メス堕ちしたくない俺の苦難八割TSチートハーレム記 作:丸焼きどらごん
「ごふっ、げはっ!!」
予想外の言葉に盛大にむせていると、横を青と金色の軌跡が横切った。反射的にそれ……ルリルを羽交い絞めにした俺、なかなかにグッジョブである。
「油断させておいて目の前で宣戦布告とはいい度胸じゃない! ちょっとミサオ、離しなさい! もし捕まえるなら体の前に腕を回してギュッとしなさい!」
「捕まえ方に注文出されることってあるの!?」
こいつの要求に応えるのは癪だがこのままひと悶着起こされてロハルドさんの工房が滅茶苦茶になったら大変だと、渋々ルリルを子供がぬいぐるみを抱きしめるような形でつかまえ直す。
するとひとまず落ち着いたのか、ルリルは満足げに笑みを浮かべた。……鋭い視線はロハルドさんに向けられたままであるが。
「……というか、求愛もそうだけど、なに。男? ミサオは女の子でしょ」
(そういやこいつに話すタイミング無かったな……)
会う奴全てに俺の現状を話していたらそのうち噂が広まって面倒なことになるのでは、という懸念があるもののアルマディオやルリルなんかの厄介な相手には情報を開示してしまった方がいいのかもしれない、という気もする近頃の心境である。そうすれば興ざめして俺に付きまとわなくな……いやつい先日メンタルオリハルコンポジティブ野郎が俺を男と知ったうえで更に求婚してきたわけだが……いやそれよりもまずロハルドさんのさっきの発言はなんなんだよ。
混乱したまま思考に収集がつかなくなってきたので、俺はとりあえずひとつひとつ処理することにした。
「……ロハルドさん、妙な冗談やめてくださいよ。ははっ」
とりあえず面倒くさいルリルへの説明は後回しにして、まあ俺をからかう冗談だろうな……と思われるロハルドさんの発言の対処にあたる。
しかし。
「? 冗談ではないが。ミサオが再びここを訪れたら告げようと思っていた。どうも以前は忙しかったようだからな」
「…………」
表情は真顔に近いのに照れくさそうに頬を染めながら言われてしまった。
鼻からスゥーっと息を吸い深呼吸する。目の前に丁度ルリルの金髪があったので顔を押し付けて吸ってみた。ペット飼ってる人が動物を吸う時の気分ってこんな感じか? あ、めっちゃいい匂いする……これで相手が女子だったら大勝利なんだけどな……。
だがロハルドさんは現実逃避をキメる俺を気にする風でもなく、淡々と持て成しの用意を続けている。
「それと竜人。ミサオは男だぞ?」
「はあああああああぁ~ん?」
俺の思考をおいてけぼりにしつつ律儀にルリルの疑問に答えたロハルドさん。ルリルは心底「馬っ鹿じゃねぇのこいつ」みたいな声を出すが、その次の行動が予想外だった。
「ぎゃああああああああ!?」
頬を膨らませながら体をひねったルリルが、俺の胸を鷲摑みしてきやがったのだ!!
「ば、おまっ、ちょ、ふざけっ、そのみッ!」
馬鹿お前ちょっとふざけんなその見た目じゃなかったら即座に脳天かち割ってるからな。……そう言おうとしたのに、ポンコツとなり果てた俺の口はその全てをぶつ切りに放出する事しか出来ない。
こんな真正面から鷲摑みにされること、ある!? 堂々としてるにもほどがあるだろ!! シャティだってもっと控えめだぞ!!!!
「これの何処が男だっていうのよ!」
「今は何故かそんな見た目だが、本来のミサオくんは俺と身長も近く胸板の厚い黒髪の可愛い男だ」
「ぶっ!!!!」
ロハルドさんの男の俺に対する評価もなんなんだよ!? ガタイはそりゃ頑張ったし結構良かったけど可愛い男って何!? 三白眼そばかす眼鏡の可愛げとか微塵もない男だったが!?
