ゴジラに転生したので愚かな人間どもを滅ぼそうと思います。 作:よよよーよ・だーだだ
その日は普段通りの朝だった。
棲み処でいつもどおり目を覚ましたぼくは、いつものように寝ぼけまなこを擦りながら顔を洗い、海草サラダと魚介の朝ご飯を食べ、地下空洞探検へと出かけるつもりだった。
……今日はどこに行こうかなあ。キングコングの先祖が造った遺跡を見に行こうか。それとも久々に『温泉リゾート』で過ごしてみるのも良いかもね。るんるん。
そんなことを思案していたときである。
轟いたのは唐突な爆音。
共に大地が揺れた。
眠気は一瞬で吹っ飛んだ。ぼくが慌てて棲み処の洞穴の外へと飛び出し、音の響いた頭上を見上げてみると驚くべき光景が広がっていた。
地下空洞の天井に、巨大なひび割れが走っている。まるで空が割れているかのようだ。
――な、なんだ、あれ……?
――おい、崩れかけてないか……!?
――大丈夫かな、崩れたらどうしよう……!
他の怪獣たちにも動揺が広まってゆく。これは地下空洞で暮らしている怪獣たちの仕業ではない、天井に入った亀裂の様子から見ても原因は明らかに地下空洞の外にあるようだった。
……これは外を調べる必要があるな。ぼくはすぐさま地下空洞を
久しぶりに訪れた地上世界の海。そこは地獄絵図と化していた。
空は赤黒く染まり、あちこちから黒煙が立ち昇っていた。立ち込めているのは濃厚な硝煙と爆薬のにおい。絶え間なく何かが爆発する音が響き、泣きわめく悲痛な悲鳴と怒号が飛び交う。遠くの方からは空爆や砲撃の音らしきものが聞こえてくる。
眩しい日差しが照らす夏空の下、地平線の果てまで広がる焼け野原、見渡すかぎり瓦礫の山と化した廃墟、そして立ち上る巨大なキノコ雲。そこでようやくぼくは理解した。
地上の人間たちが幾度も繰り広げた世界大戦争、その最果てで遂に。
『核兵器』が使われたのだ。
Atomic Bomb、『原子爆弾:原爆』と呼ばれる、核分裂時に生じる膨大なエネルギーを爆弾として転用した最強最悪の究極兵器。
ぼくたちの棲み処である地下空洞に放射能汚染の影響はないし、あったところでぼくたち怪獣はもっと濃厚なエネルギーを浴びて生きているから健康を害することもない。
けれど、人間たちは違う。人間たちの身体は弱い、あの爆熱は勿論のことぼくたち怪獣が平気なレベルの放射能でも人間の身体では耐えられない。あの恐ろしい兵器のせいで、この辺り一帯にいる人間はほとんど死に絶えてしまったに違いないのだ。
……そんな代物を同族である人間に向けるなんて。いったい、なんて恐ろしいことをするのだろう。ぼくはそう思った。
この日を境に、地上の人間たちの世界では『核兵器開発』が大ブームになった。
国同士のパワーバランスを一気に覆せる最強究極のチート兵器:核兵器。それらを手にするため、地上の各国はこぞって核実験を繰り返した。
原爆だけじゃない、水爆、中性子爆弾、反応兵器、コバルト爆弾……要るのかどうかもわからないのに人間たちは創意工夫を重ねて様々な兵器を造り出していった。
当時人間の世界ではいわゆる軍拡、核開発競争の時代に突入していたのだろう。あらゆる国の科学者や技術者がこぞって研究を重ねて次々と新兵器を生み出してゆき、あるいは地上で、あるいは地下深くで、はたまた海の無人島を標的に、人間たちが造った核爆弾はのべつ幕無しに炸裂し続けた。
そしてそのたびに、ぼくたち怪獣が棲んでいる地下空洞は迷惑を被ることとなった。
幾度もぶち込まれた核爆弾の衝撃でとうとう天井が崩れて膨大な海水が流れ込んで水浸しになってしまったし、人間たちが核兵器を作るために地下エネルギー資源を採掘した結果、ぼくのお気に入りだった『温泉リゾート』も滅茶滅茶になってしまった。
