白銀に惚れた男   作:排他的経済水域

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不定期になると思いますが、頑張ります。



第1話

その男にとって生まれて初めて見たものは病院の看護師の顔でもなく、自らの親の喜ぶ顔でもなく、白い天井だった。

初めて知ったのは自分の名前。雨宮 零という名前。

それを初めて会う名も知らぬ教師に教えられる。

少年はそれから激動の日々を送る。今日はあれをここまでやりなさい、今日はこれを食べ、あれをして、何時に寝ろ。

それを毎日、秒単位に決め実行される。

常人ならとっくに壊れるであろうそんな管理体制を少年は難なくこなした、そしてそれに対して不満などもなかった。

 

何故であろう。

理由はたった1つ…少年にとってそれが当たり前だったから

生まれた時から白い部屋で教育を受け、それをこなす。

少年にとって、いや少年、少女にとってはそれが当たり前だった。

しかしそれをこなせるかは話が別である。

生まれてからそれをするのが当たり前だとしても、所詮は人間の子供、すぐに限界が来た。

物心着く前から毎日、毎日、人が白い部屋から減っていく。

いつしか部屋には自分含め、2人しかその白い部屋には居なくなった。

しかしそれを疑問にも思わず、自分ともう1人は今日も教育をこなす。

少年が色々なことを学び、白い部屋の異常性に気づいたとしても、少年は何も変わらなかった。

少年は異常性に気づいたと同時に、この部屋から逃げる手段もないと理解していたからだ。

 

そんな生活を14年間こなした。

 

無感情、無関心を貫いていた僕にも恐怖を覚える存在もいた。

それが綾小路先生だ。彼は他の教師とは明らかに違う。

ペース、教え方、感情ののせ方、その全てのレベルが異常だった。

彼が教師でなければ僕ともう1人以外にも何人か残った可能性もあっただろう。

僕が生き残れた理由は単純に運が良かったのだろう。

それ以外特に思いつかない。

終わりがないと思っていた教育は何故か終わり、自分ともう1人は屋敷に入れられた。

どうやら部屋での教育をすることが出来ない理由が出来たらしい。大方、政府や警察にホワイトルームの存在を掴まれかけたのだろう。あの部屋は明らかに人道に反している。見つかればマスコミが騒ぎ、綾小路先生、そして協力した者はタダでは済まないのだろう。

屋敷に入り、初めてもう1人と会話をした。

世間話とでも言えばいいだろうか…雑談にも似た情報交換をし、そこで初めて、もう1人の名前を聞いた。

 

綾小路清隆

 

 

それが白い部屋で14年間共に過した者の名前だった。

そして彼の親が綾小路先生だということもわかった。

実の親が危険に晒されているのかもしれないのに、彼は冷静だった。

理由を聞いたら「あいつを親だとは思っていない」とも言っていた。

僕はそれを聞いて「そう」と彼に返事をし質問するのを辞めた。

そしてその事実を記憶だけした。

 

屋敷に入り1年が過ぎた頃。いつものように屋敷で過ごしていると先生に呼び出された。

自分が唯一、恐怖を覚えた相手。どんな教師よりも厳しく、そして優秀な人だった。

 

自分に何か用があるのだろうか?ホワイトルームが再開するなら僕だけでなく、清隆も呼び出すだろう。

しかし清隆はいない。

というか最近会っていない、どこかに行っているのだろうか?

俺は疑問を抱えながら部屋をノックして先生の執務室の前に立つ。

 

「雨宮 零です」

 

「入れ」

 

「失礼します」

 

「よく来たな」

 

「はい。それで僕になんの用でしょうか?」

 

僕はいきなり本題を聞きに行く。

この人は俺に…そして清隆に対して研究対象以上の感情は抱いていない。

それはこの14年間で身に染みてわかっていた。

それは屋敷に来てからの1年間でも変わらない。

だから僕はこの人と会話を楽しむという事はしない。

 

「清隆が逃亡した」

 

「そうですか」

 

あまり驚かなかった。清隆はこの生活に少なからず不満があった。

それがどのような不満なのかは知らなかったが、

 

「正確には執事の松尾の手引きで学校へと入学した。お前にはその学校へ入学し清隆を私の権力の及ぶ範囲に連れ出して欲しいのだ」

 

 

 

 

「分かりました」

 

