植物好き(仮)と麦わらの一味もどき   作:浅学寺のえる

1 / 57
ROMANCE DAWN ですらないかもしれない
第 1 話〝冒険の夜明け〟


 

 ー 嵐の海を進む帆船 その甲板 ー

 

 

 「おれはオールブルーを見つけるために──!」

 

 船乗りらしからぬ洒落たスーツを着込んだ青年がそう宣言し、酒樽の上へと足を乗せる。

 他の船員達もまた自身の野望を宣言し、大海原へと漕ぎ出す決意表明を兼ねた進水式が始まる。

 

 「私は世界地図を描くため──!」

 

 紅一点の少女が宣言を済ますと残るは二人。

 

 「ワ、ワシは勇敢なる船乗りとして名を上げ!────やがて故郷へと凱旋するためにっ!!」

 

 「いや、長い長い」

 

 「これから大海原に出るってーのに、もう帰ること考えてんのかよオッサン」

 

 船長然とした船中で唯一の中年男性が進水式のリズムを崩す。

 

 「まあ()()()はいつものこととして、あとはアンタだけよ」

 

 ()()の少女に促され最後の一人が動く。

 

 「オレは、……あー、〝悪魔の実〟の謎を解き明かすために!」

 

 

 

 

 

 

植物好き(仮)と麦わらの一味もどき

 

 

 

 

 

 

 いきなりだけれど、オレは別に植物が好きではない。

 誤解のない様に言うと、取り立てて好きではないというだけで別に嫌いでもない。

 ある偉人は「好きでも嫌いでもないモノは消しゴムだよ!」と言っていたが、まあそんなトコロだ。

 

 だけど植物との縁は()()も含めれば半世紀近くにまで及ぶ。

 そう、前世では果樹園を生業とする家に生まれ、子供の頃から果物には困らない生活をしていた。

 兄がいたので家業こそ継がなかったけれど、学生時代は繁盛期の度に駆り出されていたので、それなりの知識は身に付いている。

 

 就職してからも旬の時期がくる度に実家から果物が送られてきたため、フルーツで三食済ますこともざらにあった。

 フルーツそんなに好きなら植物も好きだろって?

 物心ついた時から当たり前に食べ続けてきたから、好きとか嫌いとかなくてもうただの食事なんだよね。

 飯作るよりは果物の皮剥く方が楽だし、カバンにリンゴ一つ入れとけば弁当の代わりになるしって感じの生活をしていた……そして恐らく、それが死因にも繋がっている。

 

 栄養が偏って弱ってる所へ睡眠不足と疲労が重なって、炎天下でぶっ倒れた所で記憶が途絶えている。

 享年25歳

 

 そして、今世ではなんと()()()()が植物である!……あ、厳密には植物もどき。

 

 「オレは、○○の実を食べた〝植物人間〟だ!」ドンッ!!

 

 なんて宣言ができれば格好もつくんだけど。

 何かしらの悪魔の実の能力であるのは確実なんだけれど、そもそも食べた〝実〟の名前が不明なので「え?なんの実?」って聞かれたら立つ瀬がない。

 

 名前が分からない理由は、()()()()()というやつを思い出した頃には、もう能力を使えていたからだ。

 それ以前は本能のままに無人島サバイバル生活をしていたんだ。

 なんの説明もなく、ひとりぼっちで島スタートの人生。

 まあ当時は、自我なんてものはなく〝食う〟〝寝る〟のみの思考だったから孤独も感じなかったけれども。

 あるキッカケで、唐突に頭の中が鮮明になったと思ったら知らない記憶が呼び覚まされ、言語というモノを思い出し自我が芽生えた……という感じだ。

 

 おそらく産まれてすぐに無人島へ捨てられたか、親と共に海難事故にでも遭い逸れて漂着したんだろうな。

 言葉を教えてくれる人間が一人も居ない環境で、脳が言語を習得する機会を失ってしまったので、頭ウホウホな赤ちゃん状態で過ごしていた。

 

 乳幼児が一人で生きられる訳ねーだろ!って思われるかもしれないけれど

 その答えは、()()()()()()()を本能で身に付けていたからだ。

 

 そう〝光合成〟

 

 記憶を思い出すまでフツーに()を張りジトーっと動かず

 太陽でポカポカしたらお腹が膨れ、たまに降る雨にニコニコし、嵐の時は苦悶の表情を浮かべながらじっと堪えるという、ほぼ植物として生きてきたんだ。

 

 サバイバル生活と言ったけれど、自然そのものですね。

 

 

◆◇◆◇◆◇◆

 

 

 そんなこんなで十数年

 正確な時間は分からないけど、冬が十数回来たので大体合ってると思う(植物的価値観)

 まあ、そんな植物まがいな生活をしながらも、ボケーっと海を眺めていたらある時一隻の船が目に入った。

 そして、帆にドでかく描かれた〝ピエロを模した海賊旗(ジョリーロジャー)〟を観て一気に前世の記憶が覚醒した。

 

 ワンピース! オレ、ニンゲン! アクマノミ! バギー!

