メス堕ちしたくない俺の苦難八割TSチートハーレム記   作:丸焼きどらごん

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▶魔族 は 魔方陣 から 魔物 を 召喚 した !
▶主人公 は 仲間 との 約束 で やる気 を 出した !
▶主人公 の メス堕ち ポイント が たまった !



8話▶プロポーズは突然に~心を折ろうと思っただけなのに

 俺の名乗りを聞いた魔族アルマディオだったが……口をへの字に曲げて、いかにも嫌そうな顔をして見下ろしてきた。

 

「お前がアイゾメミサオ? 何を馬鹿な。破廉恥なだけでなく法螺吹きとはな!」

「破廉恥はやめろ!! あと法螺吹き言うな!」

 

 こんな姿だしそう言われるのはまぁ納得しかないんだが、それを認めたら普段からこの服を着てるうちのモモまで破廉恥扱いになるだろ!! おそろいなんだぞ! いや、モモは今の俺みたいに肌色面積多くないけどさ。もふもふしたピンクと黒の毛皮のおかげていっさいのいやらしさが無い。

 

 ……気を取り直そう。

 

 ちなみにだが、この世界の言葉も俺の発する言葉も自動で翻訳されているっぽいんだよな。異世界転移あるある助かる~! で納得してるから、仕組みはさっぱりなんだけど。おかげで五年、この世界で意思疎通に苦労せず生きていられるぜ。

 どうも特定の固有名詞などを除いて、お互いが知っている似た言葉に変換されるようなんだよな。法螺吹きって、実際に法螺があるのか別のもののを指して例えが変換されているのか、どっちだろうか。

 ま、そんなもんは後だ、後。

 閑話休題的思考終わり。

 

 

 アルマディオは俺が目当てのアイゾメミサオだと一切信じていないようだったが、俺としては信じようが信じまいが、この馬鹿を撃退するだけである。

 眉根を寄せ、いかにも不愉快そうな表情を作った男とその背後を見据える。

 

 

 そして、構えて一閃。

 

 

「なッ!」

「はんっ!見たかバーカっ!」

 

 魔王の堅い装甲をも切り裂いた俺の斬撃は、容易く多くの魔物を真っ二つにした。

 対魔王の時は近距離用だったが、こちらは遠距離用の魔術剣。風の属性に特化している。

 詠唱とタメの時間を端折って威力も広範囲に用いた分拡散したが、雑魚を散らすには十分だ。

 まだいるだろうが、これで魔方陣から顔出してた分は片付いただろう。

 

(奴の方は……チッ。わかっちゃいたが、無傷か)

 

 アルマディオは先ほどの俺のように魔術結界を瞬時に構築、攻撃を防いでみせたようである。

 傷とまでいかなくともあわよくば赤っ恥かかせてくれたお返しで服をひん剥いてやろうと思ったが、流石にそう簡単にはいかないか。

 

 ざぁっと切り裂かれた魔物の血が雨のように降りしきる中、アルマディオは眉根に深い渓谷を刻む。

 

「…………ふんっ。アイゾメミサオだなどという戯言はともかく、只者ではないようだ」

(そう簡単に信じねぇか)

 

 俺がお前の狙うべき相手だぞ、と名乗った上で実力も示したのだが効果は今ひとつ。

 まあ信じなくても注意を引けたのなら上々。さっきみたいに余計な事される前にさっさとケリつけるか。

 

 そう割り切ると二、三。体の感覚を確かめるようにトーントーンとその場で跳ねてみた。

 ……。

 体は、縮んだからか男の時より軽い。各部位の柔軟性も上がっている気がする。見た目はともかく筋力も落ちていない。近距離戦を仕掛けるにしても問題ないだろう。

 

 

 が。

 

 

 思わぬ弊害が発覚した。

 

 

(こ、これは! あかん……!)

『すっごく揺れてるけど大丈夫?』

(言うな!)

 

 なにが問題かといえば、心もとないマイクロビキニチックな布面積で包まれた俺のなかなかに立派なおっぱい様が、ジャンプするごとにゆさゆさ揺れているのだ。ちょっと痛い。

 このまま戦ったら色々と大惨事な予感しかしない。

 具体的に言うとあいつの目の前で剣を振りかぶった瞬間に何がとは言わないがポロリといく気がする。これはそういうパターン。俺は詳しいんだ。

 

(……落ち着け。戦う前に気づけたことはいいことだ。お約束のラッキースケベのパターンは全部頭に入ってる。俺はそれをみすみす自分で体現する馬鹿じゃあないぜ)

『それって堂々と自慢する事?』

(…………。ふっ、俺にはこれがある!)

