光の戦士と暁のベル・クラネルがダンジョンにいるのは間違っているだろうか   作:dukemon

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光の戦士と友好部族

 

1、

 

 

「何デ人間ノ言ウ事を聞カナケレバナラナイ!」

 

 

人間嫌いの石竜(ガーゴイル)のグロスはまた叫んでいる。

異端児たちの隠れ里にきて一週間、ロックはすっかりこのやり取りを慣れた。

 

 

「はいはい。仲間想いの石竜(ガーゴイル)のことをよくわかっているから、さっさと訓練に戻れ。このままじゃアステリオスだけでなく、黒犬(ヘルガ)にさえ追い越られるかもしれないぞ。先輩としてしっかりやれ」

 

 

「グヌゥ!」

 

 

不承不承に特訓に戻った石竜(ガーゴイル)を見て、ロックは苦笑した。

先日知り合ったリドたちは異端児の中では共存派だ。

そして、グロスは拒絶派だ。

リドたちとほぼ同じ頃ダンジョンから生まれたのに、彼は頑なに人を拒む態度を取り続けている。

 

リド達は言葉を濁すけど、グロスの過去は態度は概ね推察できる。

 

人間に裏切られて仲間を亡くなったから、他人にも自分のような思いをしたくはない。

その想いは当然なことで、彼の考えを否定はできない。

人間は醜い一面があると知っているし、彼が人間に対してどんな感情を抱いているのかもよくわかるからだ。

 

 

「どんな魔法を使って、グロスを言い聞かせたのだ?」

 

 

フェルズの質問に、ロックは答えた。

 

 

「グロスの本質は仲間想いだ。人間嫌いはそれに由来する。だから、仲間を守るためなら、どんなに厳しい訓練でも乗り越えられる」

 

 

対立する両者を調停したいなら、まずはそれぞれの本心をよく聞かなければならない。

これはベルの経験談だ。

異端児はまだ分かりやすい方だ。

そもそも、共存派も拒絶派も仲間を大事にしている。

最大な異端であるアステリオスも同じだ。

 

「ベルだったら、もっと上手くやれるぞ。俺が知っているベルは調停者だ。まあ、本人は前任者からその役職を受け継がないと決めたから、そう呼ばれたくはないが」

 

 

「調停者?」

 

 

「争いを止める者ってことだ。俺の知る限り、数多くの和約を結んだぞ」

 

実際、戦火が絶えないアーテリスでベルは何度も奇跡を起こした。

ニーズヘッグとの停戦。各地の蛮族との交渉。ボズヤ・レジスタンスと第Ⅳ軍団の和解。

そして、それは彼が戦い抜いて、勝ち取った結果だ。

 

「なら、なぜベル・クラネルに連絡しない?」

 

「例外が存在するから、彼が唯一戦士としての闘争心を見せたのはアステリオスの前世だけだ。最初に再戦の約束を結んだのも彼」

 

「つまり、互いが会ったら」

 

「まず、アステリオスは再戦を申し込む。次は、ベルは受ける。場所を選んだのち、二人が殺し合う。そして、誰も止められない。俺が無理矢理介入すると、彼らは俺がいない場所で勝手に決着をつける」

 

それが、ベル・クラネルとアステリオスの関係だ。

彼らは互いと戦い続ける運命にある。

どちらも敵の強さを心から認めている。

だからこそ、彼らはその絆を大事にしている。

フェルズは黙り込んだ。

 

「先に言っておくけど、アステリオスを排除し、ベルの助けを得るのは不可能だ。俺とベルと異端児、三者の恨みを買うから、バカなことを考えるな」

 

フェルズが何かを言う前に、ロックは釘を刺した。

 

「ベルの力を欲しているのはわかった。だけど、アステリオスもまた希望の証。彼の前世が成した偉業はそれほど凄まじいものだ」

 

ロックの言葉に、フェルズは苦笑した。

 

「私だって、そんなことはわかっているさ」

 

