メス堕ちしたくない俺の苦難八割TSチートハーレム記   作:丸焼きどらごん

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前回

▶魔族 の 幹部 が 襲撃 してきた !
▶主人公 の 服 が 吹き飛んだ ! 主人公 は マイクロビキニ を 装備 した !
▶魔族 が 魔方陣 を 出した !



7話▶対峙~メス堕ちポイントってなんですか!?

 アルマディオの発声の後、晴天を埋め尽くし規則的に並んだ魔方陣はその威容から次々と魔物を吐き出し始めた。

 幸いその中に魔族の姿はないけど……多いな。しかもとびきり凶暴な奴らばかり出しやがる。

 

(おいおいおいおい。言っちゃなんだが、ここってポジション的に「はじまりの町」だぞ!? そんな場所で出していい魔物じゃねぇし、数! なんだよこれ!? 馬鹿じゃねぇの!)

 

 いや、まあ原因は俺らがいるからなんだけどさ……!

 魔王倒した相手なら、これくらいぶつけるわな。

 

 シャティの結界で空間が遮断こそされているが、視覚までは無理だ。魔物を目した町の人たちから悲鳴が聞こえはじめる。

 ……この声の数、結構近くに人居るな。流石にアシュレ一人じゃ町全体の避難誘導は無理だ。

 

「! あんた、それは……!」

「ふははははは! 言っただろう。現在の魔王軍の頂点は僕……じゃない、俺様だと! このくらい容易き事よ!」

 

 さすがのガーネッタも驚くが、それも仕方がない。俺だって驚いてる。

 奴が使っているのは召喚術の類だが、普通こんな同時に呼び出すことは出来ないはずだ。

 ……どうなってるんだ? 前はこんな術使えなかったはずなのに。

 

『へぇ、なるほど』

(お前、一人で納得するなよ。……なにか知ってるのか?)

『さあ、どうだろうねぇ』

(このヤロ……ッ)

 

 意気揚々とナビゲーターを名乗っていたくせに、こちらが知りたい情報は一切よこしやがらねぇなこいつ!

 

『だって僕、呪いナビだし。呪いについては答えてあげるけれど、それ以外で君の疑問に答えてあげる理由はある?』

(家主様だぞ。敬え)

『あっはっは。いいね、それ。……でも、僕を問いただしている暇は無いようだが?』

「……チッ」

 

 非常に癪な気分だが、魔王の言う通り問い詰めるのは後にするか。

 魔物は悠長に待ってくれる気はなさそうだ。

 

 まず五匹ほど、鋭い歯を持つ狼に似た魔物が飛び出しガーネッタを襲った。

 彼女はすぐさまそれを撃ち殺すも、魔物の影にはもう一匹隠れていたようで……真っ黒な鮫がガーネッタの腕に噛みつく。

 

「ガーネッタ!」

 

 咄嗟に動こうと思ったが、それよりも早く桃色の残像が目の前を横切った。

 

「ガーネッタ」

「! モモ」

 

 ガーネッタに噛みついた魔物はすぐに引き裂かれた。いつの間にか俺の側を離れていたモモが鋭くのばした爪で迎撃したのだ。

 相変わらず咄嗟の判断と俊敏性はぴか一だな。この反応速度は真似できねぇや。

 現在モモの腕は部分的に発達しており、黒い毛皮に覆われた狼のものとなっている。

 彼女の戦闘フォーム、その一だ。攻撃時は肉食獣の特徴が前面に出るみたいなんだよな。

 

「モモ、助かったよ。ありがとね」

「ううん、いいの」

 

 笑顔で礼を言うガーネッタとそれをうけて首をふるモモだったが、それも一瞬。すぐにお互いから視線を外し、敵を見据えて戦闘態勢へと戻った。

 彼女たちは可愛いし美しいが、チートを使って五年で急造英雄となった俺と違って経験豊富な戦士なのだ。その様子からは油断や思考のほころびは見受けられない。流石である。

 

『僕を倒して油断した君とは大違いだねぇ』

(うっせ! 俺だって戦闘中は警戒するさ! あ、あれは倒したと思ったから……)

『一級フラグ建設資格とか持ってたりする? 悪い方の』

(ぎぃぃぃぃッ!!)

『虫みたいな声出すじゃん』

(こ、この……! 罵倒の語彙力無駄に豊富野郎め……!)

『魔王だもの』

(ぐぬぅぅ……ッ!)

『君はうめき声の語彙力豊富だね。あ、これって語彙力っていうのかな。君、知ってる?』

(知らねぇよ!!)

 

 自分でも分かってる事をわざわざ言われるのは腹立つなこの魔王野郎!! その上次から次へと減らず口を。ミュート機能ねぇのかよ。

 

 ……って、だからこんな奴にかまってる場合じゃないんだって!

 

「くっそ」

 

 

 イライラしつつも気を取り直す。

 にしてもこのタイミングでの襲撃……みんな頑張ってはくれてるが、実のところ結構きつそうだ。

 それもそのはず。俺達、数時間前に魔王と戦ったばっかりだからな!?

