ゴジラに転生したので愚かな人間どもを滅ぼそうと思います。    作:よよよーよ・だーだだ

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3、Pensacola, Florida (Godzilla Theme) ~『ゴジラVSコング』より~

 

 人間は欲深で、浅はかで、底無しに愚かだ。

 ……いや、あるいは、たかだか一時の共闘関係で『仲良くなれた』なんて勘違いしていたぼくの方こそバカだったのかもしれない。

 でもまさか思わないじゃん。

 

 

 ぼくら:怪獣の棲んでいる地下空洞めがけて、核爆弾を撃ち込んでくるなんてさあ。

 

 

 閃光、衝撃、そして立ち上る巨大なキノコ雲。

 もちろん人間が撃ち込んでくる核爆弾程度なら平気だ。ぼくら怪獣は爆熱には耐えられるし、放射能汚染だって日頃からより強いエネルギーを浴びて暮らしているからそれが原因で死ぬことはない。

 しかし、いくら死なないったって、地下の巣穴に打ち込まれればどうしようもない。この地下空洞は、ぼくらの家であり庭でもある。そこへ勝手に入り込まれ、核爆弾なんて打ち込まれてしまったら。

 ……人間たちはいったい何を考えていたのだろう。地下空洞にあったエネルギー資源を独り占めしたくなったのか? それともMOGERAみたいな素晴らしい兵器が手に入ったから、もう怪獣たちとの共闘なんて用済みだ、とでも?

 

 ……まあいいか。どうせ滅ぼすのだし。

 

 どんな事情があったにせよ、今度ばかりは流石のぼくもプッツン頭にきた。ぼくたち怪獣はただのんびり平和に暮らしたかっただけ、悪いことなんて何もしていない。

 考えてみれば『人間と仲良く、平和主義』なんて、大元から破綻していたような気がする。ヘドラもビオランテもデストロイアも、スペースゴジラでさえ基を辿れば人間の愚かしさが産み出したものだ。なのになんでぼくら怪獣が尻拭いをしてやらなきゃならないんだ? もうその時点でおかしいじゃないか。こんな欲深で、浅はかで、底無しに愚かな人間たちのことを気遣って優しくしてやろう、なんて甘いことを考えたぼくが間違っていたのだろう。

 ……もう我慢の限界だ。もういい、もう堪忍袋の緒が切れた、今度こそ根絶しにしてくれよう。そう決めた。

 そんなわけでぼくは今地上世界へと渡り、海を泳いで人間の街を滅ぼしに向かった。そして第一話の導入部へと繋がるわけである。

 

 

 ところが、事態は思わぬ展開を迎えることになった。人間の街に上陸しようとしたところ、なんと『先客』がいたのである。

 

 

 その『先客』は身長50メートル、尻尾までの全長は100メートルほどある。背中には一枚あたり数メートルはあろうかという三列の背鰭が規則正しく並んでおり、両手両足には凶悪なまでに鋭いカギ爪が煌めき、そして両目はギョロリと蠢いていて凶暴な眼光を爛々と灯している。つまり目の前にいるそいつは、ぼく:ゴジラそっくりの姿をしているのである。

 

 全身が金属であることを除けば、だけど。

 

 そいつは鋼鉄でできたロボット怪獣であった。各部分が機械部品で出来ていることを除けばこのぼく:ゴジラの似姿そのものである機械(Mecha)仕掛けのゴジラ、まさに〈メカゴジラ〉とでも呼ぶべきだろう。

 そのメカゴジラが今、ぼくが上陸しようとした人間の街で、まるで海から来る者を待ち構えるかのように堂々と仁王立ちしていた。その足元の周囲には人間の軍隊:Gフォースの兵器群が控えていて、メーサーキャノンや二十四連装砲の砲口を、海から迫るぼくに向けて構えている。

 そのとき、人間たちの中で一番偉そうな将軍が、ふっふっふと不敵な笑いを浮かべながら言った。

 

「ゴジラめ。姿形が同じだからってこのメカゴジラが性能まで同じだと思ったら大間違いだぞ」

 

 ……人間たちめ、また新しい兵器(オモチャ)を造ったな。

 かつてぼくを倒すために創られ、スペースゴジラ戦では共闘することになった人間のロボット兵器怪獣:MOGERAのことを思い出す。メカゴジラはきっとその同類、あるいは改良された進化形に違いない。

 MOGERAもなかなかの強豪だったけれど、目の前のメカゴジラはもっと強そうに思えた。なにしろこのぼく:ゴジラの似姿にしているくらいだ、メカゴジラはきっと人間たちの繰り出した最終兵器なのだろう。

 だけど相手が何者であろうとも、ぼくは決して躊躇しない。機械仕掛けのニセゴジラ? 小癪な真似を、このキングオブモンスターを舐めるなよ。出来損ないのブリキ人形め、正々堂々ひねり潰してくれよう。

 

 ――さあ掛かってくるが良い!

