メス堕ちしたくない俺の苦難八割TSチートハーレム記   作:丸焼きどらごん

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72話▶温泉雑談タイム~スライム風呂って本当にあるんだ……

 

「ぅおぁあ~~」

『唸り声はおっさんだよ、ミサオ』

(おっさんじゃねぇし! 俺まだ二十代だし!! 温泉に入ったら誰しもこういう声が出るもんだろ!?)

『僕は出なかったけど』

(けっ!  けっけっけー! 気取りやがって。さぞ高貴な前世様だったんだろうな!)

『なにそれ鶏の真似?』

(こ、この……!)

 

 ふんっと鼻息荒く俺にしか見えない美幼児を睨む。足を組んだ気取ったポーズでふよふよ浮きやがってからに。

 

 けどそんなもの、温泉の前では秒で気にならなくなった。

 

 湯船に肩まで浸かって、ぐぐっと組んだ腕を前に出して伸びをする。じんわりと体にしみこんでくる湯の温度に、自然と力が抜けた。

 マンホール転移で飛ばされたのがこの世界でまだ良かった……と思えるのは、場所にもよるけど飯がガチ中世みたいな代物でなく普通に美味くて、こうしてお湯に体を沈めて身を清める文化も存在したからだろう。

 ああ、温泉……ああ温泉。温泉いいよ温泉。気持ちいいよ温泉。語彙力なくなる。体全部ふにゃふにゃになっちまう。やっぱ体を拭いたり魔術で清めたりするだけじゃ得られない満足感が温泉にはあるんだよなー。

 あー、最高……。疲労と心労が溜まった体がほぐれていく~。

 

 

 

 ……………。

 でもなぁ。

 

 

 

 気になることが無いわけでもない。

 だってこの温泉って……。

 

(マイヨールがなんか怪しかったの、これか……)

 

 ルリルに頭をめちゃくちゃ丁寧に洗われ、お風呂に入っている間に集中補修よ! と、何やらヘアパック? みたいなもんが塗り込まれ頭にタオルがぐるぐるに巻かれた俺。

 その後ようやく湯船につかることが叶ったわけだが。

 

 温泉は気持ちいい。確かに気持ちいいんだけど……。

 

 俺は無言でお湯を手にすくう。

 すると片栗粉でも入れたのか? ってくらいの餡かけ具合で一瞬お湯がまとわりついてから、ぷるんっと揺れてするんっと手から逃れて湯船に戻っていった。

 驚きの粘度と弾力である。

 

「…………」

「わっ、お湯がトロトロですね!? ルナナリアスの温泉ってこんな水質なんですか……」

「んなわけねぇだろ」

 

 さっきまでドギマギしていたくせに、現在は見慣れないお湯に好奇心を刺激されていくらしいルキの頭をすぱんっと軽く叩いて突っ込む。

 

 あのなぁ…………。

 

 

 

 

 

 

 

 スライム風呂とかさぁッ!! 女の子と入りたかったよなぁ! 俺はさぁ!! なあ!!

 

 

 

 

 

 

 

 そう。現在俺達が入浴しているのは、トロットロでプルップルなスライム仕立ての特別製な風呂である。

 あれだ。入った事は無いけど、ローション風呂って多分こんな感じだと思う。完全に色が濁ってて体を隠し隠されてくれるのだけが幸いだ。

 それにしても噂には聞いていたが、実在したのか……! なんたるファンタジーエロアイテム。

 

 しかしながら、現在この場にいやんでうふんなピンクの雰囲気は微塵もない。あってたまるかって感じだが。

 

「おかしいですね。この湯に入れば男女の仲が深まると評判だったのですが……」

「そしてお前も普通に入るのな?」

 

 ふーむと顎をさすりながら首をかしげている竜人マイヨール。腰にタオル一枚だけ巻いた上での堂々の入浴である。

 もし俺とルリルの仲を深めたいのなら、そこは遠慮してしかるべきじゃねぇか? それでもルキが居るので二人きりにはならないし、おっさん幼女と仲を深める気も無いけどよ。

 つーかお前の主人は俺そっちのけで普通に温泉楽しんでるよ。

 

「はぁ~。きーもちいいっ! 温泉って、いいものだわ! 治癒の湖は美しいんだけど、冷たいのが難点よね~。こんなふうに温かければ満点なのに。今度湖の地下に火山から溶岩でも引っ張ってきて温めちゃおうかしら」

「ルリルベレスぼっちゃま、それは本当に竜王様に怒られるやつなのでやめてください」

「ルリルちゃん様よお呼び! ええ~? お父様だって絶対喜ぶわよー」

 

 なんか竜らしくスケールでかい話ししてんなこいつら……。溶岩ってそんな田んぼに水ひくみたいに引っ張ってこられるもんだっけ……。我田引水ならぬ我湖引溶岩??

