メス堕ちしたくない俺の苦難八割TSチートハーレム記   作:丸焼きどらごん

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58話▶地下迷宮を求めて~馬鹿が死ぬほどしぶとい

 天国と地獄って両立するもんなんだな……と俺が知ってから数時間後。

 

 

「ミサオ様~! ただいま戻りましたわ! お体の様子はいかがですか?」

「ん。体は大丈夫。だいぶ良くなった」

「それはよかったです! わたくし、いっぱいい~っぱい、心配していましたの!」

 

 きゅる~ん! と星やらハートやらを飛ばしている幻覚が見えるような、満面の笑みで抱き着いてきたシャティ。

 それと同時に無敵艦隊級の柔らかく豊満な幸せ谷が俺に体に押し付けられるが……。それに照れるよりもまず、しみじみと呟いてしまった。

 

「シャティに慣らされてなかったら危なかった……」

「?」

「こっちの話」

 

 半笑いで答える。

 

 先ほどまでガーネッタの娘ちゃん達によるメス堕ち耐久ヘヴンヘルになんとか耐えられたのは、常日頃からこの国宝級のおっぱいに慣らされていたおかげである。

 物量に押し切られそうになったが、それでもなんとか耐えた。

 

 いや本当……凄かったな……押しが……。

 

 ガーネッタの娘ちゃん達の好奇心は凄まじく、シャスビスさん達三人が窘めてもなかなか部屋から出て行ってくれなかった。

 つまり俺は数時間、あの楽園で耐えたのである。

 

 幸いなことにメス堕ちポイントは溜まっていないが、改めて考えると女の子にデレつくのはメス堕ちとは違うんじゃねぇのか!! って思う。

 だけどそんなものはこの職業(クラス)様には関係ないらしく、こんなことで!? って場面で溜まるので片時も油断できない。

 

 俺が男に戻るためには、鋼の精神が要求されるのだ。

 

 

 

「どうやら娘たちが迷惑をかけたようだね」

 

 なにがあったのかを察したのはガーネッタで、愉快そうに笑っている。

 わ、笑い事ではないが! いえ大変お美しく愛らしい娘さん達でしたが!

 

 

 と、ともかくだ。そのことはもういい。それより気になるのは……。

 

 

「迷宮はどうだった?」

 

 気を取り直して仲間達に問いかけると、答えてくれたのはアシュレだ。

 眉尻が下がっているので様子はかんばしくなかったことが窺える。

 

「完全に入り口が砂で埋もれていたよ。賢者殿の導きが無ければ、この辺りに迷宮があると知る事すら叶わなかっただろうね」

「だねぇ。長年近くに住んでいる私が知らないくらいだ」

 

 ガーネッタが頷く。

 

「一応ギルドで記録に残っている事は事前に確認しましたが、それもかなり昔で……というか、おそらくその記録を残したのがカリュキオス様でしょうね。もしかすると、天空迷宮以上に手つかずの迷宮である可能性があります。場所が分かっても現状があの様子では、大抵の者が諦めるでしょう」

「入るだけでも苦労するとくれば、割に合わないからね」

 

 熟練の冒険者であるアシュレの他、シャティとガーネッタの眼から見てもなかなかに場所自体が困難らしい。

 

 でもそれは見方を変えれば希望でもある。

 攻略者がいなければいないほど、迷宮にお宝が残っている可能性は高いのだから。

 

 

 ……にしても。

 

 

「よくそんな場所見つけられたな……」

 

 今の言いっぷりだと、だいたいの場所しか記されていない賢者のメモから入り口の場所を特定したっぽい。

 その「完全に埋もれている」という入り口をだ。

 

「それは、この子達が頑張ってくれたからね」

 

 そうガーネッタが肩を押して前に出したのは、誇らしそうに胸を張るモモと照れくさそうなルキ。

 

「モモの感知で封印結界の魔力を感じ取っておおよその位置を割り出してから、ルキが詳しい位置をつきとめたんだよ」

「お~!! すごいじゃん、二人とも!」

 

 素直な感嘆の声が出る。

 するとモモの尻尾が嬉しそうに左右に揺れた。

 

「……ミサオママ、大変そうだったから。元気出してほしくて、頑張ったの。ね、ルキ」

「はい! モモ先輩の力が無ければ難しかったでしょうが……」

「それは、こっちもおなじ。どれくらい下に埋まってるかまでは、わからなかった」

「そ、そうですか……? へへ……。お役に立てたのなら、嬉しいです」

 

 そう顔を見合わせ笑ってから、二人は誇らしげに俺へと報告してくる。

 

 つーか知らないうちに仲良くなれたみたいだな。どうも共同作業したことでモモからルキに対する壁が少し薄くなったらしい。

 モモ、なんだかんだ「先輩」って呼ばれて喜びつつもまだルキのことを微妙にライバル視していたっぽいから、ちょっと安心だ。

 …………俺が見てない所でってのが寂しいけど。

 

 

『なに。ミサオ拗ねてるの?』

(は、はぁ? 拗ねてねぇし)

 

 魔王め、変な事を言うなよ! 俺はそんなに心が狭くない。

 

 …………。ま、まあ?