「まあ、永遠に話さないわけではない。アステリオスがベルとまともに戦えるようになったら話すから、少し待ってくれ」

 

 

この前、異端児の隠れ里に到着した直後、ロックは彼らが直面している困難を聞き出した。

同族(モンスター)と冒険者たち両方に狩られるのはまだいい。

これはおそらく共存という目的が達成するまで解決できない問題だ。

もう一つの問題は深刻だ。

 

「お前たちは闇派閥に襲われた!?」

 

異端児は闇派閥に捕まられて、売りさばいたそうだ。

実際、騙されて、裏切られ、命が落とされた異端児が多い。

特に見目麗しい者はひどい目に遭ったらしい。

拒絶派の人間不信もそれに関係がある。

力が必要だと、ロックは判断した。

故に、自分が持つすべての技能をできるだけ教えた。

戦闘の意欲がある者に戦闘技術を教える。

戦闘に不向きの者には基本的な自衛方法と生産職の技能。

特に鍛冶と調薬二つの技能は最優先に習得させた。

アステリオスの鎧のような武具を今すぐ全員分作り上げるのは不可能だから、メンテナンスが必要だ。

回復薬などは彼らにとって生命線だ。効果が低いでも生死を分かつ。

彫金、木工、裁縫、料理、採集などの基礎もきっちりと叩き込んだ。

 

「人間ってやっぱりすげぇ」

 

「リド、彼を人間の基準にするな」

 

と、ロックの多才さを目にしたフェルズがドン引きした。

 

丸々十日を使って、彼らを鍛え上げて、武器、防具と生産用の道具を与えた。

十日目、ラザハンから連絡を受けた。

 

虚無界の調査準備が整ったそうだ。

 

「すまないが、友人は助けが必要だから、今すぐそちらに向かわなければならない。それに、今のところ、俺ができることはこれだけだ」

 

短時間で教えられるものは全部教えた。自分で訓練する方法も教えた。

残りは実戦と実作だけ。これだけはロックでも教えられない経験の積み上げ。

一足早く卒業したアステリオスはすでに深層に行った。

 

「ロックにはすでにいっぱい助けられた」

 

「アステリオスノことモ、同胞ノことも、ありガとウござイました」

 

リドとレイはそう言って、異端児たちと共にロックを見送ることにした。

彼らは、ロックのことをとても気に入っていたのだ。

 

「人間ニハ気ニ食ワナイケド」

 

しばらく歩くと、グロスは前に待っている。

 

「アリガトウ」

 

「本当に素直じゃないな、お前」

 

「フン!」

 

照れ隠しの石竜(ガーゴイル)は翼を広げて飛び去った。

 

 

「惑星ハイデリン。大穴がなく、モンスターに脅かされることはない世界か。まるで楽園のようだ」

 

人々が夢見る世界。モンスターに怖がることなく生きられる星。

私は時空の穴を眺めて、そう呟いた。

ロックは言い返った。

 

「楽園ではない。争いが止められずに、悲劇も多い。大穴がなくても、自然に生きる様々な動植物は生きるために人々に襲う。何十に超えた知能ある種族は外見、文化、居住地などを原因にして戦い合う。国と国の関係も複雑だ……そもそも、天上にいる神たちでさえ争い続けている。地上にいる俺たちが楽園を築き上げるなんてできないぞ」

 

「わかっている。楽園など幻想にすぎない」

 

「だけど、追い求める歩みは決して無駄ではないと思う」

 

矛盾している言葉。

しかし、それが彼の答えだった。

 

「なら、君にとっての楽園は何?」

 

「旅の寒さに身が凍えそうになった時に入った暖かい小屋。俺はそこで少し休んで、終わらない冒険を続ける」

 

ロックは振り返らずに歩き出す。

 

「それじゃ、また会おうぜ」

 

その背中は、太陽のように眩しい。

勇気と意志をもって、未知なる未来へと向かっていく。

彼が時空の穴に消えてから、その輝きにあてられた私はしばらくそこで佇んている。

そして、私は地上に帰って、ウラノスにすべてを報告した。

 

