メス堕ちしたくない俺の苦難八割TSチートハーレム記   作:丸焼きどらごん

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71話▶なすがままに洗われて~なんか思ってたのと違う

「ミサオ様はわたくし達とお風呂に入るんですー!」

「ダーメ! ミサオは男の子だって自分で言ってたじゃない! なら当然、男湯だわ!」

「だ・め・で・す! ミサオ様、髪が長くなってからうまく洗ったり乾かしたり出来ないんですよ!? このシャティがミサオ様の御髪にどれだけこだわっているとお思いですか! 他の人になんて任せられませんわ!」

「あ、こだわるのまさかのそこ!? いつもお世話になってます!?」

 

 

 少し前、俺の予想通り俺を女湯へ連れ込もうとしていたシャティと、ド正論で武装して俺を男湯へ連れて行こうとするルリルの間でこんな攻防が行われていた。

 

 ちなみに髪の毛についてなのだが、本当に何から何まで……洗うのも結んでもらうのもみんなにお任せしっぱなしである。

 一度自分で出来るから! と洗って乾かし(たつもりで)寝たら次の日えらいことになった。大爆発の絡まりまくりもいいろころだったぜ。

 女になってから何故か長く伸びた髪の毛。本当なら切っちまえれば一番楽なんだけど……。

 

『う~ん。もしかするとですが、髪の毛の長さは女性になることによって男性時に所持していた何かが別の形で反映された結果なのかもしれませんね。女性の髪には魔力が宿ると言われているので、ある意味特別な部位なのですよ。実際直接魔力の質にも影響が出ているのはカリュキオス様の研究結果などでも出ておりますしね。……ですから、先に述べたような変化が起きてもおかしくありませんわ』

 

 ……というのが、以前聞いたシャティの仮説である。つーか賢者、髪の分野でも研究結果出してんのか。本当に色々やってんなあの人。

 髪の話を聞いた時は「あ、だから髪の短い女の人って少ないんだ」と妙に納得したもんだ。冒険者みたいに旅したり、戦士みたいに荒事をこなしたりする女性なら短い髪の人もそこそこ居そうなのに、そういえばほぼ見たことが無い。

 シャティもアシュレもガーネッタも、結構手入れが大変そうな長さをしているからな。一番短いモモでも二つ結びをとけば肩甲骨くらいまで長さがある。

 

 しかし納得したと同時に、シャティの言葉に隠された意味にぶるりと震えが走った。

 

 

 

 

 だってよ……。男の時にあって今は無いものって、それってちん……。

 

 ……………………。

 

 

 

 

 つまりそういうわけで、無暗に髪の毛を切るわけにいかなくなってしまっているのだ。

 もし切って、男に戻った時にアレがアレして短くなってたら最悪だろ!?

 でも髪の手入れは本当に大変なので、こればかりは一から十までシャティをはじめみんなのお世話になっている。

 

 

 

 

 

 ともあれそんな風に俺を女湯へ連れて行きたいシャティと、男湯へ連れて行きたいルリルの攻防が続いていたのだが……。

 

「ルリルちゃん様、一般の入浴施設では他の方にもミサオ様の肢体を見られてしまうかと。プライベートな浴場をおさえましたので、そちらに転移させますね」

 

 させますね。主人に伺いを立ててる途中みたいな台詞が、発言主の決定事項で締められる事ある?

 そう感想を抱いた時にはすでに遅く、気づけば転移魔術の範囲内。一瞬の転移魔法の揺らぎの後、おそらくルナナリアスのどこかにあるであろう高級そうな浴場施設に放り出されていたのである。

 ちなみにルキをルリルに対する盾代わりに肩を掴んで前へ押し出していたので一緒に転移してきていた。

 一人よりマシだが……男である。

 

 

 

 

 男である。

 

 

 

 

 俺、ルキ、ルリル、マイヨール。

 野郎しかいねぇッ!!!!

 

 うっそだろ! 俺、あとちょっとで桃源郷へ行けたはずなのになんでこんな男ばかりの温泉大会会場に居るんだよ!? ドキッともしねぇわ! 判定ガバガバのメス堕ちポイントもピクリとも鳴らねぇわ! 万が一鳴られたら絶望するから鳴らなくていいんだけども!!

