え~と、とにかく答えないとだな。

 聞かれたのは旅の間のガーネッタの様子……だっけ。

 

「んー……体調崩したりとかはしてなかったっスね。むしろ今みたいに俺が世話になるばかりで……奥さんに甘えちゃって、すんません」

 

 人妻と旅。字面にするとかなりイケナイ雰囲気だ。

 しかも魔王を倒した暁には筆おろしをお願いします! と頼んでいたなんて、さすがに言えない。

 

『なにを今さら』

(うっせ。一応……その! 旦那さんたちご本人を前にしたら、なんか申し訳なくなんだろうが!)

『ほほう? ハーレムしたいだなんだ言ってる奴が実に安い罪悪感じゃないか。笑う』

(く……っ)

『ミサオは、あれだよね。「望みの反対」を作用させる呪いで性別が反転するくらいに性への欲求が強い割に、そっちへ梶切り出来るほど思いきれてないんだよ。全てが中途半端。その微妙すぎるゴミみたいな価値観、矛盾がありすぎて僕からしてみたらほんっとお笑いだよ。くくっ』

(二回も笑うって言いやがったなテメェ……!)

『うん。いつも最高の娯楽を提供してくれることに感謝している』

(~~~~~~!)

 

 あいかわらず魔王の奴、魔王の癖に妙に倫理観的に納得せざるを得ないツッコミしやがって。

 ええい、無視だ無視!

 

 

 俺が密かに魔王に対し威嚇していると、それを落ち込んでいると勘違いしたのか旦那さんたちは気さくに声をかけてくれた。

 

「ああ、世話とか……そういうのは気にしなくていいって。ガーネッタちゃんが好きでやっている事だろうしね。僕らとしても魔王様を倒してくれた君には感謝しているし。……大変だったろう? 男なのに女にされてしまうだなんて。魔王様も死に際に妙な呪いをかけたものだね」

「だった、というより現在進行形で大変そうですね。薬湯はどうですか?」

 

 問われて体調を顧みる。

 

 まだ体は重いが、死ぬような痛みはすでにない。ここ数日ずっとガーネッタ特製の薬湯を飲ませてもらっていたが、ようやく効果を発揮してきた様子だ。

 あの痴幼女魔族の妙な薬のせいで必要以上に消耗した分、マジで余計な体力使っちまったからな。

 よく休んで体力自体が回復してきたのも大きいんだろう。

 

 今回の事でいくらレベルアップチートがあっても、純粋な体調不良には無力って事を思い知った。

 奇妙ことに先日に限ってはそれが窮地を脱するきっかけともなったのだが、これが毎月来るのかと考えると鬱になる。ぐあぁぁぁ!!

 

「あー……と。はい。今はわりと、大丈夫になりました。もらった薬湯もだいぶ効いてるみたいです」

 

 内心で呻きつつ、俺は現在の体調を伝える。

 

「それは良かった。……というより、そろそろ生理の期間が終わるのでしょうね」

「でもまあ、無茶せずくつろいでくれや。俺達としても世界を救った英雄様を持て成せて嬉しいしな」

「お、お世話になります。はは……」

 

 気遣ってもらえるのはすごくありがたいんだが……。

 元男と知られながら生理痛に苦しんでいるこの状態を、同じ男である彼らに知られてあまつさえ面倒まで見られている。死ぬほど恥ずかしい。どんな羞恥プレイだよ。

 ほんっとに、ありがたくはあるんだが!!

 

 

 

 

 

 

 

 ちなみにこの旦那さん三人の内の一人、シャスビスさんなのだが……。彼もガーネッタと同じく元魔王軍で、その時に築いた人脈を使って現在の魔王軍について調べてもらえるようガーネッタがお願いをしていたらしい。そのことを俺はここに来てから初めて聞いた。

 シャスビスさんは例の襲撃してきた痴幼女のことを聞いて「情報が間に合わずに申し訳ない」と謝ってくれたが、とんでもねぇ。

 俺達の考えが至らない所を補い、動いてくれるガーネッタとそれに応じて調べるため動いてくれた彼には頭が下がるばかりだ。

 