その頃になって地上の人間たちはようやく『自分たちが恐ろしいことを仕出かしている』ということを自覚し始めたようだけれど、時すでに遅し。ぼくたちの楽園:地下空洞は、人間たちが幾度も繰り返した核実験のせいでもう取り返しがつかないほどに滅茶苦茶にされてしまった。
……これはひどい。
ぼくたち怪獣はついに怒った。日頃から平和主義的ゴジラを標榜してきたぼくだけれど、棲み処を破壊するだなんてのはいくらなんでもひどすぎる。いくら平和主義だとしても、迷惑を掛けられているのならクレームくらい入れたって罰は当たらないはずだ。
そんな抗議の気持ちを込めて、ぼくたち怪獣は地上世界へちょくちょく顔を出すようになった。人間たちが関知していない地下空洞にもちゃんと住人がいるのだ、ということを人間たちにもわかってもらいたかったのだ。
……だけどこれがいけなかった。
地上世界にゴジラを筆頭とする巨大怪獣たちが出没するようになったことで、人間たちはますます兵器開発にのめり込んでいった。
今こうして振り返ってみればぼくも相当頭に来ていて思慮が及ばなかった部分があるのだけれど、人間とは本来弱くて臆病な生き物だ。人間は『同族同士で戦うため』ではなく『恐るべき巨大怪獣たち、特にゴジラへ対抗する手段』として強力な兵器を求めるようになった。
モスラの繭さえも焼き尽くす原子熱線砲。
それを量産化したメーサー殺獣光線車。
陸海空すべてを制覇する海底軍艦、轟天号。
核戦争にも耐えられるという触れ込みで開発された空挺移動要塞、スーパーXシリーズ。
そして対怪獣の究極兵器、Mobile Operation Godzilla Expert Robot Aero-type:
怪獣に対抗できる力を手にした人間たちは、やがて自ら怪獣たちへ攻撃を仕掛けるようになった。
人間が攻撃してくるからには怪獣も対抗せざるを得ない。さらに、ぼくの制止を振り切って、勝手に人間の世界へ報復攻撃を仕掛ける怪獣たちも現れるようになった。怪獣VS人類、やがて泥沼の様相を呈してゆく両者の争い。
人間と怪獣が争う時代。
『怪獣黙示録』の始まりであった。
……事態がここに至ったところで、ぼくはようやく理解した。
かつて転生直後のぼくが懸念し、平和主義的ゴジラを目指すことで回避しようと試みていた『怪獣黙示録』。けれど、その引き金を引いたのは実は人間自身だったのだ。
かくして底無し沼に引きずり込まれるかのように、ぼくたち怪獣は、人間との生存競争に巻き込まれてゆくことになってしまったのである。
転機になったのは『宇宙怪獣の襲来』だ。
外宇宙からやってきた宇宙超ドラゴン怪獣。三本の首に二股の尾、重力を操って飛行する広大な翼、口からは強力無比な
その名は〈キングギドラ〉。
『怪獣黙示録』の最中に突如飛来したキングギドラは、地上世界の大空を我が物顔で飛び回り、怪獣だろうが人間だろうが見境なくその猛威を振るって破壊の限りを尽くした。そんな危険な奴、許しておけるはずがない。ぼくたち地球怪獣も侵略者キングギドラへ立ち向かった。
キングギドラは半端なく強かった。
人間の軍隊はもちろん地球の怪獣ですら単独では敵わなかったし、ぼく:ゴジラとの直接対決でもその戦力差は互角以上、乱入してきた人間のせいで足を引っ張られたとはいえ一時はゴジラであるぼくでさえ追い落とされてしまったほどである。
ゴジラを蹴落としてまんまとこの星の王権を掌握したキングギドラは、瓦礫の廃墟と化した人間の街のド真ん中で勝利の雄叫びを挙げた。キングオブモンスターに取って代わった偽の王による大号令:アルファコールだ。
――我らは
――地上の生物どもよ、服従せよ! 従わぬものは、悉く抹殺すべし!
