メス堕ちしたくない俺の苦難八割TSチートハーレム記   作:丸焼きどらごん

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69話▶感情の名前(パーティ視点)

 一人別行動をとったミサオがてんやわんやしている頃。

 町の中でも遠方だったため事態に気付かなかったパーティメンバーは、ルナナリアスの町を楽しんでいたのだが……。

 

 

「ねえルキくん。君って、ミサオ様のことが好きですよね?」

 

 

 出店などを楽しみながら和やかに宿へ向かう途中。

 一人行動を申し出た師匠が早く追い付かないかとチラチラと後方を気にしていたルキは、シャティの発言に足をもつれさせて盛大に転んだ。

 

「あびゅっ!?」

「まあ、いい反応。ふふふっ、ルキくんは可愛らしいですね」

「こら、シャティ。あまりからかわないであげなよ。……ルキ、大丈夫かい?」

 

 くすくす楽しげに笑うシャティをたしなめ、アシュレが流麗な仕草で服に土がつくこともいとわず膝をつきルキを抱え起こす。その所作は正に高潔な騎士であり、周囲の観光客(の主に女性)や地元民(の主に女性)から視線を集めた。

 しかし投げかけられた質問と、転んだ衝撃で眼を白黒させていたルキは、アシュレに感謝をする余裕もなく魚のように口を開いて閉じてを繰り返している。

 

「ルキ、変な顔」

「ちょ、モモせんぱっ、つつかないで」

 

 その顔を容赦なく指でつつくのはモモである。灼熱迷宮探索時に少し仲良くなり距離感が近くなった分、そこに一切の遠慮はない。遠慮自体は最初からなかったかもしれないが。

 

「あははっ! 初々しいもんだねぇ、若者の恋愛は。若い頃を思い出すよ」

 

 そして微笑ましそうな目を向けてくるガーネッタ。

 思春期真っ盛りのルキにとって、現在の空間はなかなかに堪えがたいものだった。

 

「あ、ああああああああああああのあのあの! 皆さん何を言ってるんですか!? 僕が師匠を好きなんて、そんなッ、恋愛てっ!」

「あれ? あれあれあれ~? なんでそこまで動揺するんですか? 大切な師匠ですもの~。尊敬して好意を抱く事に不思議はありませんよ? でも……もしかして、ルキくんが受け取ったのは違う『好き』なんです? それこそガーネッタが言ったような」

「!?!?」

 

 弁明するようにしどろもどろで言葉を重ねたルキは、シャティの追撃で完全に言葉を失った。その顔は茹で上がった蛸のように赤い。

 それを憐れむようにアシュレが少年の肩をぽんっとひとつ叩いた。

 

 一方、いとけない少年に爆弾を放り投げたシャティはといえば、腕を組んで何故か得意げにうんうんと頷いている。

 

「……まあ、ルキくんはミサオ様の元の姿を見た事ありませんしね。元々男性だと聞いても、本質的に理解することは難しいでしょう。わたくしですら性別の反転なんていう現象、見るのはミサオ様が初めてです。なので、ですね? 君がミサオ様を女性として好きになっちゃうのもわかるのですよ。命の恩人でもあるわけですし、あんな出会い方をしたら運命感じちゃいますものね~。魅了(チャーム)に耐性があろうが関係ないと思いますよっ」

 

 ルキがミサオの事を好きだと決めつけたまま話を進めるシャティに、少年はどう言葉を探して返せばいいのか途方に暮れてしまった。先ほどまでルナナリアスの名産や宿の話で和やかな世間話をしていたのに、なぜ自分は今こんな街中で赤裸々な気持ちを暴かれているのだろか。

 こうした思考に至っているあたりルキはミサオへの好意を肯定したに等しいが、それについては本人にとって幸いか不幸か、まだ自覚していない。今は混乱と羞恥が勝っているようである。

 

 そして慌てふためく姿があまりにも憐れだったからか、気遣い屋で紳士のアシュレがどうにかフォローしてやろうと考えを巡らせる。

 

 結果。

 

「ミサオはルキが同性だから結構な隙を見せているんじゃないかな? 距離感も近いし。あれは……うん。良くないね。すまない、これは私が注意をするべきだった。無自覚にでも年頃の男の子を誘惑してはいけないよ、と」

 

 

 人の事を無自覚と言いながら本人も無自覚で追撃をかけた。

 

 

 

「誘惑なんかされてませんけどぉッ!?」

 

 ついには悲鳴のような声をあげたルキである。

 様子を見ていたガーネッタが「これじゃ私は乗っかれないね……」とからかいを自重する程度には盛大な慌てっぷりだ。そんなルキは周囲のまったく関係ない他人からも「なんかよくわからないけど初々しいねぇ」みたいな視線を向けられていることに気付いていない。