 ……特に単純な力だけでは乗り切れなさそうな場面を経験した後では。

 

 痴幼女が手に入れた能力……黒星草の特性を引き継いだ魔力吸収って、普通に厄介なんだよな。

 単独ならまだしも、奴は"薬"を使って搦め手にしてきた。痴幼女の目的が俺の死だった場合、「感度を五十倍にする薬」とかいう馬鹿みたいな(いや、これはこれで洒落にならねぇのだが……)ものを使わず即死級の毒を使えば事足りる。

 

 いくら強くなったって、一瞬でも隙を作られるってのはそれだけ怖い事なのだ。

 すでに「そういう力を持ったやつが居る」と分かった分、まだ意識は変わるが。

 けど二人目が出て来たって事は、あれだ。

 厄介な魔王の"権能"を受け継いだ奴が、他にもいる可能性はぐんと上がる。

 

 シャスビスさんが調べてくれていたのはまさにその件。

 魔王の権能をギフトとして授かった者が何人いるか、というのが調査内容だ。

 

 痴幼女……千里眼のバシュトレーゼとか言う奴が天空迷宮で新たに分かった権能保持者なわけだが、彼が言うのは確認できただけでもあと四人はいるらしい。結構多い。

 

 その力の内容までとは行かなかったようだが、わずかな期間で情報を入手してくれた手腕には舌を巻く。

 これからどの程度俺にちょっかい出してくるのかは分からねぇけど、人数だけでも分かったのは何も知らないより遥かにましだからな。

 

 今後も引き続き調べてくれるようだし、ありがたく頼らせてもらおう。

 色々世話になったしなってるしで、次に来るときはお礼に何か手土産持ってこなきゃだなぁ……。

 

 

 

 

 

 

「あの。そういえば、仲間達が探しに行っている迷宮についてシャスビスさん達は何か知ってました?」

 

 

 迷宮。

 

 ……そう。

 何故転移先にガーネッタの家近くを選んだって、この近くにも俺達が目的としている迷宮が一つあるから。

 ガーネッタはそれを加味した上で、俺が自分の家で良く休めるようにとここへと転移を勧めてくれた。

 

 しかし"場所が場所"だけに正確な位置が分からず、彼女たちは現在探索者(シーカー)であるルキも連れて場所の特定に出かけてくれている。

 

「いや。君たちから聞くまで、この周辺にも迷宮があるとは知らなかったな」

「世界一の大賢者……カリュキオス様、でしたか。名前こそ存じておりましたが、本当に知識が豊かな方ですね」

 

 なるほど、と頷く。

 

 だよなぁ……。賢者が目的地を示してくれるまで、迷宮近くに住んでいるガーネッタも知らなかったくらいだ。

 こんな見通しだけは良いだだっ広い砂漠に迷宮があるだなんて、迷宮マニアと言い換えてもいいくらい迷宮を踏破している賢者くらいしか知らないだろう。

 

 件の迷宮は、この見通しの良い砂漠の”見えない場所”にあるのだ。

 

 

 

 

 次に俺達が目指す迷宮は、太陽光で黄金色に輝く砂に埋もれた地下迷宮。

 

 天空から地下とは、またふり幅がデカいもんだぜ。

 

 

 

 

 

 俺も探索についていこうとしたのだが、慣れない体調の後に慣れない気候の中出歩くのは危険だからもう少し休んでいろと布団に押し込められてしまった。

 

『彼女達もなかなかに過保護だよねぇ』

 

 魔王がくすくす笑うも、それについては俺も同意見。

 気遣いは嬉しいけど、なんかこう……! モモとルキ以外みんな年上だからか、俺に対する扱いがいちいち子ども扱いなんだよな!

