メス堕ちしたくない俺の苦難八割TSチートハーレム記 作:丸焼きどらごん
野郎どもからの俺への好意()についてこれ以上考えたくもないので無理やり本来の目的へと軌道修正を図ると、意外にもあっさりそれは受理された。
「! ワタシとしたことが。そうだな。ミサオくん、まず
「お願いします!!」
た、助かった。ひとまずあの気まずく地獄のような話題から逃れることが出来た。
……そういや、本来の目的って
しかしロハルドさんはすでに職人としての顔になっており、先に
まあ順番が前後したところで問題はないだろう。俺としても、とりあえず壊れた魔装工芸核を預けて一度みんなが待つ宿に行きたいところである。
空調装置については話すだけ軽く話しておいて、詳しくは俺より魔術に精通しているシャティ達を連れてきてからの方が良いだろうし。
俺は先ほどまでのやり取りを必死に頭から追い出しながら、今後の算段をつけはじめた。
腕にがっちり抱き着いたままの美少女おっさんについてはもう無の境地で考えないようにしている。
さて、この
元は立体なのだが、常に身に着けていられるように皮膚に格納できるようになっているのが仕様だ。格納された後は格好いい刺青のようになる。
初めて入れてもらった時は刺青デビューにドキドキしたものだ。憧れはあったけど、もとの世界じゃ入れる温泉とか限られそうで刺青とか一生入れないと思ってたしな。
『君、またあの重苦しい鎧にするの? デザイン変えたらどうかな。というかそもそも今の君にはそんな防具必要ないだろう。無くても強いんだから』
馬鹿笑いしていた後しばらく静かだった魔王がセンスのない事を言ってくる。
(はあ~? 分かってねぇなお前……。重苦しい? あの重厚感ありながらも機能美に優れたスタイリッシュさがわからねぇかな~。か~っ!)
『…………。ひょっとして僕、面倒くさいスイッチ押した?』
(面倒くさいとはなんだ面倒くさいとは! あのなぁ、お前も男なら、こう、わかるだろ? ……変身のロマンが! 鎧とかもさ、格好いいじゃん!)
『ああ……そういう。悪いけど僕はそんなに』
(マジ? マジで言ってるそれ?)
心底鬱陶しそうに言われてしまい衝撃を受ける。
この世界で唯一俺が抱く変身への憧れを正しく理解するだろうと思っていたお前が!?
魔王お前も男の子だろ!? 変身のロマンが通じないなんてある!? というかお前って魔王としての姿にこだわりなかったっけ!? 装甲とか自分でかっこいいって言ってたじゃん! あれはいいのに何で変身の良さが分からないんだよ!
俺の衝撃具合がダイレクトに伝わっているはずだが、魔王はあくまで冷めた目で俺を見る。
その温度差にちょっとだけ心が折れかけたのは秘密だ。
『あいにくと、特撮? や魔法少女? とかの、変身ものの類は見たこと無くてね』
(はああああぁぁ!? も、もったいねぇ!)
『そういうの見る家庭じゃなかったから。自由に何かを見られるようになった年にはもう周りはみんな子供向けの番組は卒業していたし』
珍しく前世について触れた魔王。どこかぼんやりとしつつ過去を思い出していたようだったが、はっと我に返ったように目を細めジト目で俺を見てくる。
『まあ、好きにするといいさ。僕は興味ないからひっこんでおくよ』
と。そんなことを言い残して、本当に綺麗さっぱりあのこまっしゃくれた美ガキとしての姿を消してしまった。実体化してないだけで前みたいに普通に俺の中に居るんだろうけど、最近はずっとあの姿でうろちょろしていたから奇妙な感じだ。
……いや、視界がすっきりしてめちゃくちゃいいじゃねぇか!! 快適!
今のうちにさくっと魔術工芸核の調整してもらっちまおう。
ふんっ! ロハルドさんにすっげぇカッコよく新生魔術装甲を実現する調整をしてもらうからな! あとでその格好良さにひれ伏すがいいわ!
……にしても、あれか?
