夏とタイムマシンのブルース   作:秋時

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前回の続きです。



第2話

「香澄、今頃何してたか覚えてるか?」

 

「えっとね、家族でお出かけに行ってた」

 

「じゃあ香澄に会ったりもしないな。行ってみるか」

 

ここにいるよりは厄介なことは起きないだろう。

 

「早速、行ってみよう」

 

「あ、その前にタイムマシーン。隠しとかねーとか」

 

「え?なんで……あ。昨日有咲はあのタイムマシーン見てなかったんだね。矛盾になっちゃう」

 

「そう。って言っても家によくわかんねーものがあることなんてたまにあるからちょっと目立たねーよにしておけば……上にブルーシートあるからそれ被せてちょっと移動させよう」

 

タイムパラドックスが起こるとどうなるのか知らないけど、なんかヤバそうだし回避するに越したことはない。

 

 

タイムマシーンの移動は思っていたよりも楽だった。私たちでもなんとか持ち上げられるくらい。未だに信じられない。こんなのがタイムマシーンなんて。

 

「このシート被せて……。あ、もしかしてこれ」

 

シートを被せて少し離れて見る。

 

目の前にあるのはいつの間にか置いてあったブルーシートの被った『変なの』そのものだった。

 

「やっぱこれ、あれだよな」

 

「じゃああの時タイムマシーンは実は二つあったってこと?」

 

突如現れたタイムマシーンに乗って昨日に来て、それが『変なの』だった……。混乱してきた。

 

「あー、もう暑くて頭まわらねぇ。とりあえずさっさと移動しよう。はい、とりあえず移動費ぐらいはあると思うから貸しておく」

 

香澄とおたえに500円を渡す。倉の中にあった小銭入れに入れておいてあるものだ。

 

倉にはこれくらいしかなかった。私の財布は私のいる私の部屋の中だ。取りにいけない。

 

「ありがとう。そういえばお財布置いてきちゃったもんね」

 

「それじゃあ、私の家に出発!」

 

 

 

「確か帰ったらちょうど3時だったと思う。あ、お茶準備するね」

 

「ありがとう。なら2時くらいまではゆっくりできるってことだな」

 

香澄の家に着く。なんかやっと安心できるって感じだ。

 

「なんか私の家なのにコッソリ入って悪いことしてるみたい」

 

「ピックあった?」

 

「えーと。あれ?やっぱりギターケースの中に入れてあったみたい」

 

香澄がピックを取り出しポケットにしまう。

 

香澄がつけてくれた冷房が効きはじめ暑い中の移動で生まれた熱が冷めてくる。用意してもらった麦茶に口をつけやっと思考が冷静になった。

 

っていうか色々おかしいだろ。なんだよタイムマシーンって。なんで本当に昨日になってんだよ!

 

せっかく冷静になったのにあまりにも不可解過ぎて思わず興奮してしまう。いけないいけない。

 

「よし、とりあえず状況を整理しよう」

 

「えっと、今は昨日で、ここは私の家で……私たちは未来人!」

 

「未来人!かっこいい!」

 

「そう未来人。ってことは今の私たちに見られちゃいけないんだ。少なくとも私は私を見た記憶はねえ」

 

「私もない」

 

「私も……あ、鏡はノーカウントだよね」

 

「とりあえず昨日の私たちが何してたか共有しよう。私は1日中家の中にいた。あつかったし」

 

「私はちょうど今の時間くらいからバイトが……夕方くらいまでだったね。その後はちょっと寄り道して家に帰っただけ」

 

「私はお出かけの後は家にいたよ」

 

というと私達の家にはあまり近づかない方がいいな。

 

「ねえ、タイムマシーンで帰っちゃわない?」

 

香澄が珍しく冷静な提案をする。キラキラドキドキがどうたら言い出してより無茶なことを言い出すんじゃないかと思った。香澄もこの状況に不安を感じているのかもしれない。

 

