メス堕ちしたくない俺の苦難八割TSチートハーレム記   作:丸焼きどらごん

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75話▶夢のあと~賑やかで、だけど静かな一日の始まり

 おはよう世界。

 温泉に癒されに来たはずがスリリングな朝を迎えた俺だよ。

 

 起きたら一見美少女にしか見えないおっさんに頭を抱き込まれていたのだが、その見た目にドキッとするよりも「これ俺じゃなかったら頭潰れてるんじゃないか?」という方のドキドキで肝冷えたわ。

 ルナナリアス到着早々、密度の濃い一日になってしまったが……それだけに夜はぐっすり寝られると思っていた時期が俺にもありました。

 なのに妙な夢を見て疲弊して目覚めたと思ったらこれだよ。

 

 いや、まあ……その後にもうひとつ夢を見て、例の夢の美少女に会えてだな……ぬふふ、しかもこれまでにないくらい親し気に接して笑顔でもてなしてくれる超いい感じの夢も見られたんだけど……むふふ。

 

 でもなぁ……その前に見た夢が、どうも重かった。内容全然覚えてないけど。

 まあ悪夢なんて覚えていてもいいこと無いから問題ないけどな。

 

 つーか、もしかして悪夢の方の原因って、これ? この締め付け? 納得しかねぇ。

 抱き着いてるのは意図的か寝ぼけたのかどうかはともかくとしてルリルの奴、竜としての力が一切抑えられてねーんだわ。めっちゃ頭イテーッって起きたもん。頭ぎっちぎちに締め付けられてたもん。

 ルリルは無駄に良い匂いがするから目覚める前に見ていたいい夢の方はその効果かもしれんが、トータル的に見たらマイナスだろこれ。

 だって万が一ルリルが寝ぼけてルキの方に抱き着いてたら大惨事になってたぞ。その場合、俺の弟子は今頃首から上が潰れたトマトだよ。怖っ。

 

 ともかくこの化け物起こさないとなと、ため息をつきながらルリルの肩をつかんで揺さぶる。

 

「おい、おい起きろ。頭いてぇ。離せ」

「いやぁ。もっと寝るのぉ~。ミサオ、いい香り……もっといっしょにいて……」

「ぐぅッ」

 

 くっ! 甘えた声を出しよってからに!

 こいつはおっさん。美幼女に見えてもおっさん。どんなに可愛くても股につくものついてるおっさん!!

 

「ふぁ……ししょ……おはようございま……」

 

 自己暗示してたらルキが起きたようだ。

 しかしルキは俺の現状を見ると、さっと顔を青くする。

 

「!! ごめんなさい! 僕、寝ちゃってました!? あああああ! シャティ先輩と約束したのに……! る、ルリルさん、師匠から離れてください!」

「寝ちゃってました? って……まさかお前、一晩中起きてたのか!? 寝ろよ! いや寝たのか! いい、それでいい。でも起きてようとしたってことだよな? そういうのいいから。お前まだ成長期なんだから寝てろマジで。気を遣うな」

「で、でも! ルリルさんが変な事をしないようにと監視を頼まれていたので! とに、とにかく! ルリルさん起きて。は~な~れ~て~く~だ~さ~い~! そんなふうに抱きついて胸を押し付けるなんて、ふ、ふしだらですよ!」

「いや、ふしだらも何もまっ平なんだけどさ……大平原だよ……」

 

 そういうのとは別のピンチさはあるけども。主に竜の膂力による命とかの。

 

 ぐいぐいルリルを引き剥がそうとするルキだったが、クウォーターエルフの腕力では竜には勝てないらしい。ピクリともしやがらねぇ。

 そこからルリルを起こすのに一時間を要したので、俺達のルナナリアス二日目はそこそこ遅いスタートとなった。

 今日はロハルドさんとこ行かなきゃな。

 

 

 ………………。

 

 あ゛あ゛~!