「異星の客人は異端児(ゼノス)の力になりたいと……」

 

「そうだ、ウラノス。そして、私はそれを止められない」

 

それは確信のようなものだ。

ロックは決して異端児を諦めない。

ウラノスは長考して、答えを出た。

 

「わかった。その偶然の出会いは誰にも予想できないもので、可能性でもある」

 

「ならば、私ができる限りのサポートをするよ。それが、私の役割だからね」

 

「感謝する」

 

私は地下祭壇から離れようとすると、その時。

 

「変わったようだ、フェルズ。どういう心境の変化だ?」

 

「少しだけ……未来のことを考えた」

 

ロックと話し合って、私は自分の変化を自覚した。

ウラノスは目を見張った。

私は初めて、ウラノスの前で自分の未来について話した。

 

「ウラノス。黒竜討伐、ダンジョン最下層の攻略、人と異端児(ゼノス)の共存。それらのことが終わったら、私は旅に出るよ」

 

「旅を?」

 

「ロックを見て、なぜか生という歩みは素晴らしいものだと思い出した。また只人であった時、あの必死に真理を求める日々を。だから、私はもう一度私らしく生きたい。旅はその第一歩だ」

 

ロックはただ旅をして、私と世間話をしているだけ。

そして、私はこの出会いを勝手に意味を見出した。

だが、それでもいいと思った。

人と人の出会いと絆はそういうものなんだ。

 

「この未来はまだ遠い。それでも、求める価値がある」

 

「…………遥か、遥か昔」

 

「ウラノス?」

 

ウラノスは懐かしむように、ある神のことを話し始めた。

 

「いつも旅をしている一柱の大神がいた。地上の太陽。星々を繋ぐ者。凄まじい大権能を持ちながら、彼の師を越える問題児だった。問題を解決するために派遣したのに、なぜか常に新しい問題を引き起こした。彼の友人と同僚たちはいつも苦労していた。それでも、彼の周りは絶えずに笑いがあった」

 

「その神の名前は?」

 

「アゼム。未来に繋ぐ絆を司る神。願わくば、君の旅が我が友アゼムが歩んでいたように、笑顔と絆があらんことを」

 

そう言って、ウラノスは私を見送った。

 

 

2、

 

虚無界で土と風の四天王を倒して、原初世界に帰還したロックはベルとお互いの情報を交換した。

無論、異端児のことを隠している。

イシュガルドから時空の穴に出航する飛空艇の上で、二人は頭を抱えている。

 

「つまり、ギルド、いや、ウラノス神は今、僕たちが惑星ハイデリンから来たことを知っています」

 

「そして、ロキ・ファミリアとヘルメス・ファミリアは、俺たちがイデアを探しにオラリオに来たことを知っている」

 

「ウラノス神はロキ神、ヘルメス神のどちらと情報交換したら――」

 

「惑星ハイデリンから盗まれたイデアを探しに来たということがバレて、ハイデリンとアーテリスは同じ惑星だと知られる」

 

「ヘスティア様の忠告は無意味じゃないですか!三ヶ月も経っていませんよ!」

 

『アーテリスから来たこと隠してね。知られたら絶対に大騒ぎになる。万が一知られたら、十四人委員会、アゼム、ヴェーネスと終末などは絶対に口を出さないで』とヘスティアが言っていた。

 

ヘスティアの言葉を思い出して、ロックとベルは頭を悩ませる。

どうすれば良いのか? そんなことを考えていると、飛空艇が着陸した。

 

「臨機応変に対処するしかないようだ」

 

「そうですね」

 

二人は時空の穴を通して17階層に到着した。

ロックは下へ向かい、ベルは上に登る。

別れる前に、ロックは思い出したようにベルに言った。

 

「鍛錬をしっかりするように」

 

「ん?当然ですよ。最近は並行詠唱の精度を鍛えて、この前の依頼で知り合った冒険者たちと共に高め合っていますよ。いつか来る再戦のために、訓練に手を抜くわけがありません」