『誤魔化したねぇ』

 

 誤魔化してねぇし。魔王なんかに構ってる暇がないだけだし。

 

 俺は心を落ち着けると、見えてる地雷的大惨事を回避するべく、そして相手をなめていない証拠に自分の全力を発揮することにした。

 

 

 

 

 ……魔術装甲の展開である。

 

 

 

 

 

 全身から"核"となる物体、特殊な技術で背中に刺青のような形で平面的に格納されている魔装工芸核(アーティファクト)に魔力を集中させる。

 すると肩甲骨と背骨を軸に、パキパキとクリスタル質の物体が体を覆っていく。

 それは形を変えるにつれて、質感と色を硬く黒い金属質のものへと変化させていった。

 

 これはこの世界における魔術形態の一つ。

 特別な技法によって作られたアイテム、魔装工芸核(アーティファクト)を介して自分の魔力を物質化させ身に纏うことが出来る。

 現れた物質は使用者の適正と核となるアイテムの調整によって様々な形となるが、それらは総じて"魔術装甲"と呼ばれていた。

 

 

 でもって俺の魔術装甲は、安心安全な全身鎧だ! これでポロリの心配は無ぇ! わーっははは!

 

 

 体が完全に鎧で覆われた安心感にほっと息を吐いていると、アルマディオが目を見開いた。

 

「ほう、魔術装甲まで扱えるとはな……。ッ!? 待て、その形は!」

(お、っちょっとは信じたかな。いやいざ信じられても何だって気はするが……)

 

 魔術装甲はオールオーダーメイド。滅多な事じゃ同じデザインの物は存在しないのだ。まず物自体が貴重だし、扱える人間も少ない。

 だってのに、奴が探すアイゾメミサオと俺が同じもん着てりゃぁ驚くよな。

 

 口元以外は全て黒と藍色を基調とした重厚かつスタイリッシュな鎧に防御された。赤い飾り房がワンポイントオシャレだぜ! 魔術工芸核の技師と話し合い、めちゃくちゃデザイン頑張って考えた俺の一張羅だ!

 いいだろ~! かっこいいだろ~!

 

『あ、僕がバッキバキにかみ砕いた奴~』

(水差すなよ! 今俺かっこいいところだから!!)

 

 ……そう。魔王との戦いのとき、自慢の鎧はほぼほぼ砕かれて最終的には素の装備だけにされていたんだよな……。

 

 ふ、ふんっ! けどな、この魔術装甲の良いところは砕けても核が無事で魔力さえある状態なら、何度も構築しなおせるところだ!

 魔王戦でぼろっぼろに剥がされた鎧も、この通り新品同様! コスパ最強! 

 

『コスパって。君さぁ、根が庶民だよね。僕に挑める実力あるなら冒険者として結構稼いでただろうに』

(うるっさいよだからお前はよぉ!)

 

 せっかく戦闘態勢へ入ったのに、頭の中でいちいちうるさくされては集中できない。

 相手にしてみれば俺は無言のままに百面相している(実際は心の中で魔王に怒鳴っている)有様だ。さぞ奇怪に映っているに違いない。

 

「奇妙な女だ。まあいい……その魔術装甲に、奴と似た魔力。無関係でないことは分かった。向かって来るなら叩きのめして、アイゾメミサオについて聞くまでだ!」

 

 言うなりアルマディオもまた魔術装甲を展開し始めた。こいつも使い手である。

 奴の場合は俺のように全てを覆う鎧でなく、胸当てなど部分的な防御に特化した鎧。それに加えて武器を強化する装甲を用いている。

 だが相手の変身を待つほどお人よしでもない。自分は待っててもらったとか、そういうのは考えないからな! ぼうっとしてるほうが悪いんだ。

 我ながら英雄(ヒーロー)的思考ではないが、そんなもん気にしてたら元男子高校生がファンタジー世界で生き残れるかよってんだ。

 

 

 

「ぃ……っくぜぇ!!」

 

 

 

