メス堕ちしたくない俺の苦難八割TSチートハーレム記 作:丸焼きどらごん
襲撃してきた魔王軍の残党っぽい魔族を名前も聞かないうちに返り討ちにしてしまった俺は、そのあとなんとかルナナルアスの町の人に弁明して自分は被害者であると理解してもらえた。
目撃者がまったくいなかったわけではないからな。丁度俺が襲われる場面を見ていた人から証言を貰えて助かった。
……それはそれとして魔族の攻撃を弾き飛ばして建物を壊したのは俺なので、粛々と弁償代は払わせていただきましたが。ハイ。
あの襲撃魔族野郎に払わせようと思ったら、俺がルリル達に絡まれている間に姿を消していやがった。ファッ○である。
黒金級冒険者として荒稼ぎしていたころの金がある俺としても、建物級の弁償ってなると懐が痛い。俺はただ下着を買いに来ただけなのに、なんでこんな余計な出費を……。
ともかく逃げられてしまったものは仕方がない。
俺にデートと称してケーキを奢らせようとするルリル達をかわしつつなんとか下着の購入を終えると、仲間達と合流すべく宿へと向かった。
「ぅお~い! みんな、待たせたー!」
宿へ向かう途中、美人ぞろいの目立つ集団を見つけて遠くから呼びかけた。
荷物をまだ全部持っている所を見るに、どうやら散策を楽しんでいたらしく宿へチェックインもしていない様子だ。
「し、師匠」
何故かルキが狼狽えるような、そして縋る様な目で俺を見てきたが……きっとシャティあたりにからかわれでもしたんだろう。
労うように軽く肩を叩くと、腕に引っ付いているものをどう説明しようかと思いつつ仲間達を見た。
……魔族の襲撃と弁償代についても話さないとなぁ……。
「ミサオ様、用事はすんだのですか? それと……また貴方ですか」
「はぁい。お久しぶりだわ~」
俺に腕を絡めて気さくな挨拶をするルリルことルリルベレスだったが、やはりドラゴンである。簡単に腕を絡めてと言ったが、身長差のある俺の腕にくっついて体を浮かせられている腕力が恐ろしい。なんたって俺が振り払えない強さでがっちりホールドした上でこれだからな。
いや、本気になれば振り払えるんだけど……ただでさえ変な目立ち方したのに、この見た目幼女を無理やり引きはがす場面をルナナリアスの人たちに見られたくないのだ。まだ噂こそ立っていないものの、それも時間の問題かと思うとますます肩身が狭くなる。
くっ。ルナナリアスには半分休養目的で来たのに何故こんな疲労感を……!
そしてモモ、すかさず対抗心を燃やして腰にしがみついてくるのは可愛くていいんだけど、もうちょっと力を弱く。弱くして! 結構腕力強いんだから!
「もう仕方ないから飽きるまでこのままにすることにした……」
「ミサオ、お疲れ様。頑張ったね」
ルリルに関してはもう面倒くさいので事情説明を省いて自分の心情だけを吐露する。
げんなりとする俺に、アシュレが苦笑しながら労ってくれた。ああ、お姉さまスパダリ冒険者先輩……癒し……。
あ、そうそう。ルリルやら魔族の襲撃の前に言う事があった。
「そういやぁ、用事は二つ済ませてきたぜ。実はさっき街中でたまたま目当てだった
「まあ! そんな偶然があるのですね。ふふっ、では宿と温泉で疲れをとったら、明日くらいに伺ってみましょうか。ご一緒いたしますわ」
「ミサオは運がいいね。……ところで、何か変な事でもあったかい? 覚えのある魔力の残滓を感じるが」
流石同族である。騒ぎ自体はここから結構離れていたし、俺が秒で片付けたから襲撃には気づいていないと思いきや……ガーネッタに言い当てられてしまった。
「実はさぁ……」
「いらしゃいませ、アシュレ様」
「やぁ。世話になるよ。すまないね、急で」
「とんでもない。皆様方ならいつでも歓迎いたします」
さっきまでの事情を話し終え、ようやく宿に到着した俺達。エントランスで恭しく宿の主人に迎えられ、無事に部屋も用意してもらえた。
ちなみに図々しくくっついてきたルリルだが、モモがめちゃくちゃ不満そうだったけど俺と同じ部屋に泊まることになった。だって面倒くさいし、こいつ見た目美幼女だけど中身おっさんだからモモたちの部屋に押し付けるわけにはいかないし……。
自分で普通に部屋取ってくれたらよかったんだけどな!!