「相変わらず貴様は表情に変わりがないな、まるで機械のようだ」

 

僕は幼少期こそ機械そのものだったが最近は少しだけ感情がでてくるようになっていた。しかしそれを先生には見せない。

隠せてるとは思わない、しかし見せないことが清隆とは別の先生への抵抗でもある。

 

「ご期待に応えられず、申し訳ありません。直そうとはしているのですが…」

 

「いや…いい。ともかく、これ以上ホワイトルームの再教育を延期することは避けたい、一刻も早く清隆を退学、もしくはそれに近しい状態にしろ。」

 

僕に綾小路清隆を退学にできるとでも?などとは思っても言わない。

言ったところで先生の決定は覆らないだろう。

意味の無いことはしない。

 

「はい、では失礼します」

 

俺はそう先生に言い、部屋を後にする。

 

 

「学校か…」

 

知識としてはもちろん知っている、だが白い部屋…ホワイトルームにずっと居た僕にとっては初めての場所だ。

少し…楽しみだな。

これまでに行ったことのない、『学校』という場所なら今までと違った経験ができるだろう。

『清隆を退学させる』という目的はあるが、それはそれだ。

 

 

そんな想いを胸に清隆を追いかけ、僕は高度育成高校へと向かった。

 

〜高度育成高校へと向かうバス停〜

 

これがバス停か…生まれて初めてでた外の世界は自分の見知らないもので溢れていた。

信号機、バス、横断歩道、周りの人が着ている制服。

知識では知っていても実際に見たことがないものばかりだ。

同世代と男女をこんなに見るのも実に数年ぶりだろう。

これからこんな風に見知らぬ光景を見て、学んでいけると思うとこの学校に来てよかったと思う。まぁ一応仕事という名目だが…

学校に入ったらとりあえず情報収集から始めなければ特に清隆の周り。クラス、交友関係。どんな情報でも欲しい。

そもそも清隆は僕よりホワイトルームでのスコアが上なのだ。

あいつが100点、ホワイトルームの合格点を80点とするならば僕は80前後だろう、たかだか20点だと思うかもしれないがこの差は途方もない差がある。まず間違いなく正面から戦っても勝てるとは思えない。

そもそも俺が清隆を退学させるにはあいつに問題を起こさせるしかない。1番いいのは暴力沙汰だろうが、それではあいつにボコボコにされ、良くて停学だろう。

それでは意味が無い。まぁその辺は学校に入ってから考えればいいだろう。

 

清隆への対策を考えているとバスが来た。

俺はバスに乗りこみ、座れる席を探すが空いていないようだ。仕方なく適当なところに立ち、つり革に手をかけようとすると…その子を見た。

 

白いや、銀髪か?身長は平均よりかなり低い華奢な少女、彼女を1目見た瞬間俺は瞳孔が開き、目を見張る。

 

「あの?私になにか?」

 

見ていた白銀の少女に声をかけられた。

どうやらじっと見てしまっていたらしい…

 

「いや…見惚れていたようです。ジロジロ見てしまいすいません」

 

僕は思ったことを正直に口にする。

人に見惚れるなんて初めてだがこの行為は見惚れているで間違いないだろう。

 

「そうですか…お気になさらないで下さい」

 

少女は少し驚いたような顔をしていたが、すぐに笑顔を浮かべてくれた。

 

可愛い…いや綺麗か?俺は少女に対して生まれて初体験の感情を得て、興味を抱き始めてきた。こんな感情はホワイトルームでは味わったことは無い。

もっと知りたい、少女いや彼女のことを!

 

「あの、良ければ名前を聞かせて貰えませんか?」

 

そう考えてしまい、気づいた時には彼女の名前を聞いてしまっていた。

 

「名前ですか?いいですよ。坂柳有栖と言います。これから3年間よろしくお願いします。そちらのお名前をお聞きしても?」

 

「坂柳有栖さんですか、こちらこそよろしくお願いします」

 

名前を聞くことが出来た。坂柳有栖…なんて綺麗な名前だ…あちらも名前を聞いてきたのだ。こちらも名乗らなければ

 

「僕は雨宮零です。これからよろしくお願いします。坂柳さん」

 

こうして俺は生まれて初めて好きな人が出来た。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 




ホワイトルーム生の頭の中って想像つかない…
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