 

「いや、お前のファミリアは最近リリが入ったから、忙しくなったかもしれないって」

 

「リリは僕よりずっとしっかり者ですよ。ヘスティア様の神友のファミリアと臨時パーティを組んで上層を探索しています。あと少し鍛えれば、レベル2に昇格してもいいです」

 

アステリオスの成長は目を見張るものだから、ベルに少し心配しているけど、問題ないようだ。

ロックは安心すると、下に向かった。

18階層のリヴィラの街で、謎の呼び名がされた。

 

「あ。【闇の帝竜騎士(シャドウ・ニーズヘッグ・ドラグーン)】の師匠だ」

 

「すごい、はじめて見た【闇の帝竜騎士(シャドウ・ニーズヘッグ・ドラグーン)】の師匠」

 

「すまない。【闇の帝竜騎士(シャドウ・ニーズヘッグ・ドラグーン)】は一体?」

 

近くにいる冒険者を捉まってこの名前について聞いた。

 

「知らねぇのか?先日開いた神会(デナトゥス)で決めたベル・クラネルの二つ名だぜ」

 

全部乗せの二つ名を聞いたロックは思わず爆笑した。

そして、神会の惨状に想いを馳せた。

 

 

先日、ヘスティアは神会(デナトゥス)で発言した後、自分が墓穴を掘ったのを理解した。

 

「それじゃ、ベル・クラネルの二つ名はやけくそとなったドチビが提案した【闇の帝竜騎士(シャドウ・ニーズヘッグ・ドラグーン)】で決まりで」

 

『異議なし』

 

「うわああああああああああああ!」

 

血涙を流しているヘスティアに、周りの神々が嗤った。

彼らがやったことは簡単だ。

ヘスティアに名前の提案をさせて、それをダメ出しし続ける。

やがて事前に考えた二つ名が尽きて、どうせ否定されると思って、適当に考えた名前を提出した。

 

(なんでこんな名前を思いつくんだろう……)

 

ベルは第一世界で、【闇の竜騎士】と呼ばれた。【闇の戦士(シャドウ・ブリンカー)】の一員だ。

原初世界で、【帝竜】ニーズヘッグの眷属で、竜騎士(ドラグーン)の戦闘職だ。

提案した時は捻りもない二つ名と思っているが、まずいって思い始めた時はすでに遅い。

神友たちも、ベルを庇おうとしたフレイヤも、特大な墓穴を掘ったヘスティアに絶句した。

 

(二つ名のことが悔しいけど、ベル君の個人情報をある程度守った)

 

今回公開したものは

レベル1の最終能力値と恩恵が得る前にすでに限界突破した事実。

そして、魔法【ドラゴンソング・エルピス】

どれも普通のファミリアにとって隠蔽しなければならないものだが、ベルにとっては()()()()()()()()

ある程度、神々の好奇心を満たさないとまずいから。

 

公開できるものでも、何も知らない神会(デナトゥス)の神々にとってどれも特大な爆弾だ。

なぜか2000を越えた能力値。恩恵を得る前になぜか限界突破し器を昇華した事実。神々は文字通りひっくり返った。

限界突破してから恩恵を与えると器の限界を超えるじゃないか、と神々は議論が白熱化した。

「英雄時代の英雄に神時代の恩恵を与えたらどうなるか」という誰もが一度夢見た幻想に飛びついた。

 

魔法【ドラゴンソング・エルピス】を聞いた神々はさらに狂った。

 

「私の全財産をやるから、一度だけでいい!ベルきゅん、いやベル様にこの詠唱を読ませてください!【静まれ、俺の右手……】」

「【俺の左手の封印を開放する……】、お願いします」

「【女湯の扉を、この者の前に開け】という魔法を俺に使ってください!後生ですから」

 

「ボクの子供に何ってことを言わせたいんだ!」

 