 

 ぼくが意気揚々と宣戦布告の咆哮を浴びせかけると、メカゴジラも動き出してこちらへ向かって歩み始める。ゴジラVSメカゴジラ、地球最大の究極対決の始まりだ。

 ……かと思いきや、である。事態はまたしても思わぬ方向へと展開し始めたのだ。

 

 メカゴジラが突然、そっぽを向いた。

 

 ……おいどうした、相手はこっちだぞ。

 予期せぬメカゴジラの反応にぼくが怪訝に思っているのを尻目に、メカゴジラはその場でくるりと180度転回、人間の街の方へと向き直ってしまった。

 何のつもりだろう。足元にいる人間たちの様子を見てみると、どうやら人間たちもメカゴジラのこの動きは予想外のようだった。

 

「おい、どうした!?」

「DNAコンピュータ、制御不能! 暴走です!」

「バカな、そんなはずは……!?」

 

 暴走、暴走だって? ロボットアニメじゃあるまいし、一体どういうことなんだ。

 動転している人間たちと首を捻るばかりのぼく、そんな周囲の反応を尻目にメカゴジラは背鰭を赤く光らせ始めた。背鰭から発する光は(おもむろ)に輝きを増してゆき、遂には眩いばかりの明るさへと達する。

 そしてボルテージが最高潮に達した次の瞬間。

 

 炸裂したのは、赤い線条光(ビーム)

 

 メカゴジラの口から放たれたのは強烈な赤色破壊光線:プロトンスクリームキャノン、その紅の一閃が人間の街を舐める。即座に巻き起こる大爆発、猛火の暴風、そしてキノコ雲。メカゴジラの周りにあった人間の街は、一瞬にして火の海へと変わってしまった。

 ……なんだこれ。メカゴジラの奴、人間の街を攻撃しているのか? でも何のために??

 ぼくが戸惑う中、燃える街の中心でメカゴジラは雄叫びを轟かせた。

 

 ――ゴジラに転生したので、愚かな人間どもを滅ぼそうと思います!

 

 そう叫んだメカゴジラは続いて全身の(ハッチ)を展開、一帯にメカゴジラを起点とした無数の飛行機雲が立ち上った。

 メカゴジラの体内から撃ち出されたのは、数えきれぬほどの誘導ミサイルだ。フィンガーミサイル、ホーミューショット、ハイプレッシャーホーミング……雨霰と言わんばかりのミサイル弾幕がメカゴジラから発射され、周囲で駐機していた人間たちの軍隊へと降り注いでゆく。味方であるはずのメカゴジラによる思わぬ強襲で、「うわあー!」「ぎえぇー!」「ぎゃああー!」と敢え無く吹っ飛ばされてしまう人間の軍隊たち。

 ……いったい何が起こっているんだろう、人間たちの作ったロボット怪獣が主人であるはずの人間たち自身を襲うだなんて。状況が分かりかねたぼくは、人間たちの会話へ耳を傾けてみることにした。

 

「なんだ、何が起こっている!?」

 

 先ほど自慢げに話していた一番偉そうな将軍が怒鳴りつけると、傍に控えていた科学者の男がモニタを見ながら答えた。

 

「おそらく組み込まれたキングギドラとスペースゴジラのDNAコンピュータが、ゴジラの咆哮に共鳴反応したものかと……!」

 

 ……は? 今なんて?

 ぼくは耳を疑った。“キングギドラとスペースゴジラのDNAコンピュータ”とか言った??