 

 行かなきゃだけど行きたくねぇ~なぁぁぁぁぁ~~~~!

 

 

 

 

 

 

 

 

「待っていたぞミサオくん」

「ど、ども……うす……」

 

 昨日とんでもないカミングアウトをかましてくれたわりには泰然自若とした様子のロハルドさんに迎えられた俺達。

 ちなみに当然、みんなにはロハルドさんからの告白について話していない。

 そんな暇なかったし、どう説明すりゃいいんだよ! 自分で男から男の時の自分が好かれてて昨日告白されましたとか言いにくいわッ!!

 

(ん? いつもならこの辺で空気読まない茶々が入るんだけどな……)

 

 慌ただしく脳内思考していると、すっかり居る事に慣れてしまったお邪魔虫が俺の心を的確にえぐる横やりを入れてくるのだ。けど今日はその様子が無いというか、そもそも実体化すらしていないようである。あのこまっしゃくれたムカつく美ショタの姿を朝起きた時から見ていない。

 まあ実体化と言っても、俺にしか見えないんだけど。そういや声も聞いてないな。

 

 その事にほんの少しのひっかかりを覚えつつ、でもあいつがたまに静かな時はその後、倍ドンでムカつく事言ってくるからなと警戒を怠らないよう気を引き締めた。

 これも俺の神経のためである。毎回ブチギレてたら老後まで血管が持たんわ。

 

 

 

「ロハルド殿、お久しぶりですね。ご健勝そうでなによりです」

「アシュレ嬢か。久しいな」

 

 俺がそんなことを考えているとアシュレがロハルドさんに先んじて挨拶して、今回の目的を告げていた。

 

「昨日はミサオがお世話になったようで。……ところで、我々は今回魔術工芸核以外の目的もあってロハルド殿をお尋ねしたのです」

「それについてはわたくしからご説明しますわ」

「ああ、頼むよシャティ」

 

 アシュレから流れるように説明役を引きついで、シャティが現在俺達が攻略を行っている灼熱迷宮の特性について説明をする。ロハルドさんはそれを興味深そうに聞いていた。

 

 よしよし……! 昨日の妙な発言(告白)については今のところ話題に出てこなさそうだ。このまま一生出ないでほしい。

 

「へぇ。特定の魔術のみを阻害する術式か。シャティ嬢でも難しいとあらば、たいていの魔術師はお手上げだろうな」

 

 ロハルドさんの言うとおりである。

 シャティほどの魔術師は、それこそ世界一の大賢者……カリュキオスくらいしかぱっと思いつかない。

 

「そこでロハルド様に、空調の効果を備えた魔導具を作っていただけないかと伺いにきたのです。……お願いできますでしょうか」

「そう言われてもね……。ワタシの専門は魔術工芸核だ」

「あ、やっぱり駄目か……」

 

 ダメもとだったとはいえ、いざ聞くと少し落ち込むな。

 しょうがねぇ。行き方がめんどくさいし時間かかるけど、また賢者の元に出向いて知恵を借り……。

 

「出来ないとは一言も言ってないが? フリというやつだよ、ミサオくん」

「わっ!?」

 

 さっきまでシャティとアシュレの前に居たのに、にゅるんっと鬼人族(オーガ)のでかい図体で俺の横にまわると肩に腕を絡めて来たロハルドさん。

 ちょっ、近い近い近い!

 

「そ、それって……?」

 

 動揺しつつも、たった今耳にした内容に食いつく。その言い方だと可能って事だよな?

 

「ワタシは今言ったように魔術工芸核が専門だ。だからそういった細工を施された小道具は作ることはできない。……だがね。そもそも魔術工芸核そのものが叡智と魔術の結晶なのだよミサオくん」

「あ、はい。重々承知しておりますが……」

 

 ずいっと顔を近寄せられて思わずかしこまる。魔術工芸核にかける情熱で爛々と輝く目の圧が強い。

 つーか、その前に!