――人間どもなど捻り潰せ、さすれば、汝らに王道楽土の光あり……!
世界中に響き渡ったキングギドラからの宣言、提案に、地球怪獣たちも動揺した。
ラドン、メガロ、カマキラス、バトラ、ダガーラ、MUTO、カマソッソ、スカルクローラー、その他大勢の怪獣たち。人間たちの専横に不満を抱いていた者、ぼくの平和主義路線が内心密かに不服だった者、そもそも好き放題力任せに暴れたいだけの者……そういう怪獣たちはキングギドラの誘惑に乗せられ、その軍門へと下っていった。
むろん、キングギドラは地球の王権なんかに興味はなかった。
あいつらがやろうとしているのは文明自滅ゲーム、地球侵略だってただの暇潰しの遊びに過ぎない。キングギドラは狡猾だ。あいつらはまずぼくたち怪獣を分断し、各個撃破することで確実に勝利を収めようとしたのだ。
その一方、キングギドラの目論見を察してぼくについてくれた怪獣たちもいた。アンギラス、バラゴン、バラン、マンダ、ゴロザウルス、クモンガ、キングシーサー、普段はぼくと不仲だったモスラも味方に付いてくれた。
ゴジラ軍か、キングギドラ軍か。怪獣たちは二手に分かれて激戦を繰り広げることとなった。
……それはまさにキングオブモンスターの座を賭けて繰り広げられた地球最大の決戦にして怪獣総進撃。『怪獣大戦争』の勃発である。
世界を股にかけた怪獣同士の
まずキングギドラから離反したのはバトラ、次いでラドン、さらにカマキラスの寝返り。これを機にキングギドラ軍は総崩れとなり、敵将キングギドラはぼこぼこに叩きのめされて首を一本もがれた挙句、宇宙の果てへと叩き出される羽目になった。
――こんにゃろこんちくしょー!
――覚えてやがれえ!!
そうやって惨めな捨て台詞を吐きながら這う這うの体で逃げてゆくキングギドラと、そんなギドラを見送りながら憤然と鼻息を鳴らすぼく:ゴジラ。
ふん、ざまあみろだ、二度と地球に来るんじゃあないよまったく。
かくしてキングギドラは撃退できたのだけれど、キングギドラ来襲によるパワーバランスの激変は、地球を取り巻く状況に大きな影響をもたらした。
質量が地球の6,000倍という超質量を帯びた超重力の黒色矮星:妖星ゴラス。
ヘドロと大気汚染から産まれ出て、一度現れれば何度でも復活して何もかも汚し尽くしてしまう危険な公害怪獣:ヘドラ。
バイオテクノロジーの暴走が産み出した、ゴジラ細胞と植物の合成によるおぞましいキメラ怪獣:ビオランテ。
加えて、平和を脅かしたのは怪獣や天災ばかりじゃない。この素晴らしい星:地球を狙って、外宇宙から侵略者も襲来するようになった。
ミステリアンを筆頭にナタール人、X星人、キラアク、Mハンター星雲人、ブラックホール第三惑星人、ガロガバラン、恒星ヨミ第三惑星人、ミレニアン……侵略者たちは恐るべきテクノロジーや強力な用心棒怪獣を伴って地球へと襲来した。
……キングギドラとの戦いで激変した地球環境はさらなる宇宙から侵略者を招き入れ、あるいは環境そのものを破綻させる危険な
中でも一番の強敵は誰だったか、って? 皆それぞれ手強かったけれど強いて一番を挙げるなら、それはやっぱり『アイツ』だろう。
宇宙凶悪戦闘獣〈スペースゴジラ〉。
遠い
亜光速で宇宙を飛び回り、ぼくの放射熱線も跳ね返すフォトン・リアクティブ・シールドやら、口から放つ強烈な破壊光線コロナビームやら、重力を操って浮かせてしまうグラビトルネードやら……数々の強力な武器を備えた恐ろしくタフでハードな奴。そして何より、スペースゴジラは『自分の結晶細胞を植え付けた占領地を築き上げることで、その占領地の中にいるかぎりは無限にエネルギー供給を受けられる』というチート能力を持っている。
つまりは、無敵。
こんな化け物、どうやって勝てばいいというのだ。あまりの無理ゲーっぷりに、流石のぼくも今度ばかりは敗北を覚悟してしまった。
そんな窮地に、意外な助太刀が入った。
「ケリはMOGERAで着けるぞっ!」
国連直下の対ゴジラ特務部隊:Gフォースと、そのGフォースが造った究極の戦闘マシーン:MOGERA。本来どちらもこのぼく:ゴジラを倒すために創られた組織と軍事力だ。
「まずはスペースゴジラを叩く、総攻撃開始!」
「オールウェポン、ターゲット、ロックオン!」
「スパイラルグレネードミサイル、プラズマメーサーキャノン、
けれど、地球の危機を前にしてはそうも言ってられないようだった。人間とゴジラ、同じ星で暮らしている者同士いつまでもいがみ合っている場合ではないのだ。
そんなわけで『怪獣黙示録』は一時休戦、ぼくたち怪獣と人間は手を結んで宇宙怪獣の脅威に立ち向かうこととなった。戦いの最中、MOGERAのパイロットの一人がこんなことを言っていた。
「……おれはおまえのために生きてきた」
「邪魔の無い
「
