メス堕ちしたくない俺の苦難八割TSチートハーレム記   作:丸焼きどらごん

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※本日二回目の更新です。


63話▶消えた力の行方(バシュトレーゼ視点)

 主のいなくなった魔王の居城。

 その一室で幼女が頭を掻きむしり、部屋の調度品をめちゃくちゃに壊しながら喚いていた。

 ……とはいえ、幼いのは外見ばかりで中身は魔族としてそこそこの年齢であるのだが。

 

「ああああああああ!! 何故!? いったいどうして……! 何故、魔王様から授かった力が消えているのだ!!」

 

 魔族、千里眼のバシュトレーゼは焦っていた。

 

 天空迷宮にてまんまとアイゾメミサオに返り討ちにされた彼女だったが、それでもたった一度の失敗。

 次の手を考えればよいことだと、空から落とされた癖に早々に復活してきたアルマディオに再びアイゾメミサオの居場所を教えた後に再度作戦を練ろうとしたのだが……由々しき事態が発覚した。

 

 

 バシュトレーゼが魔王から受け継いでいた"黒星草(こくせいそう)"を操る力が、彼女の中から綺麗さっぱり消えていたのである。

 

 

 最初は心身的ダメージが抜けきっていないからだと思っていたが、それが落ち着いてからも自身の内にあった心地よい魔王の力の脈動は感じられない。

 迷宮から帰るまでは確かにあった力が。

 

「ああ……ああ! 魔王様の愛が! 私の内から消えてしまったというの!? そんなことって! アイゾメミサオの篭絡に失敗したから!? そんな。お隠れになった後も魔王様は私を見ていたというのですか? だから愛想をつかされたtと? そんな!! ならばせめて痛みとして罰をこの身に刻みつけてくれれば良いのに! なぜこうも無慈悲なことをなさるのです!? あなた様の存在を感じられなくなること以上の苦痛がありましょうか!! あああああああ!!」

 

 暴れ散らかし疲れ果て膝から崩れ落ちるも、依然として力は戻らない。

 その無力感に打ちひしがれるバシュトレーゼに声をかける者が居た。

 

「見苦しいぞ、バシュトレーゼ」

「ガルドゥド……」

 

 牡鹿のように枝分かれした角を持つ魔族は、見目幼いバシュトレーゼと対照的に大きな体躯を持つ男だった。

 ちなみにバシュトレーゼの角は髪の毛に隠れてしまうほど小さい。

 

 バシュトレーゼはこの粗野な男が嫌いだった。

 

「どういった理由で暴れているかはその駄々洩れの独り言で察せられるが……くくっ。もともとのぞき見しか能がないお前にやっと備わった力だったのになぁ? 残念なことだ」

「うるさいうるさいうるさい! 黙れ!」

 

 嘲笑うその声に噛みつくが、男……ガルドゥドの言う通りバシュトレーゼの取り柄は千里眼。戦う力は乏しく、魔王の力を失った今は抵抗する手段もない。

 ひとたびガルドゥドが機嫌を損ねれば、バシュトレーゼの命など軽く消し飛ぶだろう。それを理解できているため、癇癪の後は悔しそうに押し黙ったバシュトレーゼである。

 ガルドゥドはそんな彼女を愉快そうに鼻で笑った。

 

「ふんっ。もともとお前には過分な能力だったというわけだ! その身に宿ったのも何かの間違いであろうよ……この俺と違ってなぁ」

 

 ガルドゥドは見せびらかすように腕を前に差し出す。その肌は一見普通の魔族のものだったが、瞬く間に硬く黒い表皮に覆われた。

 黒光りするその装甲は、かつて魔王の巨躯を覆っていたものと同種。

 ……この男もまた、アルマディオやバシュトレーゼに同じく魔王から権能を受け継いだ魔族なのだ。

 

「バシュトレーゼ。なんでもお前、魔王様を倒した男を魔族に迎え入れようとしているらしいな? そのような軟弱な考えだからこそ魔王様に見限られるのだ。殺せよ」

「魔族のために何かを成す気も、魔王様の仇を討つ気もない貴様にどうこう言われる筋合いはない!」

 

 自身と同じ幹部でありながら魔王が打たれた後も特に動こうとせず、のうのうと魔王城の自室に居座って気ままに過ごしているのがこのガルドゥドという男である。

 だからバシュトレーゼはこの男が嫌いなのだ。

 

「ははっ、違いねぇ。……それにしても、その体で誘惑は無理があったんじゃねぇか?」

「私が誘惑するわけないだろう!! 熱をあげているのはアルマディオだ!」

「それはそれでなんでだよ!? あいつ男色だったか……?」

 

 ガルドゥドは魔王の仇が男から女に変化している事を知らない。

 それゆえの勘違いであるが、バシュトレーゼとしては不服極まりなかった。

 

「……まあ、お前やアルマディオ、爺さんのような魔王様への忠誠心や狂信は俺にはないが。そろそろ城でごろつくのも飽きて来たし、この力も試してぇ頃合いだ。例の英雄様にちょっかいだしてくるのも楽しいかもなぁ? ……魔王様の守護を任されていた俺を素通りしていった屈辱も晴らしたい」

「素通りされた無能は貴様の罪だがな。生きているのも烏滸がましい」

「言うねぇ」

「……しかし、なぜ今さら」

「ん? さぁな。理由は今言ったとおりだが、気が向いたというか……そういえば、なんでだろうな」

「はあ? 私に聞くな」

 

 腹の立つ言葉を投げかけに来たかと思いきや、どうやら今さらアイゾメミサオを襲撃する気になったらしい。

 それを察して嫌味を口にしつつも、バシュトレーゼはすぐさまガルドゥドを利用する算段をつけ始める。……動機に関しては妙に歯切れが悪く引っかかる所はあるものの、使わない手はない。

 アルマディオを負かす相手にこの男が勝てるとは思えないが、隙を突く手駒くらいにはなるだろう。

 

 自身でアイゾメミサオを襲撃する手段を失ったバシュトレーゼにとって、それは格好の機会だった。

 

 

「……呼ばれた気が、したのだ」

 

 

 ぼそりとこぼされた一言。それは拾うにはあまりにも小さく、本人すら口にした自覚のない言葉。

 知覚されない音の並びは、更にバシュトレーゼの声で上書きされる。

 

「ではアイゾメミサオの居場所を貴様に教えればよいのだな?」

「…………」

「おい」

 

 こちらの問いかけに応えないガルドゥドに苛立たし気に声をかけた。

 すると我に返ったようにはっとしたガルドゥドであったが、すぐさまそれは相手を馬鹿にする笑みへ変化する。

 

「ん? ああ。そういうことだ。ありがたいだろう? お前が活きる機会を作ってやったんだから」

 

 世話になる側が何を偉そうに。そう叫び散らかしたい気持ちをぐっと抑えて、バシュトレーゼは千里眼にて現在のアイゾメミサオの居場所を探知し始める。

 どうやら転移魔術で結構な距離を移動したらしく、現在は天空迷宮からも、そのあと移動したフルリット砂漠からも遠い場所に居るようだ。

 

 

(ああ、魔王様。何故……)

 

 

 新たに出来た仕事に多少気は紛れたものの、心の空虚はぬぐい切れない。

 魔王から受け継いだ権能はどこに消えてしまったのだろうかと、バシュトレーゼは深い嘆きに沈むのだった。

 

 

 

 

 

 

 

 




2024.3.10>>微修正
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