不本意なことだが、ヘスティアは彼らの考えを共感できる。

実際、ロックもヘスティアも、自分が考えた詠唱をベルに読ませたことがある。

おそらく、この魔法のせいで妬みを買って、二つ名を決定する時に集中砲火を受けた。

 

そして今、ベルは幽鬼のごとく玄関から入った。

 

「ヘスティア様ぁ」

 

虚無に満ちた目を見て、ヘスティアは思わず土下座をした。

 

3、

 

ロックは異端児の隠れ里についた。

場所は変えたけど、暗号が残っているからすぐに見つかった。

みんなはそれぞれのやるべきことを励んでいる。

 

「この前に教えてくれた隠蔽技術に、本当に助かった。おかげで、前の襲撃にオレっち達は一人も失ってない」

 

この前に闇派閥の襲撃があるそうだ。

その時、リド、レイとグロスなどの主戦力は異常事態(イレギュラー)を対処するため里から離れた。

しかし、フェルズが残った魔道具とロックが教えた技術で辛うじてやり過ごした。

 

「けど、逃げるため鍛冶や裁縫などの道具は一部なくした。命があるだけで幸いだったけど、贈ってくれたロックに申し訳ない」

 

「道具は作ればいい。命こそ大事だ。命がないと、せっかく鍛えて上げた技もなくなってしまう。今度は講義も兼ねて、製作用道具の作り方を教えよう」

 

ロックの言葉を聞いて、リドは笑った。

そして、ロックが持っているものを見た。

それは、一振りの刀だ。

刀身が真っ黒で、柄には赤い宝石が付いている。

鍔にも赤の宝玉が嵌め込まれている。

鞘は純白で、金色の装飾がされている。

まるで、その剣自体が一つの芸術品のような印象を受ける。

でも、柄の作りは奇妙だ。人間が握るようなものではない。

 

「ロック、その刀は?」

 

「お前のものだ」

 

アステリオスは専用武器があるけど、リドたちはそれがないと不公平だ。

そう思って、ロックはこの数日の間作り上げたリドの専用武器(オーダーメイド)はこれだ。

リドは渡された黒い刀を見る。

重さはあるが、持ち運びしやすい。

手に馴染むし、不思議と力を感じる。

 

「これは、なんという刀なんだ? 」

 

「ヴリトラというドラゴンの鱗を素材にして作った刀だ。お前たちのことを聞くと、快くお前のために素材を提供した」

 

ヴリトラは、七大天竜の一翼。

そして、人と共に歩むもの。

彼はリドたちも自分と同じように出会いに恵まれるように、祈りを込めた。

 

「レイとグロスも来てくれ」

 

レイに渡した武器は吟遊詩人用の弓で、楽器でもある

製作者は【詩竜】ラタトスクの末裔、ロックの弟子エル・トゥ。

自分の先祖である詩竜ラタトスクのように歌が好きな歌人鳥(セイレーン)に贈った。

 

「俺の弟子エル・トゥは、いつか機会があったらレイの歌を聞きたいって言っていた」

 

「こんナ素晴らしイものを贈っテクれた方に、何曲でモ歌うヨ」

 

武器を持たないグロスに与えたものは漆黒の手甲。

この手甲は【帝竜】ニーズヘッグの鱗を使っていて、防御力を大幅に向上させる。

ニーズヘッグは憎悪の力も、それに引き起こした破滅も、身をもって知っている。

だから、先達としてグロスに戒めた。

 

「ニーズヘッグからの忠告だ。『憎しみは決して忘れられない。けれど、怨嗟の炎に希望を焼かれてはいけない。復讐の甘美さに前路を見失ってはならない』」

 

「…………」

 

「『憎しみと怒りを力に変えて、二度と失わないために戦え。さすれば、我が手に入れなかった真の強さを得られるだろ』」

 

リドたち全員に、それぞれ贈り物を渡した後、ロックは言った。

 

「ドラゴン族はもともとハイデリンの種族ではなく、けれど今はその一員となった。だから、俺はお前たちの武器を彼らに依頼した。異端児の道は険しい。争いもあるだろう。だが、成し遂げた先人がいることを忘れるな」