ああ、そのとおりだとも。
人間たちの加勢を受けたぼくは奮起して形勢逆転、必殺のバーニング放射熱線でスペースゴジラを完膚なきまでにブッ飛ばして倒すことに成功したのだった。
「大した野郎だよ、
「結構いい奴だったよな、ゴジラ……」
「ゴジラー、おれとの勝負はついてねえぞ~!」
海へと帰るぼく:ゴジラを見送りながら、そう口々に呟く人間たち。その表情はなんだか穏やかで、とても優しそうに思えた。
……あるいは。
共に戦ってくれる人間たちを見ているうちに、ぼくの胸中にもこんな考えが
“これはこれで、そんなに悪くないんじゃあないか?”
あるいはこうして一緒に戦い続けていたら、人間もぼくたち怪獣のことを理解してくれるようになるかもしれない。まあ仲良く友達になるのは流石に難しいとは思うけれど、少なくともぼくたち怪獣が敵対するべき対象ではないことくらいはわかってくれるんじゃなかろうか。
かつてぼくが目指した『人間と共存できる平和主義的ゴジラ』、少々遠回りにはなったけれど元の鞘に収まることもできるかもしれない。そうすればぼくたちもまた平和的に共存できる日が来るんじゃないだろうか……
……なんてね。
そんな小さな希望を胸に抱きながら今日も地球を守るため、ぼくは平和を脅かす侵略者や怪獣たちと戦い続けた。
ぼくたち怪獣が戦う理由は、人間のためだけじゃない。そもそもこの星は人間たちだけの物じゃあない、皆の物だ。そしてその『皆』の範疇には怪獣たち、つまりこのぼくであるゴジラ自身も当然含まれる。地球の仲間の一員であるからにはぼくたち怪獣もまた、共に手を取り合って戦わなくてはならないのだ。
それがわかれば人間たちだって、きっと。
……今にして思えば、なんて浅はかで甘い考えだったのだろうと思う。だけど、このときのぼくはまだ知らなかったのだ。
まさか人間が“あそこまで”愚かだったなんて。
タイトルは『ゴジラVSスペースゴジラ』のエンドタイトル。ストーリーが全体的に緩いので巷ではバカにされてますけど、童心に帰れる楽しい映画ですよね『VSスペースゴジラ』。バース島の情景も美しいし、台詞の一つ一つがいちいち熱くてカッコいい。個人的には大好きな作品。
次はどの怪獣の話が読みたい?
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アンギラス
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チタノザウルス
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バトラ
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スペースゴジラ
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デストロイア
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オルガ
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メカゴジラ=シティ
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カネゴン
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ケムール人
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バルタン星人
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ガヴァドン
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ジャミラ
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メトロン星人
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ミャクミャク(いのちの輝き)
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大魔神
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ガメラ
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ゼノモーフ
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プレデター