 

「そういやお前、怪我してたんだな。大丈夫か?」

 

 治癒の湖ってワードと、温泉着からちらりと見えたルリルの白い肌に目立つ怪我の跡っぽいのを見つけたので問うてみればルリルが顔をしかめた。

 

「しまったわね……隠すのを忘れていたわ。ほんっとにあの魔族、忌々しい……」

(あ、アルマディオと戦った時に怪我してたのか)

 

 ぶつぶつと呟かれた恨み言の内容なら察する。

 以前俺を巡って(事実だけど自分で言いたくねぇ……)アルマディオとルリルが戦った事があったけど、そのあと普通にぴんぴんして俺達の進路妨害してきたから気づかなかったな。

 しかし顔をしかめていたのはほんの一瞬で、すぐにぱっと表情を明るくしたルリルがすり寄ってきた。

 

「ミサオったら、心配してくれるの? うふふっ、優しいのね!」

「うわお前いきなり寄って来るなよ!」

 

 なんだかんだ距離をとって入っていたからこのローション風呂もといスライム風呂も平気だったわけで、流石に肌を触られたらその気が無くても変な気分になりそうだ。なってたまるか。

 

「怖がっちゃって、か~わいいっ」

「はぁ~? 怖がってねぇし!」

「虚勢も愛らしいわね! ふふっ、でも安心なさい。こんなふうに準備されたいかがわしい手で体から落とそうだなんてしないわよ。今は単純にミサオと温泉を楽しみたいだけだわ」

 

 からかい調子だったルリルは一転して、唇に人差し指をあててどこか大人びた……蠱惑的とでもいうのだろうか。幼い見た目にそぐわない、そんな顔で笑う。

 不覚ながらそのギャップに少しドキッとしてしまったのだが、俺が何か言う前にルリルの矛先はくつろぎまくっている付き人に向かった。

 

「マイヨール。協力的なのは褒めてあげるけど、手段が直接的過ぎて下品だわ。もう少しロマンチックに出来ないの?」

「ルリルちゃん様に直接的という点で咎められるとは……。このマイヨール、不覚であります。少しでもお役に立てればと思ったのですが」

「なにかひっかかる言い方ね。まあいいわ。次から気を付けるようになさい」

「かしこまりましてございます」

 

 付き合いがまだ浅いながら「本当に分かってんのかなぁ」という視線をマイヨールに向ける俺とルキである。

 つーかスライム風呂、普通に入る分には新感覚で気持ちいいんだけど、ルリル目線でも「いかがわしい」ジャンルにふりわけられるのな。

 というかこれ、どういう成分? トロトロでプルプルなところ以外は完全に温泉なんだけど、スライム溶かして混ぜるとこうなる感じ? だ、だとしたらちょっと気持ち悪いな……。成分の事はあんまり考えないようにしておこう。

 

 ともかくルリルとしては本当に俺と温泉を楽しみたいだけのようだ。本人的にはデートのつもりなんだろうな。

 まあ変なことしないってんなら、これ以上なにかがあってメス堕ちポイントが溜まるといった事もないだろうと危機感は薄れた。

 シャティ達には心配かけて悪いけど、しょうがねぇからこのままひとっ風呂だけつきあうか。

 

『君って変なところでおおらかというか、開き直り方が潔いよね』

(うるせー)

 

 魔王の感心したような、呆れたような声が屈辱である。

 つーか俺がおおらかなんじゃなくて、周りの押しが強すぎて自己主張しても空回るんだよ! ある程度こっちが折れるしかねぇだろうがよ。

 あ~あ。俺って謙虚。

 

『謙虚とは違うんじゃない? 僕がもっと的確な表現を教えてあげようか』

(いらねぇ)

『"ヘタレ"っていうんだけど……』

(いらねぇって言っただろうがよ!!)

 

 ったく。こいつ本当に余計な事しか言わねぇ……!

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 そして、しばらく。

 

「そういえばミサオって、あの子達の中なら誰が一番好みなのかしら?」

「は!?」

 

 つきあうと決めたからにはしっかり温まるぞと、顎まで湯船に沈めてくつろいでいたらルリルからまさかの雑談が飛んできた。

 あの子達って、アシュレ達の事だよな?

 

「もちろんルリルちゃん様の美しさ可憐さ愛らしさにはこの世で誰もかなわないのだけど、好みの傾向として気になるわ」

「自分をセルフよいしょした遥か高みの超絶上から目線で質問出来るお前、すげぇよ」

 

 あんな美少女美女引き合いに出しておいて微塵も揺るがない自信、マジでそこだけは羨ましいな……。これだけ堂々と自分大好きで生きてたら人生楽しいだろうよ。

 けどいざ聞かれても、それは答えの出ない質問だ。

 

「え、はっ、好みぃ~? あのなぁ。お前それ、花と空と宝石と蝶どれが一番綺麗? って聞いてるようなもんだぞ」

「すごく自然に彼女達を最上級に持ち上げたわね。ちょっと、そのノリで何故この美の化身であるルリルちゃん様を褒められないわけ? 不満だわ!」

「へーへー」

 

 いちいちルリルの不満に付き合っていたらキリがないので適当に流す。

 それにしても誰が一番って聞かれても……。

 