 

 しかし。

 

「ミサオは男の子なんでしょう? だぁったら、ルリルちゃん様とお風呂に入っても、な~んにもおかしくないわよね?」

「…………」

「…………」

 

 ど正論をかまされてしまった上で俺が文句を言えば「女湯に入りたかった」俺がバレてしまうわけで……。弟子の前でそんな醜態見せられないわけで……。

 口を開く前に封殺された俺は、ルキと共に湯気の沸き立つ浴場へ連行されるのだった。

 

 

 

 

 

 

「つーかよぉ。わざわざ転移まで使いやがって、置いていかれたシャティ達が心配して風呂に入れないだろ。風呂には一緒に入ってやるから一度返せよ」

「ししょっ!! 一緒にお風呂はいいんですか!?」

「あ? んなもん、別に温泉着を着れば素っ裸見られるわけでもねぇし……はぁ……」

 

 ルキに答えつつ、俺はあとちょっとでたどり着けた夢の光景を想像してため息をついた。

 

「いやよぅ。そしたらせっかく移動した意味がないじゃない。あ、でも君は帰っていいわよ? ほら、さっさとお行きなさい。しっしっ」

「犬でも追い払うみたいに言わないでくださいよ! ……分かりました。僕も腹をくくります。シャティさんたちに代わって、師匠の貞操は僕が守ってみせますとも……!」

「貞操とか生々しい言葉使うなよ!? つーかそんな間違いは万が一にも起きねぇよ!」

「どうでしょうね? ……どうもさっきから、ルリルさんはともかくマイヨールさんから不穏な気配を感じるんですよ」

 

 耳をぴくぴくさせながらジト目でマイヨールを見るルキ。

 え、そっち? でもエルフって勘がいいんだよな……。

 

「なにをおっしゃいます。私は純粋に皆様に温泉を楽しんでいただきたく、こちらへご案内した次第でございますー」

 

 そしてマイヨールの奴が一気に怪しくなったんだが!

 お前真顔の癖に嘘が下手ってどういうこと? そのポーカーフェイスは張りぼてか?? 言葉がめちゃくちゃ白々しいんだけど!?

 

 

 

 色々と不穏な気配を感じつつ、あれよあれよと引っ張られて気づけば湯気が立ち上る浴場だ。

 プライベートな場所に、と言っていただけあって他に人の気配はない。

 マジでこれが出来るなら人にケーキをたかろうとするなよ、こいつら。

 

「……この姿にも慣れつつある自分にマジで危機感覚えるな……」

 

 渋々着替えた温泉着に包まれた二つの山を見下ろして、すでに自分のものでは動揺しなくなった事に哀愁を感じる。

 まあ流石に毎日見てるし……。

 

「…………」

 

 そして顔を赤くさせてうつむき、もじもじしている弟子に憐れみの視線を向けた。

 俺みたいな女もどきが初混浴とか可哀そうに……。どうせなら男の姿で喜び勇んで二人で堂々と混浴へ行きたかったよな……。

 

 

「み・さ・お! 温泉よ~!」

「おぎゃー!?」

 

 そしてこいつはよぉっ!!

 登場するなり人の頭にお湯ぶっかけてるんじゃねぇよ! 苦労して暴れる髪の毛を頭の上にまとめ上げたのに何してくれてんだ!?

 

「あら、なによその不満そうな顔。せぇっかくルリルちゃん様がミサオの髪の毛を洗ってあげようと思ったのにぃ」

「それにしたって声もかけずぶっかけるやつがあるかよ!」

 

 頭からぼたぼたお湯を滴らせながら文句を言うが、ルリルときたらどこ吹く風だ。

 こいつ俺を好きとか言っておきながらマジで自分のしたい事が一番だよな! 嫌われないようにとか好かれるようにって気持ちで相手を慮るとかしねぇの!?

 

「~~~~!」

 

 そしてルキはルキで顔に両手を当てて蹲っちまうし! 乙女か!!

 なんだ!? お湯に濡れて服が張り付いた俺はそんなにセクシーか!? やめろやめろ! 空しくなるだけだぞ!

 

「……というか」

 

 水を吸ってずっしり重くなった無駄に長い髪の毛をかきあげながら、無礼千万を働いてくれたルリルをまじまじと見る。

 

「本当に男……」

「やだ、ミサオったらスケベねぇ。そんなにまじまじと見られたら恥ずかしいわ」

 

 とか言ってる割には腰と頭に手を当ててウインクまでしてくるサービス精神は何なんだよ。恥じらいの意味って知ってる?

 

 浴場に居るため当然ルリルもあのふりふり~でふわふわ~なドレスを脱いでいるわけだが、大胆にはだけている温泉着の間から覗く胸は少年のもの。いや、おっさんなんだけどな?

 これはこれである意味センシティブ判定入りそうなのだが、俺にそっちの趣味はないのでただの事実確認である。

 

 ……でもその顔で下までしっかり確認したら自分の中で何か大事な一線が壊れてしまいそうな気がしないでもないので、顔の良さとは罪である。

 いやだ、俺は同性にドキドキする体になんてなりたくねぇッ!! 顔がいいなら男もありかもしれないって考えるようにはなりたくねぇッ!!

 

 

 

 とか考えてたら。

 

 

【メスどきりんっ♪】

(なんで!?)