それもそうか。私に見つからないように移動して早々に帰ってしまうという選択肢もある。直後は動揺して思いつかなかった。確かにこれが一番無難だな。

 

「帰れるかな?」

 

「え?」

 

「私達が使ったタイムマシーンは有咲が今日見つけてそのままずっと明日まであるんだよね?」

 

「あ、なるほど」

 

私があの『変なの』を最初に見たのはいつだったか覚えていないけど盆栽の世話をしに行ったときも倉に行ったときも確かにあった。途中で消えたということは無かったと思う。少なくとも明日の朝、香澄達が家に来たときにはあそこになければおかしい。

 

タイムマシーンを使って明日に帰ると矛盾が出来てしまう。タイムパラドックスってやつじゃねーか!あっぶねー。

 

「えっと、じゃあ」

 

香澄が引き出しを開けて何かを取り出す。お年玉袋と書かれている。中から1万円札が出てくる。

 

「これくらいしかないんだけど、帰れないってなっちゃうとやっぱり色々お金必要になっちゃうと思うし、お腹も空いてきちゃった」

 

「ありがとう。とりあえずご飯にしちゃう?晩御飯」

 

「そっか。もう私達がいた時間で考えると晩御飯の時間になるのか。……ややこしいな。お昼食べ損なっちゃったしご飯にするのは賛成」

 

「私、アイスが食べたい!お昼に食べたのがまた食べたくなっちゃった!」

 

「そんなに気に入ったのか。私は良いけどおたえは?」

 

「いいよ。そこで改めて作戦会議だね」

 

 

みんなでよく行くファストフード店まで移動する。ちょうどここでアルバイトをしている彩先輩が注文を聞いてくれた。

 

「あ、そのアイス私も気になってるんだ。美味しかったら教えて?」

 

「美味しいですよ!トッピングにのってる星のクッキーも美味しくて。彩先輩も是非!」

 

「あれ?今日始まったのにもう食べてたの?早いね」

 

そうだ、香澄が初めて食べたのは本当は明日だ。ここで彩先輩を混乱させるのも良くない。

 

「あれ?さっき来た時も彩先輩に会ったような……」

 

「何言ってんだ香澄、さっきは別だったろ」

 

「え?……あ、そうだった。別でした」

 

「ハシゴなんてすごいね。私も早く食べたいなー。あ、でも食べ過ぎてお腹壊さないようにね」

 

だいぶよく分からないいい訳だったが彩先輩は笑ってスルーしてくれた。

 

「そうですね。気をつけます。次は時間を置いてきます」

 

「うん。あと、それ期間限定だから気に入ったなら気をつけてね……あ、お待たせしました。どうぞごゆっくり」

 

 

「んー!やっぱり美味しい!これ!可愛いでしょ!」

 

香澄が嬉しそうにクッキーを指さす。ホントに好きだな。星。

 

ソーダ味だろうか水色のアイスの上に星形のクッキーや色々な色のラムネが散りばめられている。

 

「ホントだ。かわいい」

 

「冷たくて夏にぴったりって感じ。美味しいんだよ。ほら、有咲。あーん」

 

香澄がアイスの乗ったスプーンを差し出してくる。

 

「いや、食うか!」

 

「有咲いらないの?じゃあ私食べてみたい」

 

「それじゃあおたえ、あーん」

 

「あーん」

 

おたえが香澄の差し出したアイスをそのまま食べる。恥ずかしくないのかコイツら。

 

「ホントだ!美味しい!」

 

「ね!美味しいでしょ。有咲ホントにいらないの?ほら、クッキーもあげちゃうよ~。あーん」

 

これ以上拒否するのも時間の無駄だろう。ハンバーガーを食べる前にアイスを食べちゃうのはどうなんだろうと思ったが仕方がねえ。

 

香澄に勧められるままアイスを食べる。

 