「アシュレは俺が冒険者初心者の頃からずっと面倒見てくれてる頼れる先輩、相棒だし一番かっこよくて可愛い。シャティは色んな意味で積極的過ぎるけど、知識が豊富で聡明で一番愛嬌あって可愛い。モモは俺みたいな頼りない奴の事を親みたいに慕ってくれてる最強に愛しい愛娘みたいな子で、一番純粋で可愛い。ガーネッタはお色気ありつつ抜群の包容力でいつも安心感あるし、一番華があって可愛い」

「ルリルちゃん様は?」

「見た目だけはいい」

「そこは内面を褒める流れじゃない!? もう! まあ真っ先に出てきてしまうほどルリルちゃん様の美貌は魅力的ということね」

「すげぇ。何もフォローいれなくても全部自己解決して自分を上げていきやがる。強いて言うならその前向きさは美点だと思うぞ。長所と短所は紙一重って言葉もそえておくけど」

「あら! ありがとう」

「絶対最後の所は聞き流したろお前」

 

 きゅるんっとポーズをとるルリルを呆れながら眺めつつ、ふと言われたことで気付く。

 ……俺、みんなの内面に惹かれてるんだなぁ。

 我ながら出会った当初は見た目ばかりにふらついていたし(シャティがいい例だ。あの見た目でお願いされなかったら絶対魔王退治とか引き受けなかった)今でも彼女たちの事は綺麗で可愛いって思ってるけど、なんかこう……一緒に居て安心できるんだよな。

 振り回されることも多いけど、根本に俺の事を大事に思ってくれている気持ちがあるから落ち着ける。頼もしい仲間達だ。

 ずっと一緒に居られたらいいな……。

 

「…………」

 

 そんなことを考えていると、隣で肩をすくめて俯いているルキに気付く。

 あ~……この感じは。

 

「礼儀正しくて真面目で、素直。それがお前のいいところな」

「!!」

 

 仲間達を褒めた流れでのけ者は寂しいんだろうなとルキにも言葉を投げかければ、ぱっと顔を上げてこちらを見てくる。

 好みがどうたらって流れで出すのはちょっとなって思ってたけど……こんな嬉しがるなら、機会があるごとに褒めるのは大事かもな。

 俺も褒められて伸びるタイプだし、弟子はどんどん褒めていこう。師匠らしいことまだなんもできてねぇから、それくらいはな。別にお世辞で言ってるわけでもないし。

 

「あ……! その。あ、ありがとうございます」

「ところでルキの好みの女ってどんな感じ?」

「ぶ!?!?!?」

 

 あ、お湯に沈んだ。

 なんだよ~。せっかく男同士しかいねぇんだからお前のも聞かせろよ。そして適度にルリルの興味を俺から反らせよ。

 

「ルリルちゃん様は強くて可愛くて面白い子が好きよ!」

「いやお前には聞いてねぇじゃん。つーかそれ、俺はあてはまんねぇだろ。この顔のどこが可愛いんだ」

「ええ~? ミサオは可愛いわよ」

「お世辞をどうも。綺麗で可愛いルリルちゃん様」

「まあ、やっと認めたわね? いい心がけだわ」

「嫌味が通じね~」

 

 温泉の効果なのか、適度にほぐれてぐだぐだしてきた。こういう時はだらっと雑談したくなるよな。

 

「で? 好みの女のタイプは?」

「あ、話題続くんですね!?」

「だってお前答えてねぇし」

「なんでシャティさんといい、こう……雑にそういうことを聞いて……ッ」

「え、なに。シャティとそんな話ししてたの!?」

 

 なんだよそれ俺知らないぞ。めっちゃ気になるな。

 急かすよう足先でルキのわき腹をつつけば面白いように飛び上がった。

 

「~~~~~~! 教えませんっ!」

「えー。なんだよ、教えろって。あ、でもモモはいくら仲良くなったからって嫁にはやらねぇからな? まだ早い」

「なんでモモ先輩の話が出てくるんですか! しかも嫁ってなんですか!」

「だってお前ら、俺の知らない所で仲良くなってたみたいだし……こう、モモの保護者としては気になるつーか」

「大丈夫、ミサオママ。ミサオママがモモのお嫁さんだからルキは娶らない。モモは、一途な女」

「また変な言い回しをどこで覚えて……って」

 

 

 

 ん?

 

 

 

 あれ、今ここに居るはずのない声が聞こえなかったか? 幻聴?

 

 それにしてはハッキリ聞こえた声にキョロキョロまわりを見渡していた俺だったのだが……一瞬後。目の前のお湯にどっぽんと何かが落ちて来た。スライム質感のお湯のため水飛沫こそあがらなかったが、ずいぶんな勢いだったようで大きく水面が波打ちスライム波をかぶる羽目になった。

 待て待て待て!! これ浸かる分にはいいけど口に入ると喉塞いでやばい!! 窒息する!!

 

「げぼっ、ごぼっ」

 

 なんとかスライムを吐き出してせき込んでいると、目の前にひょっこり桃色の髪と黒い毛並みの獣耳が現れる。

 え……も、モモぉッ!?

 

「ミサオママ、お迎えにきた」

「お、おう。よく見つけたな……」

「モモは、探すのが得意」

 

 

 

 ふんすっと鼻息をはいた獣っ娘は、そう言って得意げに胸を張るのだった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

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