メス堕ちしたくない俺の苦難八割TSチートハーレム記 作:丸焼きどらごん
次の目的地が定まった俺達であるが、
というかシャティの転移ポイントのひとつに設定してるからな。マジで直に行けるから楽。
だというのに何故今まで壊れた
魔王を倒した今、俺が武装しなければいけないような相手は早々いないだろう。……単純な力だけで言うならば、という前提つきではあるが。
ともかく男に戻るための過程の中で、まず必要なかったんだよな。ついでが出来たら行けばいっか~くらいに考えてた。
でもって今、そのついでの用向きが出来たわけである。
用向き。それは俺達の求めるアイテムを作ってもらう事。
魔術工芸核の修復は、いわばおまけである。
これから尋ねる予定の彼は非常に優れた技師のため、俺達が求める品……持ち運びできる空調魔術道具を開発出来る可能性は高い。
まあ、半分ダメもとなんだけども。
でも行ってみる価値はあると思う。ルキも
そんなわけで俺たちはシャティの転移魔術で技師の住まい近くへと飛んだわけだが……もっと言えば、目的はもう一つ。
転移のポイントは何処でも、いくつでも設定できるわけではない。その数には限りがある。
その中で
その魅力、というのが……。
「わぁっ! もしかしてここ、ルルナリアスですか!? 温泉で有名な!」
「その通り! いいとこ住んでるよなぁ~」
到着した先の光景に歓声を上げ、ぱっと表情を明るくしたルキ。
つーか来たばかりのぱっと見でよくわかったな。……まあ、ところどころ風景が特徴的だから知識があれば気づくか。
そう、目的地は魅惑の温泉街なのだ!
日本人としてはどうしたって好きにならざるを得ない場所である。
風光明媚な自然と建造物が見事に調和した街並み。
その中には各所から湯気が立ち上り、活気に満ちたざわめきが心を浮き立たせてくれる。
旨そうな食い物の匂いも鼻をくすぐり、胃が刺激された。
ここ屋内の料理屋の他に露店の屋台飯も多いんだよな~。普通の日なのにいつもお祭りみたいで楽しい。
ちなみに当然のような顔で転移について来ようとしたアルマディオはガーネッタの娘ちゃん達が「おじちゃん、遊んで!」と引き留めていた。彼女達には滞在中困らされもしたのだが、これは非常に助かる。
癒しも兼ねて来たのにあいつが居たら鬱陶しくてしょうがねぇからな。
……まあ協力してもらってる手前、何か土産くらいは買って行ってやるか。娘ちゃん達へのお土産のついでだけど。
『へぇ……。建物は西洋風なのに、どこか懐かしい雰囲気だね』
おや、と魔王の様子を窺う。
……懐かしい、か。
(ふ~ん。お前にもそういう感性あるんだな)
『…………』
めずらしっ。なんも言い返さずに黙っちまった。
なんだなんだ、ノスタルジーに浸っちまったのが恥ずかしいとかか~?
普段口達者な魔王がだんまりするのが珍しくてからかおうかとおも思ったが、よくよく考えると少し不気味である。
ここはわざわざ藪蛇することもないだろうとそれ以上は突っ込まないでおいた。
……にしても今の口ぶりだとこの場所、凶暴化した魔物とか以外では魔王軍の被害を受けてないよなぁと思ってたけどまず魔王が認識してなかったのか。
まあ、世界広いしな。見落としの一つや二つあるだろう。
それかここ周辺に結界的な何かでもあるのかもしれない。よく知らんけど。
「さっそくひとっ風呂あびるか?」
ルキに問えば目に見えて表情を明るくする。
分かり易いよなこいつ。素直で大変によろしい。
「いいんですか!? で、でも用事は……」
「いいっていいって。というかな、最初からそのつもりだ。技師の所へ行くのも明日くらいでいいだろ。みんな蒸し暑い迷宮の後で疲れも残ってるだろうしさ。風呂入って美味いもんでも食おうぜ」
「まぁっ! ミサオ様、お気遣いありがとうございます」
「ふふっ。君も出会ったころと比べてずいぶん気配り上手になったね」
「これも女子力ポイントの賜物かもしれませんね。すばらしいですわ、ミサオ様!」
「シャティ、その評価の仕方はやめてくれねぇかな!? 複雑な気持ちにしかならねぇからさ!」
本人的には褒めてるつもりなんだろうけど、俺はただ落ち込むだけだからな!?