 

「ああ」

 

リドたちが力強くうなずいた。

 

 

約束通り、仕事道具を作ったロックは異端児たちの働きぶりを見て舌を巻く。

 

「上達するのは早い。俺が教えてから、一ヶ月も過ぎていないよ」

 

「努力の賜物って言いたいが、師がいいからだ」

 

フェルズはロックに向いた。

 

「体の作りが違うから、多くの異端児は人間の道具が使えない。だから生産職に興味があっても、諦めるしかない。しかし、君が作った道具のおかげで、彼らも人間と同じように物を作れる。その得難い機会を逃す異端児はいない」

 

フェルズが指差す先にいるのは、バーバリアンのグレイだった。

 

彼は一角兎(アルミラージ)のアルルと一緒になって、作業している。

彼らは工具を使いこなしていた。

グレイは鍛冶の才能があるから、ロックは真っ先に彼の鍛冶道具を作った。

昨日から、彼は他の者たちの注文を受け、様々な道具を作っている。

 

「でも、僕なんかまだまだだよ。師匠に比べたら……」

 

グレイはうつむき加減で言う。

 

「俺は鍛冶師になってからもう六年だ。お前は経験を積めばいつか俺以上のものを作れるだろ。保証してもいいぞ」

 

ロックの言葉に、グレイは頬を赤らめた。

 

「ありがとうございます!」

 

彼は嬉しさのあまり、頭を下げる。

そしてまた戻って仕事を続ける。

それを見たロックはフェルズに提案をした。

 

「なあ、異端児の共存のために、お前とウラノスは怪物達(かれら)の存在意味を問い出そうとするそうだ」

 

「ええ」

 

人類は怪物を受け入れるには、利益が必要だ。

黒竜討伐とダンジョン最下層の攻略は最も困難だが、どちらが達成した時点で異端児の声を人類は無視できない。

ロックは武力以外のやり方を提案した。

 

「これらの技術で起業しよう」

 

「なるほど……物作りで人類の生活に溶け込むか。しかし、そうなると売り筋を……考えておこう。商業系ファミリアと商人は手強いだが、全力を尽くすよ」

 

フェルズは少し考え込んでから言った。

ロックは笑って答えた。

 

「夢が大きくするほうがいいぞ。たとえば、ヘファイストス・ファミリアを超え、オラリオの鍛冶派閥の頂点に立つとか?あるいは、ディアンケヒト・ファミリアのアミッドより優れる調薬師になるとか?」

 

「両方はどうだい?」

 

フェルズは笑い返った。

 

「欲張りな、お前」

 

二人の目の前で、異端児たちは新しい未来のために頑張っている。

彼らがどんな物語を紡ぐのか楽しみになった。




普通に友好部族になった異端児。
まだまだ手探り状態だけど、原作より心の余裕がある。



調停者のことについて、
ベルはエリディブスがクリスタルタワーに封じ込めてから、原初世界に帰るまで数日間交流がある。
根拠地はレイクランドだから、暇な時はエリディブスの話し相手となった。
ロック/アゼムの奇行など、色々と話し合った。漆黒秘話の火山や事件屋のことも話題となった。
過去に行く前に、エリディブスは自分のクリスタルをベルに渡してくれとロックに頼んだけど、ベルは受け取りを拒否した。

「エリディブスが彼の座を執着するのはそこに大事な絆があるからです。世界を救った英雄の想いはすでに僕の心に刻みました。そのクリスタルは未来永劫彼の物で、彼の絆の証です」と、ベルは言った。

「すげえな。ほとんどあいつが予想した答えだぜ」、とロックは笑った。

それから、ベルが受け取らないことをすでに予測したエリディブスの遺言に従って、そのクリスタルをゾディアークの封印地に埋葬した。
ちなみに、エリディブスは普通にベルがエリディブスの適正があると思って、自分のクリスタルを渡そうとした。座に殉じる彼にとって、後継者探しも仕事の一部なんだから。
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