 

 お姉さま方に甘えられることは大変美味しいものの、男としての矜持が素直に受け入れることを邪魔する。

 過保護と感じるのは俺が女になってからのため、さらに心情は複雑怪奇だ。

 

 このややこしい状態も、男に戻れたらいい感じの所に納まるのかな……納まるといいな……。

 

 

 

 

 

 

 バタバタバタッ

 

「!」

 

 俺が仲間達の俺に対する対応に複雑な思いを抱いて悩んでいると、部屋の外から賑やかな足音が聞こえて来た。

 

「も~! パパたちばかり、ずるい! アタシたちもミサオさんのお世話手伝うのに、自分達ばっかりおしゃべりして~!」

「そうよそうよ。私達も色々お話ききたいのです!」

「ね~」

 

 足音のあと、どかんっ! と弾丸のように部屋に飛び込んできたのは、ガーネッタによく似た赤髪に褐色の肌を持つ少女”達”。

 

(うわぁ! 来た!!)

 

 思わず布団を顔の位置まで上げて隠れるような動作をしていると、ルーファンさんが「やれやれ」といった様子で彼女達を嗜める。

 

「おや、いけない子ですね。他の子まで来たがるから、部屋には入らないようにと言っていたはずですが。客人にご迷惑です」

「だってだってだって~! ずるいんだもんっ! ねっ! ミサオさん。アタシ達ともお話しようよ~。体調もよくなってきたんでしょ? 英雄さまのお話、聞きたいなぁ~」

「わたしも!」

「聞きたいのですぅ~!」

「わぁ!?」

 

 彼女達は言動こそ幼げだが、そのボディは実った果実の様にたわわというか、ボリューミーというか……!

 ぽんっとベッドの上に飛び乗られたと思ったら、腕をとられてその豊満な胸を押し付けられた。

 

 ……更に、キラキラした目での上目遣いである!!

 控えめに言って可愛さの化身!!

 

「あー。レィニィたちが抜け駆けしてるぅ。いけないんだー」

「私も是非ミサオさんとお話してみたいのですが」

「わたしもわたしも! ねぇねぇ。お部屋入ってもいい? あ、もう入っちゃったけど! キャハハっ」

 

 口々に言い、ぞろぞろ入ってくる美女美少女美少女美幼女……。

 あっという間にベッドの周りに(見た目だけは)ハーレム完成である。

 

 だが彼女らの眼は完全におもちゃを前にした子供のそれだ。

 

 俺の反応を楽しみながら口々に話題を振ってくるも…………全員、距離が近い!!

 日焼けも気にしないとばかりな服装で、みんな薄着だし! アングル的に胸の谷間とか大胆な太ももとかめちゃくちゃ見えるんですけどぉぉぉぉッ!!

 天国だけど地獄!! 俺の理性がピンチ!!

 今めっちゃ男として鼻の下伸びそうなんだけどメス堕ちポイントの野郎がガバ判定だから少しもデレデレできねぇんだよクソが!! 絶対これにデレついてもメス堕ちではないんだけどな!!

 あと仲間の娘にデレるのはなんかこう……倫理観的に嫌じゃん!?

 

『何を今さら。ハーレムだなんだ言っている奴が倫理観とか、ミサオは僕を笑わせるのが得意だねぇ』

(うるっせぇ!! 一度もお前を笑わせるためになんかした記憶はねぇよ!!)

 

 実は一度、ガーネッタ達が出かけてから似たようなことになったがために旦那さん三名が出動してくれたのだ。

 それでも我慢できなくなったらしく、こうして押しかけられてるわけだが。

 

 好意は嬉しいんだけどさぁ!!

 

 

『ガーネッタの子、思ったより大きい子ばかりだったね』

(それな!!)

 

 

 ガーネッタが魔族で人間よりも長く生きるって事は承知していたつもりだけど、なんとなく子供たちはもう少し小さいと思っていた。でも皆さんすでに女としての色香や可愛さがすごい。大人っぽい。

 今思い出してみれば「娘たちの生理の時も薬湯を煎じてた」的なこと言ってたもんな!? そりゃ大きい子もいるよ! 最年少っぽい子は五歳くらいの見た目だけど! 上と下の年齢差すげぇけど!!

 

 

 

 

 俺は必死にきらびやかで可愛らしいガーネッタの娘ちゃん達を前に、メス堕ちポイントが溜まらないよう堪えながら身を震わせるのだった。

 

 

 

 あああああ! せめて早く男に戻って素直に照れたいぃぃぃぃぃぃッ!!!!

 

 

 

 

 




2024/3/1>>修正

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