ともかく、まずは宿だ宿。落ち着ける場所を確保してから散策でも宿で風呂でもすればいい。
ここ、アシュレが湯治に利用してきた昔なじみの店があるからいきなりでも結構いい部屋に泊まれたりするんだよな~。先輩冒険者、頼りになるぜ。
これまで稼いできた金はまだまだあるしな! わはは!
色々焦って旅路を進めて来たけど、付き合ってくれてるみんなのためにも休息は必要だろう。
しかし意気揚々と宿へ向かおうとしたところで、ふと野暮用があった事を思い出す。
「わりっ、ちょっと用事済ませてからいつもの宿行くわ。先に部屋取っておいてくれ」
「まあ。でしたらわたくしたちも……」
「ほんと、大したことないから」
半ば無理やり押し切ってひらひら手を振りながら仲間たちからそそくさと離れる。
ふぅ……。よしよし。流れで押し切れたな。
シャティ達が一緒に来たら前回の二の舞になりそうだし、ここは一人で仕入れに行きたかったのだ。
『なに、やましいものでも買いに行くのかい?』
(ちげぇわ!! 生活必要必需品だ、必需品!)
いつもの調子でからかい始めた魔王を(もう少し大人しくいてくれたらよかったのに)どやしてから、目的の店を探してきょろきょろしながら大通りを行く。
ここは観光地だけあって色んな店がある。その中には当然仕立て屋もあり、数も多い。
だから今のうちに今持っている物より……もっとシンプルな下着を仕入れておきたかったのだ。
そう、俺の個人的な買い物とは下着の事である。
以前ベテルキクスで仕立ててもらった下着は一番シンプルなものでもさりげなく華やかな刺繍が入っており、どうもそわそわ落ち着かない。ボクサータイプにしてもらったパンツにしてもそうだ。
……というかな。女の子の下着ってもんには、常にドキドキワクワクムラムラする自分でありたいんだよ!!
テーマパークみたいなもんだ。それくらいのロマンがある。
だってのに自分使いで慣れ切ってその気持ちがなくなるのは、あまりにも大事なものを失いすぎではないだろうか!? 俺はそう思う。
だから女の子女の子した下着とはここでおさらばしてやるのだ。
俺が決意を胸に固く拳を握っていると、魔王が心底馬鹿にしきった表情でせせら笑った。
『あっはは。くっだらな』
(くだらなくないが!? これは切実な問題なんだよ!!)
脱童貞する前に女の体や女の下着を自分の体で慣れてしまう悲哀がお前に分かるのか!? このどクソ元凶がよ!!
それにこれから灼熱迷宮を攻略するにあたって、代えの下着は沢山あるに越したことはないからな。
……とまあ、そんな思惑で一人行動をした俺だったのだが。
近道にと、いかにもな裏路地に入ったら思いがけない事態にぶち当たった。
ありていに言えば、ナンパである。
まさかの事態にげんなりとした溜め息がこぼれる。
……人生初のナンパが野郎からだなんて。
『君に声かけるなんてセンスの無い連中もいたものだね』
(んだとぉ!?)
『自分でも「こいつら正気か?」って考えてたじゃない』
(お前に言われる筋合いがねぇってんだよ)
イライラしつつ目の前で狭い道を塞いでいる野郎どもを見る。
なんというかいかにもチンピラですといった風貌で、細身のノッポとごつめのハゲだ。
こいつらはたった今俺に「なぁ、そこの姉ちゃん。暇そうだなぁ? 俺たちと遊ぼうぜぇ」なんて、その誘い文句って実在したのか!? レベルの安い言葉をかけてきたのである。
にしてもこういう輩、美女と美少女しかいない我がパーティで行動している時は殆ど声をかけてこないから新鮮ではある。
まっ、あれだけ高嶺の花揃いだとのこのこ惹かれるより気おされて声かけられない気持ちも分かるから納得ではあるんだけどな。
もし声をかけてきてもアシュレ、シャティ、ガーネッタという経験豊富なお姉さま方が、俺が何かする前に華麗にあしらってしまうし。
TSしても華が無い俺に声かけてきたのは、そういう美女フィルターが無いからだろうな。
適度に隙がある様に見えたってとこか。舐めやがって。
とにかくこんな奴らに使っている時間ないし、俺もさくっとあしらうか。さくっと。
「いや暇じゃねぇし、遊ばねーよ」
ざっくり断るが、相手はこちらの言葉などまるで聞いていないようで馴れ馴れしく肩に手を置こうとしてくる。
め、めんどくせぇ~!