 

「ロハルドさん! もうちょっと、もうちょっと離れてくれません!? あんた額から角生えてるタイプの種族だから刺さりそうなんだよ! あと俺の眼鏡とあんたの眼鏡がぶつかってガッチャガッチャいってるから! 近いて!」

「そうよ、近いわよ!」

 

 ずずいっずいっ! とばかりに距離を詰めて来たロハルドさんと俺の真ん中に割って入り、両腕をつっぱって距離をとらせたのはルリルだった。

 流石、竜。鬼人族の腕力をものともしない。

 

「……つまり、魔術工芸核ってやつの方に、ミサオたちが欲しい機能をつけられるってことかしら?」

「ほう、なかなか察しが良いな竜族の。その通りだ」

「ルリルちゃん様とお呼び」

 

 ロハルドさんを落ち着かせるためか、何故かルリルがまとめた。

 けど、そうか。なるほどな! 誰でも使える魔導具として作ることは出来ないけど、使用できる者が限定されるとはいえ魔術工芸核に追加機能としての設置は出来ると。

 

「じゃあ、俺の新しい魔術工芸核に空調機能をつけてもらえたり……?」

「ああ。というか、もうつけてある」

「え」

 

 まさかの発言にロハルドさんへとみんなの視線が集まった。

 

「一度ワタシの魔術工芸核を渡した相手……しかもそれを使って厄災の魔王をも倒してくれた相手に、以前と同じものを誂えるのはワタシの矜持に反する。当然、より良いものをと考えるさ。そのために追加した機能の中に"常に自身と周囲の気温を一定に保つ"ものがある」

「おお~! それです、それ! 俺達が欲しかった機能!」

 

 まさかの一足飛びで目的達成である! つーか、一石二鳥!? 一つの目的で二つの用向きが済ませられた! これは昨日が散々だった分、その揺り戻しで運が向いてきたか……!?

 

「ありがとうございます! ロハルドさんっ!」

「なに、気にするな。……これは推測だが、その迷宮攻略もミサオくんが元の姿に戻るためのものだろう? それならばワタシは協力を惜しまないよ。今回のはたまたまだったがね」

「…………あ、あはは……ッス」

 

 嬉しいはずなのに、その言葉に含まれた意味を察して背筋をぞわぞわしたものが這いあがっていった。

 ロハルドさんの丸眼鏡の向こうから覗く瞳が、どこかねっとりとした熱い光を帯びているように感じる。気のせいであれ。

 

「それはありがたい。感謝します、ロハルド殿」

 

 ロハルドさんからの視線にビビっていると、さりげなく俺を後ろに下がらせながらアシュレが前に出る。

 さ、さすがお気遣いが出来る紳士スパダリ系美女……! ロハルドさんからの視線の意味こそ分からなくとも、俺のビビりを察知して守ってくれたらしい。

 女性に守られる情けなさに落ち込みこそすれど、その安心感についときめき……【メスめろりんっ♪】あ゛あ゛あ゛あああああああああぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁッッッ!! ゆ、油断したァッ!

 

『馬鹿じゃない?』

(あ、魔王)

 

 内心頭を抱えていると、今日初めて聞く声に怒るより先に「あ、居た」という感情がこぼれた。

 ……ナンデ?

 

 静かな方がいいに決まってるのに、なんだかな。

 俺の内心に魔王がムカつくけどわりとまっとうなツッコミを入れて、俺が怒鳴り返す。そんな脳内バトルが普通になりすぎていたのか、俺は朝から一言も発しなかった魔王に物足りなさでも感じていたのだろうか……って、今の無し無し無し!! そんなわけあるかッ!!

 

『…………馬鹿じゃない』

(…………?)

 

 

 

 二度目の同じセリフは、何故か妙にしおらしく聞こえた。

 

 

 

 

 

 

 

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