 俺を親のように慕ってくるモモが弟子とはいえ同じ年頃の男と仲良くなったり。

 俺の事を師匠と慕うルキが俺以外に尊敬の念を向けたり。

 その二人がなんだか「やったね!」という仲良しな雰囲気なことに、まったく思うことが無いわけでは……。

 

『うっわ。心狭いねぇ』

(だぁぁ! もうお前、本当に嫌!)

 

 く、くそう……! 考えが隠せないのマジで嫌だぜ。

 さっさと男に戻ってこいつともおさらばしてやる……!

 ええいっ!! そのためにも迷宮攻略だ!

 

 しかし今聞いた限り、どうも天空迷宮とは違った意味で厄介な迷宮のようである。

 

「……にしても、砂に埋もれてんのか。どうすっかな」

「魔法で吹き飛ばそうにも、生半可な力ではすぐに砂が元に戻ってしまうでしょうし……」

「強すぎても入り口ごと吹き飛ばしてしまうだろうからね。そうなれば中の迷宮魔物が出てきて、この辺りに住む者の迷惑になるだろう」

 

 アシュレの言葉に最もだと頷く。

 

「…………」

「ん?」

 

 ルキがなにやら顔を青くしていたので、少し考え……頭をわしゃわしゃかき混ぜておいた。

 おそらく以前のパーティで攻略した迷宮から解き放たれた魔物がもたらした被害を思い出しているのだろう。まだつい最近の事だし。

 その時の仲間も死んでしまったし、思い出すには酷だろうな。

 

 アシュレが「しまった」という顔をしていたけど、まあ……こういう事もある。

 こういう時にフォローするのは師匠の役目だよなと、俺は言葉を選んでルキに告げた。

 

「強くしてやるから、強くなれ」

 

 言ってから「シンプル過ぎるし特にフォローになってねぇ!!」と内心膝をつく俺だったが、ルキはきゅっと唇を引き結んでから相好を崩してくれた。

 ルキは人の感情の機微に聡いから、俺が言いたいことも言葉に迷った事も察してくれたんだろう。

 

 

 ……師匠、頑張らないとなぁ……。

 

 まだ師匠として何をしてやれるのかは皆目見当つかないが、少なくともそばに居てやることはできるし。

 もう少し、この気遣い屋の弟子の心が軽くなるようにしてやれたらって思う。

 

 う~ん……。課題だ……。

 

 

 

 

 

 

 

 

 そして仲間達から聞いた話を元に迷宮への入り方について頭を悩ませる俺達だったが、ガーネッタが口元に手を当てながら何かを思い出すように呟いた。

 

「……砂喰いが居れば、あるいは」

「砂喰い?」

「ああ。滅多にいないんだが、砂の成分を好んで喰うミミズに似た魔物が居てね。そいつの体表から出ている粘液は砂を食いやすいように固める性質があるんだよ。だからそいつを連れてこられたら、砂を食い固めて入り口までの道を作ってくれるだろうさ」

「へー! 便利な奴がいたもんだ。じゃあそいつをとっ捕まえてくればいいんだな?」

「いや。……希少な生物でね。野生を探すのは難しい」

「そうなの? じゃあ……。…………ん? 野生?」

 

 ガーネッタの言葉に引っかかりを覚え、そこからピンっと思いつく。

 

 

 居たわ。

 魔物を好きに召喚できる奴。

 

 

 ガーネッタは察した様子の俺を見て、ひとつ頷いた。

 

 

「アルマディオが魔王様から受け継いだ眷属召喚。それが一番手っ取り早いだろうね」

「! やっぱりそうか! ……よし」

 

 

 俺はガーネッタに笑顔を浮かべ、ぐっとガッツポーズを作りながら言った。

 

 

 

 

 

 

 

 

「ここの迷宮、後回しにしようぜ!」

 

 

 

 

 

 

 

 即決だった。

 

 あんな奴の協力を得るくらいなら、他でアイテムが見つからなかった時の最終探索地に残しておいた方がマシだ!