(やっぱこういう時は言葉より拳だよな)
『暴力への移行が早すぎじゃない?』
(いいんだよ! やりすぎない程度の力加減は心得てるから! つーか魔王のお前がそれ言う? )
舌打ちしてぐっと拳を握る俺に納得いかないつっこみを入れてくる魔王野郎である。
暴力どころか厄災の化身だったやつに指摘されるのマジ納得いかねぇ。
というかだな! お前には分かるまい。"そういう"対象として同性から生々しい視線を向けられる気持ちが!!
さっきからこいつら俺の顔一切見ないで胸とかケツ見てんだよ!! ぞわぞわするわ!!
あと自分でも冴えない顔立ちなのは分かってるが、いざ言われると気に入らない上にそう考えてる思考がなんか嫌だ。
もうこのモヤモヤは目の前の障害物兼、生きたサンドバックで適度に解消するしかない。
そう考え再度拳を握り、目の前の野郎どもにふるおうとした時だ。
「? あれ。もしかして、ミサオくんか?」
「え」
聞きなれた声に振り返ればそこには色素の薄い髪を三つ編みに束ねた丸眼鏡の青年。
一番の特徴は、その額から生えた大きな角だ。
「んだぁ? てめぇ。この女には俺達が先に声かけたんだ。引っ込んでろ!!」
細ノッポのチンピラが怒鳴るも、青年はそれを意に介さずスタスタ近づいてきてその長身をかがめ俺の顔を覗き込んだ。すると青年の体が意外と大きくがっちりしている事と角の存在に気が付いたチンピラたちが「お、オーガ!?」とビビっているのが視界の端に入る。
俺はといえば不意打ち気味の邂逅と、即座に正体を見破られたことに(いや隠しては無いんだけど)戸惑いが勝った。咄嗟に言葉が出てこないで固まる。
「どうした、その姿。それではワタシが君の体の隅々まで考えて調整した最高の作品が馴染まないだろう。由々しき事態だ」
むうっと眉根を寄せて俺がミサオであることはすでに決定事項として話しているこの青年。
彼こそがここ、ルナナリアスへ来た一番の目的である魔術工芸核技師……ロハルド・ハゥである。
見た目青年だが、中身は結構いい歳をした
住んでいるとはいえ街中エンカウントすぎない?
「お、おいおいおい。色男さんよぉ。こっちを無視して勝手に話しをすすめてんじゃねぇ~よ。なぁ?」
完無視をかましているロハルドさんを前に、ビビり気味だった細ノッポが同意を求めるようにごつハゲに声をかけた。
そういやさっきから喋っているのはこっちの細ノッポだけだな。ごつハゲは寡黙にたたずんでいる。
そしてごつハゲだが、やや間をおいて俺とロハルドさんを見比べた後……。
「その地味ブスとだったら、俺ぁそっちの男の方がいいな」
「殺されてぇのかテメェオラァッ!!」
こ、こいつ! そっちからナンパしてきておいてなにを言いやがるか!!
そりゃあロハルドさんは男だが顔が良くて比べて俺は自分でも地味だし目つき悪いし黒目小さいしそばかすあるし、モテる顔だとは思わないけどよぉ! 人に言われるとすげぇムカつくなぁおい!!
『ミサオって本当、思った以上に自分の容姿に自信ないよね。女の子になったのにTSのお約束的に可愛くなれなかったの、そんなに悔しかった? あっははははははははは! 可愛いねぇ』
(黙れや!!)
魔王の茶々で二倍腹が立つなクソが!!
シャティは磨けば光るって言ってくれたし俺だってその気になれば……いや今それはいいんだよ!! というかその気になってたまるか!