『まっとうな「メス堕ちなんかしたくないっ!」ムーブしたからじゃない?』

(まっとうって何が!? 正しい事なんか一つもないが!?)

 

 

 

 

 最初から比べれば、ここ最近は比較的鳴らなくなったと思っていたメス堕ちポイントの音。一瞬絶望しかけるが、自称呪いナビゲーター(最近忘れてた)魔王の言葉に「セーフ」判定を出す。

 そうだ。これはルリルにドキドキしたことから来るメス堕ちポイントではない。メス堕ちなんかしないんだからっ! というドキドキから来るポイント追加だ。メス堕ちしないという意志を強く持つことはそれもまたメス堕ちポイントなのだということだろう。自分で言ってて訳わからんがそういうことなのだ。だから絶対ルリルにドキドキしてしまったからではない。断じてない!!

 

「さっ、ミサオ。座りなさい? ルリルちゃん様が洗ってあげる」

「…………」

 

 開幕に嫌なドキドキを味わった疲労で逆らうのも馬鹿らしく、大人しく言われるがままにしゃがみこんで頭を前に差し出す。ここ風呂の椅子とかないの?

 

「ふふっ、いい子ね。……ってミサオ! あなたちゃんと髪の手入れはしてる!? 普段結ばれてるから気づかなかったわ!!」

「いたいいたいいたいいたい!! や~め~ろっ! 引っ張るなよ! 髪は! シャティ達にも言われたけど! 手入れしてもらって最初よりはましになってんだよこれでも!!」

「ホントにぃ~? しまったわね。濡らす前に櫛で解きほぐすべきだったわ」

 

 思いのほか俺の髪の毛を真剣にいじくりだすルリル。

 様子を見るにそのうるつやブロンドヘアは本人の努力あってのもののようである。こだわりが強い。

 

 

 

 ……そう。女になって髪が伸び分かった事の一つ。それは長い髪の手入れの大変さだ。

 

 

 

 特に俺は癖毛らしく、三つ編みにしないでいたらめちゃくちゃ広がるわ絡まるわで酷い有様になる。

 長さが短い……男の時はそれでもがーっと洗ってがーっと乾かして、あとは整髪料代わりの適当なオイルで整えればなんとかなってたんだけど、女の体になって髪が伸びてからはそうもいかない。

 

 まず手櫛でざっくりほぐしてもらって、その後は櫛で整えつつ丁寧に埃を除かれて、お湯で頭皮から順に入念な下洗いがされて絡まりがほぐされ、泡立てられた洗髪剤でこれまた丁寧に洗ってもらって、乾いた布で軽く水分をとったあとにコンディショナー的な物が塗り込まれて、それを毛先まで浸透させたら洗い流される。その後はこれまた乾いた布で水分が吸われ、シャティによる絶妙な調整が施された風魔術で温かい風と冷たい風を交互に吹きかけられ櫛で整えられつつ乾かされたら、いい香りのするオイルで保湿してもらう。

 ……ここまでのクソ長い工程を日々お願いしているので、それを自分たちの分を含めて行ってくれている仲間には頭が下がる。

 されるがままになっている最中は「洗われてる犬ってこんな気分なのかな」とか考えているんだけど。

 

 シャティに説明してもらったように、この世界の女性か……まあもとの世界でもそうなんだけど、魔力の質に直結するという理由があるからかとても髪の毛を大事にしている。

 その影響か、俺の世界でもいつごろから一般的に使われるようになったのか分からないシャンプーコンディショナーの類がすげぇ発達してるんだよな。

 でもって目の前の女の子じゃない見た目女の子中身おっさんにも相応のこだわりがあるのか、マイヨールに持ってこさせた多種多様な洗髪剤の類を真剣な目で吟味している。

 

 俺? しゃがみこんだ体勢のまま動けなくて膝抱えてるよ。そろそろお湯で濡らされた髪が冷えて寒いんだが。

 

「う~ん。これだけ癖が強くて傷みもあるなら保湿が優先かしら。ミルク系? でも香りはこっちがおすすめなのよね~」

「……あ、あの。あまり長く悩んでいると、師匠が風邪を引いてしまうかと……」

「まあ! ごめんなさいねミサオ。ちょっとお弟子くん、あなたそっち半分ほぐして洗いなさい。一人じゃ骨が折れるわ」

「ええええええ!?」

「なによぅ。大事なお師匠様が風邪ひいていいの~?」

「う、うう。わかりました……」

 

 

 

 そんなわけで。

 

 

 

『なに? この図』

(俺にもわかんねぇ……)

 

 

 俺が女(仮)になってしまってから初の温泉は、温泉に入る前に美少年と美少女に見えるロリおっさんに左右から囲まれて髪を洗われるところからスタートした。

 

 

 

 

 なんか……色んな意味で思ってたのと違う。

 

 

 

 

 

 

 

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