 気合の掛け声をあげると床を踏み砕かないよう気をつけながら、跳躍した。

 ……相手の変身を待つ様式美は無視するけど、宿の修理代は気にするのだ。

 

 

『やっぱり君、庶民だよ』

 

 

 何も言い返せなかった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 目前に迫る赤い髪色。視認と同時に剣戟が響く。

 俺が袈裟懸けに振り下ろした長剣と、アルマディオが構えた大剣がぶつかったのだ。

 その勢いに金属がこすれ、一瞬火花が閃いた。

 

 

 その間、約二秒。

 

 

 正面からとはいえ、今のタイミングと速度は不意打ちに近い。そんな攻撃にもそつなく対応してくるあたり、やっぱりこいつ普通に強いんだよな。並の相手なら、大抵今の一撃で終わる。

 奴の魔術装甲が施された武器は身の丈ほどもある黒い剣。

 くそっ、こいつロマンだけは分かってるよな……。正直見た目はかなりかっこいい。クソデカい剣とかめちゃくちゃ憧れる。俺の身長だと男の時でも使い勝手悪くて断念してたけど、こいつ獣の下半身も相まってかなりの長身だから使えるんだろうな。羨ましい。

 といっても、もとは俺のと同じサイズの長剣だ。今は攻撃に特化した魔術装甲で覆われ巨大になっている。

 装飾は奴の角に似ていた。

 

「ほう、なかなかいい剣筋ではない……かッ!?」

「バーカ!」

 

 剣を受け止めてにやりと笑っていた奴の頭に俺の踵落としがきまる。打ち込んだ勢いのままそこを起点にぐいっと体を回転させ振り下ろしたのだ。

 この魔術装甲という武装は一見通常の鎧のように硬質な素材に見えるが、構成するのは自分の魔力……見えない力が具現化した魔術物質なのである。そのため結構な融通が利き、柔軟性も可動域の広さもばっちりなのだ。

 だからこそ全身鎧でもこんな動きが出来る。

 鎧の堅牢さと生身の柔軟性を兼ねそろえた最高の防具というわけだ。

 作ってくれた技師には感謝ってもんよ。

 

「っの!」

「おっと」

 

 アルマディオの二本角が枝分かれするように伸び俺の体を貫こうとするが、力を抜いて落下に身を任せることでそれを避ける。

 そのまま飛行魔術を使い上昇、今度は股下から裂くように剣を振り上げた。装甲の甘い部分を狙われ、奴は慌てたように避ける。

 

「な、ななななんてところを狙うんだ貴様! 破廉恥変態地味女め!」

「へっ、守ってない方が悪い! 男なら金玉ガードくらいつけとけ!」

 

 不名誉な呼び名のお返しとばかりに煽ってみるが、まあこいつの場合下半身は獣のような毛皮で覆われてその防御力が高いから、武装はそんな必要ないんだよな。

 当然理解した上での煽りである。

 

「げ、下品な」

 

 よ~しよし、段々と狼狽してきてるな。

 顔真っ赤じゃねーか。煽り易くて助かるぜ。

 

 ぶちのめすのは簡単だ。

 実戦で慣らして確信したが、魔王を倒し経験値を得た俺は魔王戦前より格段にレベルアップしている。

 正確な数値は調べる余裕が無かったためまだ分からないが、なんかこう……えぐいレベルアップしてる気がするだよな。

 ともあれ、余力を残しつつこいつを倒すには十分だろう。

 

 これまでも勝ってきたけど、初期の頃は下手に接戦を繰り広げたばかりにライバル認定されてんだよなぁ……。

 魔王の仇とか言ってたし、このままただぶちのめすだけに終わるとまたしつこく追ってきそうな気がする。

 

 ならば今、俺がすべきことは。

 

 

(確実に奴の心を、折る!)

 

 

 そう決めると、奴が反撃する間もないほどの連撃を繰り出していく。

 そこそこ認めながらも、まだ俺の実力を低く見積もっていたアルマディオには隙があった。そこに躊躇なく付け込んでの連撃は、奴に攻撃の(いとま)を与えない。

 

「ぐぅぅぅぅっ!? これほど、とは!」

「気づくのが遅ェんだよッ!!」

 

 一方的に攻撃する高揚感に体が熱くなる。鎧を身に纏い姿が隠れていることもあって、今の自分の性別も見た目も気にならなかった。

 ただただこの相手をぶちのめす! という意志でもって攻撃を続ける。続ける。続ける!