あ、確かに美味しい。クッキーは少し湿っているが返ってソーダ味のアイスとよく合う。

 

「どう?美味しいでしょ?」

 

「まあまあ美味しい」

 

「でしょ!美味しいでしょ!」

 

自分で作ったわけでもないのにどこか誇らしげだ。

 

「今度はりみりんと沙綾も一緒にみんなで食べようね」

 

「そういやりみは家族旅行だっけ昨日から……ってことは今日か」

 

「そう。紗綾は今日はお店が忙しくなるって。商店街でこういうキャンペーンが始まる初日らしいよ」

 

香澄がチラシを家から持ってきた鞄から取り出す。

 

スタンプラリーのような事をやっているらしい。参加店舗一覧に沙綾の家の山吹ベーカリーも書いてある。

 

「会いにいくのはやめといた方がよさそうだね」

 

「そうだな。邪魔しちゃわりーし」

 

「じゃあこの後何する?せっかくタイムスリップしたんだし何かタイムトラベラーっぽいことやってみない?」

 

「あ、私やりたいことがあるんだ」

 

おたえがポテトを食べていた手を止める。

 

「おたえ、何やりたいの?」

 

「昨日直前で売り切れちゃったらしいレコードを売り切れる前に買いたい。せっかくだし」

 

売り切れてしまったレコードを買う。本当に直前に売り切れたのならまだ買えるかもしれない。

 

「売り切れる前に買う!いいね!タイムトラベラーっぽい!レコードってのもそれっぽい!ちなみになんのレコード買うの?」

 

「さっき……明日……?聴いてもらったやつのレコード版。お父さんにプレゼントしようと思って」

 

「それステキ!絶対買おう!」

 

「いいと思うけど……タイムパラドックスとかにならないか?」

 

行動はできるだけ慎重にしたい。何か取り返しのつかない事が起こらないとも限らない。

 

「大丈夫だよ。主観だけど、レコードを買った人が誰か私は知らない。もしかしたら

本当は私なのかもしれない。でしょ?」

 

「うーん。分からないような。分かるような」

 

言っている事に理解が追いつかない。やっぱおたえの頭の回転は速い。ただ、もう少し噛み砕いてほしい。……いや、待てよ。

 

「あ、そういうことか!香澄、もしかして今ピック持ってるか?」

 

「あるよ。これがどうかしたの?」

 

香澄がピックをポケットから取り出す。確かに香澄が探していたというピックだ。

 

「そのピックと同じだ!ピックは香澄がなくしたんじゃない。私達が盗んだんだ!だからなくなった!」

 

そうだ!それと同じで『レコードが売り切れた』理由が過去に戻った私たちが買ったからであれば矛盾は起きない。それに買えなかったとしても『レコードが売り切れた』ことに変わりはない。私達がレコードを買いに行くのに矛盾は起こらないってことか!

 

香澄とおたえが驚いたように目をぱちぱちさせている……あれ、おたえ?

 

「だ、だよなおたえ?」

 

「すごい!ピック紛失事件の犯人が私達なんて思いつかなかった!有咲天才!名探偵!?」

 

「な、なんでおたえが驚くんだよ!」

 

「だって、レコードのことしか思いつかなかった。まさか同じトリックだったなんて!」

 

「すごい有咲!よ、名探偵!」

 

どうやら本当におたえは気がついていなかったようだ。

 

名探偵か……。

 

め、名探偵なんて言われても……悪くねーかも。

 

「よし!じゃあ次はおたえのレコード買いに行くぞ!」

 

「先生!ついていきます!」

 

「先生!よろしくお願いします!」

 

ちょっと調子に乗ってしまう私と、その仲間たちは次の事件へ歩みだしていく。




実際昨日にタイムスリップしたとしてやりたいことないですよね……。
でも、友達と一緒だったら面白いかもしれない。
そんな感じで書いてます。
第3話は土曜日に投稿します。
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