 

 次つぎに呼び起こされる記憶を整理しながら、まず自身が悪魔の実を食べた植物人間であろうとアタリを付けてみた。

 その後、バギーの船に乗せてもらおうと思ったんだけど、なぜか一歩も前へ進めなかった。

 足の裏から〝根〟が出ていたんだ。

 とりあえず地面に刺さっている根を、頭の中で切り離すイメージをしてみれば痛みもなくスッと一歩を踏み出せた。

 ようやく人間として活動再開できた。けれど、慌てて浜辺に出て来てみれば船は遥か遠くで小さくなっていた。

 

 いや、島があるんだから上陸しろよ!

 

 

◆◇◆◇◆◇◆

 

 

 そんなこんなで、ここから真のスタート。切り替えていこう!

 まず能力の確認から。植物人間と言ったけれど、後の大将〝緑牛〟のように植物そのものに変化するわけではないらしい。

 〝根〟から栄養を吸い上げることは出来ても、身体は人間なので栄養が偏りガリッガリである。またしても栄養の偏りに苛まれるとは因果なものだなぁ。

 

 次に何が出来るか色々試してみる。何か出ろ!っと念じれば体の至る所から植物性のアレコレが一気に湧き出た。

 どうやら体の部位と対応して出せる植物の部位が決まっている様だ。

 

◆足の裏からは〝根〟しか出せない

 これを使えば、地面から生きるのに最低限の栄養を得られる。ただし、吸いすぎると地面の方がダメになってしまうから注意が必要だ。

 あとは、地面に深く刺せば風が強い日でも飛ばされる心配がなくなって便利……ってコレは微妙だな。どうもまだ、植物の感覚が抜けてないなぁ。

 

◆指先からは(トゲ)が出せる

 回転させたり()()させたりできる優れ物。さしずめニードルキャノン。

 

◆肩からは〝葉〟を出せる

 ある程度大きさも自由自在なので、体がすっぽり入る大きさの葉っぱを出して、穴を開けて頭を出せば ようやく全裸生活からの脱却である。

 あ、特に言ってこなかったけれどオレずっと全裸でした。

 

◆手の平からは〝枝〟を出せる

 これも太さ形が自由に変えられるけど、コチラは自分の腕よりも太くはだせない模様。

 ちなみに今の腕の太さは、まさに枝のようだ。栄養が足りないからね!

 

◆そして手首から出せる(ツル)

 見た目も性能も一般的な植物の蔓。大きさは変えられないけれど、蔓同士を絡ませれば太くする事は可能だ。

 そして、長さに至っては制限が無い。まあ、どの能力も使えば身体から栄養の様な物が減るんだけど……減った分は地面から補給できるので、実質 無制限。

 

 この蔓が、現状で一番役に立っている。

 さっそく棘と蔓で〝弓きり式火おこし器〟を作成してみた。

 (たきぎ)は手の平からいくらでも出せるので火の確保が完了。

 幸い火で体が燃え上がるなんて事はなかった……火傷はしたけどね。身体は完全に人間って事なんだろう。

 

 それ以外でも蔓は大活躍。葉っぱ服(貫頭衣)にプラスして腰蓑(こしみの)と、靴と、雰囲気で月桂冠風の冠を作成。

 わざわざ指で編まなくても、体から切り離す前なら自由に動かせるのでラクラクDIYだ。

 

 

◆◇◆◇◆◇◆

 

 

 装備も整ったので、浜辺に隣接する森へと赴く事にした。

 さっそくウサギを発見。島には天敵が居ないのか、全く警戒しておらず逃げる気配がない。

 

 よーし、よーし。おいでおいでー……〝ニードルキャノン〟!!!