 

 そしてその勢いのままに……ある部位を破壊すべく、最速で剣を振り抜いた。

 

 

 

 

 キンッと甲高い音が響き、黒い欠片が舞う。

 

 

 

 

「なぁッ!?」

 

 俺が叩き切ったのはアルマディオの胴体ではなく……頭部の角。

 

 魔族の間で角は命の次に大事なものだと聞いたことがあるので、決定的な負けを突きつけるためにへし折らせてもらったのだ。

 こいつとはそこそこ長い付き合いになるが、いい加減付きまとわれるのは鬱陶しいんだよな。

 ……でもまあ、敵とはいえガーネッタの弟だ。倒しちまったら寝ざめがわりぃから、おそらくこうするのが最適解だ。

 せいぜいかなわない相手()との実力差に打ちひしがれてくれ。

 

 角が折れたことを認識した男が目を見開く。

 だが激昂させる隙すら挟ませない。

 

 

 俺は剣を鞘に納めると、体をひねってアルマディオの顔面に拳を叩き込んだ。

 

 

 角を叩き折られたうえで見下してた地味な女に拳でボコボコにされる! これはしばらくトラウマだろ。

 わーっはっは! 家で膝抱えて引きこもってろ!

 

 アルマディオは俺に殴られた勢いそのままに上空から一直線に落下、叩きつけられた地面の舗装が砕けクレーターが刻まれた。

 人除けの効果も含まれたシャティの結界が正しく機能していたため周辺に人はいなかったが、結界の外で恐る恐るこちらを伺っている者がちらほら見える。それがアルマディオが落下した音に驚いて飛び跳ねた。

 

「ああ、悪ぃわりィ。驚かせたな。まあ、心配はいらねぇから安心してくれや」

 

 出来るだけ安心感を与えるように気さくに声をかけてから、地面にのめり込んでいる魔族を窺う。

 

(……よし、泡吹いて気絶してるな)

 

 満足げに頷いていると、ガーネッタとモモがこちらに向かってくる。

 俺は褒めてもらえるかとぱっと表情を明るくしたのだが、対してガーネッタの表情は微妙なものだった。

 あ、あれ? やっぱり弟さん相手にやりすぎました……!?

 

「あ~あ……。やっちまったねぇ、ミサオ。いや、知らなくて当然だから仕方ないんだけど……」

「え? だ、大丈夫だってガーネッタ! ほら死んでない!」

 

 俺はその反応に焦って、地面からアルマディオを引っ張り出してガーネッタに見せつける。

 泡ふいてるし眼を回しちゃいるが呼吸してる! 生きてる!

 

『くはっ! ぷ、ククククク』

(あん!? なに笑ってんだテメェは!!)

 

 ほらほら、とアルマディオの肩を掴んでガーネッタに見せていると、今まで静かだった魔王がムカつく笑い声をあげはじめた。

 

『し、知ら、知らないなら教えてあげようか? ククク。これは僕でも知ってる。あのね、魔族にとって異性の角を折る行為っていうのは……』

 

 魔王が言い切る前に、がしっと両手を掴まれた。

 

「うおっ!?」

 

 俺の手を掴んでいるのは、たった今ぶちのめしたばかりの魔族アルマディオ。一瞬前まで気絶していたくせに、ぜーぜーと荒い呼吸をしながら自分の足で立っていた。

 

 復活速いなこいつ!!

 少なくとも半日は寝てろよって気持ちでぶん殴ったのに!

 

「……けた」

「あ?」

 

 何かぼそぼそ喋ってるな。攻撃してくる気はないようだけど逃げられないように手を掴んでるって事は、呪文の類かもしれない。

 一日に二度も呪われてたまるかよ! と。掴まれた腕ごとブン回して地面に叩きつけようと思ったんだが……。

 

 

 

 

 

「その求婚、受けた!!」

 

「なんて!?」

 

 

 

 

 

 予想の斜め上からの言葉に、俺の思考は停止した。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 




▶アルマディオ>>
魔族。男。赤髪金目。ガーネッタの腹違いの弟。魔王軍幹部。
操の事をライバルだと思ているらしい。俺様と言っているが本当の一人称は僕。


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