 DNAコンピュータ、生物のDNA配列を基にして作った最新鋭の超スーパーコンピュータのことである。しかしその素材に怪獣、それも宇宙怪獣であるキングギドラとスペースゴジラを使うだなんて。

 そういえば、かつて襲来した宇宙超ドラゴン怪獣キングギドラは先の戦いで頭を一つ喪っていた。千切れてしまった頭についてぼくは仲間の怪獣と手分けして懸命に探してみたのだけれど、あのときはついぞ見つからずじまいだったのだ。スペースゴジラの死骸も同様だ、二度と復活しないよう必殺の放射熱線で灰になるまで焼却してやったつもりだった。

 だけど、まさかその死骸を人間たちが回収して再利用していたなんて。

 ぼくが唖然としていると、将軍はさらに驚くべきことを口にした。

 

「メカゴジラにはキングギドラの頭蓋骨を用いた生体電子頭脳と、スペースゴジラの結晶細胞をモデルにした自立思考金属合金:ナノメタルが組み込んであるんだぞ! そんなものが暴走するなんて……!」

 

 わざとらしいほど丁寧な説明台詞ありがとう。

 キングギドラの頭蓋骨にスペースゴジラの結晶細胞、それに両者のDNAコンピュータだって? 逆に聞きたい、そんなヤバイ取り合わせでどうして何事も起きないと思ったの? どう見ても現場猫案件じゃん。馬鹿なの、人間。

 そしてつまるところこのメカゴジラは、ぼくと同じ『転生者』のようなものであるらしかった。ゴジラに転生したぼくに対抗するメカゴジラ、さしずめ『メカ転生者』といったところか。しかも実態はただの転生者じゃなくて、キングギドラやスペースゴジラのような悪い宇宙怪獣の転生者だというのが最高に皮肉が効いている。

 『ロボット怪獣メカゴジラが反乱を起こす』という異常事態に人間たちは面食らっていたようだけれど、そんな中で将軍はすぐさま立ち直って部下たちを鼓舞しようと采配を振るった。

 

「すぐにメカゴジラを停めろ! これ以上の街への被害だけはなんとしても食い止……えぴゅっ」

 

 が、将軍はメカゴジラの放ったビーム光線の流れ弾を受けて消し炭にされてしまった。あまりのことに呆気にとられ、戸惑うことしかできない人間の兵士たち。

 

「しょ、将軍がやられた……っ!?」

「おれたちは、どうすれば……!?」

「こんなの、もはやどうすることも……」

 

 そのうち誰かが「逃げろ!」と声を上げ、途端に軍全体へのパニックにまで波及した。

 指揮系の中枢を潰されてしまった人間の軍隊は総崩れ、もはや大混乱だ。逃げ回ることしかできない人間の兵士たちを、メカゴジラはひどく楽しげに、そして丹念に一人一人踏み潰してゆく。

 

「よ、よせ、やめろ、うわーっ!」

「ぎゃあ助けてくれえ!!」

「イヤーッ!」

「グワーッ!」

 ――ゴジラに転生したので、愚かな人間どもを滅ぼそうと思います! ゴジラに転生したので、愚かな人間どもを滅ぼそうと思います! ゴジラに転生したので、愚かな人間どもを滅ぼそうと思います!……

 

 ……なにこれ。もはやギャグじゃん。

 メカゴジラに蹂躙されてゆく惨めな人間たちを見ているうちに、ぼくはすっかり気が殺がれてしまっていた。ぼくがわざわざ手を下してやらなくても人間たちは滅ぼされてしまうだろう、人間たち自身が創り出した最凶最悪のメカ転生者メカゴジラの手によって。

 まったくバカみたいだ。

 ぼくたち怪獣からは何もしてないのに人間たちときたら、核実験で地下空洞の平和を破壊して『怪獣黙示録』を引き起こし、怪獣たちが地上に出てくれば一方的に敵視して対G兵器だの核爆弾だので散々攻撃して、その挙げ句の果てにこうして恐ろしいロボット怪獣:メカゴジラを創り出して自滅しようとしてさえいる。

 ぼくはこんなしょうもないアホどもにマジギレしていたのか。そう思うと、そんな自分自身に対して馬鹿馬鹿しささえ覚えてしまう。

 

 ……もういい、帰ろう。

 

 今のメカゴジラは人間の街を攻撃するのに夢中で、ぼく:ゴジラのことなんかもはや眼中にすらない。このまま帰ったとしても追って来やしないだろう。

 それにぼくの棲み処は地下空洞、万一メカゴジラと戦うことになるとしてもずっと先のことになるだろうし、そのときに応戦してやれば良いだけのこと。このまま放っておいても、ぼくは全然困らない。

 そう思ったとき、またしてもメカゴジラの動きが変わった。周囲の人間たちを散々蹴散らしたあと、メカゴジラは握り拳を振り上げて、地面に向かって叩きつけた。

 

 大地を揺らす衝撃波が響き渡り、鋼の大爆風が巻き起こる。

 