……え、いやいやいや。待て待て待て。
これまでのロハルドさんの発言を素直に受け止めるとすると、彼は"
そこまで考えた所で、耳元で魔王の馬鹿笑いがさく裂した。
『あっはははははははははははははははははははははは!! ははははははははははははははは!! あーははははははははははははは!! み、ミサオ! 君は僕を呼吸困難で殺すべきだったよ!! そっちの方がずっと楽だったとも! 何でそんな面白さの塊なのかな君は! ひ~、実体がないのにお腹痛い気分になってくるよ笑いすぎて! あっはははははははははははは!! よかったねぇ、スキルの力が無くても君ってもともとモテていたらしいよ? 男に! あはははははははははははははははは!!!!』
(死ねェッ!! 今すぐ死ねお前ぇッ!!)
『無理でぇ~す。だって僕もう死んでるから~』
(かわい子ぶった言い方ムカつくな畜生が!!)
現在、俺史上で最もモテている時期なのは間違いないのに全部嬉しくないってどういうことだよ!! ほんっとにこの魔王野郎を殴る手段が今すぐほしい!!
ワンチャン、ロハルドさんが実は筋骨たくましいだけの女性である可能性にも賭けてみた。けど「? ワタシは男だが」と無慈悲に叩き落されました。はい。
そして、数十分後。
「まあ! あの魔王を倒したのがミサオなの!? すごいわすごいわぁ! ふふんっ、やっぱりルリルちゃん様の慧眼に間違いはなかったわね。そんな相手と運命の出会いをするなんて~」
「冒険者協会で駄々こねてたお前を押し付けられただけだけどな」
「なるほど、魔王の呪いでその姿に。それは災難だったな……。君自身が戻りたいと考えているなら、ワタシに出来る事なら何でも協力しよう。今の君もミサオくんであることに違いは無いが、元の君の方が好ましい容姿だ」
「今までで一番素直に協力申し出てもらってるのに素直に喜べないのはなんなんスかね……。あの、俺は普通に女の子が好きなんですけど……」
「ミサオ? 性別なんて可愛さの前に意味は無いのよ?」
「ミサオくん。性別など誤差だぞ? 大切なのは互いの相性だ」
「お前らなんでそこだけ息が合うんだよ」
ルリルの勢い的に今度は下半身を掴まれかねなかった事もあり、この姿になった経緯をなんとか説明し終えた俺。現在はぐったりと応接用のソファーに身を任せていた。……疲れた。
「……ところでよ、ルリル。お前が俺を好ましく思う理由は
もう「性欲が反転して今の形の呪いになった」という部分だけ触れせば洗いざらい話した方が楽じゃね? と【職業:女】という状態にあることまで説明した俺である。最近事情を話すハードルが確実に低くなっている気がして我ながら危うい。でもこれ以上男にモテたくない。いや今日は男の時に男に好かれていたという知りたくなかった事実が判明したわけだが!!
でも少しでも俺の心の負担を減らすために、スキルの影響下で俺を好きになったのだとルリルが理解して不快に思い離れてくれればかなり楽に……。
「? それが何か問題あるのかしら。いくらスキルの影響があるからって、好ましくない相手をこのルリルちゃん様が愛するはずないわ。ミサオは安心してこのルリルちゃん様の愛に身を委ねればいいのよ? ふふっ」
だよなぁぁぁぁぁぁぁ!! 知ってた!!
アルマディオの時の事を顧みるに、こういった自分自身に圧倒的自信がある奴らには「スキルで惚れるとかヤダくね?」みたいなの通じないと薄々思ってたよ!! ただ俺の精神力が削れただけだったわクソが!!
「ほう……竜人をそこまでタラし込むとは流石がミサオくんだな。まあ本来のミサオくんを愛している分、ワタシの想いの方が深いが」
「ああん?」
ロハルドさんはロハルドさんでこっちの心境を複雑にしつつルリルを煽るし! しかも本人に煽ってる自覚ないし!!
俺はただ馴染みの技師に
そこまで考えて、俺は思考をぶん投げることにした。
現実逃避に次ぐ現実逃避で一向に問題は解決しないが、今は一刻も早く用事をすませて可愛い女の子たちの元へ帰りたいのだ。
こんな見た目だけは一級品なのに性別:雄共の俺を挟んだ恋愛ごとのバチバチとかいう地獄みたいな状況から早く脱出したい。可愛くて柔らかくていい匂いのする女の子に囲まれながら美味しいもの食べて温泉入りたい。
ルナナリアスには半分回復目的で来たのに現状全く癒されていないのマジで最悪なんだが。
俺は鋼の意志でもって意識を切り替えると、背中を指し示してロハルドさんに申し出た。
「あの。とりあえず、