「料金は払えよ」
「もちろんだわ! なんならミサオ達の分も払ってあげてよくってよ?」
「いらんいらん。お前に借り作っても怖いだけだ。つーかそんな懐の温かさがあるなら俺にケーキをたかろうとするなよな」
「いいですか、ルキくん。あの小娘オヤジがミサオ様に変なことをしないよう、ちゃんと見張るんですよ」
「ルキ、託した。ミサオママを守って」
「僕、さっきの今でこの状況をどう受け止めればいいんですか?」
ルキがシャティとモモに肩を掴まれてなにやら言い含められている。多分ルリルに気をつけろって心配でもされてんのかな……。前に構われた時、うっかり頭をつぶされそうになってたし。
そしてルリルの付き人のマイヨールだが、ちゃっかり自分は自分で最上級の部屋(高すぎて滅多に人が入らない)を確保していた。やっぱこいついい性格してるよ。
そんなこんなで、本当にようやく……第二の目的である温泉に入れる段階になったのだが。
温泉。
温泉だ。
温泉である。
温泉……なのである!
俺は仲間達にばれないよう表情筋を総動員すると、心の中で高らかに拳を天に突き上げた。
(メス堕ちの危機があろうとも!! 特別イベントとしての温泉だけは!! 譲れねぇ!!)
そしていつものごとく、俺の熱く滾る想いに水を差すのは魔王である。
『ドンッ! みたいな擬音背負う勢いで言う事がそれ? 僕と魔王城で相対した時より真剣じゃないか』
(うるせぇよ! 女になっちまったならせめてこれくらいのうま味はすすりてぇだろうがよ!! 男のロマンだぞ!! もう俺、疲れたの! 今日は今日で色々あったし! 癒されたいの!! たまにはいい思いしたっていいだろぉッ!?)
『ふーん……』
(だからお前はその興味の薄さは何なんだよ! 同じ男じゃん! 温泉でのドキッとイベントに興味ないわけなくない!?)
『正直に言ってもいい? どうでもいい』
(チンもタマもねぇのかてめぇには!)
『ははは。引く』
(あ、ガチトーンのドン引きやめて。冷静になっちゃうから。お前が相手でも自分が恥ずかしくなるから)
……気を取り直そう。
俺は普段、シャティの妖艶な攻めにも屈せず宿の部屋も女性陣と別室、着替えだって別室を貫いている。紳士だからな!
けして判定ガバガバのメス堕ちポイントが溜まることを恐れてだけじゃないんだぞ。紳士だからだ!!
けど温泉だぞ? ……温泉、なんだぞ!?
今の俺は合法的に!! 女湯へ!! 入れるんだぞ!!
『思考がうるさいよ。そのいちいちクラメーションマークで区切る暑苦しさやめてくれない?』
(おめぇが勝手に人の思考を読んでるからだろうが! つーかクラメーションマークとか久しぶりに聞いたわ!!)
『感嘆符って言った方が良かった?』
(いや別にそこでこだわりはねぇよ。ああもう、この同郷!!)
『罵倒みたいにただの事実言うの阿保っぽくておもしろ』
(ぎぃぃぃぃっ!!)
ともかく、ともかくだ。
多分だが女になってから初めての温泉だしシャティあたりが「一緒に入りましょうよミサオ様!」とか言ってきてくれるはずだ。
俺はそれにちょっと嫌がるふりをしつつ、なし崩しかつ流されるよう形で……。
『欲望の塊の癖に実行手段は他力本願なの、ほんとヘタレって君のためにあつらえたような言葉だよね』
(う、うううううううるっせぇやい!)
こっちだと同性とはいえ裸体を人前で晒すのに抵抗ある奴が多いから、公衆浴場や温泉施設では温泉着的な物を着て入ることが許されている。だからまるっきり人の裸を見るわけでも自分のを見られるわけでもない。
しかし……しかしだ! 俺は"着エロ"文化を推奨している人間でもある!! 時として布地は人体を更にエロい領域へ押し上げる神器と化す!!
温まり紅潮する頬。汗ばむ体。
そしてお湯に濡れて体のラインにぴったり張り付き、うっすら肌色を透けさせる……布地!
俺はそれだけ見られたら満足だ……!
『性的犯罪者の思考ってこんな感じなのかな』
(全人類の宿敵だった大犯罪者に英雄が性的犯罪者扱いされるのおかしくない???)
『君の思考が気持ち悪いのがいけないんじゃない? ああでも、なんかミサオって精神年齢が高校生くらいで止まってるみたいだし、ちょっとかわいそうだったかな。童貞の男子高校生。いや、中学生? 小学生?』
(どんどん年齢を下げるな下げるな! あと童貞ってわざわざ付け足すなよ腹立つな本当に!!)
魔王の憐みを含んだ視線が気に食わないが、それでも密かに高まる期待で胸が躍る。
しかし俺はこの時すでに発生済みのイレギュラーを忘れていた。
「ミサオは男の子なんでしょう? だぁったら、ルリルちゃん様とお風呂に入っても、な~んにもおかしくないわよね?」
「…………」
「…………」
温泉宿に到着してから、少しあと。
ぐうの音も出ない事実を述べるルリルに連行される俺とルキの姿があったりした。