子供の頃は自由にテレビ番組を見られなかったみたいな言い方してたな、魔王の野郎。厳しいご家庭だったのだろうか。
(……ま、今はそんな事どうでもいいか)
「ミサオくん、どうした? 背中を」
「あ、すんません」
お願いしますと言ったはいいが、魔王との会話で微妙なタイムラグができていたらしい。
ぼーっとしているように見えただろう俺をロハルドさんが促す。俺は慌てて言われた通りロハルドさんに背中を向けた。
「…………。はぁ。貧相な背中になったものだ」
「う、うす」
襟を引っ張って背中を覗き込んだロハルドさんにため息をつかれた。
自分でも気にしている事だから少々落ち込むぜ……。俺だって自慢だった広背筋が恋しい。
「ちょっとミサオ! 他の男に簡単に肌を見せるものではないわ! しかも未来の夫の前で!」
「さっき胸を掴んできたお前がそれ言う!?」
「ルリルちゃん様ならいいのよ!」
「よく堂々と言い切れるなお前!! ……はぁ。あのなぁ、魔術工芸核がそこに格納されてんだよ」
「まあ、そうなの?」
いちいち全部の相手をしていては俺が参ってしまう。
ツッコミを途中であきらめて説明すれば、興味津々といった風にルリルもまた俺の背中を覗き込んできた。
…………。いや、背中くらいならいいんだけどよ……なんか腑に落ちねぇな。
そして俺の魔術工芸核を見ていたロハルドさんは少々唸ると、表皮に収納されている魔装工芸核の模様をなぞる。するとわずかになぞられた部分が熱くなり、俺の皮膚からじわじわと物体がせり出てくるのを感じた。
核を取り出す時の感覚は魔術装甲を展開する時とは少し異なり、かさぶたが剥がれそうで剥がれない時に似たむず痒さがある。
「取り出したぞ。……調整どころの話ではないね、これは」
「ども。……うわぁ」
取り出された魔装工芸核は水晶の原石に似た見た目だが、ものの見事にまっぷたつに割れていた。ロハルドさんの手のひらの上でごろんっと転がったそれに申し訳なくなる。
こんな状態になってたら、そりゃ魔術装甲も砕け散るし維持できねぇわ……。
「すんません。こんなふうにしちゃって……」
「まあ、これとて物だ。そのまま使用していても、いつかは壊れる。多少扱いに気を付けてほしくはあるがな。……しかし装甲のみならず核まで砕けるなど、いったいどんな戦い方をしたんだ?」
「うっす。けどこれって魔王との戦いとかで壊れたわけじゃないんスよ。突然砕けたというか、なんというか……」
ロハルドさんは割れた魔術工芸核を眺め透かし、その後で俺を見る。
「そういった要因か。……考えてみれば当たり前だな。これはワタシが男のミサオくんのために調整しあつらえた代物。そこまで体が変化してしまえば身に合うはずがない。小さな服を体の大きな者が着れば千切れる。これもそんな理由で壊れたのだと理解するといい」
「俺、体的には縮んだんスけど」
「普通の服と同じに考えるな」
「はい……」
至極真面目な顔でそう述べたロハルドさんに肩が落ちる。
……さっきまで男の俺を愛してるどうのこうの言ってた人なんだよな、この人。調子自体はいつもと変わらないからどういう感情で接していいのか反応に困る。いや態度変えられてもそれはそれで困るけどさ!?
例の事に関しては改めて丁重にお断りするとして、この人どういった理由で俺をす……うぐ……好きになったんだろう。魅了が備わる前からっぽいし。そういう趣味だって事はこの際置いておくとして、なんで俺? お世辞でも男の俺は可愛くないだろどう考えても。
趣味が合ったからとか? 俺もロハルドさんと魔術装甲に関して話すのは好きだけどさ。そこは友愛でいいんじゃねえかなぁ!?
かっこいい大人として尊敬してた人から愛の告白された俺の気持ちを考えてくれ。
ともかく俺は魔術工芸核をあずけ、その後で制作を頼みたいものがある事だけを告げてそそくさロハルドさんの工房を後にした。
すでに魔術工芸核の調整……もとい修復に大半の意識を裂いていたロハルドさんは生返事だったが、今はそれがありがたかった。
「お前はいい加減離れろよ!」
「いーやー」
でもって、俺の腕には未だに余計な重りがついているわけで。
ルリルの奴、このまま宿までついてくる気らしい。これじゃまともに買い物も出来ねぇだろ。わざわざ仲間達から離れてまで下着を仕入れに来たっつーのに!
「せっかくだもの。ルリルちゃん様、ミサオとデートがしたいわ」
「俺にも予定があるの!」
「ええ~? やだやだ。ミサオと遊ぶの~」
くっ……! 中身が分かっててもこの見た目で甘えるように駄々こねる姿は可愛い。強く振り払えない自分が情けないったらねぇ。
そうして悩みによる頭痛が収まらない中。
「……あら?」
何かに気付いたようにルリルが空を見上げた。それとほぼ同時に視界を黒い何かが覆いつくす。
それが間近に迫った巨大な鉄柱らしき物体だと気づいたのは、片手ではじいてからだった。
「………………」
ここは街中である。
咄嗟に謎の鉄柱に対処できたのは良かった。
俺は動体視力も反射神経も筋力もスキルのおかげではちゃめちゃに優れているので、人のいない方向へ弾き飛ばす事も出来た。
うん、それは良かった。
しかし。
「ふん、流石にこの程度ではどうにもならんか。さすがだな、英雄アイゾメミサオ」
「………………」
家屋の屋根上から聞こえて来た声にぎぎぎと首を動かせば、そこには一人の魔族。
そして同じ方向にある、たった今俺が弾き飛ばした鉄柱で無残に崩れている建物。ぴゅーぴゅーと上がっている水飛沫からは湯気が出ており、それが温泉であることが窺えた。
………………うん。
俺は視線をスライドさせて、もう一度魔族を見た。
「我が名はガルドゥド! さあ、魔王城で素通りしてくれた礼をしてやろうか。ついでに魔王様の仇を……」
「これから温泉楽しもうって時に余計な事してくれてんじゃねぇよクソが町の人の心象悪くなって出禁になったらどうすんだテメェこの野郎!!!!」
俺は魔族の言葉を最後まで聞くことなく屋根の上まで一足飛びで近づき。その顔面に渾身の右ストレートを振るうのだった。
アルマディオといい魔族共、襲ってくるのは良いが街中はマジでやめろ。