 

 これも自然の摂理だ許せ。

 だけどウサギを捌くにしても、刃物がないので丸焼きにして食べる事にした。久しぶりに()()()()()()たからか普通に美味しい。

 

 腹も膨れて眠くなってきたので、森の中にあるいい感じに間隔の空いた3本の木の間に蔓を通して葉と一緒に編み込んで屋根を作れば家の完成。

 

 え? ソレ家じゃない?

 こちとら十数年、植物として生きてきてるんで屋根があればもう家ですよ。あと床は地面なので実質ごはんだし。

 

 そもそも植物なんだから雨にあたっても問題ないだろって?

 A.能力者

 

 ちょっと位の雨なら(むし)ろご褒美なんですが、たまに来るスコールなんかにぶち当たると一切動けなくなる。

 そんなこんなで、拠点を確保した後も色々と試して解ったことをまとめてみた。

 

◆この能力は、体から植物を構成する組織を出せる(チカラ)である

 手からは〝枝〟〝蔓〟〝棘〟

 肩からは〝葉〟

 脚からは〝根〟

 花や種子が出せるかは試してない。相手もいないのに試すのは、なんか恥ずかしいから(植物的価値観)

 

 おそらく分類は超人(パラミシア)系だと思う。

 自然(ロギア)系である〝モリモリの実〟の完全下位互換の予感。

 それに、映画で出てきた〝モサモサの実〟の様に他の植物を操ることも出来そうにない。

 覚醒しろ?

 もうしてるよ! 頭の中が、植物から人間へ覚醒したって意味だけど!

 

 うわ、もしかしたら〝ヒトヒトの実〟を食べた植物が自分をニンゲンだと思い込んでるのでは?と、コワイ想像をしてしまったけど……

 最初にバギーの船を見つけた時、海に半身が浸かるまで入っていけど人間形態のままだったので恐らく違うだろう。違うよね?

 

 その後、潮が引くまで動けなくなり悪魔の実の能力者であることが証明されたんだ。

 干潮時に試してたら普通に死んでたなぁ。

 ちなみに海水のダメージは半端なく、全身がシオシオになる。植物の能力だからかな?

 まるでギア5の反動が起きたルフィの様だけれど、こっちは真水を吸収して体から塩分を抜き出すまでシオシオのままだ。

 

 

◆◇◆◇◆◇◆

 

 

 結局、この能力が何の実なのか不明なまま、無人島で生活を続ける事になった。

 イカダを作って脱出なんてことも考えたけど、海水が怖すぎて浜辺に近づくことすら嫌になったので諦めた。

 この島の砂浜を一望できる森の高台に拠点を作り直し(今度は壁もある)、能力修行をしつつサバイバルを続けることにした。

 島から出て文化的な生活もしたいけれど、最悪〝光合成〟だけでも生きられるという安心感があるので、ついつい消極的な思考になってしまう。

 その内また船が見えた時に乗せてもらえばいいか。

 

 よーし! それまでに能力を磨いて、ついでに六式でも覚えちゃいますか!

 

 

 …………ムリでした。

 

 肉体強度が圧倒的に足りない。ずっと光合成だけだったからモヤシっ子なのは当たり前だった。

 まずは肉を食わねば。にくーっ! 何処だー!?

 いた! 肉っ! 棘を飛ばして……ん? そうだ!!

 

 飛ぶ指銃〝(バチ)〟っ!!

 

 とりあえず〝一式使い〟は名乗れそうだ……けど、ルッチに見つかったら消されそうだから(バチ)って言うのはやめておこう。

 

 

 

 


 

 

 

 

 なんやかんやで、はや10年。一隻の船も現れない今日この頃。

 

 突然、島から動物の姿が消えた……いや、消えたなんて言い方をするのは良くないな。

 狸や狐は化けたり姿を消したりするものもいるだろうけど

 この島のウサギやヘビは自分で消えることはできないのだから……!!

 

 発端は〝蔓〟を使った罠を思い付いた事だ。

 それが見事にハマって動物を捕獲するペースが加速度的に増していった。

 はい……もうオチが見えましたね。そう、全部オレが食べちゃったんだ。お陰で筋肉もそれなりにつきました。

 

 少しだけ言い訳をさせてもらいたい。

 当初のメインウエポン〝棘の射出〟は外す事もあったので、それを学習した動物が警戒しだしたんだ。

 そこからは、なかなか仕留められずにいたので罠がハマった時は、ついはしゃいでしまった。

 まさか、乱獲のしすぎで島から動物が居なくなるとは思わなかったよ。

 前世でも果物の食べ過ぎで死んだ様なものなのに、また似たような過ちを冒してしまうとは……!