 怪我の治療はすんでいるものの、みんな体力が回復しきっていないためとてもじゃないが万全とは程遠い。

 

 その事に少々を焦りを覚えると、その気配を察したのかモモがこちらを振り返った。

 

「ミサオママ、大丈夫。モモたち、強い。ミサオママは今、大変なんでしょう? 任せて。がんばる」

「も、モモ!」

 

 幼げな言葉使いながら、そこに込められた思いやりの感情がたっぷり伝わってくる。

 …………パーティー内で最も幼く、記憶すらない少女に気を遣わせてしまった。

 俺みたいなのを親のように慕ってくれるモモは、本来俺が気遣う立場だってのに。

 

 

(……ああもう! 服がどーだあーだ言ってる場合じゃねぇか! 情けねぇッ!)

 

 

 我ながら女々しかった。さっきモモより反応が遅かったのだって、未だ全裸なこの姿で動くのに躊躇したのも原因だろう。

 仲間守る方が優先だってのに馬鹿なこと考えたもんだ。

 

 あー! やめやめ! 羞恥心は一回捨てろ、俺! 女になろうが変えちゃいけねぇ所はあんだろ!

 みんな自分の役目を果たしてるのに、俺が頑張らなくてどうすんだよ!!

 

 

 俺はわずかに残っていた迷いを振り払うと、モモの服をひっつかんだ。

 

 

 

 

 

 

 

 

 ……藍染(あいぞめ)(みさお)、二十一歳! マイクロビキニデビューしてやんよッ!!

 

 

 

 

 

 

 

 

 いや……ぎりぎりマイクロビキニではないけど。下はホットパンツだし……だし……。

 

『君、締まらないね』

(ほっとけ!)

 

 

 

 

 

 

 

 

「おいテメェ! お望み通り相手してやるから、さっさとその雑魚どもしまいやがれ!!」

 

 モモの服に着替え終わると、散らばった荷物の中から剣を探し出した俺は物陰から躍り出た。

 でもって溜まった鬱憤を晴らすように馬鹿魔族……アルマディオを怒鳴りつけたのだが。

 

「……ん? お前はさっきからチョロチョロしてる破廉恥地味女」

「誰が破廉恥地味女だァッ!」

 

 不名誉な呼び方しやがってぶっ飛ばすぞ!!

 こちとら一大決心でこの服を着たってのに、人の勇気を踏みにじるような事を言いやがって!

 

「裸だと思ったら次はそんなはしたない服を着てるんだ! 破廉恥地味女で何が間違ってる!」

「う、ううううううううるせぇッ!」

 

 く、くそ。上手く言い返せなくて盛大にどもっちまった……!

 

 確かに肌色面積は大きいし胸に至ってはいつポロリしてもおかしくない有様だが黙れ!! 心が折れそうになるから黙れーー!!

 ………………。や、やっぱりこの服はモモみたいに毛皮がないと許されない服なのでは……だぁぁッ!! 考えるな!

 

「つーかお前、地味とか言う割にはちょっと顔赤いじゃねーか!」

「!? な、なにを寝ぼけたことを!」

「寝ぼけてねーわ! 青白い肌の血色良くなるとすぐわかるんだよォッ!! 照れてんじゃねーよ気持ちわりぃな!」

「き、気持ち悪い!?」

 

 …………。

 なんか思いのほか気持ち悪いと言われたことにショックを受けてるっぽい。

 あいつ顔だけはイケメンだから、もしかして生まれてこのかた言われた事ないとか?

 よし殺す。

 

『驚くほど心が狭いよね、君』

(わずかな糸口から相手を倒すためのモチベーションを高めてるだけだが?)

『急に早口』

 

 よし決めた。魔王(こいつ)殴れない分、部下のあいつを殴る。ぶちのめす。

 テメェのムカつく上司の分も蛸殴りにしてやるからな覚悟しとけよ!!

 

 

 

 羞恥心を超えて一気に高まった闘争心に目をギラギラさせていると、ガーネッタが魔物の相手をしながら問いかけて来た。

 

「ミサオ、その体で大丈夫かい?」

「ああ、問題ない。強さはそのままだぜ」

 

 頷くと、手をぐーぱーと握って調子を確かめる。

 だけどそこに女の体になったからといって、不安要素は見受けられない。

 

 

 そう。性別こそ変わったが、俺の強さそのものには影響が出ていないっぽいのだ。

 

 

 俺にのみに適応される「レベル」という概念。これはガワがいくら変わろうとも、レベルアップの恩恵がもたらした強さ、頑丈さ、素早さ。あらゆる要素はそのままだ。 

 そんな便利な能力を持って五年間も旅して、更には魔王を倒してザクザク経験値が入った俺である。

 

「負ける要素はねぇよ」

 

 自信を持って頷いた。

 するとガーネッタは真紅の髪の毛をかきあげ、艶やかに笑う。

 

「そうかい、だったら任せた。……けど、無理するんじゃないよ?」

「ありがとな、ガーネッタ」

 

 気遣いに感謝しつつ剣を構える。最終的にマウントとってボコスカ殴ってやりたいけど、それを初手から許してくれる相手でもないからな。

 

 そうこれからの戦いに意識を向けていた俺の耳元に、後ろへ下がるガーネッタがすれ違いざまに囁いていった。

 

「ミサオ。……ちゃんと約束、覚えてるからね。ふふっ。これが終わったらご褒美にたっぷり可愛がってやるから、楽しみにしてなよ」

「えっ!」

 

 格好つけていた顔面の筋肉が一気に溶けたかと思った。

 そしてドクンっと熱く高鳴る鼓動。だって、ガーネッタとの約束って……!