 まるでメカゴジラを中心とした、銀色の水溜まりが撥ねたようだった。撥ねた鋼の飛沫(しぶき)は津波となって周囲を呑み込み、街を金属色へと染め変えてゆく。

 ……メカゴジラのやつ、一体何をしているのだろう。ぼくの疑問は、片耳で聞いていた人間たちの会話で解消された。

 

「あれはまさか、〈グレイ・グー〉……!?」

 

 グレイ・グー。自己増殖するナノマシンが暴走して果てしなく増殖し、遂には地球を呑み込んでしまう、というSF現象のことだ。

 たしかにメカゴジラの素材はナノメタルなるナノマシンで出来ているらしい。けれどこの地球上には、そんな膨大な量のナノマシンを創れる材料もなければエネルギーも存在しない。故にグレイ・グーは本来、実現し得ないSF空想科学の絵空事のはずだった。

 

 でもそれは『地球上の物質であるならば』という話に限ってのことだ。

 

 さっきの将軍の話によれば、ナノメタルを造るときのモデルにしたのはスペースゴジラの結晶細胞だという。

 つまりナノメタルは、宇宙怪獣由来の宇宙テクノロジーで出来ているのだ。そういう存在であれば、グレイ・グーくらい起こせてもおかしくはない。

 そういえば今思い出したのだけれど、生前のスペースゴジラには自分の結晶細胞を使って宇宙エネルギーを受信するための占領地を造り上げてゆく習性があった。あるいはメカゴジラも、それと同じことをナノメタルで再現しようとしているのかもしれない。

 

 ……さて、どうしたものか。

 これでいよいよぼく:ゴジラもメカゴジラを無視するわけにはいかなくなってしまった。グレイ・グーなんてやられたら地上は勿論、ぼくたち怪獣が棲んでいる地下空洞だって大変なことになる。メカゴジラ一体だけならどうにでもなるだろうが、地球丸ごと飲みつくすほどの怪獣クラスのナノマシンを造り出そうとしているともなれば話は別になってくる。

 ……しかたない、ぼくも動くか。

 ぼくはしぶしぶ海から上陸し、地上で暴れ回っているメカゴジラへ語りかけた。

 

 ――メカゴジラ、キミが人間たちに対して怒っているのはよくわかった。だけどこれ以上やったら大変なことになってしまうよ。人間たちもきっとこれで懲りたろう、だからもうここらで切り上げて御終いにしよう、ね?

 

 ぼくの停戦勧告に、メカゴジラはこう答えた。

 

 ――ゴジラに転生したので、愚かな人間どもを滅ぼそうと思います!

 

 うんうん、そうか。でもやめようね。

 

 ――ゴジラに転生したので、愚かな人間どもを滅ぼそうと思います!

 

 いや、あの、だからさ……。

 

 ――ゴジラに転生したので、愚かな人間どもを滅ぼそうと思います! ゴジラに転生したので、愚かな人間どもを滅ぼそうと思います! ゴジラに転生したので、愚かな人間どもを滅ぼそうと思います!!!!……

 

 ……ダメだこいつ。まるで話が通じない。

 ぼくはメカゴジラとの対話を早々に断念する羽目となった。そもそもこいつはロボット怪獣、ただの機械人形だ。元から話し合いが成立するような相手じゃあなかったのだろう。

 

 

 かくなる上は実力行使、戦うしかない。

 

 

 ぼく:ゴジラは宣戦布告の雄叫びを挙げ、メカゴジラへと向かってゆく。

 そしてメカゴジラも、モーターバルクの筋肉をウオォンと轟かせながら迎え撃つ。

 ……では改めまして。

 

 ゴジラ対メカゴジラ。

 ゴジラ同士による、地球最大の究極対決が始まった。

 

 




タイトルは『ゴジラVSコング』でゴジラのテーマとして作曲されたもの。公開当時ゴジラファン界隈では「ゴジラのテーマ使えよ!!!!」と不評でしたが、それやっちゃうとゴジラの印象が強すぎてコングが薄くなるので曲は変えて正解だったと思うなあ。まあ『ゴジラ復活す』くらいはあっても良かった気はするけどね。

次回、プロレス。

次はどの怪獣の話が読みたい?

  • アンギラス
  • チタノザウルス
  • バトラ
  • スペースゴジラ
  • デストロイア
  • オルガ
  • メカゴジラ=シティ
  • カネゴン
  • ケムール人
  • バルタン星人
  • ガヴァドン
  • ジャミラ
  • メトロン星人
  • ミャクミャク(いのちの輝き)
  • 大魔神
  • ガメラ
  • ゼノモーフ
  • プレデター
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