 

 いや、光合成してれば死なない奴が生態系崩壊させるまで食べるなよって話なんだけど、これにも理由があるんだ。

 そもそも、島には娯楽が一切ない! 現代社会を生きた人間にとって、娯楽は三大欲求にも匹敵するんだ!!

 

 最初の頃は能力開発を楽しんでいたけど、さすがに修行だけだとストレスが溜まる。

 そこで娯楽代わりに狩猟を本格化したのがいけなかったんだろう。

 でも、身体作りには肉から摂れるタンパク質も必要だったんだ。

 そしてなにより……動物は美味しい。結局この一言に尽きる。

 十年近く光合成してたせいか、初めて口から食べたウサギの味が忘れられずついつい食べ過ぎちゃったよ。ゴメン!

 

 ついでに言うと、この島で食べられる果実も無くは無い。

 けれど、島で唯一の果物〝ヤシの実〟は能力のせいなのか体が受け付けず、とてもマズく感じるんだ。

 ホントにマズい! 悪魔の実かよ!ってくらいにマズかった。

 ま、悪魔の実だったら私死んでるんですけどね! ヨホホホ……オレにはまだ、スカルジョークは早いな。ウケる気がしない。

 

 

 


 

 

 

 そして食という楽しみが島から消え、いよいよ本格的に脱出を考え出した頃

 唐突にこの島からオサラバできる転機が訪れた。

 

 

 「すげー! ちゃんと島に着いたぞ!」

 

 「おお、やるもんだな」

 

 「そりゃ、着くわよ当たり前でしょ。て言うか、アンタ1人の時どうやって航海してたのよ?」

 

 「ん? アレだ、ノリで」

 

 「アホかー! はぁ、なんでこんな奴に着いてきちゃったんだろ」

 

 突然の主人公とその仲間の登場に軽くパニックになったけど、向こうはコチラに気が付いてない様なので少し観察してみる。

 

 まずルフィ

 うん、間違いなくルフィだ! 麦わら帽子被ってるし。

 さっきの漫才で はたかれた時にゴムっぽく、みょーんってなってたし。

 

 次にゾロ

 腹巻きに刀三本、服はなんか黒いけど……まあ、ほぼほぼゾロだろう!

 

 最後にナミ

 見事なツッコミと、地図やコンパスを確認したりと航海士のような仕草をしている。

 そして鮮やかな茶髪……茶髪?

 ああ、光の加減でオレンジが茶色に見えてるんだろうな。

 はい! ナミ!

 

 島から出る千載一遇のチャンスだ!

 海水が嫌すぎて自力で脱出するのを諦めていたオレにとって、ここを逃せば次はない。

 なんせ20年以上ここに住んでいてバギーの船以外目にしていないんだ。

 どうにかして船に乗せてもらわなければっ!

 

 「誰だ!」

 

 うわぁっ!? 急にゾロ(推定)がコチラに気づいた! もう隠れてられない。

 とにかく……こういうのは、第一印象が肝心だ!

 敵意がない事と、船に乗せてもらいたい事を伝えなければ。

 

 「オレ、テキ、チガウ! ナカマ! ナカマ!」

 

 咄嗟に出た言葉はカタコトで、まさに原始人のソレだった。

 そう言えば……今世でまともに喋るのは初めてだったかもしれない。

 できもしない六式や覇気の特訓なんかやらずに、まず発声練習でもしておくべきだったかぁ。

 


 

ドットで描いた主人公のイメージ

 

【挿絵表示】

 




 緑牛の能力を見た時にパっと思い出したのが彼でした
 原作ではウソップのポップグリーンが″植物好き″の名残りだと思ってたのですが、ここにきてモリモリの実

 休載期間の1ヶ月ずっと考察と妄想をしていたらこんな話を書いてました

 連載再開の喜びと熱量で書いたので続きはまだ書いてませんが5年以内には終わると思います

(22/08/25:追記)

 思いの外筆が進んだので、現在は火曜〜土曜の午前9時に一話ずつ更新する形になっています。

(22/09/16:追記)

 現在、第一部が終了しました。第二部開始までは、不定期に幕間などを更新する予定です。
  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. よみあげ
  11. 閲覧設定

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧 ※ログインせずに感想を書き込みたい場合はこちら
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。