 

 

 

 

 

 思い出すのは決戦前夜。

 

 

 

 

 

―――― な、なあガーネッタ! こんなことお願いするのもなんだけどさ。もし魔王を倒せたら、俺の初めてを貰ってくれたりとか……してほし……なんて……いや、なんでも……。

 

―――― おや、可愛いことを言うじゃないか。ミサオなら構わないよ?

 

―――― 本当!? やったぁぁぁぁぁぁぁッ!!

 

 

 

 

 っとまあ。そんな会話があったわけで。

 

『浅い回想だね。というか君、ごにょごにょしすぎ。最後何言ってるか分からなかったんだけど』

(勝手に人の回想を覗き見しておいて罵倒するのやめろよ)

 

 

 ……ともかくだ!

 

 そう!

 実は俺、魔王を倒したらご褒美として経験豊富なガーネッタにいわゆる筆おろしをしてもらう約束をしていたのだ!

 

 こんなことになってしまったけど、まだその約束は生きてると!?

 さ、さすがだぜ。夫が十人いるお人は懐がでけぇや!

 

『夫が十人!?』

 

 感動してたら魔王がなんか驚いてた。

 

(ん? ああ。ガーネッタは旦那さん十人、子供十二人のビッグママだぞ。つーかお前がそんな驚くのかよ。魔族は一夫多妻も一妻多夫もそれなりにいるって聞いたけど)

『僕は普通の魔族の生態とか知らないし……。え、すご。逆ハーの主じゃん』

 

 魔王の癖にめちゃくちゃ驚いてるのはどういうことだよ。

 なにか? やっぱり厄災の魔王って他の魔族とちょっと違うのだろうか。

 

 にしても、そうなんだよな。俺が憧れるハーレム主の先輩がこんな身近にいるんだよな性別逆だけど! やっぱあの包容力かなハーレムのコツは。俺も見習いたい。

 ガーネッタの安心感マジ半端ないもん。包まれたい。

 こう、姉御肌なんだけど男前っつーの? 頼れるんだよなぁ~。

 美人で強くて包容力あって色気もある。最高かな?

 

 

 ……と。ついついそんなことを考えてしまった時だった。

 

 

【メスメロリンッ♪】

(また!?)

 

 

 本日四回目となる謎の音。

 だけど今度はそこに明確なアナウンスが入った。

 

 

『はい、おめでとう! 英雄くん、メス堕ちポイント四回目の取得だよ。わーぱちぱちぱち~。君の能力、経験値十倍取得のレベルアップだっけ? だからメス堕ちポイントも十倍取得だねぇ。お得~』

(だからメス堕ちポイントってなんだよ!? さっきも言ってたよな! 少なくともめでたくもお得でもないことは分かるけど!)

『あ、聞きたい? どうしようかな』

 

 マジでこいつミンチにしたい。

 

『というかさ、君。もともとメス堕ちの素質あったんじゃない? チョロすぎ。この分だとあっという間に溜まりそうなんだけど』

 

 魔王の野郎、不穏に不穏を重ねてくる。

 気になる! 気になりすぎるけど……!

 

(くっ! 今はこいつが先だ!)

 

 俺はざわつく心を落ち着けると、赤髪の魔族に目を向ける。

 …………? 追撃も無しに妙に静かだなと思ってたら、何やらブツブツ呟いてるな。

 

「気持ち悪い……この俺様が、気持ち悪い……!?」

 

 まだ気にしてたのかよ!

 こっちとしては余裕を持てて助かるが。

 

(色んな意味で気が散ったけど……ここからは真剣勝負だ! 真剣にこいつをぶっ飛ばす!)

 

 すうっと鼻から息を吸う。

 そしてさっき以上に声を張り、魔族アルマディオに向けて宣戦布告を言い放った。

 

 

 

 

「俺がお探しの藍染芽 操(アイゾメミサオ)だよ! さあ、とっとと終わらせちまおうぜ!」

 

 

 

 

 

 

 




▶ガーネッタ>>
半魔族。女。銃士。
赤い巻き毛に金の瞳。褐色肌でスカーフェイス。頭部の片側にだけ角がある。
元魔王軍。操たちを魔王のもとまで無傷で案内した。夫が十人、子供が十二人いるらしい。



2023.12.5>>加筆修正

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