「そっちから声かけて来たくせにずいぶん好き勝手言ってくれんじゃねぇか!! 言っただけの覚悟はできてんだろうなぁ!?」
「見ろよ。その女、まず品がないぜ。俺そういうの駄目」
「どの口がそれを言ってんだよ!?」
『まあミサオの口調って基本チンピラだよね。そいつらと大して変わらないよ』
(こ、このやろっ)
内と外の両方から貶されて一瞬「口の悪さって直した方がいい?」と考えてしまったが、どうして俺がこんな野郎どもに言われたくらいで口調変えなきゃいけないんだと思い直した。
「んんん? お前ら見る目が無いな。ミサオくんは可愛いぞ。今は何故か女になっているが、女になってるくせにまずまず可愛い」
「女になってるくせにってどういう事っスか!?」
ワンテンポ遅れてロハルドさんが妙な言い回しでフォローするもんだから、余計に場が混ぜっかえされる。
俺はこのモヤモヤと怒りをどう表現すればいいんだ。
「ああ、それと。ワタシの見目に美を見出し好んでくれたことは光栄だが、ワタシが君を好みじゃないな」
「そこきっちり振るんだ!?」
「振られた……」
失礼極まりないごつハゲにきっちり引導を渡すロハルドさんと落ち込むごつハゲ。
男だからとかでなく好みじゃないって理由で振るのか……。
「…………」
「…………」
場が何とも言えない妙な空気となり、俺は何故か細ノッポと見つめ合ってしまった。
どうするんだよこれ。
「もういいか? ではワタシたちは行かせてもらおう」
「えっ」
そんな中、あくまでマイペースなロハルドさんが、ぐいっと俺の肩を引き寄せたかと思うとスタスタ歩き出す。
「ちょ、待て!」
このグダグダな空気の中でなおも食い下がろうとする細ノッポ。その様子に怒りや呆れを通り越して逆に感心してしまった。
ロハルドさんはそんな彼にビッと一枚の紙を突きつける。
「!?」
「ワタシ達はこれから忙しい。文句があるならここに来い」
威圧的に渡された紙を細ノッポのチンピラは挙動不審に受け取ると、そこに書かれた文字を読み上げる。
「"魔術工芸核工房るるぴっぴはうはう"……え、店名だせぇ……」
(あ、それは俺も最初思った……)
内心同意していると、くるりと向き直ったロハルドさんが大きく腕を振りかぶった。そして。
「へぶっ!?」
(り、理不尽!)
鬼人族の剛腕から振るわれた張り手が細ノッポを裏路地の壁にたたきつけ、先ほどまで拳を振るおうとしてた自分を棚上げして憐みの眼でぴくぴく痙攣しているチンピラを見た。
なんというか……冷静になってみれば特に悪いというほど悪い事してないのに憐れだな……。
鬱陶しかったし馴れ馴れしいやら貶されるやらで腹立たしくはあったものの、それとはまったく関係ない部分でオーガの一撃を食らうとか最早事故だろ。
あの店名は初見でだっせぇと思うの仕方ねぇよ。なんかロハルドさん的には最高に素晴らしい名前らしいので、意味はあるんだろうけど。
俺は流石に可哀そうになって、隣でドンびいていたごつハゲに「まあ、これで治しとけよ……」と薬を投げ渡しておいた。
それを見たロハルドさんは片眉をあげる。
「君は優しいな」
「いや、そういうわけでは。なんかこのまま放置するのは微妙に人として終わってる気がして……まあ自己満足なんで……」
ロハルドさんが現れなければチンピラに拳を叩き込んでいたのは俺だったわけだし、褒められると座りが悪い。
にしてもさっきからこの人、俺の事を自分の知り合いであるミサオであるとマジで疑ってないな。俺まだ肯定してないんだけど。
「ではミサオくん、行くぞ」
「店っすか?」
「もちろんだ。あたりまえだろう。早急に魔術工芸核の調整が必要だ」
こちらからお願いする前に自分のペースで話を進めてこちらの行動まで決めてしまうマイペースさ。
賢者といい、仕事のできる奴らにはマイペースが多いのだろうか。
俺はそんなロハルドさんの様子にあいかわらずだなと考えつつ、まあ「話が早い」と納得することにした。
どうせ店は尋ねるつもりだったんだし。
そう思いつつ目当てだった知り合いについていく俺だったのだが……。
「まあミサオ、あなたいつも別の相手を連れているのね? 流石はこのルリルちゃん様がお嫁さんに認めただけあるわ! 魅力的ってことだものね。でもでもぉ、ちょおっとだけ……妬けちゃうかも?」
「げっ」
ぬるり。
まさにそう形容するに相応しい動きで前触れなく俺の腕に巻きついてきたのは、チンピラからのナンパなんて蟻みたいに可愛く思えるほどの厄介な相手だった。
2024.3.10>>微修正