 

「ルキ、ミサオママが好きなの? でもミサオママは、モモのだからね。あげないよ」

「だ、だからぁ……! もう!」

 

 せっかくガーネッタが控えたというのに天然その二からの追撃おかわりである。

 モモの言葉に赤くなった顔を押さえてへたり込んでしまったルキは、この場に居る女性陣の誰よりも乙女であった。

 

「なんで急に、そんな話を……」

 

 指の隙間から恨めし気にシャティを見上げるクウォーターエルフの視線を受けたシャティは、束ねた白髪を手でくるくると弄びながらぺろりと舌を出した。

 

「ごめんなさい。でもミサオ様がいない時でないと、こんな話は出来ないかなって思いまして。まあ恋バナしたかっただけですね!」

「こ、恋バナ!? いや師匠が居る前でされたら確かに気まずいどころじゃありませんけど、そもそもする必要がありました!?」

「ですから、わたくしがしたかったので!」

「私欲!!」

 

 行動を共にする中でその清楚な見た目に反する灰汁の強さは知っていたつもりだが、その矛先が自分へ向けられるとこうも厄介なのかとものの数分で思い知ったルキである。

 

 更に。

 

「うふふっ、それとですね? 君の事は嫌いではないし、とってもいい子だと思うんですけど……ミサオ様と同室じゃないですか、いつも。今日とる宿でも多分というか確実に。いえ、弟子を気遣うミサオ様の優しさだと理解はしていますけれどね? えーと。だから若さゆえの暴走を考慮してですね、先に自覚させた上で、お話しておいた方がいいかな~……って思ったりなんかして」

 

 お話しておいた方が、という言葉が自然とルキの脳内で「釘を刺しておいた方が」に変換された。

 

「暴走ってなんですか暴走って! それに万が一……万が一ですよ? たとえ僕が変な気をおこしても、師匠をどうこうできるわけないじゃないですか。力の差を考えてくださいよ。それに前提として僕にそんな不純な気持ちはありませんッ!!」

「ふふっ、今日はこの辺にしておいてあげましょうか。ちょっとからかいすぎましたし。で、ルキくんはミサオ様のどんなところがお好きですか?」

「今この辺にしておいてあげましょうかって言ったばかりですよね!? 話が終わって無いんですけど!」

「ルキ、あまりいい反応を見せるとシャティが喜ぶだけだよ。君のそういうところ、ミサオによく似ているから」

「そ、そうは言っても……。アシュレ先輩ぃ……」

 

 尊敬する師匠に似ている。

 本来なら喜ぶべきところだが、あまり似ていてほしくない部分をそう言われても嬉しくない。

 

「えと……そういえば。皆さんは、師匠の事をどう思っているんですか?」

 

 これは受け身になっているだけでは逃れられないなと、ルキは対応を質問へ変えた。

 

「もちろん愛していますとも!」

 

 胸を張り真っ先に自分の気持ちを主張したのはシャティである。天空都市マシュラバでもそういった流れは見ていたので納得するルキだったが、その時の情報によりもとの男性としてのミサオが好きだったのか、それともたくさんの元恋人を見た限り女性としてのミサオが好きなのかいまいちわからない。

 

「ミサオママは、ママ」

 

 続いてふすーんっ! と鼻息を出しつつ胸を張るのはモモ。表情は乏しいが、そこにはたくさんの愛情が詰め込まれている様子が窺えた。こちらは言葉の通り家族愛なのかもしれないが、嫉妬心が人一倍なのはルキ自身が身をもって知っている。

 

「ミサオは放っておけないからね。ずっと共に居ようと考えているよ」

 

 涼やかに笑みを浮かべながらさらっと答えたのはアシュレである。このパーティ内では特に理性的な人物だが、こういった質問を流さずしっかり答えるところにミサオへ向ける感情は大きいように感じた。

 

「次は私かい? 抱いてもいいと思っているよ」

「抱っ!?」

 

 ルキの視線を受けて悪戯っぽく妖艶な笑みで答えたのはガーネッタ。その答えにはルキの方が動揺してしまい、本心は掴み損ねてしまった。

 

 

 

「し、師匠は愛されてますね……はは……」

 

 

 

 ともかく矛先もズレたことだしここで一度話を終わらせようと、そう締めたルキだったのだが。

 

 

 

「ミサオ様は寂しがり屋ですからね。たくさんの愛の受けるべき人です」

「そうだね。彼の故郷と同等になれるかは、わからないけれど。少しでも埋まってくれたら嬉しく思う」

「え?」

 

 

 ルキがまだ知らぬ師匠の事で聞き返そうとした時。

 

 

 

 

「ぅお~い! みんな、待たせたー!」

 

 待ち望んでいた師匠の声が耳に届いた。

 

 

 

 

 

 

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