 第一、協力とか……ねぇよな。

 あいつ俺の事好きとか妙なこと言ってるけど一応魔王軍で、敵なわけであって。

 つーかせっかく空から突き落としたんだし、死んでないにしても二カ月くらい重傷で居てほしい。

 

 

 

 だが俺の願望は秒で否定されることとなる。

 

 

 

 

「はーっはははははははははははは! 話は聞かせてもらったぞアイゾメミサオ! 俺様の力が必要らしいな!?」

「ぶっ!?」

 

 

 耳に煩い高笑い。ここに居ないはずの声が思いのほか至近距離で聞こえて素直にむせた。

 なん、なんだぁ!?

 

 俺が声の方向を見ると、堂々と部屋の入り口に立っている馬鹿が居た。

 なんでお前ここにいるんだよ!!

 

 狼狽しているとバタバタと複数の足跡。多分娘ちゃん達だ。

 

「お母さまー! アルマディオおじさんが勝手に入ってきたー!」

「おじさんと呼ぶな!! おじさまと呼べ!!」

「ええ~? たいしてかわらなくなーい?」

「俺様は様付けされる方が好きだ!!」

「あははっ。おじ様、相変わらず面白い方ねぇ~」

 

 親戚とはいえ何故だかこの不法侵入者に娘ちゃん達はどこか歓迎ムードだ。俺としては今すぐに帰ってほしい。

 というか叔父姪の親戚付き合いとかあったんだ!? お前らの距離感、俺よくわかんねぇよ!

 

 賑やかになった室内にしばし思考が持っていかれるが、はっと我に返る。

 

「テメェ、アルマディオ!! なんて居やがる!!」

「おお! ついには俺様の名前を憶えてくれたのか!!」

 

 し、しまった。つい。

 いや今そんなことはどうでもいいわ!!

 

「空から落としただけじゃやっぱ足りなかったか! 表出ろやぶっとばしてやる!」

「み、ミサオ様。少々落ち着かれては? ここはガーネッタの家の中ですし……」

 

 どうどう、とばかりにシャティにおさえられる。

 そ、そうだったな。つい気が立ってしまった。人んちの中で暴れるもんじゃねぇや。

 

 ……でも、アルマディオの方は大丈夫か? 前の襲撃の時は姉であるガーネッタを普通に攻撃していたし。

 いやでも姪っ子たちに懐かれてるっぽいしな……距離感がマジで分からねぇ……。

 

「ところで! 俺様に何か頼むことがあるのではないか?」

 

 うわヤメロ。めちゃくちゃ期待のこもった目を向けてくるな。

 

「無い」

「あるだろう! 砂喰いが必要なんだろう!!」

「全部聞いてたんじゃねぇかテメェ」

 

 やっぱりあの痴幼女何が何でも潰しておくべきだった。こいつが俺の場所を特定できるのってあの痴幼女の力だろ? 自分で名乗ってた二つ名を聞いた限り千里眼が使えるらしいし。

 多分今回もそれで場所を特定されたんだろう。

 

「ミサオ。本人は張り切っているようだし、せっかくだから頼んだらどうだい?」

「ええ~……?」

「そう嫌そうにしないで」

 

 渋る俺にガーネッタは可笑しそうに笑っている。

 

「フン。あなたのためではないぞ?」

「はいはい、わかってるよ」

「アルマディオくん、相変わらずみたいだねぇ。魔王軍の幹部だっけ? いやぁ、出世したようで義兄さん感動だな」

「元幹部の貴方に言われてもな……」

 

 しれっと会話に入ったシャスビスさん、あんた魔王軍の幹部でいらした!? 道理で人脈残ってるはずだよ。

 

 ……にしても、こうも目の前で普通に会話されると意地を張ってる俺が恥ずかしい奴みたいな気分になるな。なんつーか、ダサいというか。

 ……しょうがねぇ。ダメもとで頼んでみるか。

 

 

「おい馬鹿」

「…………」

「……おい、アルマディオ」

「なんだ!」

 

 め、めんどくせっ。

 まあこれから頼みごとをする相手に馬鹿って言う俺も俺なんだけど。……って、なんでそんな気遣いの心をこいつにもたなきゃいけないんだよ!

 

 あああ、もう!!

 いいや、さくっと言っちまえ!

 

「砂漠の迷宮へ入るために砂喰いって魔物が必要だ。眷属召喚、頼めるか?」

「はっ、容易い御用だ! 当然その後は結婚式だな?」

「なあ、こいつ砂に埋めようぜ」

 

 

 

 

 第二の迷宮、やっぱり後回しにするべきかもしれない。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 




2024/3/3>>微修正

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